公的年金の一元化について
■1996/02/07 公的年金の一元化について
※NIFTY-Serve:GO MHWBUL(厚生省行政情報)より
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公的年金の一元化について
1.わが国の年金制度の体系
○ わが国の年金制度は、3階建ての構造
1階=基礎年金・・・・・全国民が加入
2階=被用者年金・・・・民間サラリーマンや公務員などが加入(8制度)
3階=企業年金・・・・・労使の合意により設置
○ 8つの制度に分立している2階部分には、制度間の負担格差等の問題があり、
一元化の推進が課題。
2.一元化懇談会報告の骨子
(1) 一元化の目指すべき方向
○ 制度の分立状態は、産業構造や就業構造の変化に対し脆弱。
○ 制度の分立状態により.制度間の負担の不均衡が発生。
○ 従って、被用者年金制度について、「財政単位の拡大」と「費用負担の平準化
」を目指すべき。
(2) 一元化の目指すべき方向
○ 次のような段階を踏みながら、統一的な枠組みの形成を目指す。
1 第一段階として、民営化・株式会社化している旧三公社共済については、
厚生年金に統合。
2 公務員グループ(国共済、地共済)については、まずグループ内で、財政安定
化の措置を検討。
3 1,2の流れの中で、農林共済、私学共済については、1,2のいずれの位置付
けとするこどが妥当かについて検討。
三共済の厚生年金への統合について(骨子)
1 被用者年金制度の再編成の第一段階として、旧公共企業体共済(JR共済、JT
共済、NTT共済)を、厚生年金に統合する。
旧三共済の年金を既に受給している者については、必要な配慮を行う。
2 統合後の給付のうち、統合前の期間に係る部分については、以下のとおりとす
る。
(1) JR・JT・NTT共済が独立制度として運営していた期間に給付が確定
した部分(積立対応部分)については、必要な額の積立金を移菅(20年の
年賦払いとし、利子を付して移菅。)。
移管すべき積立金の額
JR共済 l兆2,100億円
JT共済 1,l00億円
NTT共済 1兆l,900億円
(2) 物価スライド・再評価といった世代間扶養で賄われてる部分(世代間扶養
部分)については、旧JR、JT加入者の保険料の一部を充当するほか、被
用者年金制度全制度が、負担能力や成熟度を勘案して公平に支え合う。
当面5年間の各制度の支援額(年額)
厚生年金 国共済 地共済 私学共済 農林共済 合計額
1,272億円 25億円 237億円 58億円 8億円 1,600億円
3 実施時期
平成9年4月より実施
三共済の厚生年金への統合について
1 趣旨
○ 被用者年金制度の再編成の第一段階として、既に民営化・株式会社化している
旧公共企業体共済(JR共済、JT共済、NTT共済)を、厚生年金に統合す
る。
(平成9年4月)
○ 統合にともない、旧三共済の組合員を新たに厚生年金の加入者とし、厚生年金
のルールに従って年金を支給する。ただし、既に年金を受給している者について
は必要な配慮を行う。
○ 統合に際しては、厚生年金が過大な負担を負うことのないよう、必要な額の積
立金を移管するとともに、被用者年金全制度が、一定のルールに従って財政支援
を行う。
2 適用
○ 統合後は、共済の組合員を、厚生年金の被保険者として新規に適用。
3 給付
○ 統合後に新たに年金を受給する者(新規裁定者)については、恩給部分等を除
く給付について、厚生年金の方式により裁定し、社会保険庁から支給。
恩給部分等については、三共済の清算法人において別途財源措置を講じ、清算
法人が別個の年金を支給。
○ 統合前から年金を受給していた者(既裁定者)については、一括して社会保険
庁から支給するが、恩給部分等については、三共済の清算法人が費用を負担。
4 保険料
○ 旧JR、JT加入者の保険料率は、厚生年金の保険料率が追いつくまでの間、
据置き、NTTの保険料率は、厚生年金の保険料率にそろえる。
現在の保険料率 8年10月〜 9年4月〜
JR共済 19.59% 20.09% 20.09%
JT共済 19.07% 19.92% 19.92%
NTT共済 16.26% 17.21% 17.35%
厚生年金 16.5 % 17.35% 17.35%
5 JR・JTに係る財源構造
(1) 統合後の期間に係る給付
○ 旧JR・JT共済の組合員も、統合後は厚生年金の加入者となるものであ
り、統合後の期間に係る給付については、厚生年金全体で財政運営。
(2) 統合前の期間に関する給付
