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『療護施設・グループホーム・一人暮し――脳性マヒ者の3つの生活』

199803
赤塚光子・佐々木葉子・杉原素子・立岩真也・田中晃・名川勝・林裕信・三ツ木任一著,放送大学三ツ木研究室,166p.

はじめに

 この報告書は,療護施設,グル−プホ−ム,一人暮らしと3つの暮らし方をする,脳性まひの障害をもつ主に三〇歳代の人各10人,計30人に行った訪問聞き取り調査をまとめたものである。
 調査は1994年度から1996年度の厚生省心身障害研究,「心身障害児(者)の地域福祉に関する総合的研究」(主任研究者:高松鶴吉)の一環として行われ,表記した8名が携わった(名川は1994年度,立岩は1995・1996年度の調査に参加した)。調査にあたった各メンバーの調査票,原稿をもとに,主に立岩が文章をまとめた。
 第T部では,生活の各領域ごとに3つの暮らし方を比較し,検討する。
 第U部では,以上の検討を踏まえ,障害者の暮らしを支援する社会環境,社会サービスの今後のあり方について提言する。
 第V部には,30人についての聞き取り調査を個人別にまとめる。

  「「二十一世紀を展望した」「二十一世紀に向けての」といった言い回しがよく
  使われています。これまでいくら望んでも実現しなかったあれやこれやが,世紀
  が変わりさえすればすぐにも片がつくような気分にさせてくれますが,毎年,少
  しずつ改善していけばいずれよくなるはず,というこれまでの発想では,二〇三
  〇年,二〇五〇年になっても事態はあまり変わらないのではないでしょうか。ノ
  ーマライゼーションの本来の意味に立ち戻り,入所施設に依存しない障害者福祉
  への大転換を,いつから開始し,いつまでに仕上げるかの決断が,今,問われて
  いるように思われます。」(三ツ木[1997:38])

 メンバーの一人が雑誌の編集後記として記した文章である。この報告書をまとめた今,
他の著者達もまた,同じ思いを抱いている。


    時間のかかる調査,細かな質問に快く応じてくださった方々,
      ありがとうございました。心よりお礼申し上げます。


 目次

 はじめに                                1
 目次                                  2

◇調査の概要                               4
  調査対象/調査方法・調査項目/数値一覧+以下の報告にあたって

      ◆第T部 3つの暮らし――その比較検討◆

 ◇01 経緯(問1)                          9
  療護施設で暮らす人達の場合
  グループホームの居住者・一人暮らしの人達の場合
  居住の場を変えてきた人達/家族との関係(問11)
  当事者組織のもつ意味/いつその暮らしを始めたか・始められるのか
 ◇02 居室(問5)                          15
  療護施設の部屋/「個室化」について
  グループホームとその居室/一人暮らしの部屋
 ◇03 機器(問3)   19
  機器の利用実態/療護施設居住者のハンディキャップ/機器に対する不満
 ◇04 改造(問3)   22
  グループホームにおける改造/一人暮らしの人の場合/
  療護施設における改造
 ◇05 介助(問2)   24
  グループホーム,一人暮らしの人の介助の使い方/
  グループホームの居住者と一人暮らしの人の評価/療護施設での介助
  医療(問8)
 ◇06 生計(問4)   32
  療護施設で/グループホームで/一人暮らしの人の/
  誰に渡り誰が決めているのか
 ◇07 活動(問9・10・11)                      37
  療護施設居住者の活動1・サークル,自治会活動/
  療護施設居住者の活動2・施設の外での活動/
  グループホーム,一人暮らしの人の活動
 ◇08 立地(問6)                          41
  療護施設の立地/グループホームの立地/一人暮らしの人が暮らす場
 ◇09 外出(問13)                          44
  グループホーム,一人暮らしの人の外出/
  療護施設に暮らす人の外出
 ◇10 アクセシビリティ(問16)                    47
 ◇11 近所づきあい(問14)                      48
 ◇12 周囲の人達の受入れ(問13)                   50
 ◇13 障害についての認識(問1)                   51
 ◇14 展望(問7)                          53
  グループホームで暮らす人の展望/療護施設居住者の展望/
  一人暮らしの人の展望/違いについて

      ◆第U部 提言◆

 ◇比較検討のあり方について                      57
 ◇居住の場の今後                           57
  ・療護施設のあり方
  ・療護施設が果たすべき機能を果たすための出ることの支援
  ・障壁を取り除き移行を円滑にする活動の重要性
  ・グループホームについて
 ◇生活の支援のあり方について                     63
  ・供給体制の見直し
  ・政府が供給・整備に直接関与すべき部分
  ・介助サービスのあり方
  ・活動を仕事にすること
  ・当事者組織に対する正当な評価と支援の必要性

      ◆第V部 一人ひとりの暮らし――事例別報告◆

 ◇療護施設の居住者たち                        69
 ◇グループホームの居住者たち                     95
 ◇一人で暮らす人たち                         119

◇注                                  146
◇文献                                 160  調査の概要

 ◇調査対象

 私達は,療護施設(6ヵ所)に入所している10人,グル−プホ−ム(6ヵ所)に入居している10人に対する訪問調査を1995年度に実施した。また,1996年度には一人暮らしをしている10人に対する訪問調査を行った。★01
 以下,療護施設(6か所)★02をN1〜N6,グループホーム★03(6か所)をG1〜G6,一人暮らしの人をIと表記し,各居住者をN1a,G2b,Icなどと表わす。
 30人の概要は以下の表1の通りである。★04

               表1・30人についての概要
   療 護 施 設 グループホーム    一人暮らし
性< 年< 入< 居住< 性< 年< 入< 居住< 性< 年< 入< 居住<
BR> BR> BR> BR> BR> BR> BR> BR> BR> BR> N1a< 男< 39< 36< R>
N2a< BR> BR> BR> > BR> BR> BR> BR> BR> BR> BR> BR> BR>


N3a< > > > >
BR> R>< R>< R>< R>
< R>< R>< 6
< R>< R>< 13 <
N3b< BR> BR> BR> > BR> BR> BR> BR> > BR> BR> BR> BR> BR>

> > >< ><
R>< R>< R>< R>< R>< R>< R>< R>< R><
BR> BR> BR> BR> BR> BR> BR> BR> BR>

 療護施設
 男性5人・女性5人 平均年齢37.1歳 平均入居年齢26.1歳 平均居住期間11.0年
 グループホーム
 男性8人・女性2人 平均年齢35.0歳 平均入居年齢29.9歳 平均居住期間 5.1年
 一人暮らし
 男性7人,女性3人 平均年齢36.3歳 平均入居年齢30.3歳 平均居住期間 6.0年

 居住者の身体障害の様子について簡単に記しておく。すべての人に1級の障害がある。療護施設の居住者に他と比較して障害が重い傾向はある(N1a,N2a,N3a,N4a,N4b,N5a,N5bの7人が全介助,またはそれに近い)が,グループホーム入居者にも一人暮らしの人にも,療護施設の居住者と同程度,あるいはそれ以上に障害が重い人がいる(G1c,G2b,G4a,Ijがほぼ全介助)。またG6の入居者は,介助の必要な度合いが他に比べて低い。一人暮らしの人でも,特にIjはほぼ全介助(電動車椅子はあごでコントロールする機器で操作)である。
 言語でのコミュニケーションについては,療護施設居住の1人,N1aが専らトーキングエイド(以前は文字盤)を用いている。またIcもトーキングエイドでコミュニケーションしている。グループホームでは,G1cが聴覚障害があるため,手話,指文字,筆談,文字盤などが必要で,また言語障害もきついため,通じない時には足で文字盤を使う。他にG1a,G1bが文字盤を使うことがある。他の人は,言語障害はあるが,口話でのコミュニケーションが可能である。
 調査対象者の年齢を限定したのは,年齢によって生活体験が異なり,その受け止め方も違うだろうから,その幅をある程度にとどめておいた方が今回の調査の目的にはかなっていること,そして親元での生活,そして施設,グループホームでの生活をある程度の期間へてきた人から回答を得たいと考えたことによる。障害を脳性まひと限定したのも年齢についての前者の理由と同じである。言語によるコミュニケーションが可能な者としたのは,今回のような性格の調査の場合にはそれが必要条件だからである。

 ◇調査方法・調査項目

 対象者の住まいを訪問し生活の実態を知るとともに,調査用紙を使用して聴き取り調査を行った。調査対象者には,事前に質問項目の概要を郵送し,調査内容について予め知らせておいた。各対象者への訪問聴き取り調査は各1名が担当した。
 調査項目は次頁に記した。質問内容は注に記した★05。生活の質と満足度に関する一般的な項目と脳性まひ者の住まい方を分析する上で必要な視点を加味した。
 1件につき要した時間は2〜3時間程度。調査者は質問に対する回答を書き取った。以下では必要に応じ,「」内にその発言内容を記す。発話そのままでないこともあるが,かなり忠実な再録である。
 同時に,各項目について,満足度,自己決定度(以下s,dと略記)について4段階のいずれかを選んでもらった。以下では,得られた結果を0・1・2・3と表記する。また全体の平均値を見る場合など,その値に100/3をかけて100点満点での点数を出して用いることがある。その平均値を表2,表3に記した。
 また全項目の質問が終了した時点で,あらためて満足している上位3項目と不満足上位3項目(表4・5),さらに自分の生活にとって重要だと思う上位3項目をあげてもらった(表6)。
調査項目
1.身体状況(障害があること)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥*  問1
   室内移動,屋外移動,コミュニケーション
   身辺処理,障害に関する医療
2.介助について
 (1)必要な介助内容,介助者‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥*☆ 問2
 (2)福祉機器,住宅改造‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥*☆ 問3
   導入している機器,導入による改善点,導入時期,費用負担
3.経済的な状況(毎月の収支)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥*☆ 問4
   主な収入,支出内訳
4.住まい
 (1)住居形態‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥*☆ 問5
   持ち家か借家か,間取り
 (2)住居の周囲の状況(立地条件)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥*  問6
   近隣の状況,住みやすさ
 (3)これまでの住まいの移り変り‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ☆ 問7
5.健康管理‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥*  問8
 (1)健康管理の状況
   かかりつけの医師,病気になったときの対応
6.労働・仕事‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥*☆ 問9
   1週間単位の日中の活動,年間の活動
7.余暇活動
 (1)定期的に参加している余暇やスポーツのグループ‥‥*☆ 問10
 (2)個人的に行っている余暇活動‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥*☆ 問11
8.家族
 (1)家族構成
 (2)家族関係‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥*  問12
   相談できる人,親との関係,兄弟との関係,親戚との関係
   家族としての役割,キイパーソン
9.外出・交際
 (1)外出・ショッピングでよく出かけるところ‥‥‥‥‥*☆ 問13
 (2)近所との付き合いについて‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥*☆ 問14
 (3)友人との付き合いについて‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥*☆ 問15
10.街での生活
 (1)道路や建物のようす‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥*  問16
 (2)偏見や仲間外れの体験‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥*  問17
 (3)周囲によく受け入れられていると感じた体験

   *:満足度について尋ねた項目 ☆:自己決定度について尋ねた項目

 ◇数値一覧+以下の報告にあたって

          表2・満足度(100点満点に換算)
障害 介 機 収 居 立 変 健 活 余暇 余暇 家 外 近所 友 アク 受
認識 助 器 支 室 地 遷 康 動 団体 個人 族 出 付合 人 セス 入
N 53< 30 73 50 33 58 70 63 60< 53< 73 60 67< 87 27 60
G BR>< 60 67 60 70 53 67 50 50< 50< 77 67 63< 67 27 67
I 63< 53 57 40 53 87 63 60 60< 77< 53 67 53< 87 53 77
表3・自己決定度(100点満点に換算)
N 73 83 100 40 G 100 87 77 90 R>< 93 73< 100< 100< 100 90< 100
I 98 93 100 93 BR> 100 90< 83< 97< 97 100< 100


          表4・満足な項目を3つ(当該項目をあげた人数)
N  2< 2< 1< 0< 1< 1< 3< 1<  4<  0< 2< 4<  0< 5< 0< 0<
G  3< 3 2< 1< 1< 1< 1< 4<  1<  1< 3< 1<  0< 3< 0< 0<
I  3< 3< 0< 1< 1< 3< 0< 4<  1<  0< 2< 2<  0< 7< 0< 0<
計  7< 8< 3< 2< 3< 5< 4< 9<  6<  1< 7< 7< 0< 15< 0< 0<
          表5・不満な項目を3つ(当該項目をあげた人数)
N   3 4< 2< 5< 3< 2< 1< 1<  0<  1< 0< 2<  1< 0< 2< 1<
G   0 2< 2< 7< 2< 1< 0< 1<  1<  2< 2< 0<  1< 1< 6< 0<
I   2 4< 2< 4< 5< 0< 4< 1<  0<  0< 2< 0<  2< 0< 0< 0<
計   5 10< 6< 16< 10< 3< 5< 3<  1<  3< 4< 2< 4< 1< 8< 1<

          表6・重要だと思う項目を3つ(当該項目をあげた人数)
N  0< 4< 1< 4< 2< 1< 3< 1<  0<  3< 0< 1<  1< 5< 0< 1<
G  1< 5< 1< 3< 2< 0< 0< 6<  2<  0< 4< 1< 0< 4< 0< 1<
I  0< 4< 0< 5< 2< 1< 3< 3<  0<  0< 2< 0<  0< 7< 0< 0<
計 1< 13< 2< 12< 6< 2< 6< 10<  2<  3< 6< 2< 1< 16< 0< 2<

 点数化された結果の一覧は前頁の表のとおりである。重要だとした人の多い項目に「友人関係」があり,これについては3者ともおおむね満足度が高い。ついで「収支」を重要としている人が多いが,これについては3者とも不満な項目にあげる人が多く,また満足度も低い。大きな差が見られたのは,「介助」(重要な項目とした人が多く,また満足な項目・不満な項目にあげた人ともに比較的多い)に関する満足と自己決定度,「居住性」についての満足度と自己決定度,入居に至る「プロセス」における自己決定度などであり,いずれもグループホーム,一人暮らしの方が点数が高い。「活動」については,満足度に大きな違いはないが,重要だと考え満足だとした3項目中にあげている人がグループホーム,次いで一人暮らしの人に多い。これだけでも一定の意味はあるだろうが,以下では,さらにインタビュー結果を活かすことで,もう少し立ち入った分析ができたものと思う。
 特に療護施設については,その全体像,平均像がここで描かれるわけではない。そのためにはさらに大規模な調査が必要である。私達は,この調査結果がそのような性格をもっていることを承知した上で,このことについて誤解を招くことがないような,そして私達の調査方法が活かされるようなスタイルの報告書を作成した。私達の調査は限定された範囲のものではあるが,一人一人に対するインタビュー,その記録の作成と検討には時間をかけた。たとえば,調査対象者にひとまず出してもらった点数は,各自,それぞれの場合で意味合いが異なる。語ってもらった内容を報告に再録しながら,満足度や自己決定度の点数の持つ意味について検討を加え,それを報告書に盛るようにした。
 また以下では,すべての項目を均等に扱うのではなく,3つの生活の形の特徴,3者の間の差異が見られる項目に重点をおいて報告する。また,記述の順序も質問項目の順序と同じではない。まず入居者の入居の経緯を概観する。次にハードウェアとしての居住空間,そして使用される機器,改造等についてみる。次に人的サービス,介助のあり方を検討する★06。次に経済的な側面を個々人の収支という視点からみる。そして居住空間の内外での活動のあり方,余暇の過ごし方を報告する。さらに,各々の居住空間と居住者が,各々の外部環境の中でどのような位置にあるのか,どのような関係をもっているのかを,立地条件,外出,アクセシビリティ,近所づきあい,偏見といった項目に沿って検証する。そして,そうした場所に住まい外部との関係をとりもっている入居者達が,現在,自分の障害をどのように認識しているのか,またどのような将来の展望を描いているのかを見る。このように,おおむね居住する場からその外側(との関係)へと移っていく。そしてこれらの前後に,居住者の過去〜現在,現在〜未来についての認識が描かれる。
 なお以下では地名,団体等の固有名詞を伏した場合と記した場合と両方がある。報告書をまとめる際の時間的制約のため調査対象者に了解の諾否を問い合せられなかった場合に伏してある。了解を求め,了解が得られたものについては記した方が望ましかったと思う。また手持ちの情報が偏っているために,具体的な紹介がある部分とそうでない部分とがあり,特に地域によるむらが出てしまった。不手際をおわびする。
◆第T部 3つの暮らし――その比較検討◆

