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精神保健法(1950.05.01 法律第123号)




第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、精神障害者等の医療及び保護を行い、その社会復帰を促進し、
並びにその発生の予防その他国民の精神的健康の保持及び増進に努めることによ
つて、精神障害者等の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的と
する。
(国及び地方公共団体の義務)
第二条 国及び地方公共団体は、医療施設、社会復帰施設その他の福祉施設及び教育
施設を充実することによつて精神障害者等が社会生活に適応することができるよ
うに努力するとともに、精神保健に関する調査研究の推進及び知識の普及を図る
等精神障害者等の発生の予防その他国民の精神保健の向上のための施策を講じな
ければならない。
(国民の義務)
第二条の二 国民は、精神的健康の保持及び増進に努めるとともに、精神障害者等に
対する理解を深め、及び精神障害者等がその障害を克服し、社会復帰をしようと
する努力に対し、協力するように努めなければならない。
(定義)
第三条 この法律で「精神障害者」とは、精神病者(中毒性精神病者を含む。)、精
神薄弱者及び精神病質者をいう。
第二章 施設
(都道府県立精神病院)
第四条 都道府県は、精神病院を設置しなければならない。但し、第五条の規定によ
る指定病院がある場合においては、その設置を延期することができる。
(指定病院)
第五条 都道府県知事は、国及び都道府県以外の者が設置した精神病院又は精神病院
以外の病院に設けられている精神病室の全部又は一部を、その設置者の同意を得
て、都道府県が設置する精神病院に代る施設(以下「指定病院」という。)とし
て指定することができる。
(国の補助)
第六条 国は、都道府県が設置する精神病院及び精神病院以外の病院に設ける精神病
室の設置及び運営(第三十条の規定による場合を除く。)に要する経費に対し
て、政令の定めるところにより、その二分の一を補助する。
第六条の二 国は、営利を目的としない法人が設置する精神病院及び精神病院以外の
病院に設ける精神病室の設置及び運営に要する経費に対して、政令の定めるとこ
ろにより、その二分の一以内を補助することができる。
(精神保健センター)
第七条 都道府県は、精神保健の向上を図るため、精神保健センターを設置すること
ができる。
(2)精神保健センターは、精神保健に関する知識の普及を図り、精神保健に関す
る調査研究を行い、並びに精神保健に関する相談及び指導のうち複雑又は困難
なものを行う施設とする。
(国の補助)
第八条 国は、都道府県が前条の施設を設置したときは、政令の定めるところによ
り、その設置に要する経費については二分の一、その運営に要する経費について
は三分の一を補助する。
(精神障害者社会復帰施設の設置)
第九条 都道府県は、精神障害者(精神薄弱者を除く。次項及び次条において同
じ。)の社会復帰の促進を図るため、精神障害者社会復帰施設を設置することが
できる。
(2)市町村、社会福祉法人その他の者は、精神障害者の社会復帰の促進を図るた
め、社会福祉事業法(昭和二十六年法律第四十五号)の定めるところにより、
精神障害者社会復帰施設を設置することができる。
(精神障害者社会復帰施設の種類)
第十条 精神障害者社会復帰施設の種類は、次のとおりとする。
一 精神障害者生活訓練施設
二 精神障害者授産施設
(2)精神障害者生活訓練施設は、精神障害のため家庭において日常生活を営むの
に支障がある精神障害者が日常生活に適応することができるように、低額な料
金で、居室その他の設備を利用させ、必要な訓練及び指導を行うことにより、
その者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設とする。
(3)精神障害者授産施設は、雇用されることが困難な精神障害者が自活すること
ができるように、低額な料金で、必要な訓練を行い、及び職業を与えることに
より、その者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設とする。
(国又は都道府県の補助)
第十条の二 都道府県は、精神障害者社会復帰施設の設置者に対し、その設置及び運
営に要する費用の一部を補助することができる。
(2)国は、予算の範囲内において、都道府県に対し、その設置する精神障害者社
会復帰施設の設置及び運営に要する費用並びに前項の規定による補助に要した
費用の一部を補助することができる。
(指定の取消し)
第十一条 都道府県知事は、指定病院の運営方法がその目的遂行のために不適当であ
ると認めたときは、その指定を取り消すことができる。
(2)都道府県知事は、前項の規定によりその指定を取り消そうとするときは、あ
らかじめ、指定病院の設置者にその取消しの理由を通知し、弁明及び有利な証
拠の提出の機会を与えるとともに、地方精神保健審議会の意見を聴かなければ
ならない。
(政令への委任)
第十二条 この法律に定めるもののほか、都道府県の設置する精神病院及び精神保健
センターに関して必要な事項は、政令で定める。
第三章 地方精神保健審議会及び精神医療審査会
(地方精神保健審議会)
第十三条 精神保健に関する事項を調査審議させるため、都道府県に地方精神保健審
議会を置く。
(2)地方精神保健審議会は、都道府県知事の諮問に答えるほか、精神保健に関す
る事項に関して都道府県知事に意見を具申することができる。
(3)地方精神保健審議会は、前二項に定めるもののほか、都道府県知事の諮問に
応じ、第三十二条第三項の申請に関する必要な事項を審議するものとする。
(委員及び臨時委員)
第十四条 地方精神保健審議会の委員は、十五人以内とする。
(2)特別の事項を調査審議するため必要があるときは、地方精神保健審議会に臨
時委員を置くことができる。
(3)委員及び臨時委員は、精神保健に関し学識経験のある者及び精神障害者の医
療に関する事業に従事する者のうちから、都道府県知事が任命する。
(4)委員の任期は、三年とする。
