■97/01/20 96/10/18 第8回准看護婦問題調査検討会議事要旨 ※NIFTY-Serve:GO MHWBUL(厚生省行政情報)より  ここには厚生省関連の行政がたくさん掲載されています。  アクセスしてみてください。 第8回准看護婦問題調査検討会議事要旨 ・日時:平成8年10月18日(金)14:00−16:30 ・場所:合同庁舎5号館 26階 共用第9会議室 ・委員の出欠   出席委員…香西委員、金上委員、神尾委員、河崎委員、工藤委員、佐川委員、        佐藤委員、下村委員、高木委員、竹中委員、中島委員、似田貝委員、        羽田委員、秀嶋委員、水巻委員、南委員、望月委員、諸橋委員   欠席委員…清川委員、高梨委員 1 事務局より資料2「養成所への入所要件と奨学金に関わる諸問題について」の説明 2 似田貝委員より資料3「奨学金貸与生徒の職場環境について」の報告  1)診療所では奨学金貸与の准看護婦養成所生徒は、貸与されていない生徒より勤務 時間が長く、病院では奨学金の貸与の生徒の方が勤務時間が少し短い傾向がある 。診療所と病院とでは違いがあることがわかる。  2)診療所では奨学金を貸与されている生徒の方が、貸与されていない生徒より給料 が低い傾向にある。病院では奨学金貸与の有無に関係がない。  3)診療所および病院の両方において、奨学金をもらっている生徒の方が過労状態に あり時間がない等、勤務と学習の両立に無理が生じていることが読み取れる。  4)現在診療所勤務の准看護婦養成所生徒のうち、将来も診療所勤務を希望する生徒 は看護婦資格取得を希望しない生徒が59.0%であり、将来は病院勤務を希望する 生徒では看護婦資格を希望する生徒は90.9%である。診療所志向生徒と病院志向 生徒との間には資格取得希望の明らかな差がある。    現在病院に勤務している准看護婦養成所生徒では、将来は診療所勤務を希望する 人と将来も病院勤務を希望する人との看護婦資格希望は、77.8%と88.3%であま り変わらないが、病院志向のほうがやや高い。現在病院に勤務している生徒は、 できるだけ看護婦資格を希望していることがわかる。    勤務していない准看護婦養成所の生徒では、将来病院勤務を希望する人の98.1% が将来看護婦資格取得を希望するとなっている。診療所勤務希望者では66.7%であ り、この差が何故できるのかは大きな問題になる。 3 意見交換 ○病院や診療所に勤務して給与をもらい、その他に卒後その病院または診療所に勤務 する条件で奨学金をうけていた場合、実際に勤務しないときは、奨学金は返済する ということでは問題はないか。 (労働省)奨学金の貸与契約と労働契約が一体となったような形で管理されるものが 問題である。貸したものに対して返済をするという契約なら問題はない。一括返済 となれば問題となるケースがあるかと思うが、合理的な期間をもうけた上で、分割 返済するような形であれば特に問題はない。 ○国や県の奨学金も一定の勤務をすれば返済しなくてよいという条項があれば、返さ なくてよいのか。 (事務局)奨学金契約の中で何年間勤務した場合には返還を免除するということは問題 ないと考える。 ○奨学金を2年間貸与し、奨学金だけを返済すればいいという場合、2年間勤務すれ ば奨学金の返還義務を免除するとしたとき、2年間という規定は期間的に問題があ るのか。 (労働省)年限での線引きは考えていない。 ○労働基準法第14条、「一定の事業の完了に必要な期間を定めるものの外は、一年を 超える期間について締結してはならない」を具体的に説明してほしい。 (労働省)ほとんどの労働契約は、期間の定めのない労働契約である。期間を定めて労 働契約を締結することは、その期間について使用者、労働者それぞれに仕事をさせ なければならない、あるいは仕事をしなければならないという義務が発生してくる 。