97/11/27 第3回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録    第3回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 1.日  時:平成9年11月27日(木)14:00〜16:10 2.場  所:厚生省第2会議室(厚生省別館5階) 3.議  事:(1)生殖医療に関する意見聴取    (2)生殖医療に関する意見募集について        (3)遺伝子治療臨床研究作業委員会の模様について 4.出席委員:寺田部会長代理 (委員:五十音順:敬称略) 木村利人 柴田鐵治  (専門委員:五十音順:敬称略) 入村達郎 金城清子 廣井正彦 松田一郎 森岡恭彦 山崎修道 5.出席団体:社団法人 日本医師会               常任理事 香西 義昭 社団法人 日本産科婦人科学会 会長   矢嶋 聰   副会長  青野 敏博             幹事長  落合 和徳        社団法人 日本母性保護産婦人科医会 会長   坂元 正一 副会長 前原 大作             常務理事 新家 薫 ○事務局 定刻になりましたので、まだ若干の委員の方が交通事情によりましてお揃いになって おられませんけれども、ただ今から第3回厚生科学審議会先端医療技術評価部会を開催 いたしたいと思います。 本日は高久部会長、軽部委員、曽野委員、加藤委員の4名の委員の方々が御欠席でご ざいます。高久部会長が御欠席でございますが、厚生科学審議会令の規定に基づきまし て、予め部会長から寺田委員が指名されておりますので、本日の議事の進行は寺田委員 にお願いいたしております。 本日の配布資料につきまして事務局から簡単に御説明申し上げます。委員の皆様方に は厚生省と書きました袋と、それから少し大部になりますがファイル、それからもう一 枚別途の資料、資料1〜2・参考資料の3種類をお配りいたしております。資料1は本 日後でヒアリングが行われます生殖医療に関する見解の概要ということで、本日御出席 の3団体の方々の意見の概要について提出いただきましたものを用意させていただいて おります。 それから、資料2につきましては、生殖医療に関する意見の募集案ということでござ いまして、前回の部会の場におきまして、広く国民の皆様から御意見を伺うということ になりましたので、そのインターネットに掲載いたします資料の(案)を用意いたして おります。 それから、参考資料は日本産科婦人科学会からいただきましたものでござ いまして、本日のヒアリングの説明資料ということで御提出いただいたものでございま して、その際に御使用いただきたいと思います。 それからファイルの方に綴じております大部のものでございますが、これはこれまで 私ども事務局の方から部会に提出いたしました資料、或るいは委員の皆様方から御要望 のございました資料等をまとめたものでございまして、審議の際に御使用いただければ というふうに考えております。ちなみにその資料1と2につきましては、前回私どもが 提出した資料でございます。その1の最後に前回の部会で御審議中に人工妊娠中絶の理 由別の件数についての資料をということがございましたので、その資料を1点追加させ ていただいております。 それから、4番の資料につきましては、前回御要望がございました家族性腫瘍研究会 の資料でございます。 それから、5番目につきましてはWHOのガイドラインでございますが、これにつき ましては当部会の松田委員が監修され、邦訳をお付けいただいておりますので、原文と 邦訳の両方を提出させていただいております。 それから、6点目のものにつきましては、これは本年の11月11日ユネスコの総会で採 択されたばかりのものでございます。ヒトゲノムの関係のものでございますけれども、 これにつきましても入手出来ましたので、また日本訳の方は事務局の方で仮訳というこ とでつくったものでございまして、公定訳ではございませんが、原文とともに参考とい うことで提出させていただいております。 それから、別途1枚紙の方で用意いたしておりますのでヒアリングの予定表でござい ます。これは後でまた私の方から御報告申し上げます。 以上、ファイルの資料を含めまして、非常に大量の資料を用意いたしておりますが、 大変大部にわたるものでございますし、お荷物にもなろうかと思いますので、もしよろ しければ、そのまま審議の後、こちらの方にお席の方に置いておいていただければ私ど もの方で保管いたしまして、今日提出しました資料と合わせて、また次回用意させてい ただこうと思っております。どうかよろしくお願いいたします。 それでは、寺田委員よろしくお願いいたします。 ○寺田部会長代理 今日の部会長代理をさせていただきます寺田でございます。 それでは、まず本日の議題に入りたいと思いますが、その前に今日お忙しいところを 来ていただきました専門家の先生方どうもありがとうございました。どうぞよろしくお 願いいたします。 それでは、まず事務局の方から本日を含めまして今後の日程、まず報告をお願い出来 ますか。 ○事務局 先程御説明しましたとおり、お手元に配布いたしました予定表のとおり当面5回程度 の意見聴取を行うということで一応の日程を組んでおります。本日は第1回目というこ とで、生殖補助医療技術等に直接携っていらっしゃいます関係団体ということで、まず 日本医師会、日本母性保護産婦人科医会、日本産科婦人科学会の3団体の方から専門家 をお招きいたしております。 第2回目以降につきましては、小児科関係団体、遺伝関係団体・法曹関係団体、ある いは患者・障害者団体、女性団体等から関係者をお招きする予定でございまして、現在 各関係団体等に部会長の指示に従いまして別途御相談申し上げさせていただいていると ころでございます。なお、関係団体等の御都合あるいは一部の委員の先生方の方から若 干順番等を含めて幾つか御意見をいただいております。関係団体等とも十分相談いたし まて、調整をいたしまして、その詳細につきましては後日別途御報告させていただれば というふうに考えております。 ○寺田部会長代理 どうもありがとうございました。それでは、時間の関係がございますので、早速お話 を伺いたいと思います。 まず、本日御出席の方を事務局から御紹介をお願いします。 ○事務局 本日は日本医師会から常任理事の香西先生、先生はちょっと交通事情で若干お遅れに なっているようでございますので、御到着次第また別途御紹介申し上げたいと思います それから、日本母性保護産婦人科医会から会長の坂元先生、それから副会長の前原先 生、それから常務理事の新家先生、また、日本産科婦人科学会から会長の矢嶋先生、副 会長で診療研究に関する倫理委員会の委員長の青野先生、それから幹事長の落合先生を お招きいたしております。 なお、皆様よりあらかじめ御意見の概要をいただいておりますので、先程お配りしま した封筒の中の資料1としてお手元に配布いたしております。それから、また参考資料 として日本産科婦人科学会から参考資料を同じく封筒の中に入れておりますので、よろ しくお願いします。 ○寺田部会長代理 どうもありがとうございました。 それでは、まず日本産科婦人科学会より御説明の程お願いいたします。よろしくお願 いいたします。 ○日本産科婦人科学会(青野副会長) 日本産科婦人科学会の青野でございます。本日はお忙しいところをヒアリングの機会 を設けていただきまして大変ありがたく思っております。「生殖医療を巡る論点につい て」という資料を11月11日に受領いたしまして、ごく短い時間でございましたので、そ の間今日迄に学会の理事会等は開催されておりませんので、機関決定の意見という訳に はまいりませんが、理事のこの方面専門の先生方の御意見をとりまとめまして今日私が 代表して述べさせていただきたいと思う次第でございます。 「生殖医療に関する貴会の御見解の概要」という資料1最後のページにございますよ うに、日本産科婦人科学会の医師は、腫瘍或るいは周産期、それから生殖医学というふ うに大きく分けまして3つの分野の医療に携わっておりますが、その中でも特に生殖医 療に関しましては、幅広い学識あるいは高度な技能とともに高い倫理性が要求されてい るところでございます。 そういうことで、学会で新しい生殖医療技術が開発されまして、欧米等から入ってま いりました際には、臨床応用される前に学会の倫理委員会及び理事会等で検討をいたし まして、学会の見解という形で会告として、機関誌にその都度発表してまいりまして、 会員にそのガイドラインを遵守すべきであるということを指導してまいっているところ でございます。今日見解をお述べする内容も、これまで数次にわたりまして出してまい りました学会の会告にしたがって内容を御説明申し上げるという形になると存じます。 各論に入っていきたいと思いますが、「生殖医療に巡る論点について」という資料を あらかじめちょうだいいたしましたので、そのことにつきまして、御質問の順番に従い まして、1番は生殖補助医療技術、2番が出生前診断技術、3番が研究利用のあり方、 最後にその他という項目に分けまして、御説明を申し上げたいと存じます。 まず第1は、生殖補助医療技術でございまして、これに関しましては、6項目の御質 問をいただいております。その第1項目は「生殖補助医療技術の現状と安全性、実施施 設等について」ということでございまして、これにつきましては、現在、まず実施につ きましては登録制をしいておりますので、本年10月27日現在の登録施設数は通常の体外 受精、胚移植及びギフトの臨床実施施設が439施設。それから、その中で余剰の胚あるい は受精卵を凍結保存をして、それを移植するということを申請している施設が191施設 それから、主として精子の異常のため顕微鏡下に直接卵子に精子を注入する顕微授精の 臨床実習を行う施設が146施設。ヒト精子、卵子、受精卵を取り扱う研究を行う施設が 114施設。ごく最近会告が出ました非配偶者間人工授精いわゆるAIDの臨床実施を行う 施設が10施設登録されているところで、この登録施設でのみこういう技術が行われてい る訳でございます。 次に、体外授精、胚移植の現状と申しますか、統計的なものでございますが、日本産 科婦人科学会では、登録施設に毎年報告を要求しております。報告は2つのルートを通 じておりまして、一つはオブリガトリーといいますか必ず登録しなければならないとい うことで、それは大きな内容についての数字でございまして、この管理は学会の中の診 療と研究に関する倫理委員会が統括しております。それからもう一つ、学会の中に生 殖・内分泌委員会がございまして、その委員会の方では、これはボランタリーのベース で参加していただいた方に、もう少し詳しい内容の分析をかけられるような統計をお出 しいただいているところでございます。 