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死/生の本・1
医療と社会ブックガイド・42)

立岩 真也 2004/10/25 『看護教育』45-10(2004-10)
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http://www.igaku-shoin.co.jp/mag/kyouiku/



  様々な本を紹介してきたが、これまでを近く一冊にまとめる予定もあって、とりあげた本の書誌情報をホームページに掲載した。行き方はHP→「本」→「本のリストのリスト」→「医療と社会ブックガイド」、等。今回ごく簡単に書名だけ記した本も含め、100冊余の情報がある。
  多くの主題があるなかで世間の関心が集まると思われているものとなると「先端医療」ということになるだろうか。原稿を依頼されるのもその方面が多い。よくは知らないながら書くには書くが、この傾向はあまり好ましくないと思う。この連載でも、そのうち取り上げるが、まだ取り上げていない。今一番大切なことは、とくにアフリカの、エイズのことだと思っている。海外医療援助についての本は何冊かあるが、この主題についてまだまとまったものはない。今出ているのは小説や子ども向けの本になる(これもHPで紹介している)。どんどん状況は変わっていくし、この主題については細かな込み入ったところが大切で、そうした情報は必ずしも一般向けではない。だから本を出すのは難しいのだが、それでも工夫して本が書かれる必要がある。私自身もお手伝いできることがあれば、お手伝いして、出していく必要があると考えている。ただそれは、残念だがもう少し先になるだろう。
  その代わりに、ではないが、民間による情報提供を促すため、だけではないが、資金提供の企画。アマゾン、ビーケーワン(bk1)といったオンラインの本屋に、ホームページを経由して注文した場合、そのホームページの運営者が購入額の3%から5%をポイントや現金で得られるというアフィリエイト・プログラムとかアソシエイト・プログラムと呼ばれる仕組みがある。それを使い、得られた全額を(とくにアフリカのサハラ砂漠以南の)HIV/エイズの人たちを支援するNGO「アフリカ日本協議会」の活動に寄付することにした。じつは1昨年の秋から始めていたのだが、まだ年間10万円には達していない。もっと増えたらよいと思い、いろいろ工夫してみようと思って、各種の本のリストを作り、そこから直接に注文できるようにもした。もちろん、オンラインの本屋を贔屓するつもりはなく、近所の本屋さんも栄えてほしいと思っている。「どうせ」オンライン書店で買おうという場合に御協力ください。
◇◇◇
  上記の企画のために、また自分用の文献データベースにあったものをそのままにしておくのももったいないと思ったから、そして私が務める大学院の院生の研究領域の利用も考えて幾つか作った本のリストの一つに、死ぬことに関する本のリストがある。
  おびただしい数の本が出版されている。本に収録された個々の文章の書誌情報をいちいち入力していた時期が10年以上前の一時期あった。近所の図書館から借りた一般読者向けの本が主である。それら300冊ほどの本を発行年順に並べた。さきと同様、「本のリストのリスト」等からどうぞ。
  なぜデータを入れていたのか。一つは看護学校で非常勤講師をしていて、いちおうチェックしておこうと思ったから。それとともに、このように似たような本がたくさん出されるというのはどういうことなのだろうという、また、たしかによいことではあろうこの傾向をそのまま受け入れてよいのだろうかという、醒めた、あるいはうがったところもあった。
  そのように真面目な気持ちに欠けていたせいもあるだろうが、いくつか目を通して、何かを得られたということはなかった。では、死について何が書かれればよいのか。それもわからないまま放置してあったのだが、この機会にいくつか取り上げてみようと思った。
  例えば写真家の藤原新也の写真と文章は数少なく記憶に残っている。ただこれは後で。まず翻訳ものから始める。
  今は品切になっているが、G・ゴーラー『死と悲しみの社会学』(1965、邦訳1986、ヨルダン社)。著者は1905年生、社会学者として記憶されているが、文化人類学も学びその方面の著作もある。この本は、英国での質問紙調査、面接調査に基づいて書かれている。これが本体なのだが、略。付論として「死のポルノグラフィー」という論文が収録されている。これは1955年に発表されたもの。ある人や本が、一つの言葉で知られるということがある。死と喪がタブーとされている(他方で、殺人等による横死がとくにフィクションに頻出する)という事態を現わす言葉として、この言葉は残っていく。
  そして歴史家の書いたものでやはり頻繁に引かれるものではフィリップ・アリエスの著作がある。アリエスは「日曜歴史家」を自称していたフランスの歴史家。1914年生、1984年没。子どもという時期は近代に現われたのであり、その以前には子どもは小さい大人として扱われていたことを示したというので有名な『<子供>の誕生』(1960、邦訳1980、みすず書房)が最初の著作。『死を前にした人間』(1977、邦訳1999、みすず書房)はその次の大著ということになる。有名な本だが翻訳が長いことなかった。それ以前に邦訳が出された本は『死と歴史』(1975、邦訳1983、みすず書房)。これは『死を前にした人間』の出版の前に、その本に書いたことを紹介する内容の講演などを集めたもので、その時点での彼の仕事を要約的に知ることができる。またこの本の中で、1965年頃、ゴーラー(彼は1905年生)の著書によって「突如、死に対する態度の社会的大変化に気づき」、それが彼の研究を促したと記される等、幾度かゴーラーに言及され、評価されている。そしてもう1冊、死の前年に出された『図説 死の文化史――ひとは死をどのように生きたか』(1983、邦訳1990、日本エディタースクール出版部)。これがアリエスの遺著ということになった。これもとても大きな本で、古代の墓から現代の映画の場面まで、多くの写真が掲載されている。
  ゴーラーの本にしても、現代の、といってももう40年前だが、英国の人たちの行動や思いが具体的に記されている。また、とくに歴史ものは細部がおもしろいというところがあるから、そんな楽しみ方をしたい人は、直接読むしかない。ただ、その長い記述を通して言われていることは、あるいは私たちが今その記述をまとめて受け取っていることは、近代になって、人々が死を避けるようになった、隠すようになってきたということだ。
  死が隠されている。死を避けている。すると、隠さず、もっと正面から受け止めたらよいということになる。論理的にはそうならなければならないと決まってはいないとしても、過去と対比して現在を批判するのは、以上の著者たち自身の立場でもある。
  そうかもしれないとは思う。しかし、そう言われても、さてとどうしよう。彼らの本からだけでなく、そんな思いが残ってしまうのだが、その辺をどんなふうに考えたらよいのかを考えるためにも、すこし混ぜっ返しのようなことから言い始めてみよう。
  第一に、隠されていると言われるが、そのようにして、死について語られるようになってきた。それは、死が語られていない、死を隠しているというように語る。そのようなことが始まって、少なくとももう30年ぐらい、ゴーラーの論文からなら40年ほどが経っている。そのことをどう捉えるか。
  第二に、こうした言説は、その著者たちが思いがどうであったかと別に、現代人の死に対する「いさぎの悪さ」を言うような方向に作用しうる。今のこの社会の人たちでない人たちは死を遠ざけようとしなかった。死を受容し、死んでいった。それに引き換え、私たちは死を恐れている、それはいけてない、「徒らな延命」は問題だ。こういう筋の話に組み込まれることがある。さきにあげた本に書かれていることを概ね受け入れるとして、それはそれとして、この筋に乗ってよいのかである。
◇◇◇
  こんなことが私には気になるのだが、それで、表紙写真を載せてもらったのは以上の有名な本たちではなく、斎藤義彦の本である。
  毎日新聞の記者である斎藤の本は第30回でも『死は誰のものか――高齢者の安楽死とターミナルケア』(2002、ミネルヴァ書房)を紹介した。今回の本は二か月半米国を取材して書かれた。米国のこの状態はまずいというはっきりした主張と、ジャーナリスト的に抑制した部分と両方がある。そして、ここに描かれるのもまた、現代的な米国的な死の忘れ方だとも言えはしよう。ただ事態はもう少し複雑なようにも思う。次回はこの続きをもう少し続け、そして別の本に移っていこう。