(削除)
第十五条 削除
(削除)
第十六条 削除
(条例への委任)
第十七条 地方精神保健審議会の運営に関し必要な事項は、条例で定める。
(精神医療審査会)
第十七条の二 第三十八条の三第二項及び第三十八条の五第二項の規定による審査を
行わせるため、都道府県に、精神医療審査会を置く。
(委員)
第十七条の三 精神医療審査会の委員は、五人以上十五人以内とする。
(2)委員は、精神障害者の医療に関し学識経験を有する者(第十八条第一項に規
定する精神保健指定医である者に限る。)、法律に関し学識経験を有する者及
びその他の学識経験を有する者のうちから、都道府県知事が任命する。
(3)委員の任期は、二年とする。
(審査の案件の取扱い)
第十七条の四 精神医療審査会は、精神障害者の医療に関し学識経験を有する者のう
ちから任命された委員三人、法律に関し学識経験を有する者のうちから任命され
た委員一人及びその他の学識経験を有する者のうちから任命された委員一人をも
つて構成する合議体で、審査の案件を取り扱う。
(2)合議体を構成する委員は、精神医療審査会がこれを定める。
(政令への委任)
第十七条の五 この法律で定めるもののほか、精神医療審査会に関し必要な事項は、
政令で定める。
第四章 精神保健指定医
(精神保健指定医)
第十八条 厚生大臣は、その申請に基づき、次に該当する医師のうち第十九条の四に
規定する職務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認められる者を、精神保
健指定医(以下「指定医」という。)に指定する。
一 五年以上診断又は治療に従事した経験を有すること。
二 三年以上精神障害の診断又は治療に従事した経験を有すること。
三 厚生大臣が定める精神障害につき厚生大臣が定める程度の診断又は治療に従
事した経験を有すること。
四 厚生大臣又はその指定する者が厚生省令で定めるところにより行う研修(申
請前一年以内に行われたものに限る。)の課程を修了していること。
(2)厚生大臣は、前項の規定にかかわらず、第十九条の二第一項又は第二項の規
定により指定医の指定を取り消された後五年を経過していない者その他指定医
として著しく不適当と認められる者については、前項の指定をしないことがで
きる。
(3)厚生大臣は、第一項第三号に規定する精神障害及びその診断又は治療に従事
した経験の程度を定めようとするとき、同項の規定により指定医の指定をしよ
うとするとき又は前項の規定により指定医の指定をしないものとするときは、
あらかじめ、公衆衛生審議会の意見を聴かなければならない。
(指定後の研修)
第十九条 指定医は、五年ごとに、厚生大臣又はその指定する者が厚生省令で定める
ところにより行う研修を受けなければならない。
(指定の取消し)
第十九条の二 指定医がその医師免許を取り消され、又は期間を定めて医業の停止を
命ぜられたときは、厚生大臣は、その指定を取り消さなければならない。
(2)指定医がこの法律若しくはこの法律に基づく命令に違反したとき又はその職
務に関し著しく不当な行為を行つたときその他指定医として著しく不適当と認
められるときは、厚生大臣は、その指定を取り消すことができる。
(3)厚生大臣は、前項の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ、そ
の相手方にその処分の理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与え
るとともに、公衆衛生審議会の意見を聴かなければならない。
(手数料)
第十九条の三 第十八条第一項第四号又は第十九条の研修(厚生大臣が行うものに限
る。)を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める金額の手数料を納付
しなければならない。
(職務)
第十九条の四 指定医は、第二十二条の三第三項及び第二十九条の五の規定により入
院を継続する必要があるかどうかの判定、第三十三条第一項及び第三十三条の四
第一項の規定による入院を必要とするかどうかの判定、第三十四条の規定により
精神障害者の疑いがあるかどうか及びその診断に相当の時日を要するかどうかの
判定、第三十六条第三項に規定する行動の制限を必要とするかどうかの判定、第
三十八条の二第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)に規定する報
告事項に係る入院中の者の診察並びに第四十条の規定により一時退院させて経過
を見ることが適当かどうかの判定の職務を行う。
(2)指定医は、前項に規定する職務のほか、公務員として、次に掲げる職務のう
ち都道府県知事(第三号及び第四号に掲げる職務にあつては、厚生大臣又は都
道府県知事)が指定したものを行う。
一 第二十九条第一項及び第二十九条の二第一項の規定による入院を必要とする
かどうかの判定
二 第二十九条の四第二項の規定により入院を継続する必要があるかどうかの判

三 第三十八条の六第一項の規定による立入検査、質問及び診察
四 第三十八条の七第二項の規定により入院を継続する必要があるかどうかの判

(政令及び省令への委任)
第十九条の五 この法律に規定するもののほか、指定医の指定の申請に関して必要な
事項は政令で、第十八条第一項第四号及び第十九条の規定による研修に関して必
要な事項は厚生省令で定める。
第五章 医療及び保護
(保護義務者)
第二十条 精神障害者については、その後見人、配偶者、親権を行う者及び扶養義務
者が保護義務者となる。但し、左の各号の一に該当する者は保護義務者とならな
い。
一 行方の知れない者
二 当該精神障害者に対して訴訟をしている者、又はした者並びにその配偶者及
び直系血族
三 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人又は保佐人
四 破産者
五 禁治産者及び準禁治産者
六 未成年者
(2)保護義務者が数人ある場合において、その義務を行うべき順位は、左の通り
とする。但し、本人の保護のため特に必要があると認める場合には、後見人以
外の者について家庭裁判所は利害関係人の申立によりその順位を変更すること