今回は主として倫理委員会の全体のまとめから現状をお話し申し上げたいと思います が、参考資料4ページから16ページにわたりまして、平成6年分の体外受精と7年分の 体外受精の成績が2年間、まとめさせていただいているところでございます。これをか いつまんで、平成1年から7年までの累計で申しますと、新鮮な胚を用いて治療をした 出生児数が16,752人。凍結胚あるいは卵を用いた治療が638名、顕微授精を用いて出生し た児が2,461人で、これまでに約2万人の出生児が得られております。 治療総数も患者数も年を追って増加しておりまして、平成5年から7年の3年間に関 しましても、患者総数が概数ですが、平成5年が18,000人、平成6年が22,000人、平成 7年が26,000人と漸増をしております。治療周期数もそれに従いまして、24,000人、 32,000人、38,000人というふうに次第に増加しているところでございます。 これがおおよその取り扱っております数でございますが、次に、資料の13〜14ページ の表8、9、10に平成7年の臨床の成績が出ております。その成績をかいつまんで申し ますと、治療周期当たりの妊娠率が17.19%、新鮮胚を用いた場合です。それから、移植 当たりの妊娠率が22.46%。これは、ほぼ5人に1人は妊娠をするという状況でございま すが、ちょっと困った状態としましては、妊娠当たりの流産率が23.76%と高いこと、あ るいは妊娠当たりの多胎率が18%と高いことが気になる成績でございます。多胎の予防 につきましては、後程また会告で出しております内容を御説明申し上げたいと思います それから、新生児の方の安全性はどうか、奇形の発生はどうかということで、これは 先程申しました生殖・内分泌専門委員会の方で集めております。ここにはファイルして おりませんが、国際統計と合わせるために英語で出しておる表でございますが、それに よりますと主要な奇形の発生率、平成6年分の統計では新鮮胚を用いた治療で6例、0.3 %。内容は心奇形が3、多指症2、染色体異常1でございます。それから、凍結胚を用 いた治療で兎唇が1出ております。顕微授精では今のところ奇形はありません。それで 合計いたしますと2,436人の児についての奇形の報告で、7名、0.3%の発生率でございま して、これは大奇形を拾っているということもございますけれども、特に一般の発生率 に比べて高いということはなさそうでございます。 次に、非配偶者間の人工授精について申し上げます。このことにつきましては、1948 年(昭和23年)に慶応義塾大学附属病院で最初に施行されまして、翌1949年に初めての AID児が出生しておりまして、現在まで23年間にわたり主として慶応病院、その他の 病院で行われておりまして、少なくとも1万人以上の出生児が本法により生まれている と推定されております。本邦の精子提供者はボランティアが中心で、慶応大学の医学部 の学生が中心であるとお聞きしておりますが、現在、商業ベースで精子バンクが本邦で も活動を開始しインターネットなどを通じて広告しているということがあるようでござ います。 日本産科婦人科学会ではこのような現状に鑑みまして、本年5月に37ページに記した 非配偶者間人工授精についての会告を示しまして、対象、方法、実施施設、遵守すべき 倫理事項、営利目的での提供を禁止するなどを会員に告知して指導しているところでご ざいます。以上が1番の生殖補助医療技術の現状、安全性、実施施設でございます。 次に1の生殖補助医療技術の2番に移らせていただきます。「生殖補助医療技術の利 用目的・対象者(実施要件)について」でございます。利用目的に関しましては、現在 のところ不妊治療に限定しておりまして、対象者もこの治療法以外で妊娠する可能性が ないと判断される婚姻している夫婦に限り、生殖補助医療技術の適用を認めております しかし、その後の医学技術の進歩によりまして、本技術を不妊治療以外に応用する可能 性、例えば着床前の胚の遺伝子、或るいは性別を検査するというような着床前診断にも この生殖補助医療技術は使うことが出来る訳でありまして、この点につきましては今後 の検討課題と考えております。 それから、3番目は「精子、卵子、受精卵の提供について」でございます。現在学会 としましては、精子については先程申しました非配偶者間人工授精についての会告に従 いまして、その範囲内で認めておりますが、卵子及び受精卵に関しては認めておりませ ん。外国では既にこういうことは行われてるようでございますが、将来の検討事項であ ると考えます。 4番が「代理母について」でございます。現在、日本産科婦人科学会では認めており ません。不妊学会におきましても代理母についてのアンケート調査をされた段階でござ います。 5番目の「商業利用について」、先程申しましたように一部の情報では本邦でも民間 の精子バンクが活動を始めたようだということですが、日本産科婦人科学会としては商 業利用することは認めておりません。 それから、6番目、「多胎・減数手術について」でございます。多胎、特に3胎以上 の多胎の場合にはさまざまな医学的社会的問題をはらんでおりまして、不妊症の治療に 際しては可能な限り3胎以上の多胎を回避するよう努力を行うよう指導をしております 具体的には平成8年に多胎妊娠に関する見解(資料34ページ)を出しまして、体外授精 の際、子宮に戻す移植胚の数を3個以内に限ること、それから排卵誘発の場合にも多胎 が出来やすいのでございますが、その卵巣を刺激するゴナドトロピンの使用量を可能な 限り減らすことを指導しています。使用量が少ないほど多胎が少ないという調査の結果 が出ましたので、そのように指導しております。 それから、減数手術につきましては現在は認めておりません。不妊治療による多胎の 発生とその影響が種々な医学的な問題或るいは社会的な問題を起こすということを考慮 しますと、このことについては出来るだけ早急に検討すべき課題とは考えております。 また、後に日本母性保護産婦人科医会の方からもこの点については御意見があると思い ます。 以上で大きな1の「生殖補助医療技術」の6項目を終わりまして、引き続きまして、 2の「出生前診断技術」の4項目について御説明を申し上げます。 「出生前診断の現状と安全性について」がまず第一でございます。出生前診断につき ましては、簡単に出来る方法としては超音波検査を用いた画像診断で形態的な異常を発 見する方法と、それから2番目には胎児からの材料を基にして検査する方法がございま す。胎児からの材料としましては、羊水穿刺による胎児細胞の採取。あるいは絨毛を採 取して、絨毛は胎児成分でございますので、その診断をすること、或るいは直接胎児の 臍帯を穿刺しまして、胎児血を採取して調べる方法などがございます。これらは既に臨 床応用されているところでございます。 次に新しい技術としまして、先程もちょっと申し述べましたように、体外受精、胚移 植の技術を使いまして、受精卵が4分割、8分割した段階でその割球の1つを取りまし て、伴性遺伝の場合の性の決定、あるいは予測される遺伝子異常の検索などを行う着床 前診断がございます。このことにつきましては、後で少し詳しく述べさせていただくと しまして、現在、羊水診断、絨毛診断、胎児血診断をどの程度行っているかということ でございますが、厚生省心身障害研究胎児診断・治療に関する分担研究班(神保利春班 長)の平成4年度報告によりますと、実施施設数が全国59施設、羊水穿刺による羊水診 断が3,539件、絨毛採取による絨毛診断113件。臍帯穿刺による胎児血診断が461件ござい ました。 羊水穿刺の適用として多いものは35歳以上の高齢妊娠の方が80%、前回染色体異常児 を出産されたお母様が6.9%、前回染色体異常以外の異常児を出生されたお母様が1.7% などが主なものでございまして、その他、転座保因者、遺伝性疾患保因者、またお母様 の不安というようなことも適応になっております。 それから、新しい技術で現在検討中の着床前診断につきましては、参考資料1ページ から3ページに本年5月に本部会の診療研究に関する倫理委員会が出しました着床前診 断を含む審議過程の報告が載せてございます。これはいろいろな医学的、倫理的、社会 的な問題を含んでおりますので、現在この倫理委員会の報告として公開し、各種の学会 或るいは団体、有識者などの方々あるいは会員の方々の御意見を伺って、それのとりま とめ作業を行っている段階でございます。各種の方々の御意見も踏まえながら、出来れ ば近い将来に結論を出したいというふうに考えております。 次は2番目、「出生前診断の意義・目的と適用範囲(許容条件)について」でござい ます。出生前診断の意義・目的は胎児の先天異常についてハイリスクな妊婦が異常児の 再発出産に至るのを回避する、あるいはそういう心配を除去するというのが主な目的で ございまして、本学会では昭和63年に先天異常の胎児診断、特に妊娠初期絨毛検査に関 する見解(資料27ページ)を公表しまして、羊水検査、絨毛検査、胎児鏡、胎児採血、 超音波診断などの出生前診断につきまして、その対象、実施者、実施機関の資格、適応 疾患、実施上の留意点などについて指導を行っているところでございます。 次は第3番目の御質問、先天性異常、遺伝性疾患等と診断された場合の対応について でございます。まず、出生前診断を受けるかどうかも御両親に十分に説明をして選んで いただいた上で、検査結果が出た場合は御両親に告知しまして、その後の処置について はその御両親の判断に委ねております。もしも妊娠の中絶を希望された場合には母体保 護法に従って対応するように指導しているところでございます。 4番目は男女の性別検査についてでございます。これは日本産科婦人科学会は昭和63 年の会告、先程申しました資料27ページの先天異常の胎児診断、特に妊娠初期絨毛検査 に関する見解の中におきまして、伴性劣性遺伝疾患に対する出生前診断の場合を除いて 胎児の性別を両親に告知してはならないとしております。性別の検査を伴性劣性以外の 目的で調べることはいたしておりません。ただ、現在超音波の解像力が非常に上がって まいりまして、外陰部の所見から妊娠中期以降は性別が8割・9割の確率で知ることは 出来るようになっている訳でございます。 大きな3番目の項目は「研究利用のあり方」でございます。ここには3項目ございま して、まず第一は「体外授精に用いなかった受精卵・胚の取り扱い・実験利用につい て」でございます。 体外授精の際に採取卵が多くて、かつ受精卵も非常に多くて、凍結出来る場合には余 剰の胚は凍結をして次回融解して子宮に戻す訳でございますが、そういうふうな設備の ないところではその胚をどのように取り扱っているか、或るいは場合によっては実験に 使っているのではないかということについての御質問かと思います。 