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「自立生活運動」
―知ってることは力になる・10―
立岩 真也 1999
『こちら”ちくま”』15
発行:自立支援センター・ちくま
前回は「自立」について,事典に書いた原稿をそのまま紹介してしまったのですか,なんと今回も,です。温故知新篇・その2。「自立生活運動[英]Independent Living Movement」。たった600字です。読みやすいよう,段落変えの改行を入れてみます。
「障害のある人たちが,施設の中での制約の多い生活ではなく,また親の庇護と監督のもとでの生活ではなく,普通に人が暮らす場所で,やりたいことをやり,生きたいように生きようとすること,また,それを実現するための運動。
これまで,この運動は1970年代に米国で始まったものであり,それが1980年代に日本に輸入され広がったとする記述が多くなされてきたが,これは事実誤認である。日本でも,1970年代初頭にこうした生活の試みが始まり,それに自立という語があてられ,1970年代中盤には自立生活という言葉が使われ始めている。
彼らは地域での生活への社会的な支援策がない中で,おもにボランティアによる介助を得て生活を始め,同時に国,自治体に介助サービスの充実を要求し続け,徐々にではあるが制度を獲得,拡充させていく(生活保護の他人介護加算特別基準,各自治体の介護人派遣事業,自らが推薦する介助者をホームヘルパーとして登録し利用する方法の利用等)。
そしてこれらを背景に,また米国の組織の機構・活動にも学んで,地域での生活への移行と地域での生活を障害者自らが中心になって支援する非営利組織(NPO)「自立生活センター」(CIL)を設立して活動を行なっていく。1986年に東京都八王子市で「ヒューマンケア協会」設立,1991年には15団体で「全国自立生活センター協議会」(JIL=ジル)が結成された。その加盟団体は1998年2月には全国75団体を数えている。」(『福祉社会事典』,弘文堂,1999年)
補足をいくつか。
※ 生活保護の「他人介護加算」はこの連載の第1回で,「自薦登録ヘルパー」については第2回で簡単に紹介しました。このあたりの制度はみんなこの運動の中で獲得,拡大されてきたものです。
※ 「自立支援センター・ちくま」も加盟しているJIL=ジル=「全国自立生活センター協議会」の1999年8月末現在の加盟団体は83です。ホームページがあります(http://www.d1.dion.ne.jp/~jil/)。ホームページをもっている自立生活センターのページにはリンクもされています。
※ 連載の第4回で紹介した「市町村障害者生活支援事業」も,自立生活センターの活動を税金使って支援してもよいではないかというところから発想されたものです。いよいよこの事業が松本市でも始まるようです。期待しつつ,しかし,なんだかわからないお金の使われ方,人の使われ方がなされないように,と思います。
※ 字数制限がきついのにもかかわらず「俗説の間違い」に触れたのは,事典にここまで書いておけばいちおう釘を差したことにはなるだろうと思ったからなのですが,この間違いはほんとに気にくわない。「日本(人)だって偉いんだ」みたいなことを言いたいのでは全然ありません。そんなことではなくて,当事者が言うことを聞いて聞かないふりをしておいて,やっていることを無視しておいて,それと同じことが外国にあると,「私が輸入しました,教えてあげましょう」みたいになってしまうのが――そういうことって,「自立生活(運動)」の場合だけじゃなくて,よくあると思いませんか――,卑怯だと思うのです。こういうことも含め,1970年代からあったものが,なぜ,どのように無視されてきたのかについては,以前にも紹介した石川准・長瀬修編『障害学への招待――社会、文化、ディスアビリティ』(明石書店,1999年3月,2800円)に収められている拙稿「自己決定する自立――なにより,でないが,とても,大切なもの」に書きましたので,興味のある方はどうぞ。(『障害学への招待』は,『新潟日報』やら『朝日新聞』やらに書評が載ったりしたせいもあるのか,編者・執筆者の予想を超えて読まれているようで,喜んでいます。)
※ 前回も書きましたけど,「自立とはなにか」とか言って,妙に小難しい,「高尚」なものに祀り上げるのは,「人生の一大目標」みたいなものと考えるのは,おかしいと思う。だいたい人生に目標なんかないわけで,少なくともなくたって他人に責められたりしないわけで,なのに障害があったりすると,途端に「到達目標」みたいなものが掲げられ,それが変だと思われない。それが変。問い詰められるべきなのは,「本人」の方ではなく,どおってことないはずのことをえらく大変なことにさせてしまっている「社会」の方であるはずです。9月・10月と,飯田市・長野市で県のリハビリテーションセンター主催の「地域リハビリテーション研究集会」というものがあって,「自立」について話をさせていただくことになって,そういう話をするのですか,さて,わかってもらえるかな。
◆自立生活センター
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