途中で労働者側が退職するということになると、義務の不履行という形で、使用 者から損害賠償を求められることもあり得るので、長期にわたり義務を課すことを 避けなければならず、期間の定めのある場合については1年を超えてはならないと 決めている。また、「一定の事業が完了する」とは、一般的には工業的な業種等で 橋を造るなど物事を完成をさせるものであり、通常の事務的労働や病院での労働で は関係があまりない。 ○奨学金と返済の関係について、返済が免除される期間というものは、勤務する義務 があるということではなく、勤めた場合には返済義務が免除されるという意味と考 えていいのか。 (労働省)ある一定期間働けば返済義務が免除されるという形ならば、1年以上の労働 契約が締結されていると見なくてもいい。 ○労働省に3点質問がある。1点は資料2に労働契約不履行で違約金を定めることは 基準法違反とあるが、違約金に近い性格の金銭の支払いが予定されているような契 約は問題となる恐れがあるとも書かれている。違約金という名称を使っているか否 かで違いが出てくるのか。2点目は別紙2について、実際にこのような契約書が取 り交わされ、運用されている場合には基準法違反となるのか。3点目は、これまで 基準法違反で摘発、告発で調査を行ったケースがあるかについて聞きたい。 (労働省)1点目は、それぞれの事案について個別に判断している。違約金と明記され ていれば、一般的には労働基準法違反と思われるが、それ以外にも違反になるもの もたくさん出てくるだろうということで、少し緩い物事の書き方をした。    2点目の資料2は、実態等がわからず労働基準法違反かどうかは断定できないが 、書面上は、違約金を定めたような形のものとして読めると思われる。    3点目は、これまで申し立てに基づき調査をした中で、このようなことがあり是 正させた例もある。また、毎年各事業所を直接臨検し、労働条件上の問題を監督指 導し、発見されたものについても当然是正させている。 ○この誓約書といったものは一般的なことなのか、特別なケースなのか。 ○医師会からの指導も行われたので、現在は一般的なものではないと思う。 ○奨学金の契約については、労働省と厚生省が相談し、模範的なものを作ってもらう のがよいのではないか。 ○この委員会は准看護婦問題、准看制度の存続か廃止かを検討すると言われたので、 ここではそれを議論していただきたい。准看護婦養成所の問題については奨学金、 雇用問題も含めて医師会として指導書なりを作りたいと考えているところである。 4 資料4について事務局の説明 5 意見交換 ○調査結果で、病院と診療所との責任者の発言に差があるのはなぜか、実態に差があ るのか意見を聞きたい。 ○病院と診療所とが要求する看護婦、准看護婦の必要度が違う。医学や看護学等の進 歩に、1500時間の教育では対応できないし、高学歴化の患者にも対応できない。診 療所は、医師の見ている前で業務を行うので、病院で1人で行う看護婦と比べ要求 度が違う。 ○現行の保険制度では看護婦を多数配置したほうが収入上、病院に有利になるので必 要以上に病院と診療所の差が強調されるのではないか。実際に必要な看護婦数や業 務範囲は、実態をよく見極めた上で判断すべき。   准看養成所を廃止するかどうかに限定して議論をするにしても、前提条件がわから ない。保険制度や医療制度などの問題が議論になっているときに、現行法だけで現 在の建て前だけを前提にしても議論になりにくい。将来的な日本の医療制度、看護 制度のビジョンがほしい。いまの看護体制や保険制度では、具体的にどんな看護サ ービスを受けられるのか患者にはわからないのでわかる制度にすべき。これから先 の看護制度がどう変わるのかが、いままでの議論では見えてこないので、非常にも どかしい。 ○有床診療所、50床、100床、150床、200床までの病院と200床以上の病院での准看護 婦の数、准看護婦の占める割合を出してほしい。