日本産科婦人科学会では昭和60年に会告、資料22ページにございますようなヒト精子 卵子、受精卵を取り扱う研究に関する見解を公表いたしました。生殖医学の発展を目的 とした基礎実験あるいは不妊症の診断治療に資するための研究に限りまして、また受精 後2週間以内に限りまして、この受精卵を実験に使用することを認めております。2週 間に限った理由は受精後2週間までは2胚葉期でございまして、3週目に入りますと初 めて原始線条というのが出来まして、3胚葉になる訳でございます。一応、3胚葉と2 胚葉で区切ったというのがここに線を引いた理由のようでございますが、諸外国の成績 でも一応2週間というところに線を引いているようでございます。それまでに限っては 一定の条件下に使用することを認めております。 提供者に対するインフォームド・コンセントを十分にいただくこと。また、その他倫 理的に慎重に実施することを指導しているところでございます。 2番目には「胚の発生実験・移植等の許容範囲について」、あるいは許容される期間 でございますが、これは1と関連いたしまして、胚に関する研究は2週間以内に限ると しております。また、その段階にある胚の場合には凍結保存することを認めております その2の第2項目はいわゆるキメラ、ハイブリッド、クローン等の技術の適用可否に ついてでございます。キメラは2個以上の受精卵、発生卵を接着させて、その混ざり合 ったものでございますし、ハイブリッドというのは同種または異種の細胞融合をして2 つの形質を融合したものでございます。またクローンは遺伝子組成が同一の個体を複数 個つくるという技術でございますが、これらはいずれも基礎並びに臨床研究とも日本産 科婦人科学会では認めておりません。 それから、いわゆるデザイナーベビーについてとありますが、これはちょっとミスプ リントだと思います。「デザインドベービー」です。デザインされた赤ちゃんというこ とで、医学用語ではございません。主にジャーナリズムの用語だそうでございまして、 望ましい形質の子どもを恣意的につくることだそうでございます。主として精子を選別 して、例えばノーベル賞学者の精子とか、オリンピック選手の精子とか、そういうもの を使って卵子と人工授精あるいは体外受精をして、そういう優れた形質の子どもをつく ろうということでありますが、これも商業利用を認めておりませんので、自動的に日本 産科婦人科学会では認めておりません。 それから、この項目の最後は「配偶子(卵子、精子)の取り扱い、特に中絶・流産胎 児の卵子について」ということでございます。学会では昭和60年の会告、資料22ページ にございますヒト精子・卵子・受精卵を取り扱い研究に関する見解を既に公表しており まして、ヒト精子・卵子を研究対象とする場合は施設登録制としております。生殖医学 の発展を目的とした基礎研究、不妊症の診断治療に資する研究に限り提供者に十分なイ ンフォームド・コンセントを行った上で実施すること。また研究終了後の卵子・精子の 処理は研究所の責任において行うこと。その他、実験操作そのものが倫理的に慎重に実 施することを指導しております。 中絶流産胎児の卵子の使用につきましては、先程のヒト精子・卵子の受精卵を取り扱 う研究に関する見解とともに昭和62年に資料26ページにございます死亡した胎児・新生 児の臓器等を研究に用いることの是非や許容範囲についての見解を出しております。そ の中で死体解剖保存法に従って、十分なインフォームド・コンセントの実施と厳重なプ ライバシーの管理の下で、基礎的な研究として行うことを許可しておりますが、研究の 特性と社会的重要性を十分認識するように指導しております。 最後は4番目、「その他」で2項目御質問をいただいております。その1は「個人・ 家族の秘密の保護と情報公開・治療内容の説明と、同意の取得手続き(インフォーム ド・コンセント)等について」でございます。 学会は新規の生殖医療技術の臨床応用の是非を審議する場合、可能な限り広く情報を 公開して、学会員はもとより広く社会一般の御意見も収集して議論を進め、一般の国民 のコンセンサスが得られるような結論を出すよう努力しているところでございます。ま た会員に対しましては、生殖医療に関する治療を行う際には、厳重な個人あるいは家族 の秘密の保護と十分な治療内容の説明と同意の取得手続きを行うよう会告その他の方法 で指導しているところでございます。 その他の2は「国等の関与のあり方について」でございます。生殖医療技術は日進月 歩でございまして、従来の目的である不妊治療から更に進んで遺伝的ハイリスク患者の 診断などの技術も視野に入ってきているところでございます。このような技術を進める にあたりましては、人類の根本的な存在そのもの、あるいは医療のあり方そのものにも 関わるような重大な問題をはらんでいるということもあると思われます。そのような中 から、生殖医療を巡る諸問題の中では学会が、原則としてはその会告等で見解を示し、 自主的に規制をしていくべきだと思いますが、内容によりましては法律による規定が必 要な事項も出てくるかと思います。 例えば、AIDの出生児の法的な保護はどうなのかとか、あるいは減数手術の法的な 裏付けをどうするかとか、そういうようなことがありますし、先般もある大学から胎児 の臓器を臨床応用する、これは先天性免疫不全の患者さんに胎児の胸腺細胞を投与する ということで、お問い合わせがございましたが、このようなことは一学会の倫理委員会 で取り扱える問題ではございません。そのような際には国としていろいろ御協議いただ き、また御指導していただくことが必要になることがあると思います。 大変駆け足でお話を進めましたが、一応、「生殖医療を巡る論点」にお答えする形で 現在の学会の定めております会告との関係あるいは今後の起こってくるべき問題点など をお話しさせていただきました。また後で御質問等で御教示頂きましたら補足させてい ただきたいと思います。どうもありがとうございました。 ○寺田部会長代理 どうもありがとうございました。大変難しい問題、学会の立場をまとめてお話しいた だきました。ここで質問するということもあるんですが、時間の関係がありまして、続 けて専門家の方々にお話をしていただいて、その後にまとめて質問するという形を取り たいと思います。 続きましては、日本母性保護産婦人科医会より、よろしくお願いいたします。 ○日本母性保護産婦人科医会(坂本会長) 担当から後程説明してもらう予定ですが、最初に少しお断わりしておきたいことがご ざいます。我々の会は産婦人科医として入会する場合には日本産科婦人科学会員である ことということになっておりますので、学会と我々の会と産婦人科医に関しては全く オーバーラップをいたします。従って、学問、研究的なもの、或るいはこれからの利用 といったようなことについては、日本産科婦人科学会の会告に全部が従うことになって おります。 ただ、私どもの会は臨床医が主体となって活躍する会で、母体保護法等(勿論日本産 科婦人科学会の方々もその枠内で仕事をしなければなりませんが)、法に関する問題に ついてはどちらかといえば我々の方が具体的に毎日接していますので、そういった問題 に限って提言をさせていただきます。従って、この中では私ども生殖補助医療技術の一 番最後にあります、多胎・減数手術に絞ってお話したいと思います。 ただ今日本産科婦人科学会の方から説明がありました胎児臓器利用の問題は、産婦人 科が直接タッチすべきなのか、すべきでないかはまだインターナショナルにも決定して おりません。世界産婦人科学会(FIGO)ではその倫理委員会で胎児臓器、特に副腎等の 提供の問題等は論じてございます。一部そういうところもあるということだけを申し上 げまして、我々の方の分担の説明を担当にお願いしたいと思います。 ○日本母性保護産婦人科医会(新家常務理事) それでは、多胎妊娠・減数手術(と申しますか減数手術あるいは減胎という言葉を使 っている方もおられますけれども、)について私どもの考え方をお話したいと思います 前回のこの審議会の第2回の資料の中に、厚生省心身障害研究班が調べられました多胎 妊娠と減数手術に関する調査、それから本日の日本産科婦人科学会の出されました36 ページのところに多胎妊娠のいわゆる副作用等、後障害も入っておりますが、データが 出ておりますので、それを参考にされながらお話を聞いていただきたいと思います。 まず、減数手術でございますけれども、大きく分けますと現在は3通りの方法が存在 いたします。1つは胎盤鉗子という鉗子でもって赤ちゃんの一部分を母体外に排出する 方法、それからもう一つは吸引をする方法、そして最後は、薬物等を胎嚢という赤ちゃ んの袋の中に注入する、あるいは外国ですと心臓に直接注入している場合もございます が、一応大きく分類すると3通りあると思います。 しかしながら、一番最初に述べました鉗子の方法は後で流産する率が多いので、最近 の私どもの調べではこの方法は余り用いられておりません。それから、第2番目に吸引 をする方法がございますが、これは一つは経頸管と申しまして、子宮の外子宮口から頸 管を通って中の胎嚢と児芽を吸引する経頸管的な胎芽吸引法と、それからもう一つは経 腟的、腟壁から子宮壁を通りまして子宮の中に至るという2つの方法に分類されると思 います。それで、経頸管的な胎芽吸引法というのは妊娠の非常に早い時期で行いますけ れども、いわゆるおなかの上から超音波で見ておりまして、大体直径8ミリの吸引チ ューブが通過するように子宮の頸管の部分を開きまして、そして頸管に一番近いところ の胎嚢を吸引するという方法でございます。 それから、経腟的というのは先程申しましたように、大体経腟超音波プローブのとこ ろに穿刺針を付けまして、大体これが30センチぐらいの長さでございますが、外径が1.6 ミリぐらいの穿刺針を腟円蓋、子宮の後の腟のところから子宮壁を通しまして、これも やはり最も到達しやすい胎嚢を刺しまして吸引をするという方法でございます。ただ、 この経頸管的な胎芽吸引法は、後で述べますが、かなり流産率が高うございます。吸引 をするのでしたらば経腟的な吸引法ということになります。 しかしながら、現在それよりも流産率が少ないと言われるのが注入法でございまして 古くは空気ですとか生理食塩水を用いた報告もございましたけれども、現在は塩化カリ ウムが主流でこざいまして、その他デメロールといいましてオピスタンの類であります とか、あるいは麻酔剤であります2%のキシロカインを使っているという報告もござい ます。しかしながら、現在の主流はこの塩化カリウムの注入法でございまして、これは 先程申しました腟から子宮壁を通して注入するいわゆる経腟的な方法と、それから、い わゆる17ゲージから22ゲージというかなり太い針をおなかから刺しまして、これも到達 しやすい胎嚢のところに塩化カリウムを注入している訳でございます。 日本の報告は余りございません。