■01 経緯(問1)

 今の住まい方に至った経緯を見る。
 療護施設入居についての自己決定度の平均 :1.5 (50点) ※1.0(33点)
 グループホーム     〃       :2.8 (93点)
 一人暮らし       〃       :3.0(100点)

 ※は,現在グループホームに居住している人,一人暮らしをしている人で,施設での居  住経験がある人について,施設入居の時の自己決定度を加えた時の平均値。

 ◆療護施設で暮らす人達の場合

 「自分がテレビを見ていると,弟・妹がつられ,弟・妹が怒られる。しょっちょうトラブルで,それが嫌で入所した。」(N2a,21歳で入所,d=3)
 「親が年をとり介護が困難になってきた。親から自立するというような意味を含めて,離れて暮らしてみようと思った。」(N3b,29歳で入所,d=3)
 「通う場がないことと両親の介助のことを考えたら施設を考えなくてはと思っていた。反面,在宅でいきたいという気もあった。そういうところに療護施設ができるという話を聞き…」(N5b,23歳で入所,d=無記入=−)
 「両親が体が弱く自分の面倒をみれなかった。」(N4a,19歳で入所,d=0)
 「母が病気で介助が無理になった。3年くらいはケアしてあげられると言われたが,親から離れるタイミングがあると思った。」(N5a,30歳で入所,d=−)
 「母が倒れ,1か月間今いる施設でショートステイをした後,養護学校の先生が姉と相談して入居を決めた」(N6a,26歳で入所,d=0)
 療護施設居住者の何人かも,今の居場所にしたのは,自分自身の選択,「自己決定」であったと答えてはいる(上記のN2aとN3b,そしてN3cがd=3,上記のN4aとN6a,そしてN4bがd=0,他の4人はスコアなし)。たしかに,当人が最終的には入居を決めたのではある。しかし,その経緯を見ると,選択肢自体がきわめて限られたものであることが多い。具体的には家族,特に母親による介助が困難になったこと,あるいはそれが予測されたことによる。20歳前後で施設に入った人が2人,20歳代前半の入所者が3人で,20歳代後半以降になってからの人も5人いる。かなり長い間,親元での生活を経た後に療護施設で暮らすようになった人が多い。

 ◆グループホームの居住者・一人暮らしの人達の場合

 他方,グループホームや一人暮らしの選択は,親から独立した生活を送りたい,一人で暮らしたいといった,より積極的,能動的なものであり,それ以前の生活に比べ,より望ましい生活として選ばれている。
 そしてグループホーム入居に特徴的なのは,グループホームが永住の場所ではなく,次の生活への移行過程の中に位置づけられているということである。
 「親元を離れて暮らしたいという気持ちが強かったから。家庭がいやだというより,自立してみたいという気持ちがあったので。」(G1a,28歳で入居)
 「親から離れて自立したかった。それまでは母の言うことを聞いていた。」(G6a,36歳で入居)(G6b,27歳で入居)
 「〇〇の仲間をみてやる気になった」(Ia,36歳で一人暮らし)
 「悶々とした思春期時代を送った。このまま家にいても仕方がないので,どこかに相談しに行っても施設入所の話になってしまう。施設は朝起きて,仕事に出向いて,寝るだけだから親もあまり勧めなかった。20歳過ぎてからは親に当たってばかりいた。やはりこのままではいけないのではないかと思った。親がAさん(障害者)に手紙を出して相談し,Aさんから(Aさんが参加している組織とは別の)自立生活センターを紹介された。ここまでは親主導。それからは自分ですべて決定している。」(Ih,27歳で一人暮らし)

 ◆居住の場を変えてきた人達

 この3者の選択のあり方の違い,それぞれへの評価の違いは,いくつかの居住場所を移ってきた人達の発言,評価によっていっそうはっきりする。
 今回の調査対象者の住まい方の移り変わりはおおまかに言って以下のようである。

  在宅→施設                10人
  ……
  在宅→   グループホーム        8人
  在宅→施設→グループホーム        2人
  …… 
  在宅→           一人暮らし  4人
  在宅→施設        →一人暮らし  4人
  在宅→   グループホーム→一人暮らし  2人
  在宅→施設→グループホーム→一人暮らし  0人

 10人のグループホーム居住者には以前に施設で暮らした経験のある人が2人いる。長期間暮らしたのはそのうちの1人である。
 G4a:更生施設(半年)→在宅(2年)→アパート(4年半)→在宅(4年)→グループホーム(2年)
 G5a:療護施設(=N2,14年間)→グループホーム(8年)
 G4aが更生施設に入ったのは「親元を離れたかったから」(d=3)だが,「訓練が合わなかった」ので施設を出た。いったん実家に戻り,アパートで一人暮らしを始めるが,「作業所の活動など,無理をしてしまい,股関節の二次障害を起こし,体調を崩した」ため,再び実家に戻った。実家に戻っても作業所の活動は続けた。グループホーム設立の運動もこの作業所の活動の中から始まり,自分達の活動によって設立されたグループホームに入居した(d=3)。
 G5aは,療護施設への入居について,「親と訓練会の職員が相談して決めた。話を聞いた時,『ただ生きてるだけか』,と思った。施設では精神的に不安定で喧嘩ばかりしていた。……」(d=0)。グループホームに入居したのは,「10何年も同じ部屋に住んでいて,一度社会に出たかった。」「障害者団体の開催した自立生活セミナーにその団体の人の車で参加し,その帰りにその団体の作業所により,それがきっかけで通うようになり,その団体が関係するグループホームの話を聞き,すすめられて,自分で決めた。出たい一心だった。」(d=3)
 また現在一人暮らしをしている10人中4人が,成人後,居住型の施設で暮らした経験がある。
 Idは25歳から授産施設で3年暮らし(d=3),その後アパート暮らしを始めた。「家に戻りたくなかった。一人暮らしをしたかった。」(d=3)
 Ieは20歳から療護施設で9年暮らした。「家族への気遣いもあり,家にいるよりはましと思い,自分から申し込んで入所した。」(d=3)「施設ではこのまま終わるという思いもあり,友人からも言われ,なんとか30歳までに施設を出たいと思った。」アパートを借りて暮らし始めた。後に県営住宅に入居。(d=3)
 Iiは東北の授産施設で13年暮らした。「訓練校を出なければならず,他に行くところもなかった。」(d=0)「Aさんが講演に来た時の交流会がきっかけでAさんと手紙をやりとりするようになった。A氏がスタッフとして働いている自立生活センター(東京)のピア・カウンセリング集中講座に参加。その宿舎の風呂で別の団体のBさんと知合う。翌年Bさんが参加している団体の集中講座に参加。会員になり,連絡をとりあった。自立生活体験室に2週間入居し,その間にアパートも決め,住み始めた。」(d=3)
 Ijは療護施設で23歳から5年間暮らした。「大学卒業後実家に帰ったが,家庭に居場所がなく,両親の考えで療護施設に入れられた。生活がひどくて出たかったが出られない。ある女性と入籍でき、保護者が彼女となり出ることができた。」(d=0)。37歳から,別の療護施設で3年暮らした後,現在の居住場所へ。「療護施設を出たのは,池の中で死にたくない,大海でなくてもせめて小川に出て死にたいという気持ちから。」(d=3)
 以上,実際に施設で暮らした経験のある6人は,いずれも,それを否定的な経験として捉えている。もちろん,今施設を出て暮らしているのは,施設が住みよくないと思ったからだろうから,そうした人達が施設を否定的に捉えているのは当然のことであり,施設の入居者全体がこのように感じているわけではないだろう。ただ同時に,比較が現実に意味を持つのは,他の居住の形態が現実的な選択肢となっている場合であることにも注意すべきである。たとえば,施設での居住が唯一の可能な選択肢である時,その人は現在の暮らしについて問われて,まずまずであると答えることがあるだろう。しかし,このようにして得られた評価は,少なくとも比較のためには使えないはずである。
 現在一人暮らしをしている10人の中に,グループホームで生活した人が2人いる。いずれについても,グループホームは一つのステップと捉えられており,うち1人はグループホームでの生活について必ずしも肯定的に回想していない。
 Iaは養護学校卒業後ずっと在宅で生活した後,29〜30歳の時に土の会生活訓練所で1年間,実家に戻った。35〜36歳まで1年間グループホームで暮らした。「こんどこそ一人暮らしと思ってグループホームに入った。1年とめどを立てていた。グループホームでは介助者との関係を学んだ。この時に住居探しもした。」その後,一人暮らしを始めた。初めてから調査時まで6年,一人で暮らしている。
 Ifは24歳まで施設で暮らし,その後2年間グループホームで暮らした。「自分の時間がなかった。時間が思いどおりにならなかった。」グループホームを出て2年間親元で暮らした後,28歳で一人暮らしを始めた(調査時34歳)。

 ◆家族との関係(問11)

 施設に入居するにあたっては家族との関係が重要な要因になっていた。また,グループホームへの入居,特に一人暮しを始めるにあたっては,家族の反対に合うことが多い。では,この関係は入居後どのように変わったのだろうか。現在,その関係はどのような関係としてあるだろうか。家族との関係は個々人によって様々であり,ひとつにまとめることはできない。もう長いあいだほとんど関係のない状態にある人(N4b,s=1.5)もいるし,以前からうまくいっていないし今もうまくいっていないという人(Ii,s=0,Ijも同様,s=0)という人もいる。現在の暮らしに今も理解が得られていないと答えた人もいる(G3a,S=1)
 ここでは,入居の経緯とも関係するように思われる点を一つあげる。グループホームの居住者,一人暮らしの人に次のような回答が見られた。
 「入るまでは親は介助ばかりで自分のやりたいことができなかった。入ってからは余裕ができた。カラオケにも行っているらしい。」(G1b,s=2)
 「前は過保護で,心配ばかりしていた。今は(自分のことを)離れてみていられるようになった。」(G1c,s=1)
 「出た方がよくなった。家事などの話が対等にできるようになった。」(G2b,s=3)
 「以前は親と喧嘩していたが,こうして外に出て暮らすと,なんとなく対等に話せるような気がしている。」(G5a,s=3)
 「今は,逆に相談に乗ったり,愚痴を聞いてあげたりもしている。」(Id,s=3)。
 「一人暮らしをしてたら母と友人のような関係になった」(Ig,s=3)。
 「家を出るとき親に反対されたが,自分の介護中心であった両親の生活が二人の生活になったことに安堵している。いずれ親がもっと高齢になったとき利用できる制度について助言もできるだろう。」(Ia,s=3)
 「親としては心配していると思うが,自分としてはいいと思う。老人会の旅行なんかにも行っている。自分がいると行けなかった。だからうまくいっていると思う。」(If,s=3)
 これらの人達は現在の親との関係について,いずれも「うまくいっている」と答えている。在宅生活からの移行のあり方は,障害についての認識(問1)や,家族関係(問11)にも影響する。既に家族との関係が疎遠になっている場合は大きな変化はないが,家族との生活の後,介助をめぐる状況の悪化に押し出されるというかたちでなく,家族から離れることができた場合には,かえって,家族との関係が,以前とは違った良好な関係として再び形成されうることを,以上の回答のいくつかは示しているように思われる。

 ◆当事者組織のもつ意味

 グループホームへの入居にあたって特徴的なことは,障害をもつ当事者組織のもつ意味の大きさである。グループホームを作ろうとする動き自体が,当事者たちの活動の中から生まれてきている。今回の調査対象者にもその活動を実際に担ってきた人がいる。
 まず上記のG4aがそうだが,他にも,G2aは,大学在学中,後にグループホーム設立の運動を担う当事者組織の活動に参加し,開設されたグループホームに26歳で入居している。
 G1bも21歳の時に同様の組織のことを知り,その活動に参加するようになり,グループホームの開設時,25歳で入居している。「以前は自分で決めることがなかった。親や担任が決めていた。親はグループホームの入居に反対したが,自分で決めた。」
 あるいは,上記のG5aのように,障害をもつ当事者達の活動を知り,グループホームの存在,グループホーム設立の動きを知り,入ってきた人がいる。グループホームへの入居,そして入居した後も,自身の生活像を具体的に描き,それを実現していく上で,(当のグループホームを運営する主体でもある)当事者の組織,モデルとなる当事者の存在の意味は大きい。
 一人暮らしの人では10人中9人が障害者団体の活動に関わっている。また,すでにいくつか見たように,多くの人は障害者の組織とのつながりを介して今の生活に移ってきている(Ia,Ic,Ie,Ig,Ih,Ii,他にIfはグループホームでの生活を経てきている)。またIjは「今住んでいる場所を選んだのはホームヘルパー派遣時間が長いことと介護人派遣事業の制度が充実していること,そして障害者が運営する介護人派遣センターがあることによる。使っていないが心理的に安心できる」と答えている。第一に,生活を可能にする制度そのものが障害者運動によって獲得されてきたものである。第二に,サービス提供を行っている自立生活センター★07等の組織のサービスを利用している人達がおり,また実際にそれを使っていない人でもこのことが安心感を与えている。いざという時に頼れるものとしてこうした組織をあげる人が多いことは後にも見る。

 ◆いつその暮らしを始めたか/始められるのか

 これらの療護施設,そしてグループホームの居住者達は,いつごろ入居し,そしてどれだけの期間暮らしているのか。一人暮らしの人達はどうか。その平均値は前述した通りだが,今回の調査では,調査対象者を30歳代から40歳代前半の人に絞ったから,その結果は当然,全体像,平均像を表わすものではない。現在の全般的な状況について私達が知ることを合せて,その概略をみておく。
 療護施設では,今回の30歳代から40歳代前半の調査対象者でも,長い人では16・18・19・20年の間,同じ療護施設に居住している。10歳代後半,20歳代前半に入居した人がずっと同じ施設に居住しているということである。これは例外的なことではない。一度入った人が施設から出ることが少ないのである。療護施設が制度化され施設が開設されていったのは1970年代だが,以来同じ施設に居住している人は少なくない。また,そうした人達で入居時の年齢が今回の対象者より高かった人がおり,さらに比較的高齢になって療護施設に入所してきた人も多い。全般的に居住者の高齢化が進んでいる。
 他方,グループホームではどうか。グループホームの入居者は20歳代の若い人達が中心になってきており,今回の調査では30歳代の入居者を探すのに苦労した。29.9歳という平均入居年齢は療護施設の居住者より高いが,これは,グループホームの居住者の居住期間が療護施設の居住者よりも短く(療護施設の11.0年に対して 5.1年),今回の調査のように同年代の人をとると,入居年齢もより高くなることによるものであり,グループホームの入居者の全体像を示すわけではない。グループホームの居住期間が短いのには,グループホーム自体の歴史がまだ浅いという事情ももちろんあるが,それだけではない。先述したように,グループホームへの入居が最初から一つの段階として位置づけられ,実際,それがかなりの程度実現されていることによる。たとえば,G5の開設時にG5aと一緒に入居した人達はすべてここを出て暮らしている。ここでは既に6人がグループホームの次の生活に移っていったという。
 そして,一つのステップとして位置づけられているグループホームの生活は若いうちに体験すべきものとも捉えられている。たとえば,G3aの隣人は20歳代で,G3aは「振り返ってみると,彼のように早い時期に今の環境にあればよかった。このような経験は若い時期にすべきだ」と語っている。
 一人暮らしの人の場合,現在の生活を始めた時期は20歳代が4人,6人は30歳以降であり,平均は30.3歳。グループホームの入居者と同様,こうした数値は30歳代の人を調査したことによるものであり,必ずしも全般的な傾向を表わすものではない。20歳代の人を調査すれば,開始の時期は当然20歳代となるし,40歳代以上の人を調査すればより遅い時期に一人暮らしを始めた人が見出されるだろう。60歳を超えてから,施設から出た暮らしを始めた人もいる。ただ,この独立,自立の時期が障害をもたない人よりも遅いとは言える。障害をもたない人であれば,高校あるいは大学を卒業後,20歳前後に親元から独立するのが一般的である。親との同居は続ける場合であっても,一人一人の生活の独立性は高くなる。それと同じに考えれば,独立へのステップとして2年あるいは3年の期間が必要である場合があるとしても,20歳代の前半に移ってもよかったはずなのだが,それができなかったということでもある。