ができる。
一 後見人
二 配偶者
三 親権を行う者
四 前二号の者以外の扶養義務者のうちから家庭裁判所が選任した者
(3)前項但書の規定による順位の変更及び同項第四号の規定による選任は家事審
判法(昭和二十二年法律第百五十二号)の適用については、同法第九条第一項
甲類に掲げる事項とみなす。
第二十一条 前条第二項各号の保護義務者がないとき又はこれらの保護義務者がその
義務を行うことができないときはその精神障害者の居住地を管轄する市町村長
(特別区の長を含む。以下同じ。)、居住地がないか又は明らかでないときはそ
の精神障害者の現在地を管轄する市町村長が保護義務者となる。
第二十二条 保護義務者は、精神障害者に治療を受けさせるとともに、精神障害者が
自身を傷つけ又は他人に害を及ぼさないように監督し、且つ、精神障害者の財産
上の利益を保護しなければならない。
(2)保護義務者は、精神障害者の診断が正しく行われるよう医師に協力しなけれ
ばならない。
(3)保護義務者は、精神障害者に医療を受けさせるに当つては、医師の指示に従
わなければならない。
(任意入院)
第二十二条の二 精神病院(精神病院以外の病院で精神病室が設けられているものを
含む。以下同じ。)の管理者は、精神障害者を入院させる場合においては、本人
の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない。
第二十二条の三 精神障害者が自ら入院する場合においては、精神病院の管理者は、
その入院に際し、当該精神障害者に対して第三十八条の四の規定による退院等の
請求に関することその他厚生省令で定める事項を書面で知らせ、当該精神障害者
から自ら入院する旨を記載した書面を受けなければならない。
(2)精神病院の管理者は、自ら入院した精神障害者(以下この条において「任意
入院者」という。)から退院の申出があつた場合においては、その者を退院さ
せなければならない。
(3)前項に規定する場合において、精神病院の管理者は、指定医による診察の結
果、当該任意入院者の医療及び保護のため入院を継続する必要があると認めた
ときは、同項の規定にかかわらず、七十二時間を限り、その者を退院させない
ことができる。この場合において、当該指定医は、遅滞なく、厚生省令で定め
る事項を診療録に記載しなければならない。
(4)精神病院の管理者は、前項の規定による措置を採る場合においては、当該任
意入院者に対し、当該措置を採る旨、第三十八条の四の規定による退院等の請
求に関することその他厚生省令で定める事項を書面で知らせなければならな
い。
(診察及び保護の申請)
第二十三条 精神障害者又はその疑いのある者を知つた者は、誰でも、その者につい
て指定医の診察及び必要な保護を都道府県知事に申請することができる。
(2)前項の申請をするには、左の事項を記載した申請書をもよりの保健所長を経
て都道府県知事に提出しなければならない。
一 申請者の住所、氏名及び生年月日
二 本人の現在場所、居住地、氏名、性別及び生年月日
三 症状の概要
四 現に本人の保護の任に当つている者があるときはその者の住所及び氏名
(警察官の通報)
第二十四条 警察官は、職務を執行するに当たり、異常な挙動その他周囲の事情から
判断して、精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると
認められる者を発見したときは、直ちに、その旨を、もよりの保健所長を経て都
道府県知事に通報しなければならない。
(検察官の通報)
第二十五条 検察官は、精神障害者又はその疑いのある被疑者又は被告人について、
不起訴処分をしたとき、裁判(懲役、禁こ(、)又は拘留の刑を言い渡し執行猶
予の言渡をしない裁判を除く。)が確定したとき、その他特に必要があると認め
たときは、すみやかに、その旨を都道府県知事に通報しなければならない。
(保護観察所の長の通報)
第二十五条の二 保護観察所の長は、保護観察に付されている者が精神障害者又はそ
の疑いのある者であることを知つたときは、すみやかに、その旨を都道府県知事
に通報しなければならない。
(矯正施設の長の通報)
第二十六条 矯正施設(拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院、少年鑑別所及び婦人
補導院をいう。以下同じ。)の長は、精神障害者又はその疑のある収容者を釈
放、退院又は退所させようとするときは、あらかじめ、左の事項を本人の帰住地
(帰住地がない場合は当該矯正施設の所在地)の都道府県知事に通報しなければ
ならない。
一 本人の帰住地、氏名、性別及び生年月日
二 症状の概要
三 釈放、退院又は退所の年月日
四 引取人の住所及び氏名
(精神病院の管理者の届出)
第二十六条の二 精神病院の管理者は、入院中の精神障害者であつて、第二十九条第
一項の要件に該当すると認められるものから退院の申出があつたときは、直ち
に、その旨を、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に届け出なければならな
い。
(申請等に基づき行われる指定医の診察等)
第二十七条 都道府県知事は、第二十三条から前条までの規定による申請、通報又は
届出のあつた者について調査の上必要があると認めるときは、その指定する指定
医をして診察をさせなければならない。
(2)都道府県知事は、入院させなければ精神障害のために自身を傷つけ又は他人
に害を及ぼすおそれがあることが明らかである者については、第二十三条から
前条までの規定による申請、通報又は届出がない場合においても、その指定す
る指定医をして診察をさせることができる。
(3)都道府県知事は、前二項の規定により診察をさせる場合には、当該職員を立
ち会わせなければならない。
(4)指定医及び前項の当該職員は、前三項の職務を行うに当たつて必要な限度に
おいてその者の居住する場所へ立ち入ることができる。
(5)前項の規定によつてその者の居住する場所へ立ち入る場合には、指定医及び
当該職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があるときはこれを
提示しなければならない。