診療所と病院とにおける准看護婦 の数や需要の差、病院によっては准看護婦は不必要といっていることの分析もして ほしい。  厚生省の平成7年度の医療施設調査病院報告概況の中で、病院関係も平成7年度は 病院数とベッド数は減っているが准看護婦が0.8%増えている。これで結論を出すと いうことではないが、准看護婦に対する需要は社会的な情勢でも変わってくる。今 度の調査で指摘された点は真摯に受け止めている。一事が万事という考えは勘弁願 いたい。また個別の事例や違反事実をもとに准看護婦廃止というのは論理的に飛躍 している。これを踏まえ改革すべき点や内容を議論していただきたい。将来のはっ きりした基本的なビジョンだけを出し改めて看護婦制度について検討すべき。また 、給与や昇進等の問題はどの社会にもあり当然のこと。むしろ優秀な准看護婦には 、看護婦の教育課程を受けさせていく制度を作るほうが大事だ。 ○看護婦採用は給与費も高くなり、病院経営が有利になるとは思えない。病院の看護 の質の向上に看護婦が必要と考えている。医療法上、人員規定が厳しいのは病院な ので、病院と診療所の長の意見が違って来ると思う。 ○准看護婦問題調査検討会は、准看護婦問題をどうするかからできた委員会で、調査 をし論点メモができた。その他に介護保険や訪問看護、老人問題などが相当変わっ てきている。現在の准看護婦制度を残すのか、養成をいまのままで続けていくのか などのもう少し核心に触れた検討をしていったらどうか。 ○第1点は、教育という観点から、経済的な問題等でどうしても受けられない人たち に対しては奨学金制度や定時制を活用し高校教育を受けられるようにすることが大 前提として必要なのではないか。第2点は、看護職は大体高校教育を受けた人がな るので、その中で看護婦と准看護婦というように差別的な二重構造を作らない社会 にすることが必要と思う。第3点は、これまで医療は福祉を肩代わりしてきたので 、いまの生徒もほとんどが医療の道を選んだと思う。今後は福祉の分野が広がるた め、看護婦より福祉が向いているという人が増えてくると思う。21世紀の医療・ 福祉という大きな考え方で、看護職、福祉の分野がどういう形で機能的に分けるか という作業の中で、この問題をとらえる必要がある。 ○日本の医療界は、労働基準法や最低賃金法等法律違反の疑念を抱かせる状況にある ことが、構造改革の中でキーである。この問題をこの機に解決することが大事だ。 ○准看護婦問題は、厚生省の長年の問題で速やかに結論付けることでこの委員会が設 けられた前提を忘れず考えるべき。今の医療の問題のひとつは長期入院をどう短縮 し患者を地域へ帰していくかである。この受け皿として外来や在宅ケアの要になる 診療所や小さい民間の地元の病院の看護レベルが今のままでいいのかを委員会で是 非議論されたい。診療所の看護の質を高くすることで、長く家庭にいられ、良いケ アを受ける基本になる。看護は見えにくいが、看護には看護ができる機能があるの で、生徒も敏感に感じ取っているのではないか。近年、看護婦が診療所に就職して いる割合が高いというデーターは、これからの診療所に期待しているからである。 大手の病院や小さな市町村の病院でも、看護婦の就職口が危うくなっており、中小 の病院や診療所に就職を希望する割合が高くなってくる中で、介護職種のことを考 えると、これからも准看護婦養成をしていいかという問題を決断しなければいけな い時期と思う。 ○診療所の長が要求している准看護婦の性格が、今後も通用する社会になるかは疑問 である。診療所は在宅ケアの1つの拠点になる可能性があり、看護婦は地域でコー ディネートや相談等いろいろな能力を要求され、それに応えられなければならない 。今の准看護婦では対応できない。診療所の長がイメージしている准看護婦の職種 は、准看護婦でなくても介護福祉士や事務の能力がある人でもいいのではないか。 