■02 居室(問5)

 満足度   : N1.0(33点) G2.1(70点) I1.6(53点)
 自己決定度 : N1.2(40点) G2.7(90点) I2.8(93点)

     定員    1人分(畳)  満足度   決定度
           a・b ・c  a・b・c a・b・c
 N1:1・2・4※ 4.5       2     0
 N2:4・6・8※ 2       0     0
 N3:2      4・2.7・4  3・1・3 3・2・2
 N4:1      6・4.5    0・0   0・0
 N5:1・2※   6・6     1・0   −・2
 N6:1      6       0     1.5

※ N1aは4人部屋から2人部屋へ,N2aは8人部屋に居住,NVaは個室,NVb  は2人部屋に居住。

 G1:1      6      2・2・2 3・3・0
 G2:1      6      3・3   3・3
 G3:1      6      1     「
 G4:1      8      1     3
 G5:1      9      1     3
 G6:1      6      3・3   3・3

 Ia:1部屋           1     3
 Ib:4部屋           2     3
 Ic:2部屋           2     3
 Id:3部屋           3     3
 Ie:2部屋           0     3
 If:2部屋           1     3
 Ig:2部屋           2     3
 Ih:1部屋           2     3
 Ii:1部屋           2     3
 Ij:3部屋           1     1

 キッチンを含めて1部屋:3人,2部屋:3人,3部屋:3人,4部屋:1人。

 ◆療護施設の部屋

 他に比べ療護施設では居住空間についての不満が大きい。また自己決定の度合いが低い。そして施設による違いがはなはだしい。今回の10人だけを見れば,個室4人,2人部屋5人,8人部屋1人という結果だが,療護施設の実情をいくらかでも知っている人にはことわるまでもなく,これは療護施設の全体像を表わすものではない。個室を全面的あるいはかなりの割合で採用しているN4・N5・N6は,全国の療護施設の中では例外的である。
 そして1部屋あたりの居住者数,1人あたりの面積にも関係して,プライバシーが確保されていないとの回答を得た施設が多い。2人部屋に住んでいる居住者の中の3人が,  「現在同室の人とはうまくいっている。自分一人の部屋がほしいとは思わない」(N3a,s=3),
 「同居者とは入居時から同室で関係が悪くないため,部屋を変わりたいという気はない」(N3b,s=1)
 「互いに干渉しないのでかまわない」(N5b,s=1)
 と回答しているが,
 「個室になってよかった。介助のこと等同室の人を気にせず職員と相談できる。夜起きている時間が長くなった。客に気をつかわずにすむようになった。」(N5a,s=1)
 という回答もあり,この一人だけが,「最低限のプライバシーは守られている」としている。
 個人スペースは「ベッドとそのまわり」だけ,プライバシーは「全くなし」(N2a,s=0,8人部屋,1人分2畳)。
 個室になっているところでも「職員から部屋が汚ない等,いろいろ指示をされるのが嫌だ。自分のお客さんなのに勝手に声をかける等,人間関係がわずらわしい。隣室の音が気になる。」,プライバシーは「保護されていない」(N6a,s=0)
 といった回答があった。

 ◆「個室化」について

 上にみたように,療護施設の居住者のすべてが個室を希望しているわけではない。そして,個室化は居住者を孤独にするだけだという声もしばしば,特に施設を運営する側から,聞かれる。
 だが第一に,これらの事実や指摘は,希望がある場合は個室「も」用意されるべきだという主張を覆えすことのできるものではない。
 そして第二に,居室や居住する建物の外で対人関係を結ぶ「普通」の生活を営めるようになる時,むしろ「孤独になれる」場所として個室が求められることもあるはずである。常にいる部屋だから個室化が求められるというのでは必ずしもない。そこで生活がすべて完結してしまうなら,一日中孤独で過ごすよりもむしろ誰かが傍にいた方がよいと感じる人がいるだろう。だが,そうでないなら事情は変わってくる。次に記すグループホームやアパートに住む人の個室は,日中外に出て,人に会って過ごす人達が一人になる場所でもある。

 ◆グループホームとその居室

 グループホームでは10人全員が6〜8畳の個室に居住しており,部屋には鍵がかかるようになっている。プライバシーがまずは確保されている。「介助者はノックして入る。隣室には入らない。」(N3a)。
 だが,グループホームも居住空間として十分というわけではない。
 第一に,これは後の建物・部屋の改造の項でも確認されることだが,既存の住居の多くは,障害をもって複数の人が暮らすのに適したものでなく,その改造にも限界がある。特に一戸建て,一世帯用の民家をグループホームとして利用するような場合には,電動車椅子で室内に入るといったことは困難である。今回の調査対象の中では,G6が一世帯用の建物(1階に6畳ほどのDK+6畳和室1,2階が和室6畳×3)で,室内での車椅子の利用は困難である(ただG6の居住者はいずれも,ひざ歩き等でのある程度の移動が可能なので,不都合はそれほど大きくはない)。遮音性についても十分でないという回答があった(G4,G6)。
 第二に,グループホームに限らず,都市部の住宅,集合住宅全般に見られる問題がある。グループホームの10人中4人(G1a,G1c,G3a,G4a)が日照について「悪い」と答え,よいという回答はなかった(一人暮らしの人ではIfが日照の悪さを指摘)。風通しについても同様の指摘がある。他方で,療護施設では,10人中6人が日当たりは「よい」と答えた。グループホームの多くが住宅密集地にあるのに対して,療護施設のほとんどは市街から距離があり,敷地も広いことによるだろう。
 第三に,当初からグループホームとして設定された場合でも,個々の居室の独立性が十分でないという指摘がある。G5aは「快適だ」としつつ,「共同生活だから,ある程度押さえなくてはならない。他の3人に迷惑をかけないようにしなくてはならない。」「部屋の中はよいが,出入口やトイレが共同で,お客が来ればそこを利用する。プライバシーという点では問題がある。」とも述べている(s=1)。
 このように,グループホームにも,グループホームとしている建物の構造的な問題,また立地条件による問題はある。もちろん,十分な予算を使えれば,以上の問題も解決可能ではあるだろう。しかし,現実には,障害をもつ人のための住居に限らず,制約はある。この場合,敷地面積,採光,通風,等を優先するか,あるいは,これらの条件が十分に満たされなくても街中での生活をとるかという選択を迫られることになる。後にも見るように,グループホームは基本的に後者を優先し,その上で可能な限り居住性を確保しようとする。この方向により大きな価値を見出しているようである。
 他には次のような回答もあった。「グループホームの代表なので,部屋が応接室のようになってしまっている。介助の必要がなくても介助者が入ってくる。介助者の教育もあり,現状では仕方がないと思っているが,将来的にはアパートでの生活等を望んでいる。以上は,自分にアパートでの一人暮らしの経験があるから感じるのだと思う。」(G4a)自分の居住より,グループホームの活動・運営主体としての立場が優先される,優先せざるをえない場合があるということである。

 ◆一人暮らしの部屋

 一人暮らしの人では,賃貸のアパートなどに住んでいる人が9人。1部屋(6〜9畳)3人,キッチン(3〜 4.5畳)も含め2部屋3人,3部屋が3人(以上賃貸)。このうち2人(Ie:2部屋の車椅子用住宅,If:2Kの一般住宅)が公営住宅に住んでいる。そして4部屋の自家に住んでいる人が1人いる。
 居住面積は平均値としては療護施設,そしてグループホームより広い。また,風呂,トイレ等の設備面を含め居室の独立性もより高い。風呂,トイレが各自の居宅にあることは一人で暮らすには必須の条件である。その分,トイレ共用,風呂はなし(銭湯を利用)といった(今では少なくなった)アパートに住むよりは高くつくことになるにしても,これは仕方がない。(払っている家賃については後にみる。)
 ただ,広さについての不満はやはりあり(Ia:s=1,1部屋),「プライバシーはあるが,介助者が常にいる」「常に人が出入りしている」といった回答があった(If,Ij)。車椅子を部屋の中で使うことを考えると,また介助者をおくことを考えると,一般の一人暮らしの人よりも広い部屋,また複数の部屋が必要なのだが,それが必ずしもかなえられていない。後に述べるように,自らの外出や介助者にとっての利便性を考えると交通の便が優先され,その分,狭い空間に甘んじるしかないということでもある。
 他に,日照(If:s=1),一般公営住宅の仕様等の問題(Ie:s=0,車椅子には不便,単身入居に制限があること),経済的理由で改造できない(Ij:s=1,d=1),などの不満があり,満足度の平均値を下げている。満足度や自己決定度の基準自体が居住環境によって異なり,単純に並列して比較できない。このことは,以下すべての項目について言える。また,Ijの数値は改造に関わるものであり,むしろ問3に関わる数値と解するべきだろう。機器についての満足度・決定度と改造についての満足度・決定度とを別に聞かなかったことも含め,調査を設計した際の私達の不手際でもある。

■03 機器(問3)

 ◆機器の利用実態

 機器の導入や居室の改造の状況はどうなっているのか。居室の改造を伴う機器の導入があるから両者は常にはっきりと区分されるのではないが,前者の方から後者の方に移っていきながら,その様子を見る。
 手動の車椅子はすべての人が以前から使っている。ただ,電動車椅子を利用するようになったのは3年前,4年前など比較的最近の人が多い。一人暮らしの人では10人全員が電動車椅子を利用している。機器導入の利点についての質問に対して,電動車椅子の導入に関する回答をした人が最も多かった。
 「一番利用価値が高い。」(G2a)
 「活動範囲が広がった。ただ,レストラン,デパートでは使いにくい。乗降時に介助が必要。リフト付バンが使えるといい。」(N3c)
 「行動範囲が広がった。」(N4a,N5b)
 「施設の周辺を自由に移動できる。」(N4b)
 「一番利用価値が高い。グループホームに入居してから入手。」(N2a)
 「手動の場合はたえず介助者の都合に合わせて行動しなければいけなかったが,電動にしてからは自分の予定を自由に組むことができるようになった。行動範囲が拡大し,自由に予定を考えることができるようになった。」(Ig)
 「よかった。施設で暮らしている時は使っていなかった。」(Ii)
 「活動にはなくてはならないもの」(Ih)
 他に導入した機器についての満足度も全般的に高い。
 「皆いい。」(G1b,車椅子・電動車椅子・ワープロ・福祉電話・電動歯ブラシ・インターホン)
 「生活しやすくなったと思う。」(G1c,車椅子・電動車椅子・補聴器・ワープロ・ファックス・トーキングエイド・電動歯ブラシ)
 「すべてがなくてはならないものばかり。」(G5a,車椅子・電動車椅子・ワープロ・電動歯ブラシ)

 ◆療護施設居住者のハンディキャップ

 ワープロ(パソコンを含む)を所持している人が15人(N3人,G4人,I8人(このうち4人はパソコン)),ファックス5人(G1人,I4人),福祉電話2人(G1人,I1人),スピーカーホン(G1人,「一人で電話がかけやすくなった」),ハンズフリーの電話(I2人),呼気スイッチ電話(I1人),トーキングエイド3人(N1人・G1人,I1人)。
 「呼気電話は一人でいても安否確認可能。聴覚障害者には公費負担があるので,適用範囲を広げてほしい。」(Ij)
 グループホーム,一人暮らしの人が導入している機器として特徴的なのは,コミュニケーションに関係する機器が多いことである。これに対して療護施設居住者ではこれらの機器を所持し利用している人が少ない。これには2つの事情がある。
 まず,療護施設で機器の導入が多少とも居室などの改造をともなう場合には,次の項にも見るように,改造は許可できないと施設側に言われ,導入できない場合がある。個人が使用する電話の利用などがこれにあたる。それでN2aは携帯電話を使っている。
 そして機器購入にあたっての費用負担については,療護施設に住む人の方がむしろ不利な立場にある。「補装具」★08は施設居住者にも給付されるが,「日常生活用具」★09の支給対象は在宅の障害者に限られており,ワープロ等は支給の対象にならず自己負担しなくてはならないからである。

 ◆機器に対する不満

 不満は,まず,機器の品質が満足できるものでないことに向けられている。
 「(電動車椅子が)もう少し安くならないか。種類が多くならないか。」(Ia)
 「レインコートにおしゃれ心がほしい。とってつきコップやふたつきコップも老人用が主。介助者にとって使いやすい。自分に合わせたものがほしい。」(Ia)
 「トーキングエイドはもう少し肉声に近いとよい。」(Ic)
 もう一つの不満は,公的な助成のあり方に対するものだった。支給のあり方が利用の実情にあっていないというのである。
 グループホームの居住者や一人暮らしの人でもワープロ,パソコン等については自費で購入した人も多い。グループホームに居住する4人中,1人が自費,1人が1台目公費,2台目自費,1人が1台目自費,2台目公費となっている。一人暮らしの人の中にもパソコンについては自費で購入した人が3人いた。
 「パソコンはワープロとして公費補助があるが,指定業者があるなど制約があることと補助額が少ないため,自費で現金で購入した方が安くなるのが問題。」(Ij)
 補装具として給付される車椅子についても,「軽くしたいのでスタン合金のものを使用」とした人(N2a)が自費で,「軽くてカラフルなので,米国製の電動車椅子を使っている」人(Ig)が半額自己負担で購入している。
 「買い換えまでの期間が長い。手動車椅子が3年なのはよいが,電動車椅子は住んでいる自治体の制度では5年。使用頻度は人によって異なる。使用量(距離)によって考えてほしい。走行距離メーターをつけるのはどうか。」(Id)
 選択できる幅や手続き上の問題で,公費支給の対象になっているものでも自費で購入する場合があるのである。たとえば業者が指定されていることで価格が高くなってしまう。かなりの割引販売がなされているパソコン等の場合には,安い店で全額自己負担で買った方が,指定業者から購入し,その価格から公費負担分を差し引いた分を自己負担するより安くすむといったことが起こってしまう。そして,指定されている機種が自分の必要や好みに合わないこともある。
 また,ハンズフリーの電話等は特に障害者用に開発されたものではないが,利用価値の高いものとして評価されている。
 「福祉電話の場合,貸与される電話の機種が定められたものであり,選択できないため,不便。」(If,Ij)
 「ファックス,パソコンは便利ではあるが,日常生活用具の制度にはなく,色々な方策をみつけ,手に入れているのが現状。」(Ij)
 「トーキングエイドについても,作業所と自宅というように,1台だけではなく,2台目,3台目が必要である。」(Ic)
 このように,限られたものについてしか公費支給が認められず,さらにその機種等が限定されていることの問題が指摘された。制限の多い現物支給のシステムになっていることによって,供給サイドで価格競争,品質競争が起こらず,その結果,福祉機器と呼ばれるものの多くが値段が高く,使い勝手が必ずしも満足できるものでないこと,デザイン的にもすぐれたものが少ないという実態になっている。購入の際の利用者の選択の幅を拡大する方向でシステムを改革すべきである。また,買い替えが認められるまでの期間が長すぎることも指摘された。こうした点も見直しが必要である。

■04 改造(問3)

 ◆グループホームにおける改造

 グループホームは既にある建物を利用する場合(G1,G4,G6)と,新たに建設されるもの(G2,G3,G5)と2通りある。後者の場合でも,家屋の構造として可能であり,また予算的に可能であれば,居住者=運営主体側の希望で改造することができる。
 G6は一軒家を使っているため,大規模な改造は難しいが,各居室に鍵がかかるようにし,階段に手すり,階段昇降機をつけ,トイレをウォシュレットにした(全額公費助成)。重度とはいえ,ある程度自力で移動等が可能な居住者は「便利だ」(G6a,G6b)と答えている。
 G1はより大きな改造が加えられている(自治体から居住者1人につき40万円の補助があった)。
 「在宅の時より生活しやすくなった。」(G1b)
 「生活しやすい。でも狭い」(G1c)
 G4も浴室,ドア,廊下等に改造が加えられている。
 「浴室での介助が楽になった。外出時の出入りを自由にできるようにしたい。ただし大きな改造は,建物を家主より5年を限度に借りているため困難。」(G4a)
 G2は,それまで6年間グループホームとしていた建物を離れて,1994年に新たに新築された(G1と同様の補助があった他は運営・入居者側の自己負担)。エレベーターを設置し,玄関を自動ドアにし,玄関先にスロープを設置,各階は車椅子で移動できるよう極力フラットにし,電動車椅子で部屋の中まで入れるようにした。居室は,建築時に既に決まっていた入居者の希望を入れて整備した。
 (改造の利点は)「おおいにある。以前のグループホームは建物が小さく,3つの部屋をとるのが精一杯。道路に直接面し,すべてフラットにできなかった。」(G2a)
 「段差がない。エレベーターがある。入口が広い。内風呂になったので入りやすく介助しやすくなった。」(G2b)
 G3,G5もグループホームとして建設され(G5は民間賃貸の建物だが,建築に際して 400万円自治体から援助を受け,グループホームとして設計され建設された),利用しやすいように整備されている。ただ,開所時からの入居者から「プライバシーの点から,出入口を個々別々にしてほしい」(G5a)という指摘があった。