(6)第四項の立入の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはなら
ない。
(診察の通知)
第二十八条 都道府県知事は、前条第一項の規定により診察をさせるに当つて現に本
人の保護の任に当つている者がある場合には、あらかじめ、診察の日時及び場所
をその者に通知しなければならない。
(2)後見人、親権を行う者、配偶者その他現に本人の保護の任に当つている者
は、前条第一項の診察に立ち会うことができる。
(判定の基準)
第二十八条の二 第二十七条第一項又は第二項の規定により診察をした指定医は、厚
生大臣の定める基準に従い、当該診察をした者が精神障害者であり、かつ、医療
及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人
に害を及ぼすおそれがあるかどうかの判定を行わなければならない。
(2)厚生大臣は、前項の基準を定めようとするときは、あらかじめ、公衆衛生審
議会の意見を聴かなければならない。
(都道府県知事による入院措置)
第二十九条 都道府県知事は、第二十七条の規定による診察の結果、その診察を受け
た者が精神障害者であり、且つ、医療及び保護のために入院させなければその精
神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたとき
は、その者を国若しくは都道府県の設置した精神病院又は指定病院に入院させる
ことができる。
(2)前項の場合において都道府県知事がその者を入院させるには、その指定する
二人以上の指定医の診察を経て、その者が精神障害者であり、かつ、医療及び
保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に
害を及ぼすおそれがあると認めることについて、各指定医の診察の結果が一致
した場合でなければならない。
(3)都道府県知事は、第一項の規定による措置を採る場合においては、当該精神
障害者に対し、当該入院措置を採る旨、第三十八条の四の規定による退院等の
請求に関することその他厚生省令で定める事項を書面で知らせなければならな
い。
(4)国又は都道府県の設置した精神病院及び指定病院の管理者は、病床(病院の
一部について第五条の指定を受けている指定病院にあつてはその指定に係る病
床)に既に第一項又は次条第一項の規定により入院をさせた者がいるため余裕
がない場合のほかは、第一項の精神障害者を収容しなければならない。
(5)この法律施行の際、現に精神病院法(大正八年法律第二十五号)第二条の規
定によつて入院中の者は、第一項の規定によつて入院したものとみなす。
第二十九条の二 都道府県知事は、前条第一項の要件に該当すると認められる精神障
害者又はその疑いのある者について、急速を要し、第二十七条、第二十八条及び
前条の規定による手続を採ることができない場合において、その指定する指定医
をして診察をさせた結果、その者が精神障害者であり、かつ、直ちに入院させな
ければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人を害するおそが著しいと認め
たときは、その者を前条第一項に規定する精神病院又は指定病院に入院させるこ
とができる。
(2)都道府県知事は、前項の措置をとつたときは、すみやかに、その者につき、
前条第一項の規定による入院措置をとるかどうかを決定しなければならない。
(3)第一項の規定による入院の期間は、七十二時間を超えることができない。
(4)第二十七条第四項から第六項まで及び第二十八条の二の規定は第一項の規定
による診察について、前条第三項の規定は第一項の規定による措置を採る場合
について、同条第四項の規定は第一項の規定により入院する者の収容について
準用する。
第二十九条の三 第二十九条第一項に規定する精神病院又は指定病院の管理者は、前
条第一項の規定により入院した者について、都道府県知事から、第二十九条第一
項の規定による入院措置をとらない旨の通知を受けたとき、又は前条第三項の期
間内に第二十九条第一項の規定による入院措置をとる旨の通知がないときは、直
ちに、その者を退院させなければならない。
(入院措置の解除)
第二十九条の四 都道府県知事は、第二十九条第一項の規定により入院した者(以下
「措置入院者」という。)が、入院を継続しなくてもその精神障害のために自身
を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがないと認められるに至つたときは、直ち
に、その者を退院させなければならない。この場合においては、都道府県知事
は、あらかじめ、その者を収容している精神病院又は指定病院の管理者の意見を
聞くものとする。
(2)前項の場合において都道府県知事がその者を退院させるには、その者が入院
を継続しなくてもその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすお
それがないと認められることについて、その指定する指定医による診察の結果
又は次条の規定による診察の結果に基づく場合でなければならない。
第二十九条の五 措置入院者を収容している精神病院又は指定病院の管理者は、指定
医による診察の結果、措置入院者が、入院を継続しなくてもその精神障害のため
に自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがないと認められるに至つたとき
は、直ちに、その旨、その者の症状その他厚生省令で定める事項を最寄りの保健
所長を経て都道府県知事に届け出なければならない。
(入院措置の場合の診療方針及び医療に要する費用の額)
第二十九条の六 第二十九条第一項及び第二十九条の二第一項の規定により入院する
者について国若しくは都道府県の設置した精神病院又は指定病院が行なう医療に
関する診療方針及びその医療に要する費用の額の算定方法は、健康保険の診療方
針及び療養に要する費用の額の算定方法の例による。
(2)前項に規定する診療方針及び療養に要する費用の額の算定方法の例によるこ
とができないとき、及びこれによることを適当としないときの診療方針及び医