1 基本的考え方
(1) JR・JT共済が独立制度として運営していた期間に給付が確定した部分
(積立対応部分)については、必要な額の積立金を移管。JR、JT以外の
他制度の負担としない。
(2) 物価スライド・再評価といった世代間扶養で賄われている部分(世代間扶
養部分)については、旧JR、JT加入者が厚生年金に払う保険料の一部を
充当するほか、一定のルールに従い、被用者年金全制度で公平に支え合う。
(注) NTTの場合は、積立金の移管及び保険料による充当で給付費が賄え
るため、被用者年金全制度による支援措置は必要としない。
* 年金給付の構造
年金額=標準報酬*加入期間*7.5/1000*物価スライド・賃金スライド
(生賃金)
|−−−−−積立対応部分−−−−−| |−−世代間扶養部分−−|
2 積立対応部分
(JR・JT共済が独立制度として運営していた期間に給付が確定した部分)
○ JR・JT共済から厚生年金へ積立金を移管し、各年度の積立対応部分の
給付に充当。
* 積立金
移管すべき積立金 現有積立金(6年度末)
JR共済 1兆2,l00億円 3,416億円
JT共済 1,100億円 805億円
NTT共済 1兆1,900億円 1兆8,432億円
○ 移管すべき積立金については、償還能力等にかんがみ20年の年賦払いと
し毎年利子を付して厚生年金に移管する。
3 世代間扶養部分(物価スライド・再評価の部分)
(1) 旧JR、JT加入者の保険料の一部を充当
(2) 被用者年金全制度による支援
ア 支援額の半分は、負担能力に応じた公平な分担
=> 各制度の賃金総額(標準報酬総額)により按分
イ 残りの半分は、費用負担の平準化の観点による分担
=> 成熟度が低く、負担すべき水準が低い制度がより多く分担
* 当面5年間の各制度支援額(年額)
厚生年金 国共済 地共済 私字共済 農林共済 合計額
l,272億円 25億円 237億円 58億円 8億円 1,600億円
6 NTT共済の職域部分の企業年金化
○ NTT共済の職域部分については、厚生年金基金を設立する方向で労使交渉
中。
○ 共済組合からの移行にともなう特例として、障害年金、遺族年金について
NTT厚生年金基金が給付を行うことができることとする予定。
7 実施時期
○ 現行の制度間調整事業が平成9年3月に期限切れとなること、三共済の加入者
(約47万人)、受給者(約63万人)に関する事務処理のために準備期間が必
要となることから、関係法案を今国会に提出し、平成9年4月より実施。
公的年金制度の一元化について
平成7年7月26日
公的年金制度の一元化に
関する懇談会
はじめに
○ 当懇談会は、昨年2月、公的年金制度に関する関係閣僚会議の申合せに
基づき、公的年金制度の一元化について公的年金各制度を通じて論議し、
関係者の合意形成を図るために設置され、以来13回にわたり議論を重ね
てきた。
○ この間、昨年末に中間的なとりまとめを行い、日本鉄道共済組合に対す
る当面の措置について意見集約を行うとともに、一元化のあり方について
引き続き検討を行い、速やかに結論を得ることとしたところである。
○ 当懇談会では、その後、引き続き中間とりまとめにおいて示した主要な
論点について鋭意検討を進めてきたところであるが、今般、公的年金制度
の一元化についての基本的な考え方をとりまとめたので報告する。
1 一元化の目指すべき方向
○ 特定の産業や職種のみを対象とした制度が分立している状態は、産業
構造や就業構造の変化による影響に対して脆弱であるとともに、負担の
不均衡を生ずることから、公的年金制度の一元化については、次の方向
を目指すべきである。
・ 被用者年金制度については、財政単位を大きくする。
・ 公的年金制度として共通する部分について、費用負担が著しく違わ
ないよう、その平準化を図る。
・ 被保険者数の著しい減少に伴い、既に独立した制度として機能しな
くなっている日本鉄道共済及び日本たばこ産業共済については、被用
者年金制度の再編成の中で必要な措置を講ずる。
2 一元化を進めるに当たっての考え方
○ 財政単位の拡大や、共通部分についての費用負担の平準化という年金
制度の一元化の目指すべき方向に照らして考えると、公平な被用者年金
制度の統一的な枠組みの形成を目指すことが望ましい。
○ しかしながら、一方において、これまで各制度が独立して運営してき
た経緯や各制度の目的や機能、過去の財政運営の努力等についても十分
配慮する必要がある。
○ このため、一元化の目指すべき方向に向けて具体的な措置を実施して