[表紙写真を載せた本]
斎藤 義彦 20040630 『アメリカおきざりにされる高齢者福祉――貧困・虐待・安楽死』,ミネルヴァ書房,MINERVA福祉ライブラリー66,249p. ISBN:4-623-03996-X 2625 [boople][bk1] ※

[付記:20050627]
 *2005年、以下の本・冊子が刊行されました/を刊行しました。
林 達雄 20050603 『エイズとの闘い――世界を変えた人々の声』,岩波ブックレットNo.654,ISBN: 4000093541 504 [amazon][kinokuniya][boople] ※
アフリカ日本協議会立岩 真也 編 2005.6 『貧しい国々でのエイズ治療実現へのあゆみ――アフリカ諸国でのPLWHAの当事者運動、エイズ治療薬の特許権をめぐる国際的な論争』,立命館大学大学院先端総合学術研究科立岩研究室,62p. \500
[付記:20050929]
◇立岩 真也 2005/10/25「『エイズとの闘い――世界を変えた人々の声』」(医療と社会ブックガイド・53)
 『看護教育』46-09(2005-10):(医学書院)[了:20050829]


UP:20040913 REV:20050627,0829
「死/生の本・2」  ◇Aries, Philippe  ◇  ◇医療と社会ブックガイド 
医学書院の本より  ◇書評・本の紹介 by 立岩

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