療に要する費用の額の算定方法は、厚生大臣が公衆衛生審議会の意見を聴いて
定めるところによる。
(社会保険診療報酬支払基金への事務の委託)
第二十九条の七 都道府県は、第二十九条第一項及び第二十九条の二第一項の規定に
より入院する者について国若しくは都道府県の設置した精神病院又は指定病院が
行なつた医療が前条に規定する診療方針に適合するかどうかについての審査及び
その医療に要する費用の額の算定並びに国又は指定病院の設置者に対する診療報
酬の支払に関する事務を社会保険診療報酬支払基金に委託することができる。
(費用の支弁及び負担)
第三十条 第二十九条第一項及び第二十九条の二第一項の規定により都道府県知事が
入院させた精神障害者の入院に要する費用は、都道府県の支弁とする。
(2)国は、前項の規定により都道府県が支弁した経費に対し、政令の定めるとこ
ろにより、その四分の三を負担する。
(費用の徴収)
第三十一条 都道府県知事は、第二十九条第一項及び第二十九条の二第一項の規定に
より入院させた精神障害者又はその扶養義務者が入院に要する費用を負担するこ
とができると認めたときは、その費用の全部又は一部を徴収することができる。
(一般患者に対する医療)
第三十二条 都道府県は、精神障害の適正な医療を普及するため、精神障害者が健康
保険法(大正十一年法律第七十号)第四十三条第三項各号に掲げる病院若しくは
診療所又は薬局その他政令で定める病院若しくは診療所又は薬局(その開設者
が、診療報酬の請求及び支払に関し次条に規定する方式によらない旨を都道府県
知事に申し出たものを除く。)で病院又は診療所へ収容しないで行なわれる精神
障害の医療を受ける場合において、その医療に必要な費用の二分の一を負担する
ことができる。
(2)前項の医療に必要な費用の額は、健康保険の療養に要する費用の額の算定方
法の例によつて算定する。
(3)第一項の規定による費用の負担は、当該精神障害者又はその保護義務者の申
請によつて行なうものとし、その申請は、精神障害者の居住地を管轄する保健
所長を経て、都道府県知事に対してしなければならない。
(4)都道府県知事は、前項の申請に対して決定をするには、地方精神保健審議会
の意見を聴かなければならない。
(5)第三項の申請があつてから六月を経過したときは、当該申請に基づく費用の
負担は、打ち切られるものとする。
(6)戦傷病者特別援護法(昭和三十八年法律第百六十八号)の規定によつて医療
を受けることができる者については、第一項の規定は、適用しない。
(費用の請求、審査及び支払)
第三十二条の二 前条第一項の病院若しくは診療所又は薬局は、同項の規定により都
道府県が負担する費用を、都道府県に請求するものとする。
(2)都道府県は、前項の費用を当該病院若しくは診療所又は薬局に支払わなけれ
ばならない。
(3)都道府県は、第一項の請求についての審査及び前項の費用の支払に関する事
務を、社会保険診療報酬支払基金その他政令で定める者に委託することができ
る。
(費用の支弁及び負担)
第三十二条の三 国は、都道府県が第三十二条第一項の規定により負担する費用を支
弁したときは、当該都道府県に対し、政令で定めるところにより、その二分の一
を補助する。
(他の法律による医療に関する給付との調整)
第三十二条の四 第三十二条第一項の規定により費用の負担を受ける精神障害者が、
健康保険法、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)、船員保険法
(昭和十四年法律第七十三号)、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五
十号)、国家公務員等共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)、地方公務
員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)又は私立学校教職員共済組合
法(昭和二十八年法律第二百四十五号)の規定による被保険者、労働者、組合員
又は被扶養者である場合においては、保険者若しくは共済組合又は市町村(特別
区を含む。)は、これらの法律又は老人保健法(昭和五十七年法律第八十号)の
規定によつてすべき給付のうち、その医療に要する費用の二分の一を超える部分
については、給付をすることを要しない。
(2)第三十二条第一項の規定により費用の負担を受ける精神障害者が、生活保護
法(昭和二十五年法律第百四十四号)の規定による医療扶助を受けることがで
きる者であるときは、その医療に要する費用は、都道府県が同項の規定により
その二分の一を負担し、その残部につき同法の適用があるものとする。
(医療保護入院)
第三十三条 精神病院の管理者は、指定医による診察の結果、精神障害者であり、か
つ、医療及び保護のため入院の必要があると認めた者につき、保護義務者の同意
があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。
(2)精神病院の管理者は、前項に規定する者の保護義務者について第二十条第二
項第四号の規定による家庭裁判所の選任を要し、かつ、当該選任がされていな
い場合において、その者の扶養義務者の同意があるときは、本人の同意がなく
ても、当該選任がされるまでの間、四週間を限り、その者を入院させることが
できる。
(3)前項の規定による入院が行われている間は、同項の同意をした扶養義務者
は、第二十条第二項第四号に掲げる者に該当するものとみなし、第一項の規定
を適用する場合を除き、同条に規定する保護義務者とみなす。
(4)精神病院の管理者は、第一項又は第二項の規定による措置を採つたときは、
十日以内に、その者の症状その他厚生省令で定める事項を当該入院について同
意をした者の同意書を添え、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に届け出な
ければならない。
第三十三条の二 精神病院の管理者は、前条第一項の規定により入院した者(以下
「医療保護入院者」という。)を退院させたときは、十日以内に、その旨及び厚
生省令で定める事項を最寄りの保健所長を経て都道府県知事に届け出なければな
