HOME > 全文掲載 >

毎日新聞夕刊「集団リンチで患者死ぬ」 1969年08月19日




 「▽看護人等3人で・土下座許しこうのを

  医療法人安田病院(神経科・精神科)=安田基隆会長(49)舳松(への松)院長(70)=で3月22日起こった入院患者の"怪死事件"を  内定していた大阪府警捜査一課と柏原署はこの事件が看護人による集団リンチによるものと断定。19日朝、同病院本会2回病棟、元診療  係長松本正美(26)を傷害致死容疑で逮捕、あとの2人を同容疑で取り調べるとともに、病院を捜索、死亡診断書・カルテなど証拠書類を押収した。・・・精神病院内の乱脈ぶりと、これに対する監督庁の指導監督のあり方が問題になるとみられる

  院長が"病死"で診断書

  このリンチ事件は、3月22日午前6時ごろ起こったもので、同病院に精神分裂症で入院していた藤井寺市、無職、Aさんが(31)が本館屋  上から逃げようとしてロープを手繰っているところを夜勤職員に見つかった。Aさんは、別館1回ロビーに連れ込まれ、ここで松本と同副  主任、よぎ(40)看護人、三田義隆(38)の3人に殴る、けるの暴行を受けた。松本らはさらにAさんが「こらえてくれ」と土下座するの  にもかかわらず「逃げたいのなら走れ、なんぼでも走らせてやる。とロビーを数10分間ぐるぐる走らせ、これを見つけた看護婦の忠告も  聞かず制裁を続けた。このためAさんは昏倒して同9時頃容態が急変、手当てを加えたが死んだ。死亡診断書は舳松院長が書き「死亡時間  は午前10時20分、死因急性心不全」として処置した。このあと病院側はAさんを新しいゆかたに取替え、遺族を立合わせずに納棺、フタ  だけを遺族に釘付けさせた。しかし遺族がのぞき窓から見たとき死体左手に切傷や打撲傷があったので、不審を抱き、職員や患者の間で  もリンチ事件がうわさになり柏原署に投書や訴えが相つぎ事件が明るみに出た。
  なお捜査1課ではAさんの死亡診断書に不審な点があるので同院長から事情を聞くとともに、同会長が職員に「事件を内分にするように」  と言っている点を重視している。
  Aさんの家族の話では病院からの連絡でかけつけ「死体を引き渡して欲しい」と頼むと「医療補助者なので病院で火葬する。死体は3階に  あるが、お通夜は1階でしてほしい」と答え、死体を引き渡そうとせず、納棺にも家族を立ち合わせなかったという。
  安田会長の話;Aさんを捕まえようとしたとき、看護人ともみ合いケガをしたのは事実だ。しかし、直接の死因は、院長が診察した通り  急性心不全で、殴ったり、リンチを加えたため死んだのではない。松本は42年に資格を取っていた。今度の事件は、退職した元職員が私  に恨みを持って警察に投書したものだ。

  ▽看護人、半数が無資格―府が"改善勧告"したばかり

  安田病院は、38年3月、神経精神科の病院として設立。安田会長は、同病院のほか、住吉区の長居病院、東住吉区の大阪円生病院も経営  現在、大阪府医師会理事。舳松院長は昨年5月から同病院長。安田病院は本館・別館の2棟があり、府への届出では、420床のところへ、  約550人が入院、あふれた患者は畳部屋にぎっしり押し込まれている。府衛生部の7月の臨時監査では入院患者の面倒をみる看護人は焼く  80人いるが、半数近くが無資格者で、府下の精神病院の中でも特に悪く、監査時後に改善勧告を受けた。看護人の不足から、同病院では  看護人と入院患者のトラブル、患者同士のけんかが多く、先月28日にも別館の病舎で入院患者の世話係(34)が「ことば使いが悪い」と  言う理由で共同病室で睡眠中、患者5人に首を絞められたり、鉄パイプで頭を殴られ殺されると言う事件も発生している。

  深刻な看護婦不足

  この事件で精神病患者の面倒を見る「看護士」(いわゆる看護人)の質の低下があらためてクローズアップされた。看護士は看護婦とま  ったく同じ資格で、特に精神病院の需要が多いが、実際には看護士要請の専門学校が少なく、精神病院は深刻な看護士不足。大阪府医師  会の調べでは、府下56精神病院の入院患者は1万5千人。ざっと5千人の看護士が必要だが、いま実際に働いている看護士は<正看72人・  准看161人>に過ぎない。このため大阪府精神病院協会は府の補助を受けて、42年、准看護士養成学校を創設、今秋、初の卒業生約50人  を送り出すが焼け石に水。精神病院はやむなく無資格者を雇い入れたり、全快間近い患者を看護士代わりに使っているケースもあるという。」



*作成:仲 アサヨ
UP:20091224(小林勇人) REV:
精神障害/精神医療 ◇精神科特例関連 ◇精神病院不祥事件全文掲載
TOP HOME (http://www.arsvi.com)