 ◆一人暮らしの人の場合

 一人暮らしの人も,玄関先にスロープをつける,廊下の段差をなくす,風呂・トイレの改造,等,かなり積極的に行っている。
 「トイレが一人でできるようになった。夜の介助がいらない」(Ia,風呂場に手すり,浴槽の中に台,トイレの床のかさあげ)
 「電動車椅子で自力で各所に移動できるようになった。」(Ie,トイレの床上げ,浴室の床上げ,廊下の段差の解消)
 「改造したことによってだいたい自分で身辺処理ができるようになったが,台所の流し台がもう少し低ければよかったと思う。簡単な調理を自分でしたい。」(Ig,玄関前にスロープ,トイレに手すりとウォシュレット,出入口の段差をなくす,洗濯物を取り込むため縁側にベランダ,浴槽にシャワーを設置,すのこを付け浴槽との段差をなくす)
 改造については家主の理解を取り付けて入居している。例えばIcは入居にあたり,10万円敷金に上乗せして,作りつけのベッドをとってもらった。ただ,もともとスペースが限られていること,そして建物の構造上の問題,また賃貸物件の場合には出るときに復元しなくてはいけない等の貸主との関係があって,大掛かりな改造や機器の設置が難しい場合がある。(既存の,特に賃貸の建物を利用する場合の)グループホーム,一人暮らしの人の不満はこの点に向けられている。
 「もっと手を加えたいところもあるが,出る時,元に戻さなければならないのでここまでしかできない。」(Id,玄関にスロープ,トイレに手すり,風呂場には浴槽の中にすのこ,外に台,その他,もの干し台を低めにした)
 できることはやっているが,それにも限界があるというのが現状である。今ある民間賃貸住宅では確かに限界があるだろう。だが,公営住宅等を改造可能な仕様にする,民間の賃貸物件にも,建築時に補助を行い,既存の建物の改造が難しいなら予め改造可能な仕様にすることを推進することもできる。個々人の必要に合せるには障害者専門の施設でもそれなりのコストがかかる。一般の住居でも,同等あるいはそれ以下のコストで,居住環境を整備することは不可能ではないはずである。

 ◆療護施設における改造

 療護施設は障害者の療護の「専門」施設だから個々の障害に応じた機器が提供され,生活環境が整備されていると考えられているとすれば,事実はそれに反している。
 第一に,療護施設で使用されている機器等のかなりの部分は,一般の住居にも導入できるものである。N4bが導入している環境制御装置は一般住宅にも取り付けられる。天井走行リフターも,グループホームとして新築されたG3では,G3bの居室にとりつけられている。また療護施設の居住者の中には,機器の導入,改造にあたって職員と相談したり(N4a),職員から助言を受けた(N4b)例があるが,こうした専門家の助言にしても施設で暮らしていなければ受けられないものではない。一人暮らしの人では,先輩のアドバイスや生活訓練の場での体験等も活用して,出入口,風呂,トイレ等にかなり細かく改造を加えていた。
 第二に,施設側の姿勢にも関わり,満足度の高い施設がある(N3〜6の8人中6人がs=3)一方で,改造を申し入れても受け入れられない施設もある。
 「改造は全くできない。施設だからできない。今欲しいのが電話。施設内の公衆電話は高い位置にあり,車椅子のままで使えず,夜などはわかりのいい職員に頼まないとかけられない。障害者用の公衆電話をつけてくれと言うと,県の管理下だからできないと言われる。仕方なく携帯電話を買うことに決めた。」」(N2a,s=0)
 少し前であれば電動車椅子の導入自体かなり難しかったのに比べ,公費支給あるいは補助の対象になる用具の導入は相当容易になってきてはいる。ただ,電話回線の設置,個別の電話の設置等,居住の場の全体のあり方にいくらかでも関わり,また居住者の生活がどのようなものとしてあるべきかという姿勢に関わる場面では,療護施設の中に上記したような現実があるということである。施設によっても,かなり部屋の改造にかかわる事情が異なっている。
 「なし。」(N1a)
 「改造はなし。これまでは現状であきらめていた。こんなものだと思っていた。最近,不満,要望ができてきたので,施設側に言っていきたいと思うようになった。足でものがとれるように棚を低いところにしてほしい。テレビの位置を変えて欲しい。」(N3b)
 「自分の希望を取り入れて全面改造した。」(N5a)
 「室内で電動車椅子の移動が容易になるよう改造。」(N5b)

■05 介助(問2)

 満足度   :N0.9(30点) G1.8( 60点) I1.6(53点)
 自己決定度 :N2.2(73点) G3.0(100点) I3.0(98点)

       満足度=s 自己決定度=d
 N1a  :1     0     
 N2a  :0     0     
 N3abc:3・1・0 2・2・2 
 N4ab :0・1.5   3・3   
 N5ab :1・1   3     
 N6a  :0     3     

 G1abc:2・2・2 3・3・3
 G2ab :1・1   3・3
 G3a  :3     3
 G4a  :0     3
 G5a  :1     3
 G6ab :3・3   3・3

 ◆グループホーム,一人暮らしの人の介助の使い方

 グループホーム,一人暮らしの人の多くは,いくつかの制度を組み合わせて使っている。また,身体障害者のグループホームに(「福祉ホーム」と呼ばれるものを別にすれば)法制上の規定があるわけではなく,グループホームに対する介助システムも制度的にあるわけではないのだが,個々人でなく,グループホーム(の運営委員会等)が介助する人を確保している場合はある。
 第一にホームヘルパー。多くは1回2時間×週2回程度だが,週24時間(Ij)の人,またガイドヘルパーを月60時間利用している人(Id)もいる。またIiの場合は留守派遣がなされている。利用者が選んだ介助者をホームヘルパーとして自治体に登録し介助させる,いわゆる「登録ヘルパー制度」★10が最近各地で採用され始めている。
 第二にいくつかの自治体にある介護人派遣事業★11が利用されている。自治体から利用者が選んだ介助者に介助料が支払われる。ただ,この事業が最初に開始された東京都以外の自治体の多くでは,この事業は制度上はホームヘルプサービスの一部として位置づけられており(したがって,費用も国の負担が1/2,都道府県・市町村が各々1/4),上記した「登録ヘルパー制度」とそう変わらない実態もある。今回の調査対象者の居住地域の多くにはこの制度があるが,全国的には少数の自治体に限られる。別言すれば,こうした地域でないとグループホームでの居住,一人暮らしが困難だということである。多い人で,Ib・Icが月 153時間分(1時間1380円),約21万円。Ijが月約46万円(昼8320円+夜7070円,×日数)。月あたりの時間が決まっており,1時間あたりの単価がホームヘルパーと同じ基準になっている前者でも,実際には時間あたりの対価を引き下げ,時間を長くするといった使い方がとられている。夜間を含め生活のほぼ全部に介助を必要とするIjは,この制度が充実した自治体を選んで療護施設から移り住んできた。1日約20時間の有償介助を得ている。夜の介助は夜7時から翌朝8時頃までで,11700円。昼の10時から4時までは5000円(この時間帯の週1日はボランティア)。他にボランティアによる介助,ホームヘルパー(週24時間)による介助を受けている。
 以上の制度で必要な量を得られない人は,生活保護を受給し,その他人介護加算★12を利用して有償の介助者を得ている。介助者の調達,介助時間等の調整にあたっては,自立生活センター等の障害者の組織が利用される。他にボランティアによる介助を得ている人もいる。
 一人暮らしの人は,1人を除き,全介助の日常生活動作がある人達だった。各地域で介助サービスに関わる制度が異なる。また,多くの人は,使える制度を組み合わせて,非常に複雑な使い方をしている。曜日によっても異なり,また体調等によっても時間が変わる場合がある。以下は,概算であり正確な数字ではない。金額はホームヘルパー,介護人派遣事業等,行政から直接介助者に支払われるもの,生活保護の他人介護加算のようにまず利用者(生活保護の受給者)に支払われるもの,また生活費からの捻出分も含んだおおよその金額である。ボランティア,家族による介助については,介助時間の中には入っているが(この調査ではそれを正確に算出することはできなかった),金額には含まれていない。仮に調査年度のホームヘルパーへの報酬×時間とすると,例えばIjの場合は約84万円,Iaの場合が約24万円といった金額になるだろう(下では( )内にその概算額を示した)。時間的な融通がある程度きく介護人派遣事業の利用において時間当たりの単価を安く設定する,ボランティア等による介助を使うといった方法でこの差が埋められているとも言える。
                                   s  d
  Ij派遣事業46万円※+ヘルパー週24時間+ボランティア       2  2.5
      →1日約20時間  計約60万円(84万)
  Ic派遣事業21万円※※+介護加算10万円+ヘルパー週4時間     0  3
      →1日約9時間  計約34万円(37万)
  Ii派遣事業+市の登録ヘルパー                  3  3
      →1日約8時間  計約30万(33万)
  Ib派遣事業21万円※※+ヘルパー週6時間             2  3
      →1日約7時間  計約25万円(29万)
  Ia生活保護他人介護加算(厚生大臣承認)165000円+ボランティア  1  3
      →1日約6時間  計約16.5万円(24万)
  If生保他人介護加算104180円+ヘルパー3時間×週2        0  3
    +ボランティア+家族が月3回
      →1日約5時間  計約14万円(20万)
  Ig派遣事業6700×14+ヘルパー2時間×週2+ボランティア週3   2  3
      →1日約4時間  計約12万円(16万)
  Idガイドヘルパー月60時間+ホームヘルパー2時間×週2      1  3
      →1日約3.5時間  計約11万円(14万)
  Ih生活費から1500円×2時間×週3                2  3
      →1日約1時間  計約4万(4万)
  Ie生活費から月約2.5万円を有料ボランティアに支払う+掃除等は母親 3  3
      →週3回程度   計2.5万円

 ※ (昼8320円+夜7070円)×毎日
 ※※1380円×月153時間
 * ( )内は実際の介助時間にホームヘルパーの時間あたりの単価をかけた金額

 介助者への支給額を積算すると,実際のところでは最高月60万円ほど,全て有償化すれば80万円強の人がでてくる(Ij)。この場合,生活にかかる費用の総額は,療護施設の措置費の基準ははるかに超えるが,自治体からの支出が多いN4〜6と比較すれば高くはない★13。そして以下に述べるように,生活の質の違いがある。

 ◆グループホームの居住者と一人暮らしの人の評価

 グループホームの居住者と一人暮らしの人のすべてが,自己決定が確保されていると答えた。満足度については,特に障害が重度の人の場合,量的な不足が指摘された。介助者の確保が大変なことが指摘され,介助に関わる資源,介助費用の支給額が少ないことが特に問題にされている。
 グループホームの居住者では
 「ぎりぎりの状態」(G2a,s=1)
 「手が足りない」(G2b,s=1)
といった回答があった。
 他には次のような回答がある。
 「介助者と性格,考え方が合わない時がある。介助者に文句を言われたこともある。」(G1c,s=2)
 「突然のキャンセルや遅刻,介助のローテーションに入っているという自覚が足りない。慣れてしまった場合,言わなくてもわかってしまい勝手に介助してしまおうとする。慣れが恐い。ただし,施設では「早く」,「こぼすな」等,強制されるがここでは介助内容を自らが決定できる。」(G4a,s=0)
 「急に来られなくなったりとか,人材の確保の問題がある。自己選択を大切にするという立場から,有料化し,常勤コーディネーターは介助しないという原則を作っている。」(G5a,s=1)
 「専従職員の男女バランスをいうと問題はあるが,生活全般としては充実している。基本的には指示がないと職員等は動かない。慣れてくると言葉はかけてくるが,原則は本人が指示する。」(G3a,s=3)
 一人暮らしの人では,
 「時間が短い。また朝と夜の確保が困難なため,日中の活動が制限される。」(Ia), 「介助の確保が大変」(Ig)
 「夜など,もっと介助を確保したいが費用がかかる」(Ie)
 「介助者への指示が疲れる。週2〜3回は寝ていたい。」(Ij)。
 「施設では,自分でやらされ時間がかかった。介助者が入ってよかった。」(Ii)
 ただ,一部の療護施設に見られる基本的必要が満たされていないといった状況にあるグループホームは今回の調査対象の中にはなかった。
 グループホームでも一人暮らしでも,量的な不足の他に,介助者との関係などで様々な問題が生じるが,問題が生じた時,十分にとは言えないまでも,その問題を解決するための(介助者の交替といった手段の行使も含め)介助者側に対する働きかけは可能である。このようにして自己決定が確保されている。この点が療護施設と違う。
 グループホーム居住者,一人暮らしの人は,日中は外に仕事にでかける。食事,更衣など介助が必要なのは,まず出かける前の朝の時間である。ところが,ヘルパーが訪問してくる時間が遅いため,早くに出かけることができないといったことが起こる。
 「9時から11時。8時からにしてほしい。」(Ic)
 「朝はもう少し早く。日中の活動が制限されてしまう。」(Ia)
 またヘルパーは原則的に本人がいないと派遣されないため,本人がいなくてもかまわない仕事(食事の後片付け,掃除,洗濯)の場合でも,本人が在宅していなくてはならず,やはり活動が制約されることがある。そこで,Iiの場合は留守派遣がなされている。このような柔軟な対応が求められる。
 他には次のような指摘があった。
 「髪のブラッシングの時に手袋をする。ヘルパーのテキストに障害は病気だと書いてある。」(Ic)


 ◆療護施設での介助

 療護施設での介助に関わる自己決定度については,施設による違いが大きい。
 「午前7時10分にベッドから降りる。午後7時半にベッドに上がる(他の人は6時半)。ベッドに上がると本を読むこともテレビを見ることもできない。できたら9時半にベッドに上がりたい。電話の介助を頼むと職員が断る,怒る。外部との通信は自由だと思う。トイレの時間も決まっている。個人のことで,生理現象だ。時間を決めるのはおかしい。やろうと思えばできるはずだ。」(N2a,8時30分に排便,11時30分・14時50分・16時45分に排尿,朝食は7時40分,昼食は11時40分,夕食は17時,昼も夜もトレーナー,寝間着を着て過ごす)
 これは,個々の介助内容の細かな部分を指図できるできないという以前に,生活の基本的な部分を自分の思うように営めない状態に置かれているということである。
 このように生活時間が定められていることはなく,利用者の要請に応じて介助を行う施設もある。それらの施設の居住者の自己決定度は明らかにそうでない施設より高い(N4・N5・N6>N3>N1・N2)。
 しかし,そのような施設での介助について居住者が満足しているかというと,実はそうではない。満足度は総じて低い。中では例外的なN3aの回答(s=3)は,以前いた同じ県内の療護施設での介助に比べれば現在いる療護施設の方が格段によいことによる。以下のような不満が聞かれた。
 「職員によって異なるが,着替えや入浴の時,時間に追われて,いいかげんにされることがけっこうある。」(N3b,s=1)
 「介助の仕方が荒っぽい人がいる。」(N4a,s=0)
 「職員によってやり方が違う。」(N4b,s=1.5)
 「人によって違う。やり方が均等になればと思うことがある。言葉の使い方なども気になる。」(N5a,s=1)
 「職員によって違う。乱暴な人がいる。」(N6a,s=0)
 このように,介助における職員の態度についての不満が多い。
 今回の調査では介助者からどう呼ばれるかについても聞いた。療護施設の10人中5人が,「ちゃん」づけで(も)(N3a・N4a・N6a,34歳・38歳・35歳,いずれも女性),「くん」づけあるいはあだな(N4b,40歳,男性),呼び捨てあるいはあだな(N2a,41歳,男性)で呼ばれている。
 利用者の自己決定を尊重することにそれなりに自覚的である施設もある。入居者自治会があり機能している施設もある。N4〜6は比較すればそのように言ってよい施設である。にもかかわらず,利用者の満足度は高くない。上に見たように,職員による介助の質のばらつきがあり,呼ばれる際にちゃんづけされたり呼び捨てにされたりということもある。
このことは何を意味するだろうか。施設の方針として,利用者の必要,要請に応えて介助をすることになっていても,現在の施設の措置体系のもとでの職員・対・入居者という関係から,構造的に問題が生じやすいということではないか。つまり,施設側が管理・運営の主体で,その一部として職員がいるという体制では,サービスの利用者と提供者という関係が形成されにくく,また自覚されにくい。
 基本的な生活水準さえ確保できていない例があるのだから,介助のあり方は改善されるべきだし,またそれは様々な方法で可能であろう。施設の自治会等が交渉の主体となって,施設側と交渉を行い,そのあり方が改善されている施設もある。しかし,その先の問題となると,たとえば,利用者が介助者を選び,契約を結び,利用者の要望に応えられないサービスの提供者は契約を解除できるようにするなど,システム自体を変えていく必要が出てくる。