らない。
第三十三条の三 精神病院の管理者は、第三十三条第一項又は第二項の規定による措
置を採る場合においては、当該精神障害者に対し、当該入院措置を採る旨、第三
十八条の四の規定による退院等の請求に関することその他厚生省令で定める事項
を書面で知らせなければならない。ただし、当該精神障害者の症状に照らし、そ
の者の医療及び保護を図る上で支障があると認められる間においては、この限り
でない。この場合において、精神病院の管理者は、遅滞なく、厚生省令で定める
事項を診療録に記載しなければならない。
(応急入院)
第三十三条の四 厚生大臣の定める基準に適合するものとして都道府県知事が指定す
る精神病院の管理者は、医療及び保護の依頼があつた者について、急速を要し、
保護義務者(第三十三条第二項に規定する場合にあつては、その者の扶養義務
者)の同意を得ることができない場合において、指定医の診察の結果、その者が
精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る
上で著しく支障があると認めたときは、本人の同意がなくても、七十二時間を限
り、その者を入院させることができる。
(2)前項に規定する精神病院の管理者は、同項の規定による措置を採つたとき
は、直ちに、当該措置を採つた理由その他厚生省令で定める事項を最寄りの保
健所長を経て都道府県知事に届け出なければならない。
(3)都道府県知事は、第一項の指定を受けた精神病院が同項の基準に適合しなく
なつたと認めたときは、その指定を取り消すことができる。
第三十三条の五 第十一条第二項の規定は前条第三項の規定による処分をする場合に
ついて、第二十九条第三項の規定は精神病院の管理者が前条第一項の規定による
措置を採る場合について準用する。
(仮入院)
第三十四条 精神病院の管理者は、指定医による診察の結果、精神障害者の疑いがあ
つてその診断に相当の時日を要すると認める者を、その後見人、配偶者又は親権
を行う者その他その扶養義務者の同意がある場合には、本人の同意がなくても、
三週間を超えない期間、仮に精神病院へ入院させることができる。
第三十四条の二 第二十九条第三項の規定は精神病院の管理者が前条の規定による措
置を採る場合について、第三十三条第四項の規定は精神病院の管理者が前条の規
定による措置を採つた場合について準用する。
(家庭裁判所の許可)
第三十五条 第三十三条第一項又は第三十四条の同意者が後見人である場合において
その同意をするには、民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百五十八条第二
項の規定の適用を除外するものではない。
(処遇)
第三十六条 精神病院の管理者は、入院中の者につき、その医療又は保護に欠くこと
のできない限度において、その行動について必要な制限を行うことができる。
(2)精神病院の管理者は、前項の規定にかかわらず、信書の発受の制限、都道府
県その他の行政機関の職員との面会の制限その他の行動の制限であつて、厚生
大臣があらかじめ公衆衛生審議会の意見を聴いて定める行動の制限について
は、これを行うことができない。
(3)第一項の規定による行動の制限のうち、厚生大臣があらかじめ公衆衛生審議
会の意見を聴いて定める患者の隔離その他の行動の制限は、指定医が必要と認
める場合でなければ行うことができない。この場合において、当該指定医は、
遅滞なく、厚生省令で定める事項を診療録に記載しなければならない。
第三十七条 厚生大臣は、前条に定めるもののほか、精神病院に入院中の者の処遇に
ついて必要な基準を定めることができる。
(2)前項の基準が定められたときは、精神病院の管理者は、その基準を遵守しな
ければならない。
(3)厚生大臣は、第一項の基準を定めようとするときは、あらかじめ、公衆衛生
審議会の意見を聴かなければならない。
(相談、援助等)
第三十八条 精神病院の管理者は、入院中の者の社会復帰の促進を図るため、その者
の相談に応じ、その者に必要な援助を行い、及びその保護義務者等との連絡調整
を行うように努めなければならない。
(定期の報告)
第三十八条の二 措置入院者を収容している精神病院又は指定病院の管理者は、措置
入院者の症状その他厚生省令で定める事項(以下この項において「報告事項」と
いう。)を、厚生省令で定めるところにより、定期に、最寄りの保健所長を経て
都道府県知事に報告しなければならない。この場合においては、報告事項のうち
厚生省令で定める事項については、指定医による診察の結果に基づくものでなけ
ればならない。
(2)前項の規定は、医療保護入院者を入院させている精神病院の管理者について
準用する。この場合において、同項中「措置入院者」とあるのは、「医療保護
入院者」と読み替えるものとする。
(定期の報告等による審査)
第三十八条の三 都道府県知事は、前条の規定による報告又は第三十三条第四項の規
定による届出(同条第一項の規定による措置に係るものに限る。)があつたとき
は、当該報告又は届出に係る入院中の者の症状その他厚生省令で定める事項を精
神医療審査会に通知し、当該入院中の者についてその入院の必要があるかどうか
に関し審査を求めなければならない。
(2)精神医療審査会は、前項の規定により審査を求められたときは、当該審査に
係る入院中の者についてその入院の必要があるかどうかに関し審査を行い、そ
の結果を都道府県知事に通知しなければならない。
(3)精神医療審査会は、前項の審査をするに当たつて必要があると認めるとき
は、当該審査に係る入院中の者、その者が入院している精神病院の管理者その
他関係者の意見を聴くことができる。
(4)都道府県知事は、第二項の規定により通知された精神医療審査会の審査の結
果に基づき、その入院が必要でないと認められた者を退院させ、又は精神病院
の管理者に対しその者を退院させることを命じなければならない。
(退院等の請求)
第三十八条の四 精神病院に入院中の者又はその保護義務者(第三十四条の規定によ
り入院した者にあつては、その後見人、配偶者又は親権を行う者その他その扶養
義務者)は、厚生省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、当該入院中