前回の資料にありました研究班の資料ぐらいしかご ざいませんので、外国のデータを基にお話をいたしますが、1993年にボーレンという人 が同時に経頸管的な胎芽吸入法と、それからこの塩化カリウムを注入する方法の比較を 行っております。72例の品胎、3胎ですが、それを双胎に減数したときにどうなるかを 見ておりますが、経頸管的な胎芽吸引法は14例中流産が3例、それから残った1児が死 亡した、つまり双胎の1児が死亡したのが4例ございまして、計7例、約50%が減数手 術によってだめになっているという報告がございます。しかしながら、経腟的な塩化カ リウムを注入した場合には19例中流産は0でございまして、残った1児が死亡したのが 2例あるだけ。つまり10.5%という成績があります。 そして、もう一つ対照といたしまして、39例の品胎の例を自然に任せましたところ、 自然に減数されたのが7例、つまり18%が減数をされておりますけれども、残りの32例 はそのまま分娩に至ったという報告がございます。それから、ちょっと古くなって1991 年の報告の中には経頸管的胎芽吸引法の23例中10例、約43%が流産をするのに比べまし て、塩化カリウムを注入した、経腟的な塩化カリウムの注入ですが35例中8例23%が流 産ということで、現在は経腹的あるいは経腟的に塩化カリウムを注入するというのが世 界で一般に行われている方法でございます。 さて、この減数手術に対しまして日本母性保護産婦人科医会は昭和62年ぐらいのとこ ろからこれに対していろいろな意味で反対をしてまいっておりますが、その反対をして きました理由の一つは、母体保護法の中にあります人工妊娠中絶手術の定義、これが御 承知のように胎児及び胎児の付属物を母体外に排出するということ、これが果たしてこ の減数手術の術式に合うかどうかというのが一番の問題点でございまして、御承知のよ うに母体保護法というのは刑法にあります堕胎罪を解除するために合法化された法律で ございますから、当然この手術方法に違反をするということは母体保護法の違反であっ て、これをまず私どもの会員にゴーというサインが出せなかった大きな理由でございま す。 こちらに金城先生がいらっしゃいますけれども、法律家の数人の方が母体保護法とい いますか優性保護法をつくりました当時には考えられなかった手術なのだから、これを 拡大解釈して適用してはどうかという御意見がございまして、私ども非常にありがたい と思ったこともあるのでございますけれども、ただ、やはり数人の先生方の御意見では 私どもの1万4,000いる会員にこの減数手術をやっていいということはなかなか言い切れ なかった訳でございます。 それから、第2番目にありますのが母体保護法の中絶の適用でよいかということでご ざいます。勿論、母体保護法の第14条のところには「身体的又は経済的理由により母体 の健康を著しく害する恐れのあるもの」ということが適用になっておりますので、当然 恐れがあるということであれば、多胎妊娠のごく早期にこの手術を施術するとしても一 応適用にはなるであろうと考えております。しかしながら、これも大分批判を受けまし たが、全部中絶することがよくて、その一部分を減数することが何故悪いかという論議 になってまいりますと、非常にこれは難しい問題になってまいります。ただ、現在この 減数手術が行われていますのは、先程申しましたように、将来母体の健康が害される恐 れがあるということもございますけれども、ほとんどが社会的理由、つまり経済的な理 由で減数手術されているのが現状であろうと思います。 次に我々の医師の倫理ということになる訳でございますが、先程から申し上げており ますように経腹つまりお腹の側、或るいは経腟で一番近いところ、一番やりやすい胎児 を選択していることでございます。この辺が私どものいわゆる生命の選択ということが 医者にあるのかどうか、その辺もひとつ問題でございますし、もう一つはいわゆる多胎 の胎児の生命権はどうなるのだという話になりますと誠に分からなくなってしまう状況 です。つまり、今の状況では一番やりやすい赤ちゃんを選んでいるという事実でござい ます。 それからその次に、日本産科婦人科学会も先程お話がございましたが、排卵誘発剤を 使用する。それから多数の胚を移植した。この結果としての多胎妊娠、つまり医原性の 多胎妊娠が成立をいたしまして、その結果としてこの減数手術が出てきた訳でございま す。つまり、これは妊娠をするために医者側はお金を取り、それからまたその数を減ら すためにまたお金を取る。こういう非常に金銭面での患者さんの負担が増えていること 一方では医者が勝手にやって勝手に金もうけしているというような批判が出てまいりま したので、私どもの会としては、日本産科婦人科学会にお願いいたしまして、多胎妊娠 の発生を極力防ぐということで検討していただきたいということをお願いしてきた訳で ございます。 特に先程も御説明ありましたように、移植する胚が3個以上は禁止だということで、 体外授精に関しましては多胎妊娠はある程度減ってくるということは予想されると思い ますけれども、問題は排卵誘発剤でございまして、これをうまく多胎妊娠を起こさない ような新しい方法というものがどんどん開発されればと思っております。 諸外国の手術の方法を見てみますと、多胎妊娠に対する減数の手術ということは、一 つは妊娠継続期間が明らかに延長をしております。例えば品胎以上の200例の減数手術に 対しまして、それは1993年のデータでございますが、これを全部双胎に減じた場合に181 例が生まれておりますが、その平均分娩週数は35.7週つまりほとんど自然の双胎と変わ らない状況でこざいます。その他流産によって19例、早産によって3例、4例が胎児死 亡ということで200例中181例が減数手術によって双子以下の赤ちゃんが生まれていると いうデータがございます。 それから、胎児の生存率、それもやはり1993年のデータでございますが、3胎を双胎 にした場合の94例の生存率は91.6%でございました。それから4胎を双胎に減らした108 例の中で生存率は92.6%。それから5胎を双胎にいたしますと、これは40例ございます が、72.5%。それから7胎以上は93例ございますけれども、生存率は37.1%。やはり多 胎の数が多ければ多いほど生存率は落ちてきますけれども、5胎以上でこれを比べてみ ますと、5胎以上を品胎にした場合は72.5%の生存率がありますが、5胎を双胎にした 場合には85.7%でありますので、5胎以上の多胎妊娠を双胎にしても品胎にしても、つ まり2児残しても3児を残してもそれほど生存率は変わっていないということがここで 報告されております。 私どもの会では平成7年度厚生科学研究補助金をいただきまして、「諸外国における 生殖技術及び関連する法規制とその運用に関する研究」を行って報告をいたしておりま す。この生殖医療技術、前回のデータの中にもあったと思いますけれども、この減数手 術ということに対して各国で法律化しているところはございません。適用もありません し、手術方法を規定しているところもございません。従いまして、多くの国では人工妊 娠中絶法みたいな法律の適用でこの減数手術を運用していると思われます。 それから、世界の産婦人科学会1990年の見解でございますけれども、この減数手術に 対しては中絶ではないということをまず第1番に言っております。それから第2番目に 重篤な胎児奇形の中絶が認められているところなら、多胎妊娠の中に奇形児があればそ れには適用出来るだろうというふうに述べております。ただし、御承知のように私ども の母体保護法の中には胎児条項はございません。 それから、3番目といたしまして、非常に胎児の数が多い多胎妊娠の場合にはそこに データも出ておりますように母児ともに予後は悪いということは言われます。従って、 この減数手術を用いたとしても、何もしない場合に比べれば否定されることは少ないだ ろうというようなちょっと面白い言い方をしております。 確かに中絶、これはもう妊娠が中絶されてしまう訳ですから中絶と減数手術は全く違 うとは思いますが、先程も言いましたように胎児条項が母体保護法にないということで あれば、この減数手術を行う際に胎児条項は加味しなくてもいいのだという考え方にな ります。つまり残された中に胎児の異常があってもこれはいいんだという解釈に私はな ると思いますし、それから先程も申しましたように、法の拡大解釈あるいは緊急避難、 緊急避難ということはあり得ないと思うんです。これはかなり妊娠の早い時期に将来の 母児のことを予測して減数手術をやっておりますから、しかもこれだけの数が出てくる ということになると少なくとも緊急避難では私はないと思います。しかしながら、実際 にこの減数手術を施行してもいいんだという状況になった場合には、やはりこれは母体 保護法の指定医師が施術をするということになってくるのではないかと思います。そし て、先程の諸外国の例が人工妊娠中絶法の適用をしているのだとすれば、この減数手術 は当然母体保護法の中に入ってきて法的に規制されるべきであろうというふうに私は考 えております。 それで、この審議会の先生方に対する希望或るいは国に対する希望と申し上げた方が いいと思いますけれども、母体保護法中にあります第2条第2項のところにある「(省 略)胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児 及びその附属物を母体外に排出することをいう。」というこの定義を変えていただきた いと思います。先程申しましたように、体外授精の胚を幾ら減らしましても、やはり多 胎妊娠は出てくるのではないかと思います。ですから、これで苦しむお母さんたちのこ とを考えれば、やはりこの手術の定義を変えていいだきたいというのが一つでございま す。 それから、今、私がお話しましたのはデータがあるのはこの日本産科婦人科学会と厚 生省の班研究だけでございまして、みんな外国の文献を引用しております。つまり我が 国におきます減数手術の母体と残された赤ちゃんへの影響ということがまだはっきりし ていないということ、それから塩化カリウムというすごい毒物を使う訳でございますの で、果たして手術が安全なのかという我が国における調査が全くないということを、国 の援助で何とかしていただきたいと思います。 それから、先程申しましたように、適用の問題になりますが、一つはその胎児条項は どうするのだということがそこに入ってまいりますし、手術をやったとすれば何胎以上 のものを適用にするのか。そして、その数を減らすことには何胎にするかということも 決まっておりません。 それからもう一つは、先程も申しましたように、私どもが勝手に胎児を選んでいいの かどうか。果たしてこれが社会的なコンセンサスを得られるのかどうかは非常に疑問で ございます。