 ◆医療(問8)

 健康管理についての満足度は,療護施設2.1(70点),グループホーム2.0(67点),一人暮らし1.9(63点)と大きな差はない。
 かかりつけの医療機関は,療護施設では施設内診療所などが多く,そこで筋緊張緩和剤などの投薬を受けている人が3名いる。グループホームでは近隣の総合病院や障害者専門病院などを受診している人が8人,そこで筋緊張緩和剤などの投薬を受けている人が3人いる。その他は地域の病院の対応が悪く受診していない。一人暮らしをしている人では,近隣の総合病院や障害者専門病院などを受診している人が4人,そこで筋緊張緩和剤などの投薬を受けている人が1人となっている。
 段差の問題から電動車椅子で一人で通院できない病院があるという指摘(G1b,s=2)があった。医療サービスを受けるために外出する場合には交通機関,建築物などのアクセシビリティの不備が問題になる。他に,障害者の医療に対応できる病院,医者が少ないという指摘が少なからず見られた。
 「対応はしてもらっているが,脳性まひを理解してくれるところが少ない。」(G2a,s=2)
 「歯科治療など一般の病院ではやってくれないので予約等が大変。」(G4a,s=2)
 「風邪ぐらいだったらどこの病院でもかかれるが,場合によってはかかれるところが決まってくる。」(G6a,s=1)
 もちろん,医療自体が対人サービスの一種であり,介助サービスと共通する部分がある。その対応のあり方を今述べたのだが,医療についての質問への回答をここでとりあげたのは,この理由だけからではない。通院や入院時の人的な援助,また緊急時の対応のあり方に,介助サービスと共通する部分がある,あるいは介助サービスの一部と捉えてよい部分があるからである。この場合に関係するのは医療従事者だけではない。
 療護施設では,多くの場合職員が対応している。ただ,次のような指摘もある。
 「入院の場合には家族に電話がいく。家族がいない人は病院まかせになっている。」また,「単なる発熱の場合も入院になってしまう。投薬の時…ご飯と一緒に食べさせられてしまう。」(N2a,s=0)
 1週間入院した際,「母が泊りこんでくれ,職員は1日1回見舞いということで来てくれた。」(N5a,s=3)
 入院する時には家族が世話をすることになる場合がある。基本的には病院側が対応すべきなのだろうが,現状ではそれは難しい。施設と別の場所にある病院に入院すると,施設の職員は対応できない。こうした場合には,施設につく職員よりも――ホームヘルパーによる対応は現行制度上は難しいが――介助者として人につく職員(介助スタッフ),在宅サービスを行う介助者の方が融通がきく。通院にしても同様である。
 「職員が,あるいは福祉タクシーで,薬をもらいに。」(G1a,s=2)
 グループホームの「職員が通院に同行」。(G1c,s=3)
 「入院になれば介助体制を調整して,介助者に病院に来てもらうことになるだろう。親には頼む気はない。」(G2a,s=2)
 10日間の入院の際,「ヘルパーを付けてくれた。」(G5a,s=3)
 病気になったら,「介助者が対応するだろう。」(Ib,s=2)
 病気をして自宅,グループホームで静養する時にも,友人,介助者,ボランティアが対応したという回答がいくつもあり――「介助者(学生アルバイト)を延長して対応」(Ij,s=2),他にG2a,Ia,Ib,Ic,Id,Ie,等――,意識的に親や身内には連絡しないという回答もいくつかあった(G3a,G4a,等)。
 そして,特に緊急時,自らがサービスを利用している自立生活センターや通っている団体に連絡して対応してもらったという回答があった。
 「ヘルパー,介助者がいない(自宅に来ていない)時に,CIL立川★14に電話して緊急に来てもらったことがある。」(Ii,s=2)
 寝込んでしまった時に「若駒の家★15の職員に来てもらった。」今後も「若駒の家の職員,ヒューマンケア協会★16に依頼する。」(Ih,s=1)
 柔軟な介助体制があれば,特に――もちろん処置に急を要する時には救急医療が対応するわけだが,それに加えて――緊急時に対応できるシステムがあるなら,一人で生活を送ることがより容易になる。そしてもし寝返りの介助は必要でなく,また緊急時の連絡を自分で行えるのであれば,その体制は,夜間の泊りの介助,常時滞在の介助体制を不要とすることにもなるはずである★17。今回の調査対象者の中には医療サービスを常時必要とする人は含まれていないから,対応はそう難しくないという事情もあるかもしれない。しかし,重い病気の人であっても,できる限り住みなれた場所で生活したいという本人の希望を受け入れるべきなのだとすれば,やはり,それを在宅で支えるシステムが求められる。
そしてそれは,狭義の医療サービスだけで対応できるものではないのである。★18

■06 生計(問4)

     s (〇・×は満足・不満足な3項目の一つにあげた人について)
 N1a 3         G1a 生活保護   2 〇
 N2a 0 ×       G1b 生活保護   2 ×
 N3a 3        G1c 年金+特別障害者手当+家賃収入 2 ×
 N3b 0 ×       G2a 生活保護   2
 N3c 3        G2b 生活保護   1 ×
 N4a 1.5 ×       G3a 生活保護   1 ×
 N4b 1        G4a 生活保護   0 ×
 N5a 3        G5a ――
 N5b 0 ×       G6a 年金+特別障害者手当   3 ×
 N6a 0 ×       G6a 年金+特別障害者手当      3 ×

 Ia  生活保護                2 ×
 Ib  年金+特別障害者手当+給料3万     0 ×
 Ic  生活保護                2
 Id  年金+特別障害者手当+給料1.5〜2万   0 ×
 Ie  年金+特別障害者手当          0
 If  生活保護                0
 Ig  年金+特別障害者手当          1
 Ih  年金+特別障害者手当          2 〇
 Ii  年金+特別障害者手当+給料9万     3
 Ij  年金+特別障害者手当+給料2〜3万   1.8 ×

 ※生活保護の受給者も,障害基礎年金と特別障害者手当は受け取っているが,これは収入として認定されるので,生活保護だけを受けている場合と受け取る総額は変わらない。

 不満が大きい項目である。20項目中特に不満な項目を3つを選ぶ質問に対して,これを選んだ人が,療護施設の居住者で5人,グループホームの居住者に7人,一人暮らし4人,計16人と,20項目中最も多数いた。ただ,満足度の平均値を見ると,他の項目に比べて特段に低いわけではなく,またアクセシビリティ,介助の項目の方が満足度が低くなっている。3つ選ぶ中では,もっと収入があってよいはずだという具体的な主張として選ばれやすく,他方で,個別に聞いていく中では,与えられた枠の中でそこそこやっている,やれている人もいるということなのかもしれない。療護施設,グループホームの各々,そして居住者の個々の事情を,現在の状況と発言に即して見ていく必要がある。

 ◆療護施設で

 療護施設居住者の全員が障害基礎年金(1994年:月81,250円)を受給しており,家族から若干の仕送りのある1人以外はこれが唯一の収入源となっている。そのうち費用徴収が約3万円あり,残りが手元に残ることになる。残った額は,被服,趣味教養,交通,通信,嗜好品,外食等の食費,等に使われている。
 収入は皆ほぼ同じだが,満足度にはかなりのばらつきが見られる(s=0,s=3が各4人)。特に不満な項目としてこれを選んだ5人中の4人(1人=N2a,s=0,は特に発言なし)の回答を見る。
 「基礎年金の口座(通帳)は実家にある。55,000円を送ってもらい,残りは親にあげている。もう少し年金額が高ければよい。10万円くらいになればよい。」(N3b,s=0)
 (預金についての質問に)「旅行のために貯め,旅行のために使ってしまう。」(N5b,s=0)
 「自立生活センターの(自立生活プログラム等の)利用に関わる出費が,月約2万円。(自立生活体験室に)体験入居した時は4〜6万円かかる時がある★19。その他,旅行の時は1回7〜8万円使う時もある。」(預金についての質問に)「自立生活のため,これから貯蓄しようと思っている。」(N4a,s=1.5)
 「(施設職員の介助外の有償)介助に月2〜3万円。将来一人暮らしをしたいと考えており,そのための資金を蓄えたい。月に2万積み立てている。」(N6a,s=0)
 基礎年金から施設に払う費用を差し引いた月5万円ほどは,多くの場合,被服費等を除けば,趣味的な部分に出費されることになる。住居,食事,水道光熱等に関わる費用は,大部分は措置費から,そして一部は居住者から施設への月当たり定額,一括して納める費用徴収分から支出されるからであり,またそれ以外にお金を使う場もそうないからである。
その限りでは,5万円という多くはない金額でも,あまり不足ということにならない場合がある。満足度を3とした人が10人中4人いる。
 そして,その額も全額自分で使っているのでない例が見られる。上記したN3bは,年金から自分が受け取るのは55,000円であり,残りは親にいっている。そして,この人が自分で実際に使えるのは,55,000円から費用徴収3万円を差し引いた25,000円であり,この額について不満を感じているのである。そして次の例。
 「家で年金を管理していて,月1万円を送金してくる。服などの購入の際には,家族が月に一度施設を訪問する時に伝える。」(N3a)
 また次のような例もある。
 「通帳を施設に預けている。出納帳はつけてもらっている。」(N1a)
 個人に支給される年金についても,施設(N1a),家族(N3a,N3b)が管理している(管理を委ねている)例があり,そのため自分の収入源等を十分に把握していない人もいる。
 しかも10人全員が金銭の支出に関する自己決定度を3としている。つまり,ここで自己決定とは,金額的にも,用途についても限定された枠の中で――その枠のあり方については自己決定できていないのだが――,その枠は問題とせず(問題にすることが不可能で),枠内の部分について自分が使い道を決めているということを意味している。そしてその枠内であれば足りていると感じられることもある。
 だが一時的にその枠の外へ出ようとするなら(たとえば旅行),またこれから今の枠の中の生活でない生活を送ろうとすると(職員以外の介助者への支払い,障害者団体への参加,将来の生活に向けての蓄え),この枠のあり方,そして具体的な金額は満足できないものになる。(N4a,N4b)

 ◆グループホームで

 グループホームの住居費(利用料)は,G1:45,000円,G2:45,000円,G3:100,000円,G4:28,000円,G6:40,000円 である。他に,(グループホームの中での)食費が25,000〜40,000円,水道光熱費が 7,000〜10,000円ほどかかる。これだけで障害基礎年金の月額を超える。基礎年金だけでグループホームで暮らすことはできない。特別障害者手当を受給していても足りない。
 また前項に見た介助に関わる費用の問題がある。グループホームにおける介助は,ホームヘルパーによるところがあり,また自治体の介護人派遣制度を利用している部分もあるが,それは必要量の一部を満たすに過ぎない。
 そこで,グループホームの入居者の多く(10人中7人)は生活保護を受給している。同時に,生活保護の他人介護加算を受給している。厚生大臣承認の特別基準額では月16万円ほどになる。住居費を払い,介助を確保するために,他の制度が十分でなければ,他人介護加算を含む生活保護を受給する必要がある。(受給していない3人のうち2人は,他の人に比べれば介助の必要度が少ない。)この加算額を含めると生活保護の総額が月38万円ほどになる(基礎年金と特別障害者手当は収入認定されるから,この総額は変わらない)。
 G3の住居費は,他と比べてかなり高いが,それでもこの地域の地価や一般の家賃を考えれば,とりたてて高額ではない。入居者が払う住居費と介助費用によって,賃貸料を払い,介助を確保していくために,居住者が他人介護加算を含む生活保護を受給することが最初から前提されている。
 残る3人中1人は,基礎年金と特別障害者手当の他,家族と共有名義の不動産があり,そこからの収入の一部(月15万円)を家族から送ってもらっている。これが介助費用にあてられる。残る2人(G6に居住)は基礎年金と特別障害手当の他に親からの仕送りがある。この2人は介助の必要が他の人に比べれば少なく,介護加算の必要度が低いのでそれでもなんとか暮らせる。
 10人中満足度を0としたのはG4a1人である。G4の介助費用は,グループホーム全体の運営費の中からも出ているが,休日や余暇などの介助費用は個人の支払いとなり,この人の場合は月 101,000円支出している。だが生活保護の介護加算は得ていない。そのため,月々のやりくりが非常に厳しくなっている。ここでも介助費用の問題が大きい。
 自己決定の度合いについては,8人が3としているが,G6a,G6bは0としている。このグループホームでは収入の全額を職員に預け,その中から小遣いを月に5千円ほど受け取る(身体障害者のグループホームについて,他にこうした方法がとられている例は聞かない。またこのグループホームの運営主体がかかわる他の生活の場でもこうした方法はとられていない(→注26)。その使途の詳しいところを本人達は把握していない。今のところ,それほど外出の機会なども多くなく,とりあえずはこの額で足りてもいるから,その限りではそう不満はないが,別の生活・支出の仕方,金銭管理のあり方を考えれば不満な項目の中に入る。各項目について聞いた満足度と全体の中から3つを選ぶ質問に対する回答の間の一見した矛盾は,このように解釈できるかもしれない。
 これまでの社会経験の蓄積の度合いは個人によって差がある。また,療護施設,グループホーム双方について,知的な障害のある居住者の割合が増えている。金銭の全面的な自己管理を最初から実現するのは,実際問題として難しい場合があるだろう。だが,次の段階への準備という,居住者当人達のグループホームへの期待を実現するためにも,収支に関する(完全なというのでないにしても)自己管理に段階的に移行していくための手立ては必要だろう。また,このグループホームは,設立・運営の経緯として,障害をもつ当事者の運動の中で設立され運営されている他のグループホームと異なるところがある。このことも関係しているのかもしれない。
 他の5つのグループホームでは,金銭の管理は個人にまかされ,共同で購入する部分については当事者主体の運営会議が決定をしている。療護施設における金銭に関する「自己決定」とは意味が異なる。(施設の外では)普通になされている決定がなされている。

 ◆一人暮らしの人の

 一人暮らしの人では,3人が生活保護,他は障害基礎年金と特別障害者手当が基本的な収入である。以前は,一人であるいは自ら家族を形成して暮らす人では生活保護を受給している人の割合がもっと高かったのではないか,また,現在でも全体の3割よりは高いのではないか。今回の調査が全体を反映しているとは必ずしも言えないのではないかとも思われる。ただ,少なくとも一部地域では,一つには介助に関わる制度の充実によって,一つには自立生活センター等で有給のスタッフとして働いている場合はその収入(10〜20万円代の月給が出るところも数は多くないがある)と年金を加算すれば暮らせる人が出てきたことによって,生活保護で暮らす人の割合が徐々にではあるにせよ小さくなってきているのかもしれない。
 当然,全員が自分で金銭を管理している。生活保護の受給者はいずれも他人介護加算をいわゆる特別基準で受給しており(2人は知事承認約10万円,1人は厚生大臣承認約16万円),ここでも介助費用が生活保護受給の選択を促していることがうかがえる。
 給与所得等がある人は4人で,3人が月2万〜3万円,1人が7万円ほど。
 家賃は1万円未満(持家,借地代)1人,1万円台1人,2万円台1人,3万円台1人,5万円台3人,7万円台3人。総支出中のかなりの割合を占めるが,立地条件(→2)等を考えての選択である。電動車椅子等を使った外出のことを考えるなら,また介助者の交通の便を考えるなら,駅から近いことが求められる。また車椅子でいくらかでも動けるだけのスペースを求めるなら,また夜などに介助者を入れる必要がある場合には,あまり狭いところに住むわけにもいかない。それであまり安い(遠くて狭い)ところには住めないということになるのだが,使える金額に限界はあるから,広さの方はあきらめるということになる場合が多い。