いくに当たっては、被用者年金制度が今後21世紀にかけて成熟化する
段階において漸進的に対応する必要がある。
3 一元化の進め方
(1)被用者年金制度の再編成
○ 上記の基本的考え方を踏まえ、被用者年金制度の再編成を行うべき
であるが、その際、わが国の被用者年金制度の一般的な制度であり、
かつ、最大規模の厚生年金保険制度が中心的な役割を果たすことが期
待される。
○ 被用者年金制度の再編成の第一段階として、既に民営化・株式会社
化している旧公共企業体の共済(日本鉄道共済、日本たばこ産業共済、
日本電信電話共済)については、厚生年金と統合することが妥当であ
る。
○ 特別の法律に基づく法人の職員を対象として厚生年金とは別の制度
となるに至った経緯を持つ私立学校教職員共済・農林漁業団体職員共
済については、被用者年金制度全体の中におけるこれらの制度の位置
付けについて検討する必要がある。
○ 国家公務員等共済・地方公務員共済については、ともに公務員とい
う職域に適用される年金制度であることから、まず、両制度において、
社会保障制度としての在り方及び公務員制度としての在り方を踏まえ
つつ、その財政の安定化のための措置について検討すべきである。
(2)旧公共企業体共済の厚生年金への統合
○ 旧公共企業体共済の厚生年金への統合については、統合後は厚生年
金本体から厚生年金水準相当の給付を支給することとするが、統合前
の期間に関しては、費用負担の平準化を図るという観点を加味しつつ
被用者年金制度全体で支えあうという枠組みを堅持するとともに、世
代間扶養の考え方を基本とする公的年金制度としての支えあいの範囲
を考慮した妥当な水準の積立金を移管することが必要である。
○ なお、統合に際し、一元化の趣旨を踏まえ、現行制度からの適切か
つ円滑な移行に配慮しつつ、以下のような措置を講ずることが適当で
ある。
・ 日本鉄道共済に関する標準報酬の再評価の繰延べ措置については
見直す。
・ 厚生年金より高い保険料率については、従来の経緯を踏まえ、段
階的にその格差の解消を図る。
・ 現に支給されている職域年金部分については企業年金化を図る。
(3)制度の安定化・公平化のための情報公開・検証
○ 以上のような方向での被用者年金制度の再編成は、年金財政の安定
化及び給付・負担の公平化という年金制度の一元化の基本的目標達成
に近づくものと考えられるが、さらに、こうした再編成の効果や制度
の安定性、給付・負担の公平性が確保されているかどうかについて、
常に適切な情報の公開を行うとともに、財政再計算時など適時適切な
機会をとらえ、一元化の基本的目標に照らした検証を行っていくべき
である。
○ そのため、こうした検証を行うに適切な場を設けることについて検
討すべきである。
○ また、年金制度の運営状況に関する情報を、わかりやすい形で国民
に提供していくことは、公的年金制度に対する国民の理解を得ていく
ために有益であると考えられる。
○ なお、こうした情報公開に関連して、共済年金の職域年金部分及び
厚生年金基金の代行相当部分については、それぞれ適切な情報が提供
されるよう検討すべきである。
4 現業業務の一元化の推進
○ 被用者年金制度の分立に伴う現業業務上の問題を改善し、加入者・受
給者サービスの向上を図るため、統一的な番号制の導入等、現業業務に
っいても一元化を推進すべきである。
5 関連する事項
○ 公的年金制度の安定性を確保するためには、公的年金制度の1階部分
に相当する国民年金の基盤を強化していくことが必要であり、国民年金
の未加入者及び未納者の解消に向けて、運営・制度の両面にわたる総合
的な対策について速やかに検討を進める必要がある。
関連して、基礎年金の拠出金の分担のあり方についても検討を行うべ
きである。
また、基礎年金の国庫負担のあり方については、平成6年の「国民年
金法等の一部を改正する法律案」の国会審議において検討規定が附され
たところであり、この規定に基づき適切な検討を行うべきである。
○ 厚生年金基金制度については、これまでの経緯や昨今の厳しい経済環
境等を踏まえ、企業年金としての健全な普及発展を図るための検討を行
う必要がある。
6 おわりに
公的年金制度の一元化については、昭和59年の閣議決定以来の課題で
あり、今般、当懇談会では一元化の基本的な考え方をとりまとめたもので
あるが、政府においては、本報告を踏まえて、速やかに必要な対応策を講
ずることとされたい。
問い合わせ先 厚生省 年金局年金課
担 当 茶谷(内3338)
電 話 (代)3503-1711