従いまして、減数手術自体は諸外国の報告では妊娠の継続期間の延長、或 るいは出生児の死亡率の低下、或るいは母体合併症の低下、これらがはっきり認められ ております。しかしながら、多胎妊娠の発生防止の研究、これはもうあくまでも進めて いかなければなりませんし、もう一方では法律でしっかりとした基準が出来た場合には 私どもの会としては減数手術を反対するものではございません。むしろ私どもは母体保 護法の適切な運用を実践する専門団体でございますから、本手術に関しまして、その基 準づくり等に関しては協力をしていきたいと思っております。以上でございます。 ○寺田部会長代理 どうもありがとうございました。続きまして、日本医師会の方からお願いいたします ○日本医師会(香西常任理事) それでは、今回述べさせていただくのは日本医師会では生命倫理懇談会を設置してお りまして、生命倫理に関する問題について検討を行っております。しかしながら、今回 提示された生殖医療に関する倫理については日本医師会中ではまだ十分に論議されてい ないというのが現状であります。従って、今回意見開陳については、役員としての意見 であることを初めにお断わりしておきます。 いずれにしましても、学術専門団体としての日本産科婦人科学会の学術の面からの見 解、産婦人科関連の医療現場の医師の団体である日本母性保護産婦人科医会の見解につ いては、日本医師会とともに3団体で協議した結果もありまして、基本的に日本医師会 としては異論のないところであります。今回、学術並びに医師を総括している団体とし ての日本医師会として、生殖医療に関する倫理問題を中心に意見を述べさせていただき ます。 まず第一に医療側の倫理問題、これは日本医師会としても特に強調してお話をしたい という点でありますが、先端科学技術の限りない発展はその応用によって医療の面でも 大きな影響を及ぼし、医学医療の分野に大きな進歩をもたらしたところは誰もが否定す ることは出来ないところであります。一方、他の分野での科学技術の進歩が必ずしも人 類に幸せをもたらしたとは言えず、結果として多くの不幸をもたらしたことも事実であ ります。医学医療の分野に限らず研究者の立場は常に最先端を走りたい、追求したいと いう心理があることは否定出来ません。これが勿論、科学の進歩をもたらすことになっ たことは事実であります。 しかしながら、他方、国民の誰もが承知しておりますように、放射線の研究に出発し 核の研究進歩が今世紀において大量殺戮兵器の開発に役立ってしまったという事実、ま た石炭・石油等の化石資源の利用が現在多くの議論をなされている環境汚染の原因とな ったという事実、これは何十年も前を考えてみますと、誰もが予測しなかった大きな弊 害を人類にもたらしたということを指摘したいのであります。 このことは、医学・医療の分野でも否定出来ないことであります。従って我々として は生殖医療に限らず、医学研究、医療現場に関わる人たちの倫理学的・社会学的面での 教育の確立、特に大学での医学教育の中に医の倫理、現代社会学の導入を強く提言した いところであります。これがひいては研究者及び臨床現場の関係者の倫理感に定着し、 結果として科学研究に大きく貢献するものであると考えております。 第2に生殖技術についてであります。これは勿論、今、述べました多くの技術の分野 での進歩が貢献していることは事実であると同時に、倫理感が基本的には重要であり、 更に生殖技術の安全性の確保が必須であり重要であると考えております。また、これが 営利の目的とされることがあってはならないものだというふうに考えております。実際 に技術面の問題等については今、講述されました医療団体の見解と相違するところはあ りませんので省略いたします。 第3に遺伝子研究の問題についてであります。遺伝子研究に関しましては、日本産科 婦人科学会の意見をよしとするものでありますけれども、特に研究者の倫理感によると ころが大きいことは、これまた前述したところであり強調しておきたいと思います。こ の点を逸脱したときには社会的に強い批判を浴びることになるだろうことは予測するに 難くありません。 第4に男女の生み分けの問題であります。この問題は既に一般臨床家の間でも画像診 断が著しく進歩した結果、また各臨床家に普及したという結果、男女の性別の判断が非 常に簡単に出来るようになった状態だと判断しております。また、体外授精で男女の選 択も可能となってきています。従って、例えば現行の母体保護法の中で妊娠21周未満の 胎児については画像診断で男であれば生む生まない、女であれば生む生まないといった 選択が可能になったと思っております。こうした男女の生み分けが個人個人の選択では 合法的であるとしても、50年100 年という期間で考えたときに、自然のつくり出した男 女の性比が1:1であることを狂わせることにならないか慎重に考えてみる必要がある と思います。先程申しました核兵器の問題、環境汚染の問題と軌を同じにする問題とい うふうに我々は考えております。従って、こうした点を踏まえて、これは国単位、厚生 省当局の責任において、男女の生み分けによる性比の乱れが生じないかどうか、推計学 的な調査をしてみる必要があるのではないかというふうに我々は考えております。例え ば、まだ子どもを生んでいない人が、子どもを1人だけほしいと思っている、2人欲し いと思っているというときの性別はどういうふうに考えているか。それから第1子を男 もしくは女を生んだ人が第2子はではそれぞれ性別にどちらを生むことを希望している か。3人4人という中で、男女の性別をどういうふうに考えて、男を希望するか女を希 望するかを考えているか、その辺を意識調査をしてみることが必要であるということを 言っている訳であります。 例えば、私も臨床家でありますから、患者さんに聞いてみますと、これは5年程前に 調査してみたのですが、当時、男5に対して女4という性別の希望があったという事実 があります。これは5:4で考えたときには大したことがないと思いがちでありますけ れども、例えば、年間90万人生まれて50万人が男で40万人が女である。これを10年20年 30年という期間で考えてみますと男女の性比が大きく狂ってきまして、これは後世に大 きな批判を浴びると同時に種々の社会問題、道徳問題も含めて大きな問題を生む結果と なると思いますので、医療技術の進歩が人類の男女の性比を狂わす結果にならないかと いうことを憂慮し、こういう提言をしておきたいと思います。以上です。 ○寺田部会長代理 どうもありがとうございました。 それでは、今迄の御説明に対しまして、御質問がありましたらお願いいたします。ま た、説明された方も追加説明ということがございましたら御自由に発言してください。 大体30分ぐらい時間がございます。どうぞ。 ○木村委員 大変詳しく分かりやすい言葉で難しい内容を御説明いただきまして、大変に教えられ たことが多かった訳でございます。 一番最初に青野副会長から資料とともに内容についていろいろ御説明いただいた訳で すが、学会としての組織の面でちょっとお伺いしておきたい、確かめておきたいことが ございます。資料1ページに理事会内委員会というふうにございますが、この診療研究 に関する倫理委員会というのは理事会内の委員会という訳でございますね。それに関連 しまして、お話の中に生殖・内分泌委員会というのがあり、かつ学会の倫理委員会もあ るというようなこともちょっとお伺いしたいんですが、その関係ですね。並びに会告と いうものがどういうシステムで出てくるのか。その会告によれば各年度の会長名と一緒 に会告が出ている訳でございますけれども、報告登録を義務づけている訳ですが、それ に違反したケースが今まであったのか。違反した場合にはどうなるのかということも合 わせて、組織に関連してお伺いしたい。これが第1点でございます。 それから第2点でございますが。 ○寺田部会長代理 ちょっとそこで一旦きって答えを頂いてから質問して頂きます。 ○日本産科婦人科学会(青野副会長) それでは落合幹事長からその組織についてお答えさせていただきます。 ○日本産科婦人科学会(落合幹事長) 日本産科婦人科学会の幹事長をしております落合でございます。今、組織の点につい て御説明させていただきたいと思いますが、まず倫理委員会、これは倫理委員会と略称 はしておりますが、正式には「診療研究に関する倫理委員会」というのが一つあるだけ でございます。これは理事会の下に置かれた委員会でございまして、理事会内委員会と いう性格付けでございますので、理事会のある意味での諮問機関的なものでございます ですから、倫理委員会の報告はすべて理事会に上げ、理事会で最終的に討議され決定さ れるということになっております。 それから、会告がどのような形で出てくるかということでございますが、これは理事 会で審議されたものが最終的には会告として公表されるということになっておりまして 倫理委員会そのもので会告を決めるということではございませんが、一応、ここに書い てございますような見解でございますが、こういったものは倫理委員会でその素案、た たき台をつくりまして、最終的には理事会で検討され、そこで決定されるシステムにな っております。 それから、この会告にあるいは見解に違反した場合どうかということでございますが 現在、今まで学会として明らかに把握しておりますのは、以前に1件、顕微授精という 技術がございますが、顕微授精がまだ審議過程の段階で既に研究が行われているという ことが分かったことがございます。これに関しましては、その担当しておりました実際 の研究者、これは日本産科婦人科学会の会員でございますが、会員とその指導者、教室 の主任教授を学会理事会にお呼びしまして、そこで実際に実態を話していただいて、会 長から注意をしたというようなことがございます。一応会告違反に対して現在行われた のはその1件でございます。 ○寺田部会長 木村委員どうぞ続けてください。 ○木村委員 第2点でございます。大変詳しく説明していただきましてよく分かりましたが、私ど も国民の立場からいいますと、やはり医療技術の専門的な知識を持ち、かつ経験も豊か な御専門の先生方がいろいろな面からきちんとした対応してくださっているかどうかと いうことはいつも問題になる訳でございまして、そういう意味で今日も高い倫理性が要 求されるというようなことで、大変きちんとした対応をしてくださっていることを感銘 を受けた訳ですけれども、この委員会の報告を見ますと、大変活発に委員会を何回かや っておられまして、その他の活動という中で、ここにいらっしゃる金城委員をはじめい ろんな方々にお会いになっているんですが、この日にちを見ますと倫理委員会の開催さ れた日にちは違う日に、大体倫理委員会開催前の段階でやっている訳ですね。というこ とはつまり倫理委員会というのは閉ざされた委員会で、こういういわば学識経験者が入 って何か言えるようなことにはなっていないというふうに見受けられるんですが、それ でいいのでしょうか。 