 ◆誰に渡り誰が決めているのか

 収入・支出のあり方,そしてそれに対する感覚は,生活の形態によってかなり異なる。グループホームの居住者そして一人で暮らす人達にとっての収入は,介助に要する費用を含め,生活に必要な費用のかなりの部分を占めるものとしてあり,特に介助費用が有償の介助を得るのに十分でない場合に,あるいはぎりぎりの状態である時に,経済状態に対する不満あるいは危機感が強くなる。
 他方,療護施設で実際にかかっている費用をみれば,措置費と自治体独自の加算(N4,N5,N6ではこれが措置費をはるかに上回る)が大部分を占め,利用者からの費用徴収分の割合は高くない。そしてこの費用の使途は基本的に施設側によって決定される。利用者は,年金から費用徴収分を差し引いた額について,そして限定された使途に関して,自己決定をしているのであり,食・住,そして介助等の生活の基本的な部分については決定できない。このことが,経済状況についての評価としては表面に現れないにしても,これまで見てきた居住空間のあり方や介助のあり方に影響している。また施設の外の生活との障壁を作り出し,維持している。
■07 活動(問8・9・10)

                       満足度:活動 余暇グループ余暇・個人
N1a:クラブ週2                 0    3    1
N2a:クラブ                   0    3    0
N3a:施設内の活動には参加せず          3    2    2
  b:クラブ週2.5・自治会             2    2    3
  c:クラブ週3・自治会・障害者団体       3    1    2
N4a:自立生活センターへ週1           2    2    2
  b:クラブ                   1.5    1    −
N5a:自治会・サークル              2    0    0
  b:自治会・サークル              2    2    3
N6a:作業所週5                 3    −    −
                         
G1a:       音楽(時折コンサート)    2    0    0
  b:作業所週3日 飲むこと           2    2    1
  c:       旅行             3    1    3
 G2:作業所週3日 旅行・音楽          2     2    1
   :       宝塚             3    2    3
 G3:障害者団体週5日 パソコン 食べに行く   2    2    1
 G4:作業所週4日 お酒を飲みに 美術館     0    2    1
 G5:作業所週3日 公民館活動 読書       3    3    3
G6a:作業所週5日 年間行事の方特になし     0    1    1
  b:  〃       〃           0    1    1
                         
 Ia:障害者団体週3日 編物教室に月1      2    1    3
 Ib:作業所週5日 旅行,映画,飲食       2    0    3
 Ic:作業所週5日 パソコン           2    1    2
 Id:障害者団体週5日 スキューバ,編物     1    3    0
 Ie:作業所週4日 コンサート          1    1    2
 If:作業所週6日 デート,など         0    3    3
 Ig:作業所週5日 作詞のグループ        3    3    3
 Ih:作業所週6日 カラオケ,飲みに行く     3    2    2
 Ii:障害者団体週4日 テレビ,読書       3    2    3
 Ij:障害者団体週2日(他は在宅で仕事)旅行   1    0    2
 以上では,施設,作業所等の年間行事・活動は省いてある。それ以外についても一部をあげたに過ぎない。詳しくは第V部を見ていただきたい。
 それぞれの満足度の平均は,下のとおりで,一人暮らしをしている人で,個人での余暇活動についての満足度がやや高いが,他は大きな違いはない。

           仕事などの活動  グループでの余暇活動  個人での余暇活動
療護          1.9(63点)      1.8(60点)    1.6(53点)
グループホーム     1.5(50点)      1.6(53点)    1.5(50点)
一人暮らし       1.8(60点)      1.6(53点)    2.3(77点)

 上には主に週単位でスケジュールの決まっている活動,余暇活動の一部をごく簡単に記した。他に,グループホームでは入居者会議があり,理学療法・作業療法の時間のある療護施設の入居者がおり(N3b,N3c,N4a),年間行事の企画,行事への参加等があり(旅行,催しもの,他にグループホームの場合には,介助者の募集,行政交渉,等),個人的な余暇活動がある。

 ◆療護施設居住者の活動1・サークル,自治会活動

 療護施設内のクラブ,サークル活動には多くの居住者が参加しており,その満足度は上記の「余暇(グループ)」に記されている通り。N5a(s=0)は「本当はもっと他にやりたいことがある」という回答だった。
 「自治会と職員との話し合いが月1回ある。役員は5人」(N3c,s=3)
 今回の調査対象者となった療護施設の居住者の中には,自治会★20の役員を務めている人が4人いる。
 「2月から3月は総会の準備で忙しい」(N3b,s=2)
 「会議が多く,忙しくきつい面がある」(N5b,s=2)
 と,相当に大変のようだが,同時に,やりがいを感じ,充実感を得ているようだった。自治会は,自分(達)の生活,生活している場所について考え,施設の運営のあり方に対して発言し,そこに参加する場になっている。
 「自治会活動はやってみて実感していくもの。やめる時は施設を出る時だと思っている。もっと自分のQOLを考えたいから。」(N5a,s=2)
 自治体との交渉や,障害者団体の集まりに参加すること(N5a,N5b)が,施設の外側との関係を持ち,外側から施設を見ることにもつながっている。


 ◆療護施設居住者の活動2・施設の外での活動

 施設外の団体での活動に参加し,それが大きな意味をもっている人達が3人いた(N3c・s=3,N4a・s=2,N6a・s=3,平均89点,他の7人の平均は50点)。
 「〇〇(隣の市にある自立生活センター)への参加が生活のはりあいになっている。6〜7人をグループとして3人の職員が担当。個別援助(1対1の送迎等)もある。〇〇に有料介助を頼む時も。」(N4a)
 「9年前から△△の家(隣の市にある作業所)に通い始めた。今では園でも作業などやっているが,入居した時にはなにもなかった。何かしたいと職安に行ったら紹介された。週1日から始まり,最初は職員が手動車椅子で送迎した。週2日に増やしボランティアを活用。94年から電動車椅子で一人で週5日通い始めた。」余暇活動としてしたいことは「特になし。今は△△の家に通っていることで満足。」(N6a)
 友人についての質問(問15)に対してもこの3人はこれらの団体のメンバーをあげ(他の人では養護学校時代の同級生等の回答が多い),またこの中の1人N6aは,キー・パーソンをあげてもらう質問に対しても上記の団体のメンバー,この団体とも関係のある自立生活センターの事務局長をあげている(他の人では友人,妹,弟,等)。また,こうした活動への参加が,施設の外にいる人達,施設の外の社会との関係の形成に,また将来の展望を具体的に描くのに,重要な意味をもっていることは,後の項目でも報告する。
 またこうした活動には,徐々に施設外からサポートを得たり,一人で行動する範囲を広げていくにせよ,少なくとも当初,施設(の職員の)側の支援,理解が必要である。そしてそれ以前に,まずそうした組織が通える距離になければ参加することができない。施設内で完結する活動についてはそれなりに充足していても,これらの条件が整っていないと,それ以外の個人的な活動をしようとしてもできないことになる(N1aとN2aの「余暇(グループ)」「余暇(個人)」の点数を参照)。

 ◆グループホーム,一人暮らしの人の活動

 グループホーム入居者,一人暮らしの人のすべてが障害者自身が運営する団体の活動に参加している。うち前者7人,後者4人は作業所に通っている。グループホームでは,グループホーム設立の主体となった組織が関係する作業所があり,そこでの活動が生活のかなりの部分を占める。ただ,作業所といっても,当事者によって設立され運営されている場合は,単純作業を行う場という色彩は概して弱く,運動体,サービス提供,交流の場としての性格が強い。複数の組織に参加する人も多い。こうして全員が何らかの日中の仕事を持っている(平均活動日数は各週4.1日,4.5日)。
 そして,療護施設のクラブ,サークル等では施設内で活動が完結するのに対し,グループホームの場合には,ともかくも生活の場と日中の活動の場とが分れている。ただ,活動の場でのメンバーと生活の場としてのグループホームのメンバーに重なる部分が大きい。一人暮らしの人の場合には,グループホーム居住者よりいっそう,家に帰っての生活の日中の活動からの独立性は高い。後にみる,外出,近所づきあい等のあり方の違いにはこのことも影響しているだろう。
 満足度は総じて高い。G4aの「活動」の項目での不満(s=0),G1a・G2a・G4aの「余暇」「余暇(個人)」の項目の不満は,そうした活動が忙しすぎ,他の活動をする時間がとれないというところにある。ただ,G6の居住者は,他と比べて満足度が低い(自己決定度の評価も)。これは,このグループホームの居住者が通っている作業所での作業内容が予め与えられており,それが単純作業を主としたものであることによる。「もっといろんなことをやりたい。陶芸とか焼き板とか。」(G6a)スポーツ等の「サークル活動とかグループがあったらいいなと思う。」(G6a,G6b)
 他にも,G4aはアジアの障害児を支えるNGOに参加している。「この会の活動を機会にタイに2回旅行した。週1回会合があるが忙しく月に1回行ければよい方。」(1993年時点),「作業所活動,特に阪神震災関係のカンパ活動で忙しく,今は会合に行けていない。」(1995年時点)また,G5aは公民館活動に参加し,道路点検などをしており,G3cは聴覚障害者の団体の活動に参加している。
 そして,これらの活動は,仕事・対・余暇という対立の中での仕事として位置づけられてはいない。「センターでの活動そのものが余暇ともつながる。」(G3a)上記した3人の活動も,「余暇(団体)」についての質問(「定期的に参加している余暇やスポーツのグループ・サークルなどはありますか」)に対する回答としてあげられたものである。
 他に希望として,
 「カルチャークラブに通ってみたい。歴史とか文芸作品の解説とか。」(G2b)
 「スポーツをしたい。水泳をやってみたいけれど,更衣の問題とかがあるし,場所がない。」(G5a)
 一人暮らしをしている10人のうち,4人が作業所に通っており,6人が障害者自身が運営する他の団体の活動に参加している。全員が何らかの日中の仕事を持っている。Ijは主に自宅で仕事をし,週末等に会議,打ち合せで外出する。10人の平均の活動の日数は週 4.5日である。
 これらの作業所や団体は,彼らの一人暮らし生活への移行の援助の役割を果たしたり,また現在の生活を支える人的ネットワークの核となっている。緊急時の連絡先としてあげた人も多い。また,一人暮らしを希望する障害者に対し彼ら自身が援助する場ともなっている。活動自体には充実感を感じている。不満は,忙しすぎること,活動からの収入が少ないといったことに対するものである。また10人中7人がホームヘルパーの派遣を受けているが,平日の日中,自宅で待機しなければならないため,これらの活動が制限を受けてしまうことに不満がある。(Ijは留守中にヘルパーに来てもらっている。)
 余暇活動としては,スキューバダイビング,編み物教室,作詞のグループに参加している人がおり,彼らは総じて満足度が高い。仕事が忙しすぎて趣味のグループに参加する時間がとれないという人が4人いて(Ia:s=1,Ib:s=0,Ic=:s=1,Ii:s=0),この理由による不満が平均値を下げている(4人の平均16点,残り6人の平均78点)。
 個人での余暇は街中の娯楽施設や旅行などがあげられており,療護施設,グループホームと比較して満足度が若干高くなっている。Id(s=0)の不満は,ゲームセンター,温泉,プール,ボーリング場などの施設のアクセスの悪さに対するものである。余暇については,団体,グループとしての活動よりも,個人としての活動の方が比重が大きいということもあるかもしれない。

 ■08 立地(問6)

                 満足度:立地(問6)外出(問12)アクセス(問13)
N1:スーパーまで30分           2     0     0    
N2:駅まで15分              −     1     0    
N3:バス停まで1分,駅までバスで20分   3・0・3 2・1・3 2・0・0
N4:バス停まで10分※           0・0   3・1   3・0  
N5:駅まで30分              3・1   1・3   3・0  
N6:駅まで7〜8分            3     3     0    
※施設専用のバスで駅まで10分                    
                   平均 58点    60点    27点

G1:駅まで10分,近くにコンビニ      1・1・− 2・3・3 1・1・0
G2:便利                 −・−   2・2   0・1  
G3:便利な立地,近くに商店街       2     2     1    
G4:駅まで5分,近くにスーパー      3     3     0    
G5:駅まで40分,近くにスーパー      1     3     1    
G6:バス停まで10分,駅までバスで15分   −・−   0・0   2・1  
                   平均 53点    67点    27点

Ia:駅まで5分,近くにコンビニ      3     3     1
Ib:駅近い 買物には困らない       2     2     0
Ic:駅,店近い              3     2     2
Id:駅まで10分              3     1     3
Ie:最寄り駅,スーパーまで5分※     −     2     2
If:駅まで5分 商店街はもっと近い    3     2     0
Ig:駅,スーパーまで3分         3     2     3
Ih:駅至近を条件に家探し 近くにスーパー 2     2     2
Ii:駅まで30分※,すぐ近くにスーパー   2     3     1
Ij:駅まで10分,近くにコンビニ・弁当屋  2.6     1     1.5
                   平均 87点    67点    53点

 ◆グループホームの立地

 療護施設のいくつかが市街地区から遠く離れたところにあるのとは違い,今回調査したグループホームはすべて市街,住宅地の中にある。
 特にG1〜4は最寄りの駅までの電動車椅子で5〜10分と距離が短く,商店街等も近くにある。利便性はよいとした回答が多かった。
 他方,最寄り駅まで電動車椅子で40分(実際には60分かかるエレベーターのある別の駅を利用することが多い,駅からもこちらを使うように言われている)かかるG5の居住者G5a(s=1)は,「駅まで遠いと感じている。もう少し近いといい。夜遅くなることもあるし,雨の時もある」と答えている。
 G6は団地が多い住宅街の中にあるが,車椅子利用者にとっては便利な立地条件ではない。他の事情もあり(後述),実際にも外出の機会が限られていて,良い悪いの評価が即座に下せないようだった。なお,ここでは,住宅街の1軒をグループホームとするに際し住民の側の反対運動があったという。
 居室(問5)の日照についての質問で,G1,G2,G3の4人が「悪い」と答えた(療護施設入所者では6人が「よい」)。これはグループホームが比較的住宅の密集地にあるのに対し,療護施設のほとんどは市街から離れ,十分な敷地が確保されていることによるだろう。十分な予算を使えれば別だが,現実には障害をもつ人の住居に限らず制約はあり,敷地面積,採光,通風,等を優先するか,これらの条件が十分に満たされなくても街中での生活をとるかという選択を迫られる。グループホームは基本的に後者を優先し,その上で可能な限り居住性を確保しようとしているようである。
 4段階で答えてもらう質問に答えがない回答や満足度1の回答が多かったのは,後で見る駅の設備等,アクセシビリティ(問15)に対する評価を含めた場合に何とも言えない,あるいは評価が低くなるといった事情によるようである(G1a,G1b,G5a:いずれもs=1)。不満は,街中での居住,移動を確保した上での駅などの利用の不便さに向けられている。周囲に人家,商店街,娯楽施設,交通機関等がある,あるいはないのと,それらを訪れたり,利用したりする時の便利,不便とを分けることはできるにせよ,実際の生活の上では連続している。この辺りを分けて聞こうとすれば,質問の仕方を工夫すべきだったと思う。