の者を退院させ、又は精神病院の管理者に対し、その者を退院させることを命
じ、若しくはその者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じることを
求めることができる。
(退院等の請求による審査)
第三十八条の五 都道府県知事は、前条の規定による請求を受けたときは、当該請求
の内容を精神医療審査会に通知し、当該請求に係る入院中の者について、その入
院の必要があるかどうか、又はその処遇が適当であるかどうかに関し審査を求め
なければならない。
(2)精神医療審査会は、前項の規定により審査を求められたときは、当該審査に
係る者について、その入院の必要があるかどうか、又はその処遇が適当である
かどうかに関し審査を行い、その結果を都道府県知事に通知しなければならな
い。
(3)精神医療審査会は、前項の審査をするに当たつては、当該審査に係る前条の
規定による請求をした者及び当該審査に係る入院中の者が入院している精神病
院の管理者の意見を聴かなければならない。ただし、精神医療審査会がこれら
の者の意見を聴く必要がないと特に認めたときは、この限りでない。
(4)精神医療審査会は、前項に定めるもののほか、第二項の審査をするに当たつ
て必要があると認めるときは、関係者の意見を聴くことができる。
(5)都道府県知事は、第二項の規定により通知された精神医療審査会の審査の結
果に基づき、その入院が必要でないと認められた者を退院させ、又は当該精神
病院の管理者に対しその者を退院させることを命じ若しくはその者の処遇の改
善のために必要な措置を採ることを命じなければならない。
(6)都道府県知事は、前条の規定による請求をした者に対し、当該請求に係る精
神医療審査会の審査の結果及びこれに基づき採つた措置を通知しなければなら
ない。
(報告徴収等)
第三十八条の六 厚生大臣又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、精神病
院の管理者に対し、当該精神病院に入院中の者の症状若しくは処遇に関し、報告
を求め、若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、当該職員
若しくはその指定する指定医に、精神病院に立ち入り、これらの事項に関し、診
療録その他の帳簿書類を検査させ、若しくは当該精神病院に入院中の者その他の
関係者に質問させ、又はその指定する指定医に、精神病院に立ち入り、当該精神
病院に入院中の者を診察させることができる。
(2)厚生大臣又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、精神病院の管理
者、精神病院に入院中の者又は第三十三条第一項若しくは第二項若しくは第三
十四条の規定による入院について同意をした者に対し、この法律による入院に
必要な手続に関し、報告を求め、又は帳簿書類の提出若しくは提示を命じるこ
とができる。
(3)第二十七条第五項及び第六項の規定は、第一項の規定による立入検査、質問
又は診察について準用する。
(改善命令等)
第三十八条の七 厚生大臣又は都道府県知事は、精神病院に入院中の者の処遇が第三
十六条の規定に違反していると認めるとき又は第三十七条第一項の基準に適合し
ていないと認めるときその他精神病院に入院中の者の処遇が著しく適当でないと
認めるときは、当該精神病院の管理者に対し、その処遇の改善のために必要な措
置を採ることを命ずることができる。
(2)厚生大臣又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、第二十二条の三
第三項の規定により入院している者又は第三十三条第一項若しくは第二項、第
三十三条の四第一項若しくは第三十四条の規定により入院した者について、そ
の指定する二人以上の指定医に診察させ、各指定医の診察の結果がその入院を
継続する必要があることに一致しない場合又はこれらの者の入院がこの法律若
しくはこの法律に基づく命令に違反して行われた場合には、これらの者が入院
している精神病院の管理者に対し、その者を退院させることを命ずることがで
きる。
(無断退去者に対する措置)
第三十九条 精神病院の管理者は、入院中の者で自身を傷つけ又は他人に害を及ぼす
おそれのあるものが無断で退去しその行方が不明になつたときは、所轄の警察署
長に左の事項を通知してその探索を求めなければならない。
一 退去者の住所、氏名、性別及び生年月日
二 退去の年月日及び時刻
三 症状の概要
四 退去者を発見するために参考となるべき人相、服装その他の事項
五 入院年月日
六 保護義務者又はこれに準ずる者の住所及び氏名
(2)警察官は、前項の探索を求められた者を発見したときは、直ちに、その旨を
当該精神病院の管理者に通知しなければならない。この場合において、警察官
は、当該精神病院の管理者がその者を引き取るまでの間、二十四時間を限り、
その者を、警察署、病院、救護施設等の精神障害者を保護するのに適当な場所
に、保護することができる。
(仮退院)
第四十条 第二十九条第一項に規定する精神病院又は指定病院の管理者は、指定医に
よる診察の結果、措置入院者の症状に照らしその者を一時退院させて経過を見る
ことが適当であると認めるときは、都道府県知事の許可を得て、六月を超えない
期間を限り仮に退院させることができる。
(保護義務者の引取義務等)
第四十一条 保護義務者は、第二十九条の三若しくは第二十九条の四第一項の規定に
より退院する者又は前条の規定により仮退院する者を引き取り、かつ、仮退院し
た者の保護に当たつては当該精神病院又は指定病院の管理者の指示に従わなけれ
ばならない。
(精神保健に関する業務に従事する職員)
第四十二条 都道府県及び保健所を設置する市は、保健所に、精神保健に関する相談
に応じ、及び精神障害者を訪問して必要な指導を行うための職員を置くことがで
きる。
(2)前項の職員は、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学に
おいて社会福祉に関する科目を修めて卒業した者であつて、精神保健に関する