それから、それに関連して、やはり一般の方々を対象にした、公開されたヒアリング みたいなことを日本産科婦人科学会というところではやっているのかどうか。そこら辺 ちょっとお伺いしたいんですが。 ○日本産科婦人科学会(青野副会長) この第1ページ目にございます診療研究に関する倫理委員会報告といいますのは、先 程ちょっと申しましたように着床前診断の審議過程を示すために、まだ最終的に理事会 を通して会告として出る前の段階で、倫理委員会としてここまで審議が進んでいるとい うことを明らかにするために学会誌に発表したものでございます。その条項をつくるに つきましては、有識者の方々をお招きして、いろいろな御意見を伺って、その方々のお 考えも導入しながら条項を一つ一つ審議している訳でございますが、理論的に言えば必 ず倫理委員会が全員集まっては有識者の方々に来ていただいて公開でお話を伺うという のが理想的でありますけれども、先生方の日程とこちらの側の日程とが合わないような 場合には別の機会に御意見を伺って、そのことは次の倫理委員会で報告するというふう な形式で進めているところでございます。 それからもう一つ、一般公開はこれまでしていないんですが、マスコミ関係者との懇 談会を今年度も開いたり、あるいは患者団体との懇談会を開いたりしております。おっ しゃるように国民だれでも参加出来るような公開の討論会はこれまで学会が主催しては 開かれておりません。今まで鹿児島大学が主催で開いたのと、それから今度は出生前・ 着床前診断につきまして大分医科大学で来年1月に開く予定でございます。以上です。 ○寺田部会長代理 どうもありがとうございました。他にどなたか。 ○日本産科婦人科学会(青野副会長) それからもう一つ先程お答えしていなかったのは、倫理委員会と専門委員会の関係で ございます。2つから統計が出ているということを私が最初に説明しましたので、その 御疑問があると思いますが、それも、そこで簡単には説明させていただいたんですが、 診療研究に関する倫理委員会は登録制をしいていまして、登録して、その書式あるいは 内容が規定に合っておれば受け付ける訳です。そして、その施設は学会に登録されまし た。登録しましたら、必ずその年度に1年に1回、そこでの臨床実施成績をこのフォー ムに記入して送ってくださいということをお願いしまして、それは義務的なんです。義 務的といいましても捕捉率は90%程度なんです。100%の方にお出しいただけないんです けれども、そのぐらいの方は何例体外受精関係の手技を実施して、何例が妊娠して、何 例の赤ちゃんが生まれというような報告をいただいております。それは全施設から原則 として承るものですね。 ところが、もう一つの方の学会には専門委員会というのがございまして、これは学術 の進歩のために置かれている専門委員会で、専門委員会に生殖内分泌委員会と腫瘍委員 会と周産期委員会というのがございまして、それぞれ3つの大きな研究の柱ですので、 その中の生殖・内分泌委員会が体外受精の成績をとり上げて、副作用を出来るだけ少な くしようというようなことで、そのためには何例行い何例成功しましたというような データではだめなので、1例ごとについて患者さんの年は何歳で、これまでどんな治療 歴をして、精子がどのくらいで、どこが原因で体外受精に入ってきて、今まで何回治療 していて、今回は何個卵が取れて、そのうちどれぐらい受精して、何個戻して、何個凍 らせてという、全患者について1例ずつのシートに書いていただいて報告していただく システムがある訳です。それは大変な作業ですので、ボランティア方式にしている訳で す。研究に賛同して協力してくださる方だけにしてもらっている訳です。ですから、そ ちらのデータの捕捉率は悪いけれども、1例1例の密度は高い。それは研究に資する。 倫理会の方は粗いデータであるけれども、今、何例どういうことが行われて、どの程度 全体で妊娠したのは何%かということはこちらの方に出てくる訳です。 ○金城委員 では、木村委員の御質問に関連してなんですけれども、例えば体外受精では提供精子 は使わないということですね。会告はそうなっております。ところが現に新聞等の報道 によりますと何例かそういうことがあったということが明らかになっていると思うんで す。ですから、こういう場合には会告違反ということだと思うんですけれども、そうい う例につきましてはどう対処されましたでしょうか。 ○日本産科婦人科学会(落合幹事長) 確かに匿名の形で報道された事実は学会としては把握しておりますけれども、どの機 関かを特定するということがマスコミを通じましても学会としては把握出来ませんでし た。学会として、きちんと産婦人科医療に携っている医師が、勿論日本産科婦人科学会 員であるという可能性が一番高い訳でございますけれども、必ずしもそうでない場合も ございまして、ただ、個人の氏名、個人の施設まで学会として把握することは出来ませ んでしたので、その件については学会として対応はしておりません。 ○金城委員 そうですか。そうすると、例えば先程も、報告、登録ということでやっていらっしゃ るんだけれども、補足率は80〜90ということで、すべて体外受精を行っている人たちの 数も把握していらっしゃらない訳ですね。そういうことで、必ずしも会告に合わないこ とが現実に行われている。最終的にきちっと学会として将来出来るんでしょうか。その 点御確認したいと思うんですが。それで、そのための何らかの手当を取るとか、そうい うことはお考えですか。 ○日本産科婦人科学会(矢嶋会長) おっしゃるとおり、それは大変大きい問題なんです。学術団体には(多分日本産科婦 人科学会だけではないと思うんですが)罰則がないんですね。 ○金城委員 これは会の内部的な申し合わせですから、そういうことになると思うんです。でも、 例えばそういうことがあった場合には除名をするとか、そういう手続きはきちっとある んでしょうか。 ○日本産科婦人科学会(矢嶋会長) そのことについての規定は今のところありません。 ○金城委員 将来はどうですか。その点について。 ○日本産科婦人科学会(矢嶋会長) 私はちょっと難しいのではないかと思うんです、学会の性格として。 ○木村委員 先程のお話ですと、日本産科婦人科学会が日本母性保護産婦人科医会に入る場合の要 件、その学会員であるということが要件であるということは、日本母性保護産婦人科医 会としては、先程会長からお話がございましたように、倫理委員会並びに会告について は一切これを遵守するということになっているかと思うんですが、独自の何か日本母性 保護産婦人科医会としても倫理委員会というのをお持ちで、それは現在活動中なのかど うか。私もこのあいだ関東部会でお招きを受けまして、公開のシンポジウムをやらせて いただいた訳ですけれども、いろんな医学専門外の方々も含めたような形の倫理委員会 というのを、諸外国、特にアメリカ、ヨーロッパでは積極的に導入してやっている。日 本医師会でも生命倫理懇談会というのは医師以外のメンバーが随分入っている訳でござ いますね、哲学者並びに一般学識経験者。そういうようなことで医学会としてもこれか らそういう対応をしなければいけないのではないかと思われる訳ですけれども、日本母 性保護産婦人科医会としては現在の状況と今後の動向についてもし御意見がございまし たら、会長からお話をお伺い出来ればと思うんですが。 ○日本母性保護産婦人科医会(坂元会長) 御意見は全くごもっともだと思います。最近は医学・医療の中で倫理について問題が 提起される場合が非常に増えてきましたので、常置の倫理員会を持つべきなのかもしれ ませんが、日本母性保護産婦人科医会では常置のものは持っていません。理由は、我々 の科は、共通といっていい会員が、主たる目的の差によって、日本産科婦人科学会と日 本母性保護産婦人科医会という二つの法人を作って沢山の業務を分担しあっているので 全会員が遵守するような倫理問題については統一見解を一本化して出すべきだと考えて いるからです。日本母性保護産婦人科医会は一般臨床系の人々が中心なので、個々の医 療問題についての倫理などは、何か起こった場合には日本母性保護産婦人科医会で専門 家と相談しながら会員指導を行うという形で困らなかったというのも、もう一つの理由 です。第三には日本産科婦人科学会と日本母性保護産婦人科医会の連絡会を定期的に持 っているので十分に意見の交流が行われており、必要な場合には合同の委員会結成が容 易だからです。  具体的に日本母性保護産婦人科医会の問題処理の仕方を申し上げます。  第1に、中央産婦人科医療強化委員会につきまして説明いたします。これは、会員の 不当医療行為或いは医師に相応しくない行為などに対して各支部で対応しきれない場合 の相談の受皿として常置されておりますが殆ど開かれることはありません。東北で菊田 医師事件というのがありましたが、宮城県地方部会で除名したとの報告があって初めて 日本産科婦人科学会・日本母性保護産婦人科医会が同様な動きをしたことがあります。 本部の方から先に動くということはなく、必ず支部が責任をとれる様にアドバイスをし ます。  第2に、会長諮問委員会につきまして説明いたします。常置各種委員会で処置しきれ ない共通の問題については、会長が相応しい委員会を全国レベルで依頼し、答申をして もらいます。優生保護法等検討委員会或いは法制検討委員会を組織して、問題点検討の 要望を出すという臨時委員会の形をとります。役員任期一期以内と希望しても、難問題 だとそれ以上になります。現在問題になっている倫理については後者が担当しておりま す。  第3に、各種常置委員会で検討できるものはそのレベルで解決案をつくります。こう して出てきた原案は常務理事会・理事会で議論し、最後に年に一度の代議員会での決議 了承によって日本母性保護産婦人科医会の見解となるのが通例です。急を要するものは 通信理事会に諮って常務理事会でまとめ会長決裁の事後承諾を求めることもあります。 組織が大きいためにどうしても順序立てた検討をしなければなりませんので時間がかか ってしまうことはやむをえません。我々が一番困るのは、組織として個人或いは少数で も法にもとるかもしれないような医療行為に対して示唆はできてもストップはかけられ ないことです。木村先生も何かに書かれていたように、弁護士会とは違って我々はギル ドではありませんので、何の権限もないため、自浄作用についても時間がかかってしま います。法に違反すれば法に縛られて解決できるからいいのですが、違反しているのに 頬かむりをする、法の検討は進めずにニーズがあれば医療行為の方が先に進んでも黙認 することが世間にはあります。例えば減数手術など受精着床学会でシンポジウムを5人 でやったのですが、反対したのは一人の産婦人科医だけで、あと4人はゴーサイン。