 ◆一人暮らしの人が暮らす場

 一人暮らしの人では,最寄り駅まで5〜10分程度のところに住む人が8人。駅員の数が少ないなど電動車椅子への対応が悪いため最寄り駅が使えず,30分ほどかかる別の駅を利用している人が2人いる。かれらの多くが,まず立地条件,特に一般交通機関利用へのアクセシビリティや介助者にとっての交通の利便性を住居を選ぶ際の条件にしており,このことに対する満足度は高い。加えて,その住居を選んだという自己決定度も高い。買物をするに当たっての便利さも,その選択の際の条件になっているようだ。
 「概ね住みやすい。買物には困らない。」(Ic,s=3)
 「住みよい。商店街は近い。銀行もあるし。」(If,s=3)
 「駅まで近く,買物も便利なので満足している。」(Ig,s=3)
 「最寄りの駅に近い。(介助の)学生アルバイトの人が立ち寄りやすいように,立地条件をまず第一に考えた。近くにスーパーがあり,駅にも近いということを条件に探した。銀行も近くにある。」(Ih,s=3)
 「すぐ近くに西友。買物は行ってもらったり,自分で行ったり。立川駅の駅員の対応はよい。運動の結果。」(Ii,s=2)
 「コンビニ,弁当屋がすぐ近く。スーパー,デパートも近くにある。区内で,家賃が駐車場(介助者が運転)込みで10万円以内,スロープがある,2間,という条件で探してここしかなかった。」(Ij,s=2.6)

 ◆療護施設の立地

 施設が住宅街の中にない,駅や商店街までの距離が遠い,交通手段が便利でない療護施設としては,N1,N3,N4があげられる。
 N1は地方都市の農地に囲まれた中にある。N1a(s=2)の回答は「自然はいい。生活には不便。」というものだった。
 N3は駅からは遠く,近くに住宅も少ない。徒歩5分ほどのところにコンビニエンス・ストアがあり,N1,N4と比べれば,少し便利と言えるかもしれない。N3a(s=3)は「外にはあまり出ない。月に1回程度。」と答えている。
 「施設の周辺で自分で用を足すことはない」(N3b,s=0)。
 N4は都市部にあるが,高台の上にあり,車椅子,電動車椅子で駅まで行くのは不可能。施設開所当時は民家もあまりなかったところである。N4aは「空気は良いが,山の上で外出しづらい。」(s=0),N4bは「施設のバスを利用して外出する。気軽にショッピング等できるところはない。外出が自由にできない。」(s=0)と答えている。
 以上と比較すると,N2,N5,N6は移動が便利である。N5は30分程度と時間はかなりかかるが,駅まで電動車椅子で行くことができる。N5a(s=3)とN5b(s=1)の満足度の差は,施設周辺の移動しやすさについてどこを評価するか,分れていることによる。N5aは「平坦で道幅が広い」と答え,N5bは「病院街なのに段差が多い。段差を切ってあっても角度がきつくて大変。歩道に電柱がある。」こうした「設備面を除けば満足」としている。
 N6は電動車椅子で7,8分で単独で最寄りの駅まで行くことができ,今回調査した療護施設の中では最も立地条件がよい(N6aのs=3)。
 市街地にあるのとないのとでは著しい違いがある。
 障害のない人であれば,郊外でバスの便もよくないところでも,自家用車の利用等によって不便を感じないかもしれない。しかし,障害があるとそうはいかない。電動車椅子で直接,単独で,商店街や最寄りの駅まで行けるような場所,途中に急な坂等がない場所に住居があることが大切になってくる。今回調査したグループホームはかなりの程度この条件を満たしている。一人暮らしの人はそういう場所を選んでいる。だが,多くの療護施設はそうではない。むしろ,土地の価格の問題等から,近年になって開設された療護施設ほど,住宅街,商店街から離れたところに置かれることが多い。このことが外出等の社会生活を大きく制約しているのである。

■09 外出(問12)

 ◆グループホーム,一人暮らしの人の外出

 グループホームに暮らす人達の外出は,まず日中の作業所等への行き来(→活動の項)である。仮に活動の内容が療護施設内で行われるものと変わらないとしても,一つの建物の中で生活が完結するのとそうでないのと,その生活は同じでない。
 次に買物のための外出がある。施設から支給されるもの以外の嗜好品を買いに行くというのではなく,日常的に必要なものを買出しに行く必要がある。G1,G2,G5の居住者達は平均して週に1回程度近くに買物に出かけている。G4aはほぼ毎日,電動車椅子で5分ほどの駅近くの商店街に買物に出かけている。
 他に
 「居酒屋に週3回」(G1b,s=3)
 「2週に1回,電車に乗って,酒を飲みに行ったり,会議に出たり」(G4a,s=3)
 等。ただ,まだ自発的な外出の機会をつかめないグループホーム,その入居者もいる。G6では,平日は作業所に通い,休日もグループホームと関係のある団体の行事に出かける。日常的な買物は職員がしている。
「もっといろんなところに出たいですけど,なかなか出れないです。」(G6b,s=0,G6aもs=0)。
 G6の居住者2人を除いたグループホームの居住者の外出に対する満足度は全般的に高い(s=2〜3,8人の平均が75点,10人では67点)。
 一人暮らしの10人も,グループホーム居住者と同様,よく外出している。障害者団体の活動等,自分のスケジュールや必要性に応じて,またショッピングの楽しみを求めて,出かけている。また,グループホームの運営主体と作業所など活動の場の運営主体とが重なっていることが比較的多いグループホームの場合に比べ,個人行動の部分がより大きいようである。日常生活用品は近所の店やコンビニエンスストア,スーパーで求め,休日などには繁華街に出かけていく。自分の行きつけの商店やデパートがあり,よく研究している。洋服を買う店,電気製品を買う店,レコードを買う店とそれぞれのお気に入りの店をもっていたりする。
 満足度の平均は,グループホームの居住者と同じでs=2.0 =67点。満足度を低く答えた人は,階段が多い等の物理的な障壁を指摘している。また,毎日の生活に追われていて,時間的なゆとりがもてないこともあげられていた。
 「時間が欲しい。」(満足度の理由として,Ic,s=2)
 「単独行動が多いので階段など不便」(Id,s=1)
 「階段等については不便」(Ig,s=2)
 医療(問8),立地条件(問6),個人の余暇活動(問10)についての回答にもあったように,ここでも,問15で聞くことにしていたアクセシビリティに対する評価が入ってきている。

 ◆療護施設に暮らす人の外出

 療護施設では,まず各施設間の居住者の外出に対する姿勢,施設側の体制の違いが大きい。
 N1では,月1回の面会の時だけ,面会者が付き添えば外出できる。職員が足りないからだという。N1aはこの面会の時に両親とショッピングセンターにでかける(s=0,d=0)。
 N2では「門限」が19時に決まっている。これは大人が暮らす場所としては普通ありえないことである。ただN2aの自己決定度の評価は3になっている(s=1)。門限があることは既に所与の条件になっていて,その制約の中でともかく好きな場所に行けるということだろう。年に10回ほどいくつかのターミナル駅周辺に遊びに出ている。その際に買物もする。N2aは,個人的に関係を作ってきた20人以上の友人,ボランティアが施設外にいて,その人達とのつきあいを楽しんでおり,一緒に外出もする。N2で他にN2aのような人はいないようだった。
 またN3では「園外買物」(職員が介助する)は月2回までと決まっている。これ以外にはあまり外出しない人もおり(N3a,s=2,d=3),他の入所者に頼まれたりして近くのコンビニエンス・ストアに週3〜4回買物に行く人もいる(N3c,s=3,d=3)。N3bは月1回程度「園外買物」に出かけ,月に1〜2回実家に泊まりに行き,3月に1回ほど友人と飲みに行く。施設周辺で自分の用を足すことはない。「もう少し回数多く外出したい」(s=1,d=2)。
 以上に比べると,N4,N5,N6は外出の条件が整っている。
 N4では前もって介助の要望を出しておくとそれに合せて職員が介助に応じる「介護要望制」がとられ,それを利用して外出をしている。N4aは隣の市にある自立生活センターに通っている(s=3,d=2)。
 N5は電動車椅子で行ける距離に商店街があり,N5aは月2回程度近所で買物をする(s=1)。N5bもいろいろな店に買物に出かける(s=3,d=3)。
 N6aは隣の市にある作業所(といっても作業が主体の場ではない,全国自立生活センター協議会の準会員団体)に毎日通っている。また電動車椅子を利用し,単独で,最寄り駅の周辺や沿線の駅周辺に買物に出かけている(s=3,d=3)。
 以上,療護施設の入居者の外出は,第一に,(先に見た)施設の立地条件と(次にみる)周辺のアクセシビリティの度合いによって制約され,第二に,介助要員が用意できるかどうか(→介助の項)といった事情にも関係して施設側が課す制約によって限界が設けられる。そして,第三に,当然,施設の外にどのような活動の場があるか(→活動の項)によってその度合いが定まっている。第一・第二の要因によって外出の機会が狭められている施設入居者がいる。また,第三の要因,生活に要する最低限を施設の側が支給していることにより,また活動・余暇の項でも見ることだが,施設の外に活動の場がないことによって,外出する動機,外出の必要が当人にあまりないということにもなっている。もちろん,これらの要因は互いに関連し合っている。街並みを離れ,単独で移動できないような場に施設があると,介助の職員が付き添ったり,施設の自動車を出したりする必要度が高くなり,それが用意できない場合には外出そのものが制約される。また,施設の外に活動の場を求めようとしても,そのための外出が制約されていればそれを実現することができない。N4a,N6aは,施設の外に活動の場(自立生活センター)を持ち,活発に外に出ているが(いずれもs=3),それはまずそのような場が通える距離にある(そのような地域に施設がある)こと,そして施設の側も外に出ようとする入居者の要望に応えようとしていることによっている。
 そして,これら,最も頻繁に外出している人達が,一般的なグループホーム居住者,一人暮らしの人と同じ程度であり,しかもその人達は,施設外に施設と別の組織とのつながりを持つ人達である。そして,それでもなお,療護施設居住者の外出の場合には,買物など,日常生活の必要のための外出,日常の生活を自分なりに成り立たせていくための外出という性格は薄い。

■10 アクセシビリティ(問15)

 満足度は総じて低い。特に,グループホーム,療護施設の居住者に,周囲のアクセシビリティに対する不満が大きい。20項目中,特に不満な項目を3つあげる質問に対しても,この項目をあげた人が,グループホームで6人,療護施設で2人いた。そして既に見てきたように,立地についての質問(問6),外出についての質問(問12)への回答の中にアセクシビリティについての指摘が相当含まれており,これらについての満足度を低くしていた。
 このことはもちろん,居住地周辺の交通機関等が障害者に使いよいように整備されていないことを反映している。他に建物の入口や歩道の狭さ,段差,路上の障害物,等が指摘された。特に駅員の対応を含め,駅のアクセシビリティがよくないという回答が多かった。
 「駅員の対応は悪い。一人で行っても出てこない。通行人に頼むしかない。」(N2a,s=0)
 「JRの駅はだめ。」(G1c,s=0)
 「駅は不満。スロープで対応してほしい。」(G2a,s=0)
 「駅にエレベーターがなく駅員の態度が悪い。特にJR駅の整備,職員の態度を改善してほしい」(G4a,s=0)
 「駅にスロープ,エレベーターがない。」(G6b,s=1)
 「(最寄り駅に)エレベーターはあるが,トイレが中2階にある」(Ib,s=0)
 「近くの駅がまったく使えず不満。隣の駅まで行くのは寒い時はつらい。」(Ie,s=2,「家の周囲の環境はよい」)
 他には,次のような指摘があった。
 「段差が多くて一人で外出できない。」(N3b,s=0)
 「歩道が跡切れる。歩道に障害物や穴がある。」(N3c,s=0)
 「坂が急。工事が多い。」(N4b,s=0)
 「段差がある。電柱が歩道にある。道がでこぼこ。」(N5b,s=0)
 「建物の段差がある,入口が狭い。車椅子用トイレがない。エレベーターが少ない。」(N6a,s=0)
 「車椅子のまま入れる飲食店が少ない。」(G2a,s=0)
 「坂道,段差。問題が多い。」(G3a,s=1)
 「平坦な道路がほとんどなのは便利。しかし建物入口や通路が狭い。銀行などに段差がある」(G4a,s=0)
 「歩道が狭い。自転車の置き場になっていたりする。」(G5a,s=1)
 「自転車が進路の邪魔になる時がある。商店街は人が多く気を使う。店が狭い。駅はエレベーターもあり,対応もよい」(Ia,s=1)
 「スーパーの入口などに自転車が多く,入れない」(Ic,s=2)
 「ドブの上にブロック。駅の階段が不便。銀行の入口に段差。」(Ig,s=0)
 「(自分が住んでいる街がということではなく)全般的にアクセスはまだまだ。入りたいと思うが入れない店とか。」(Ii,s=1)
 そして,アクセシビリティに対する意識には,その人が実際にどの程度外出しているのかも関わっているようだ。外出する機会が多い人ほど不満度が高いようである。そうした人達の方が具体的で厳しい指摘をしている。外出する機会自体が少ない場合には,それ自体がアクセシビリティが低いことに起因するにしても,強い不満感を持つことが少ないということである。
 「外出はあまりしない」(N3a,s=2)
 「家に帰る時は自家用車に乗る。不便はあるがあまり不満は感じない。」(G6a,s=2)
 ただ,一人暮らしの人に満足度の高い人が何人かおり,平均値も他に比べるとやや高い(療護施設,グループホームが双方27点であるのに対して,53点)。今回の結果が全般的な状況を反映していると言えるだけの根拠はない。ただ,選んで住んでいる地域であること,その地域に一人で暮らす障害者が比較的多く,そうした人達の働きかけもあって,条件が相対的に整っていることが関係しているようである。
 「不自由はない。道はゆったりしている。駅もスロープがある。店も入りやすい。対応もいい。」(Id,s=3)
 「住みやすいと思う。平坦,駅にエレベーターがある。店の人も理解してくれる。」(Ig,s=3)
 「周辺は歩道が広い。駅はエスカレーターがあり,駅員の対応は,今まで使った中では一番よい。」(Ij,s=1.5)

■11 近所づきあい(問14)

 療護施設では,N1〜N4までの7人中,5人が満足度について回答していない。つきあいがまったくないので満足度についても回答できない,回答しようがないということのようだった。
 「バザーに地域の人を呼ぶ,地域の祭に参加」(N1a,s=−)
 「園の納涼大会,文化会(が地域に開放されている)」(N3c,s=1)
 N3aは「なし」(s=−)
 N2bは「特になし。名前も知らない。」(s=1)
 行事等々において地域との「交流」が図られていることは,あまり大きな意味を持たないようだ。むしろ,近所への買物等,外出時の関係のあるなし,またその関係のあり方が影響しているようだ満足度をついて回答があった5人中,スコアを3とした2人の回答は以下のようなものだった――他には,N5bがS=2,N3b(「特になし。名前も知らない。」)とN3c(「園の納涼大会。文化祭。」)がs=1。
 「お店の人(電気屋,パーマ屋,薬屋,花屋)と話したり,挨拶したり」(N5a,s=3)
 「買物の時,品物の取り出しを介助してもらったり。トイレ介助を依頼することもある」(N6a,s=3)
 近くに住んでいる人というより,近くの商店街などでの付き合いを近所づきあいのことについて答えている――そのためには商店(街)が近所になくてはならないし,外出が容易でないとならない。
 グループホームに住む人にも満足度については回答のない人が3人いた(G3a,G6a,G6b)。G1・G2・G3・G4・G6がグループホームとして町内会に入っている(ただしG6では職員が出席)。個人的には挨拶程度と答えた人が多い(G1b,G2b,等)。これはグループホームの居住者に限らず,都市部に住む人の一般的な傾向かもしれない。ただ,次に見る偏見についての項目も合せた時,やはり具体的な接触のあるなしが近隣の人との関係のあり方に影響しているとは言えそうだ。
 「近所に住む人とは挨拶くらい。知り合いは多い。買物にもよく行くので,どこの人かはわかる。」(G2a,s=2)
 「町内会に入っており,できるだけ対等の関係をとるようにしている。関係もうまくいっている。」(G4a,s=2)
 一人暮らしの人にも,近所づきあいを特に積極的にしているという回答はなかった――満足度については全員から回答があった。町内会に入っているのと答えたIeも,そのつきあいは半同居の母親がしている。隣近所の人とは,挨拶程度のつきあいで,名前も知らないといったことが多い。そしてそれは,必ずしも満足度の低さには結びつかない(「特にない」,Ig,s=2,「特になし。挨拶する程度」,Ii,s=2,等)。一人暮らしの人達が住んでいる地域に共同体的な要素が薄いということもあるだろう。また,これは都会に住む一人暮らしの青年たちにも共通した生活の仕方ともいえよう。
 ただ次のような回答もある。
 「アパート,マンションの管理人とは雑談したり,よく行くお店の人とは近所づきあいという形で挨拶する。」(Ia,s=0,「マンションの中ではつきあいはない。……もう少しつきあいをしたい。」)
 「5階に看護婦が住んでいる。丁寧に挨拶する。」(Ib,s=2)
 「買物で会うと挨拶する。スーパーで店員に挨拶しておく。顔なじみになっておけば,災害時など不在をアピールできる。隣に聴覚障害者が住んでいる。」(Ij,s=2)
 「隣に筋ジスの人が住んでいる。」(Id,s=3)
 「〇〇さん(N6から移ってきた)が同じアパートに住んでいる。精神的に落ち着く。」(Ig,s=2)
 いざという時のことも考えて,近隣の人との関係を維持しておこうという努力をしている人もいる。また,同じように施設から出て暮らしている人が近くに住んでいることで,心強さを感じている人もいる。