今の診療所の体制を守ることをまずご破算にし、これからの社会に対応するという ことにすれば診療所のイメージも変わっていいのではないか。開業医が労働力を必 要とするなら、ペイをどこかにプールし、奨学金のような形で人材を育てる等、全 く違う機構を考え、准看護婦という職種でなく診療所が必要とする何かの職種を違 う視点で考えてもいいのではないか。 ○教育と勤務の分離やお礼奉公の問題など各委員のコンセンサスが得られている点は これ以上議論する必要がないような気がする。今後准看護婦の養成をどうするかを 議論していただきたいが、その際、看護業務は法律上、診療の補助と療養上の世話 となっているが、時代の変化や技術の進歩で変わっていく。医師の守備範囲は時代 とともに上がるので、看護業務についても同様と考えられる。今の外来の大部分で 行われている診療の補助は、保健婦助産婦看護婦法でいう診療の補助の外側にある と考えてもよいのではないか。療養上の世話も相当部分は保健婦助産婦看護婦法で いう療養上の世話ではなく、高度な部分にシフトすることが必要になってくるので はないだろうか。看護業務をどう考えるかを議論していけば、准看護婦はどういう ことになるのか見えてくるのではないか。 ○論点整理メモ(案)についての意見の中で准看護婦養成所への入学資格を高卒にす べきという意見が多いが、入口を閉ざすよりも、むしろ出口の整備に視点を置くべ き。また、働きながら学ぶ教育システムや奨学金が、調査結果からは批判的な印象 を受けるが、将来的意義をもっと評価すべきであり、適正な運用の整備をする必要 があるのではないか。 ○准看護婦学校に入るときに、准看護婦の資格、医師または看護婦の指示で業務がで きること、給与の違いや昇格制度をはっきり教え、それでも入学するか確認の必要 がある。 ○診療所は介護福祉士や事務の者でもいいという意見は、法律違反を認める議論にな りかねないので別問題である。看護婦制度、准看護婦制度、補助看護婦制度を機能 させてはじめて、医療は充実し患者にとって満足がいくものになるので、看護の中 で役割分担をする必要がある。今の准看制度をそのまま適用することではないので 、名称も変えなければならない。   また、看護婦の雇用が病院経営に得である印象を与えるが、地方の医師会において は現行制度での准看護婦に対する需要は圧倒的に強い。地方は病院でも准看護婦に 依存している度合いは高い。改革するにしても、180度転換は無理があり、地方の現 場は混乱するので、その点を含めて斬新的に改革してほしい。 ○これからの病院の良否は看護の量と質によって決まる。准看護婦の名前は変えても いい、教育内容も変えてもいいではないか。今までの准看護婦は何らかの形で長い 目でできるだけ看護婦にすることでいかがか。 ○医療機関は機能分化を進めるべき。診療所の機能分化を進める際、診療所のビジョ ンが重要と思う。医療体制や看護体制という点からみると、准看護婦が看護婦にな って、今までと同じ准看護婦の業務をするという点で、どういう意味があるか疑問 である。その意味で業務の内容が問題になる。 ○少子・高齢社会看護問題を受けて検討を行っているので、今の准看護婦が行ってい る業務や地方では准看護婦の需要があるといった現時点の問題に目を奪われて論議 をしていくと、同じことの繰り返しになってしまう。将来少子・高齢社会の中で看 護がどんな役割をするのか、准看護婦養成はどうなのかという中心テーマを押さえ た論議を、次の検討会では是非展開してほしい。 ○この委員会では准看護婦制度そのものを議論するのでなく、准看護婦養成の問題に 焦点を当てているということをはっきりさせてほしい。養成停止になっても、向こ う30年ぐらいは准看護婦制度は残る。 ○地方での准看護婦に対する採用希望についてのデーターを出す予定がある。これを 討議の素材にしてほしい。 問い合わせ先 厚生省健康政策局看護課      担 当 田村(内2594) 電 話 (代)03-3503-1711