マ スコミ的には法が悪ければ後で直せばいいので、よく勇気を持ってやったなどといわれ ると統一したコンセンサスが無いまま、この方法は半ば公認の形で残ってしまいます。 難しいのでなかなか俎上にのぼらせるだけの原案すらまとまらないのが現状で、それだ からこそ厚生科学審議会が取り上げられたのだと思います。私はこうした問題は原案を 作って公開討論を行って社会的コンセンサスを待って、現時点での結論を公開すべきだ と思っています。母体保護法担当の厚生省児童家庭局母子保健課もそういう会なら予算 を出してあげるからやって欲しいという意見でした。  偶々御質問があったことに関連した所まで話が拡がってしまいましたが、当事者の心 境も判りますし、いざとなれば母体を救うのに胎児が犠牲になることも臨床ではあり得 るだけに、いい解決を皆で模索したいというのが現状だと申せると思います。 ○寺田部会長代理 どうもありがとうございました。他に御意見はありませんか。 ○柴田委員 最後の日本医師会の説明の中の最後の男女の生み分けで、これから子どもを欲しい人 に厚生省は調査をせよという御提案はよく分かったんですが、ここでもし大体性比が1 :1ならば御意見はいいのではないかという御意見なのか。もし、そこで違った場合に は一体どういうふうな、次のステップとしてはどういうふうなことをお考えになってお られるのか。その辺がもし分かっておられたら。 ○日本医師会(香西常任理事) あくまでも、これは御質問も、私がお答えするのも推測の問題でありますから、実際 に性比が狂うようなことになったら、これは勿論、医療、医学関連者だけでなくて、い ろんな分野の専門家も集まっていただいて、これは人類の将来を考えることになります から勿論検討する必要があります。 それから、仮に調査の結果で1:1の性比がほぼ狂わないだろうという推定がついた とき、ではやっていいではないかということには決してならないのであって、そこにも やはりおのずから倫理的な規制が必要です。私はあくまでも科学の研究というのは正し い意味での自由がないと科学は進歩しませんけれども、倫理的な意味での規制は必要で 法的な規制は反対しますけれども、倫理的な規制は大いに必要だというふうに考えてお ります。 それから、減数手術は我々産婦人科専門家、臨床家を問わず、現在もやはり実施され ておりますように、大いに興味のあることでありますけれども、これは非常に私が医師 であるということを離れたときに、仮に品胎だとしまして、下から順番に仮に1、2、 3と胎児がいましたら、一番下から減数するのがやりやすいからそれでやろうとすると して、仮に一番下にいる子は私は生まれて生きたいんだと。真ん中のもそうだ。一番上 にいる子は私はどうでもいいよと仮に言えるとしたら大変妙な話でありまして、それを もっと法律的・倫理的に考えたときに、従って減数手術を単純に考えて、やりやすいの を1人、間引いてしまえばいいという考え方は性比の問題と離れて大いに問題があると 思います。従って、この問題は大いに倫理の問題が関係するので、科学的な問題とか、 そういう理屈で考えてはいけないと思います。 ○柴田委員 性比が1対1に近いときはそれでよしとはしない。やはり倫理的な、そこの部分のと ころがもうちょっと何か御説明いただければと思うんですが。 ○日本医師会(香西常任理事) 実は残念ながら、先程も冒頭に申し上げたように日本医師会の倫理問題を検討、相談 し合う生命倫理懇談会でこの問題が検討されたことはございませんし、私も役員の一人 として産婦人科医でありますから、その範囲でのお答えしか責任あるお答えは出来ませ んので、そこから先は個人的な見解になりますので差し控えさせていただきます。 ○金城委員 ちょっとこれは範囲を逸脱するかもしれないんですけれども、やはりこういう生殖補 助技術の非商業化ということで学会が、特に日本産科婦人科学会などが精子の売買が始 まったとき大変適切に対応なさったことは私自身高く評価しているんです。ただ、体外 受精につきまして、巷で聞くところによりますと払うお金が患者さんが行った医療機関 によって非常に違う。それも同じ治療であるならばこう違うのはおかしいのではないか というようなことまであるようでございます。 そうすると、やっぱりこういう状況ですと、非商業化ということについては非常に反 対していらっしゃるんだけれど、現実には会員の方々一人一人が違った額をチャージな さるので、これは医者自身が営業化しているのではないかということも考えられるよう な状況なんです。やはり行く患者さんにとってはどこで受けてもほぼ同じような額とい うのが納得出来る額ではないかと思うんです。ですから、そのような点についてどう学 会としてはお考えになっていらっしゃるか。更にこれについて保険の適用などについて は学会はどういう御意見なのかということをちょっと伺っておきたいと思います。 ○日本産科婦人科学会(矢嶋会長) この問題はむしろ日本母性保護産婦人科医会の先生にお答えいただいた方がいいと思 うんですが。 ○日本母性保護産婦人科医会(前原副会長) 私たちもその医療機関によりましてコストが違うということは伺っている訳ですが、 ただ、その医療機関の営業方針というのもありますし、ただ余りコスト的に高いという ところに関しましては、いろいろと各支部の役員を通じまして、いろいろ指導をしてい ることは事実なんです。 それから、保険の問題でございますけれども、この生殖医療、体外受精とかそういう ものに関しましては、療養の給付の扱いになっていないということは御承知のとおりで ございまして、ただ、疾病があって不妊症の場合、その疾病に対しましては療養の給付 になりますけれども、人工授精の技術に対しましては療養の給付になっていないという のが現行の制度でございます。 私たちも会を通じまして、全国モニター制でいろんな調査をしておりますが、そこで この問題に関しましても大分増えてまいりましたので、先程の御報告でも、大体その地 方によってどれぐらいのコストでやられているのかということを調査しようというとこ ろを考えているというのが現状でございます。 ○日本母性保護産婦人科医会(坂元会長) ちょっと追加してようございますか。文部省管轄の国立大学で、体外受精技術に対し て医療費はどの位が適当かという質問を出したところ、20万円位が適当であろうという 返事があったそうです。6年位前の話ですが、どこも公表はしていないので判りません が、年月が経っているし方法もいろいろなので一概に決めかねているのが実状です。日 本母性保護産婦人科医会でも、何とか調べてみようと努力はしているというところでご ざいます。 ○金城委員 これは御参考になるかどうか分からないんですけれども、弁護士会では弁護士費用に つきまして一応の基準がございまして、それをきちっと出して、それを基準にして個々 の依頼者との話し合いで決めるというようなことになっております。 ○寺田部会長代理 あと一人ぐらい時間がありますが、これはちょっと大まかな私の方からの質問です。 ちょっと大きすぎるような質問かも分かりませんけれども、学会としましては、例えば この部分は国がやってほしいとか、そういう御意見がありましたら、例えば国としてガ イドラインを出した方が本当はいいのか、或いは学会の立場から主導して学会としての 規則でいいのか、どういうふうなお考えでしょうか。 ○日本産科婦人科学会(矢嶋会長) 総論としてはガイドライン等はこちらがイニシアティブを取って出して行くべきだと 思います。しかし、学会に罰則がない限り法律的な規制が必要な部分は当然あるんだろ うと考えております。 ○寺田部会長代理 これは漠然とした話ですが重要な問題だと思います。この問題はいろいろな方々の御 意見を聞いてやっていきたいと思います。 ○日本産科婦人科学会(矢嶋会長) 先程日本母性保護産婦人科医会の先生方がお話してくださったもの等は既に法律で規 制しなければいけないものであろうと思います。 ○木村委員 資料39ページには、今、金城委員が言われたような、精子提供は営利目的で行われる べきものではなく、営利目的での精子提供の斡旋または関与または類似供与してはなら ないということになっているんですが、日本でも、私もインターネットで見ましたが、 「エクセレンス」という名前の精子バンクがやっている訳ですね。今後の課題として行 政の方では一体どういうふうに取り組んでいくかというのも今日のテーマに関連して非 常に大事な問題になってくると思うんですが、アメリカの場合もどういうところで妊娠 したか、それは産婦人科としては問わない。ともかく妊娠した人はケアするということ になりますね。それがこれを見ますと、斡旋もしくは関与という場合に、そういう人工 授精の会社でもって受精をする、これはやはり紹介による形で産婦人科医が関わらなけ れば実現しない訳ですので、そういうことについても何か取り決めみたいなのを含めて これは言っているんでしょうか。してはならないというのは、類似行為をしてはならな いというのは、そういうことも視野に入れたことなんですか。つまり、これはどういう ものなのでしょう。 ○日本産科婦人科学会(青野副会長) ここで精子提供あるいは斡旋をしてはいけないということが一つ。もし例えば、ある 御婦人が私はこの精子をアメリカで200万円で買ってきましたから、これで人工授精をし てくださいと言っても、産婦人科医はその人工授精はしてはならない。関与というのは そういうことでございます。 ○木村委員 日本の「エクセレンス」によると、精子提供時15万円、受精した段階で15万円、出生 した段階で15万円と、大分お金を払って、本当にビジネスをやっているんですね。これ はやはりそうやってやっているということは何人かの産婦人科医がもうそれに関与して 恐らくそこの顧問になったりして、診療行為を現実に日本でやっているのではないかと いうことになると思うんですが、学会としては何かそういう情報を持っておりますでし ょうか。 ○日本産科婦人科学会(落合幹事長) 「エクセレンス」という会社が人工授精に関してインターネットで精子提供を募って いるという事実はあるんですけれども、実際にどの程度精子提供があったかとか、そう いったことに関してはその後きちんとした情報が入ってこないのが現状です。日本産科 婦人科学会の会員が仮に提供された精子があったとしても、それを学会員が関与して人 工授精まで結び付けているかどうかということに関して残念ですけれども把握しており ません。その「エクセレンス」の動向というのを風評で聞きますと、必ずしもビジネス としてはうまくいっていないというようなことを聞いております。ですから、最初はイ ンターネットで出したころのインパクトと、その後の状況というのは随分変わってきて いるように感じておりますけれども。 ○寺田部会長代理 どうも本当にありがとうございました。