知識及び経験を有するものその他政令で定める資格を有する者のうちから、都
道府県知事又は保健所を設置する市の長が任命する。
(訪問指導)
第四十三条 保健所長は、第二十七条又は第二十九条の二第一項の規定による診察の
結果精神障害者であると診断された者で第二十九条第一項及び第二十九条の二第
一項の規定による入院をさせられなかつたもの、第二十九条の三又は第二十九条
の四第一項の規定により退院した者でなお精神障害が続いているものその他精神
障害者であつて必要があると認めるものについては、必要に応じ、前条第一項の
職員又は都道府県知事若しくは保健所を設置する市の長が指定した医師をして、
精神保健に関する相談に応じさせ、及びその者を訪問し精神保健に関する適当な
指導をさせなければならない。
第四十四条 削除
第四十五条 削除
第四十六条 削除
第四十七条 削除
(施設以外の収容禁止)
第四十八条 精神障害者は、精神病院又はこの法律若しくは他の法律により精神障害
者を収容することのできる施設以外の場所に収容してはならない。
(医療及び保護の費用)
第四十九条 保護義務者が精神障害者の医療及び保護のために支出する費用は、当該
精神障害者又はその扶養義務者が負担する。
(刑事事件に関する手続等との関係)
第五十条 この章の規定は、精神障害者又はその疑いのある者について、刑事事件若
しくは少年の保護事件の処理に関する法令の規定による手続を行ない、又は刑若
しくは補導処分若しくは保護処分の執行のためこれらの者を矯正施設に収容する
ことを妨げるものではない。
(2)第二十五条、第二十六条及び第二十七条の規定を除く外、この章の規定は矯
正施設に収容中の者には適用しない。
(覚せい剤の慢性中毒者に対する措置)
第五十一条 第十九条の四から前条までの規定は、覚せい剤の慢性中毒者(精神障害
者を除く。)又はその疑いのある者について準用する。この場合において、これ
らの規定中「精神障害」とあるのは「覚せい剤の慢性中毒」と、「精神障害者」
とあるのは「覚せい剤の慢性中毒者」と読み替えるものとする。
第六章 罰則
第五十二条 次の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金
に処する。
一 第三十八条の三第四項(第五十一条において準用する場合を含む。)の規定
による命令に違反した者
二 第三十八条の五第五項(第五十一条において準用する場合を含む。)の規定
による退院の命令に違反した者
三 第三十八条の七第二項(第五十一条において準用する場合を含む。)の規定
による命令に違反した者
第五十三条 精神病院の管理者、指定医、地方精神保健審議会の委員若しくは臨時委
員、精神医療審査会の委員若しくは第四十三条(第五十一条において準用する場
合を含む。)の規定により都道府県知事若しくは保健所を設置する市の長が指定
した医師又はこれらの職にあつた者が、この法律の規定に基づく職務の執行に関
して知り得た人の秘密を正当な理由がなく漏らしたときは、一年以下の懲役又は
三十万円以下の罰金に処する。
(2)精神病院の職員又はその職にあつた者が、この法律の規定に基づく精神病院
の管理者の職務の執行を補助するに際して知り得た人の秘密を正当な理由がな
く漏らしたときも、前項と同様とする。
第五十四条 虚偽の事実を記載して第二十三条第一項(第五十一条において準用する
場合を含む。)の申請をした者は、六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処
する。
第五十五条 次の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第二十七条第一項又は第二項(これらの規定を第五十一条において準用する
場合を含む。)の規定による診察を拒み、妨げ、若しくは忌避した者又は第
二十七条第四項(第五十一条において準用する場合を含む。)の規定による
立入りを拒み、若しくは妨げた者
二 第二十九条の二第一項(第五十一条において準用する場合を含む。)の規定
による診察を拒み、妨げ、若しくは忌避した者又は第二十九条の二第四項
(第五十一条において準用する場合を含む。)において準用する第二十七条
第四項の規定による立入りを拒み、若しくは妨げた者
三 第三十八条の六第一項(第五十一条において準用する場合を含む。以下この
号において同じ。)の規定による報告若しくは提出若しくは提示をせず、若
しくは虚偽の報告をし、同項の規定による検査若しくは診察を拒み、妨げ、
若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対して、正当な理由がなく答
弁せず、若しくは虚偽の答弁をした者
四 第三十八条の六第二項(第五十一条において準用する場合を含む。)の規定
による報告若しくは提出若しくは提示をせず、又は虚偽の報告をした精神病
院の管理者
第五十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、
その法人又は人の業務に関して第五十二条又は前条の違反行為をしたときは、行
為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
第五十七条 次の各号の一に該当する者は、十万円以下の過料に処する。
一 第二十二条の三第三項後段又は第四項(これらの規定を第五十一条において
準用する場合を含む。)の規定に違反した者
二 第三十三条第四項(第五十一条において準用する場合を含む。)の規定に違
反した者
三 第三十三条の四第二項(第五十一条において準用する場合を含む。)の規定
に違反した者
四 第三十四条の二(第五十一条において準用する場合を含む。)において準用
する第三十三条第四項の規定に違反した者
五 第三十八条の二第一項(第五十一条において準用する場合を含む。)又は第
三十八条の二第二項(第五十一条において準用する場合を含む。)において
準用する第三十八条の二第一項の規定に違反した者


1993.02.04登録
REV:20080803, 20161228
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