大変貴重なお話をいろいろと聞かせていただ きました。しかし、かなり時間もなくなりましたので、この程度にさせていただきます 説明者の皆様方本当にお忙しいところ貴重なお話をしていただきましてありがとうござ いました。 (関係団体退室) ○寺田部会長代理 それでは事務局、議題2の説明をお願いいたします。公募の件ですね。 ○事務局 資料2につきまして御説明させていただきたいと思います。前回の部会での御議論に おきまして、広く国民の皆様から御意見をちょうだいいたしたいということを申し上げ たところでございますが、その議論等を受けまして、私どもの方で部会長とも相談いた しまして、インターネットに掲載する案として、資料2につきまして、本日提出させて いただいております。 この資料は出来ますればインターネットに掲載して、電子メールをいただくほか、私 どもの記者クラブを通じまして、記者発表いたしまして、そこで文書でも御意見お寄せ いただければ、それもとりまとめさせていただきまして、その結果を随時当部会に報告 させていただきまして、当部会における審議の参考資料として御活用いただきたいとい うふうに考えております。 なお、構成は、意見募集の趣旨、それから当部会で前回とりまとめた論点項目、それ から内外の生殖医療の現状等の資料をまず提示いたしまして、それを踏まえて、論点の 大項目ごと、例えば生殖補助医療技術でありますとか、出生前診断技術でありますとか そういう大項目ごとに意見を求めるようにいたしております。 事務的には、現在インターネット掲載に際しましての技術上の問題等を別途統計情報 部などと調整中でございまして、出来ますれば年内にも掲載をし、意見の募集を始めた いと考えております。 ただ、中身、具体的な意見徴取のあり方等につきまして、いろいろまだ私ども検討し ておりますが、なお委員の先生方からも御意見をお寄せいただきまして、事務局の方に お寄せいただきますれば、それを踏まえて部会長とも相談いたしまして実施していきた いというふうに考えておりますので、別途よろしくお願いいたします。 ○寺田部会長代理 どうもありがとうございました。この意見の公募の件につきまして何か御意見がござ いましたら、後程事務局の方に言っていただければ事務局の方が部会長の先生と相談し てやるということになりますので、よろしくお願いいたします。 それから、その次に事務局もう一つ何かありますか。 ○事務局 前回の部会におきまして御了承いただきました遺伝子治療臨床研究作業委員会、これ は現在、がんに対します遺伝子治療臨床研究計画が東京大学医科学研究所と岡山大学医 学部から出てきております。これにつきましては、事実上継続的なものではございます けれども、前回お認めいただきましたがん遺伝子治療臨床研究作業委員会が11月の5日 これは文部省の該当する同じ組織と合同で開催いたしました。ここでは従来から継続中 でございました岡山大学医学部附属病院において実施いたしたいという遺伝子治療臨床 計画につきまして、従前出しておりました質問事項に対する回答が岡山大学医学部附属 病院から提出されましたので、これについて論点の整理の作業の継続をしていただきま した。 その結果、大部分のものにつきまして、当初120項目程出したのですが、大体きちっと 回答がされてきました。ただ、なお10数項目程確認を要する点があるということで、2 回目の再回答の要請、これを作業委員会の会長のもとでとりまとめた上、岡山大学へ指 示をするということで、現在作業を継続中でございます。適当な回答がまいりましてま とまりますればいずれこの部会に報告を上げたいということでございます。進捗中でご ざいますのでとりあえず口頭だけで報告させていただきます。 ○寺田部会長代理 どうもありがとうございました。ただ今のがん遺伝子治療臨床研究作業委員会の経過 報告につきまして何か御質問ございますでしょうか。 ないようでしたら、この他には案件あるいは議題その他何か今日はございますか。 ○事務局 事務局としては本日用意いたしましたのはこれだけでございます。 ○寺田部会長代理 時間が多少ありますので、他に何かございましたらおっしゃってください。しかし何 も時間まで引っ張るつもりはございませんから安心してください。 ○廣井委員 それでは先程意見募集の件なんですけれども、大体何人ぐらいの人の意見を聞くのか そしてもう既に実施されているのはいっぱいある訳ですね。これからやろうというもの に対しての意見聴取はいいんですけれども、既にやられているものに対しては反対意見 が相当出てきたときに、この委員会としてどう対応するのかということをちょっとお聞 きしたいんですけれども。 ○事務局 この意見の募集につきましては、今回のように専門の先生方からまとめて御意見をい ただく機会は今日お手元にお配りしたものでは一応あと4・5回程度を予定しておりま す。それ以降も必要に応じて開催をするということは可能かと思いますけれども、すべ ての方に御参加いただくということは無理でしょう。出来るだけ広く窓口を開くという 趣旨でインターネットのような開かれた窓口を使う。また、マスコミ等に協力をいただ いて広く意見をいただく。これはあくまでもそういった場を用意するということでござ いまして、何らかの国民投票とかそういった趣旨ではないということで考えております また、第6回、7回といいますか、後段の方の御参加につきまして、いろいろまだ余 裕がありますので、そういったいろんな場で寄せられました意見の中から、保存の上、 例えばこういう陳述に参加いただたく方がその中から出てくる可能性もあるのではない かということで、出来るだけ広く窓口を開くという趣旨でございます。 ○松田委員 時間がないとは思いますけれども、大変私が心配しているのは一般の窓口を開いて意 見を取るというのは、大変美しくてすばらしいことに聞こえるんですけれども、この内 容を見ますと本当に一般の人が理解出来るのか。大変専門的な知識が要求される訳です ね。 そうすると、その要求した知識をきちっと知った人を一般の人と判断していいかどう かという問題が、つまりバイアスがかかる訳ですね。そうなってくると、今、廣井先生 がおっしゃったようにそのデータを予めどのようにするかということを考えておかない と、これはインターネットのデータであるから候補であるというふうに直結されて、こ の会議に持ち込まれたのでは大変私たちとして問題が起こるのではないかというふうに 考えますので、その辺是非いろいろ御配慮の上、行っていただきたいというふうに思い ます。以上です。 ○寺田部会長代理 その危惧は十分ありますので、部会長とも相談してやってください。それから、おっ しゃるように、例えば、これはひどい言い方ですけれども、ある意図を持った人が自分 或いは仲間で何回も同じことを出して、その結果、その人達の意見が全体何%を占めた というようなデータの取り方をしたら、これは大変なことになります。しかし、イン ターネットとかそういう公開の意見を聞く場もできたわけですから、この道具を有効に 使って国民から広く参考意見として出してもらうのはいいことです。国民の方も自分達 の意見がそういうふうな使い方をされているのか意見を出して良かったというふうにな ったら本当にありがたいことだと思います。意見の求め方、その扱い方には大変難しい 点がいろいろとあると思います。 ○事務局 今の御懸念等も十分踏まえましてやっていきたいと思っている訳でございますが、い わば私どもの方は各項目について、例えば賛成が幾らで反対が幾らというような数を集 計したり分析しようということでなくて、一つ一つの意見につきまして、こういう意見 が出てきた。これについてどう考えていくべきなのかというようなことを見ていく。そ の中で、特にこういう意見は重要だ、この意見はやはり無理があるのではないかという ようなことなどを一つ一つ吟味していく。大変な作業になろうかと思うんですけれども そういう意味で、この場における審議の参考資料としてこういう意見もありましたがと いうことを広く紹介したいということでございまして、あくまで、反対が幾らあるから どうだというようなことをやるものではないというふうに考えております。ただ、いろ いろとやはりそういった面がありますので、十分に注意して、きちんとした吟味をした 形が取れますように努力してみたいというふうに考えております。 ○木村委員 関心のある一般の方々はやはりそれなりに相当レベルが高くて、知識水準も高いとい うふうに私は考えております。これは技術的な内容につきましては、今日もお話しいた だきました内容に沿って理解出来る方々が非常に増えているというふうに私は考えてお ります。技術のいわば知識の内容の理解を踏まえた上での人間の生き方、或るいは家族 のあり方、男として女として、あるいは子どもを持つ持ち方の問題ということになりま すと、これは専門家であるとかないとかという問題とはまた違う個人の人生観なり世界 観なりの問題になってくる訳です。従って、私は今までのように専門家がやや高いとこ ろにいて、お前らには分からないだろうと言ってきたような態度は根本的に間違ってい ると考えておりますので、そういう点では、私はやはり正しい情報をきちんと伝えるた めに、開かれた厚生省、開かれた審議会ということを推進していくことが基本的に一番 大事ですし、私たちの使命ではないかというふうに思う訳でございます。 ○寺田部会長代理 先端医療技術評価部会はかなり生命にも関係していますし、国民全体のコンセンサス の上で、ある程度はいかなくてはいけませんが、それと一方では専門家としての意見も 入れながらやっていくので非常に舵取りが難しいと思います。従って、逆に言うと非常 にやりがいのある会議だというふうに私は認識しておりますので、それから、このイン ターネットの設問の仕方も、投票ではないということを国民の皆さんに理解してもらう ようにしておかないと、後から、変ではないかなどど言われないような書き方をしてお かないといけないと思います。どうも今日は本当に長いことありがとうございました。 ○事務局 次回は12月11日木曜日の午後2時、場所は特別第1会議室で開催いたすことになって おります。 それから、お手元に第7回当部会の開催通知をお配りしておりますので、御確認の上 12月5日までに御出欠の方を御返事いただければと思います。 また、第2回当部会の議事録も出来上がりましたのでお配りしておりますので、お持 ち帰りいただけばというふうに考えます。なお、近日中にインターネットの方にも掲載 する予定でございます。 ○寺田部会長代理 どうもありがとうございました。今日はこれで閉会いたします。 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 坂本(内線3804) 電 話 (代表)03−3503−1711 (直通)03−3595−2171