■12 周囲の人達の受け入れ(問17)

 療護施設     1.8(60点)
 グループホーム  2.0(67点)
 一人暮らし    2.3(77点)

 平均値をとって点数化すれば上のようだが,これをもって居住形態による違いがあると断じることはできないだろう。ただ,発言の内容を整理した時に,そこから読み取れることがあるように思える。
 「最初は感じた。今は慣れた。実際に自分達が買物に行ったり,人と話すことがあったりするから。」(G1a,s=2)
 「最初はまわりの人はどんなところかと思っていたらしい。今はそういうことはなくなった。」(G1b,s=1)
 「店で文字盤でコミニュケイトできる。レシートを財布に入れてくれる。」(G1c,s=3)
 「偏見はある。店員とのやりとりでも言語障害があるので聞き取ってもらえず,子供扱いされることがある。駅員の対応もそれと同じようなことがある。介護者にできるだけついてきてほしいと言われたり,介護者がついてくると介護者に対して話しかけることも多い。しかし,グループホームの周辺はさすがにそれは少なくなってきた。話を聞いてくれることが多くなってきた。」(G2a,s=1)
 「偏見はある。銭湯で,多人数で来ないでくれと言われる。逆に銭湯で顔見知りになり,挨拶する人もできている。話しかけてくれる。」(G2b,s=2)
 「徐々になくなってきた。その街の生活に溶け込むことによってはじめて互いがわかり合えるのだと思う。それでよいと思う。」(G3a,s=2)
 同様の発言は療護施設の居住者ではN5aに見られる。
 「今はいやな顔はされなくなった。声をかければ手伝ってくれる。中には進んで手伝ってくれる人もいる。」(N5a,s=2)
 一人暮らしの人の発言。
 「しょっちゅうあるけど,気にしたらやってられない。強引に(関係の中に)に入ってしまう。」(Ic,s=2)
 「いやそうな感じで見られることがある。」(Ie,s=2)
 「以前はよく子どもにこわがられたりした。今は逆に挨拶されたりする。店の人,駅員の対応がまあまあ,理解されていると思う。」(Ig,s=3)
 「普通に対応する人もいるし,中にはうさんくさそうに特別視する人もいる。だんだん変わっていくと思う。こちらから声をかけていくことで,今住んでいるところも,6年間で変わってきた。」(Ia,s=1)
 「特に偏見を感じたことはない。困っている時に半分くらいの人が声をかけてくれたり,助けてくれる。」(Ih,s=2)
 「嫌な思いをしたことはない。」(Ii,s=3)
 「感じたことはない。とくによく受け入れていることもない。自然体で入っている。」(If,s=1.5)
 「偏見などを感じたことはない。福祉地区ということもある。専門家との交流もあり,お互いによい意味で利用しあっている。」(Id,s=3)
 「受け入れは割合よいと感じる。行政的には対応が速いので満足している。」(Ij,s=2)
 地域の関係の中に入っていくことによって,偏見があることも感じ,差別される体験もするのだが,またそこで暮らし,人とつきあう中で,関係が変わっていく可能性,現実があるということである。

■13 障害についての認識(問1)

 療護施設    1.6(53点)
 グループホーム 2.1(70点)
 一人暮らし   1.9(63点)

 「障害についてどう思っていますか」と問われても,どのように答えたらよいか,答えにくい質問でもあっただろう(Ib:「意味不明につき回答できません。」,s=1.5)。様々な回答があった。上には平均値をいちおう出してあるが,むしろ個人間のばらつきが大きい。
 否定的な回答としては
 「正直に言います。」(N1a,s=0)
 「障害があるためにしたいことができない。…」(N2a,s=1)
 「CPでうまれてきたので…。(ただ)加齢に伴い障害が重くなりできていたことができなくなってきた」(N3c:s=3)
 「障害の重度化が進んでいることについて,生活のスタイルが以前と変わり,例えば歩行ができなくなったことについてつ,踏ん切れない思いがある。」(G2a,s=2)
 一人暮らしの対象者にも同様の回答がある。
 「4,5年前から細かな動作ができなくなった。」(Ie,s=3)
 「最近だいぶ障害が重くなった。…」(If,s=1)
 3番目から4つの発言で,加齢によって障害の度合いが重くなってきたことが指摘されている。ただ,N3c,G2a,Ieなどの満足度をみるとそれは「総合評価」にはそれほど影響を与えていないようでもある。
 肯定的な回答としては,
 「自分の障害は軽いほうだと思う」(G4a,s=3)
 「小さい時より足で動けるようになった」(G6a,s=2,G6bも同様,s=2), 他に注目されるのは以下のような発言である。
 「特に障害者の場合,いろんな人に会える」(G1b,s=2)
 「生まれながらの障害のために障害を持つ生活が自分の生活というようになっている。障害自体を云々するより,障害をもっての生活をどうするか,どのように生きるかが今の自分の重要な課題。この意味で,他人が経験できなかったことを経験でき,障害がある自分が他から見守られていることで,満足していると言えるかもしれない。」(G3a,s=2)
 「変な言い方かもしれないが,自分が障害者であるおかげで,いろいろな人と出会えて,人の心がわかるようになった。いろんな障害者がいるんだなと感じた。私だけが障害者ではないし,もっと障害が重度な人がいて,そしてすばらしい生き方をしていることを知ることができた。障害を持たなかったから,それを知ることができなかったかもしれない。」
(N3b,s=3)
 「障害は顔が一人ひとり違うように一つの個性であると捉えてきた。母にそう言われ,小さい時からそう思ってきた。しかし家から施設に移り,介助の問題にぶつかって,単に個性なんだということですまされないということを実感している。ボランティアとも友達としてつきあいたいが,介助の問題が入るとやっぱり違うのかということを感じる。しかし,人との出会いにおいて,障害をもって良かったと感じている。人の弱さ,強さ,やさしさを感じられる自分がうれしい。」(N5a,s=3)
 「高等部時代,自分が幼い時に障害を持っていることから母親が周囲から偏見を持たれたことを聞き,辛かった。しかし現在は様々なことに問題意識をもって考え,とりくむことができるので,障害をもったことに満足している。健常者だったら見落しやすいこと(階段や段差)にも気がつく。」(N6a,s=3)
 「親元にいるときは,親がいなくなったら自分はどうなるだろうと,障害をもっている状況が大変不安だった。一人暮らしを始め,自分ひとりになっても生きていけると自信がついた。」(Ig,s=2)
 「自分自身の努力で何でもできると思う。」(Ih)
 回答から言えるのは,一つに,障害をもちながらやりたいことができること,障害があって(それを補うものがないので)したいことができないこと,これらが障害に対する認識,障害がある自分に対する認識に結びついているのだから,障害を持って暮らす環境がどれほど整っているかということが自身に対する評価に結びつくだろうということである。
 もう一つは,社会的な接触の度合いが自己に対する肯定的な評価に結びついているということである。とすると,身体的な障害の度合い(の進行や改善)もさることながら,これまでにみてきた社会的な支援のあり方と他者達との関係の形成のあり方が,そして療護施設とグループホームの間で,そしてのその各々の間でそのあり方が異なることが,自己評価にもまた関係すると考えられる。今回の調査における満足度のデータがこのことを証明しているとするのは早計にすぎようが,少なくともそれは以上述べたことに矛盾しはしないようである。

■14 展望(問7)

 ◆グループホームで暮らす人の展望

 この質問の設定として「結婚についてもたずねる」となっている。自身の結婚についての言及が多いのはそのためでもあることをおことわりしておく。
 「来年1年はグループホームで生活して,それから一人暮らしをしたい。結婚はしたいけれど,今のところ具体的な相手はいない。」(G1a)
 「介助があれば一人暮らしをしていきたい。相手がいたら結婚も考える。」(G1b)
 「自然に。しかし難しいです。今の制度では,入籍することで経済的に不利益をこうむる場合がある。一般論としてグループホームで生活するのは難しさもある。」(G2b)「アパートを借りて一人暮らしをするのが最終的な目標。」(G3a)
 「悩み中。グループホームにはずっといたくない。(ここにいるのは)半分自分の仕事だと思っている。職員・介助者に気を遣う。」(G4a)「一人暮らししたい。結婚を考えている。」(同,1994年の追加調査時)
 「ここを飛び出したい。単身者用の住宅に入って,介助体制を整えて,今のような生活をしたい。そういう人が作業所にも目標にしている。ここからも6人が出た。ほとんど成功している。現在の生活は型にはまりすぎている。個人の生活ならばもう少し自由があっていい。夕食を食べないとか,生活の細かいところで。」(G5a)
 「アパートで一人暮らし,結婚したい。(結婚しないならずっといる?)ずっといたくはない。一人で暮らしたい。40歳ぐらいには。」(G6a」
 「一人で暮らしたい。結婚したい。そのためにもまずここで暮らす。」(G6b)
 回答のあった8人中7人が,グループホームを出ることを,具体的に,あるいは将来のこととして,考えている。

 ◆療護施設居住者の展望

 「現実的には,多分ここでずっと生活し,夏冬家に帰る生活になるだろう。」(N2a,自宅の自分の部屋は10帖と相当広く,エレベーターがあり,廊下も広く作ってある。)
 「療護施設でこれからも暮らしたいと思う。この施設を出ること,家で父親や妹と暮らす気持ちはない。」(N3a,女性)
 「施設を出ることは現在は考えていない。」(N3b)
 「(ここで)援助を受けながらやりたいことをやる。実家に戻りたい気持ちもあるがスペースの問題がある。」(N3c)
 「当分はここにいてみようと思っている。若い実習生と関わってみたい。気のあった何でも話ができる人といられたらと思う。結婚生活の仕方にはこだわらない。相手次第。ナイトケアが必要ならここで生活,軽い障害なら施設を出ることもあるかもしれない。」(N5a)
 「このまま一生施設で終わるつもりはない。自立生活に移行していきたい。結婚は,具体的なイメージはないが,相手がいれば考えたい。」(N1a)
 「アパートで一人暮らしをしたい。将来的に結婚したい。」(N6a)
 「地域で自立生活をしてみたいが,何かあった時に帰るところがないと心配。今はナースコールを押せば,職員がとんでくるので安心。」(N4b)
 「できたら,あわよくば,出てみたい。今は自信がないが。人集めが苦手。頼むことを遠慮すること,大人(の顔)を見ることを小さい時からしてきたことが影響していると思う」(N5b)
 「アパートでの一人暮らしをしたい。2,3年がかりで計画を立てている。日野か立川で。そのため,現在,職員から紹介された自立生活センターに週2日の頻度で通っている。療護施設を出たいと思っている人が7,8人集まって,年金について,また自立生活をしている人の体験を聞くなどのプログラムを行っている。」(N4a)
 「当分」とした人も含め,療護施設での暮らしを続けることになるだろうと答えた人が5人,「できたら,あわよくば」と述べた人も含め,施設を出て暮らしたいと答えた人か5人である。前者の理由としては「何かあった時に帰るところがないと心配」という回答があった。また後者の1人は人を集めたり,人に頼んだりすることについての「自信のなさ」を語っている。後者の5人のうち,施設を出て暮らすために具体的な活動を始めていたN4a(女性)が,調査終了後,療護施設を出てアパート住まいを始めた。

 ◆一人暮らしの人の展望

 「もう少し広い(2DK位)のところに住めたら。いずれ給料制になり(介護制度がすすみ)。結婚は相手にめぐりあえば。今は仕事が忙しく,またおもしろい。」(Ia)
 「宝くじを当てて大きな家に住む。2回結婚する。」(Ib)
 「もし結婚するとしたら車椅子住宅入居を考えている。応援センターの活動の関係でここに住むのが便利。活動の方でまだひと花咲かせたい。」(Ic)
 「自然に考えたい。結婚はわかってくれる人がいたら。人の出入りが多い,家事をしないとまわりからは見られると思う。」(Id)
 「できれば結婚したい。具体的な相手はいないが。現在の生活(母親との半同居)は自分の思うような生活ではない。けれども一人では置いていけない。母は田舎に一緒に帰ろうと言うが,自分はここを離れられない。以前のような自分の意志どおりの一人暮らしがよかったと思う。」(Ie)
 「結婚したい(世帯をもちたい)。恋人はいるが(結婚するかどうかは)わからない」(If)
 「当面はここで住むつもり。将来的には市営住宅の障害者用の住宅に入りたい(2回応募した)。」(Ig)
 「結婚についても考えていて,「これからの家族」としてとらえている。」(Ih)
 「東京に出てきて,一人暮らし始めて本当によかった。」(Ii)
 「あと5年は今の生活を続けられる体力があるだろう。その間やりたいことを全部やっておきたい。療護施設を出たのは池の中で死にたくない,大海でなくてもせめて小川に出て死にたいという気持ちから。この生活から海に出て,やることをやって疲れたら,また池に戻ってもいいかなと思う。そしたら,それまでの経験があるのでずっと施設にいたのとは違う生活ができるだろう。ゆっくり原稿でも書きたい。」(Ij)

 ◆違いについて

 療護施設の居住者達も現在の暮らしに必ずしも満足しているわけではない。今いる場を出て暮らしてみたいという思いがある。それが何に由来するかについて,これまで見てきた。だが,その実現の可能性についての認識,見通しの具体性についてはかなりの差があった。
 第一に,施設で暮らす人よりもグループホームで暮らす人の方が,今いる場を出て暮らす生活を現実のものとして描いている。
 それはまず,そもそもグループホームが次への移行のためのステップとして位置づけられていること,そして実際にもここを経由して次の暮らしに移行していった人がいて,それをモデルとすることができることによるだろう。また,療護施設の立地条件や,サービス提供のシステムのあり方が構造的にもたらしている施設とその外の社会との障壁の存在が,外に出て暮らすための機会や生活の技術等を与えにくくしていることによるだろう。また,これと比較して,グループホームが外に出て暮らすことに移っていきやすい環境として存在することによるだろう。
 第二に,療護施設に暮らす人の中でも大きな差がある。理由は基本的に同じである。施設を出ての暮らしを可能にする機会につながるような外部との接触のないところにある施設と,市街地にある施設との間の違いがまずある。さらにここで重要なことは,すべての施設について,療護施設自体は,その外で暮らすことを可能にする,容易にするサービスを提供することが少なくとも今の体制ではできておらず,この時,こうした機能を現に果たしているのは,施設の外部の,特に障害をもつ当事者が主体となった組織であることである(N4a,N6a)。そのような場に通えるところに施設があるか,施設がそこへのアクセスを援助しているか,これらのことが,入居者が具体的に施設を出た後の生活像を描けるか,そのために必要な資源を実際に得,それを使いこなせるようになるかどうかに関わっているのである。
 グループホームの設立や運営自体が当事者の活動としてあり,一人暮らしの生活も当事者組織の支援を必須としていることは既に幾つかの項目で述べたが,住まい方の選択,次の段階への移行の場面で,障害をもつ当事者組織の果たしている役割が再度確認される。 ◆第U部 提言◆

■比較検討のあり方について

 以上の検討から提示される方向について述べる前に,調査・研究のあり方について一つ指摘,確認しておきたい。
 今回の調査においては,調査項目や設問の設定自体の問題もあり,同じ質問に対して各々の調査対象者が別の側面を捉えて答えるといったことがあったことは,第U部で述べた通りである。そこで,調査対象者の発言から,例えば満足度なら満足度の意味合い(の異なり)を明らかにするようにはつとめてみた。こうした方法で,調査設計時点での欠点をある程度は補えたのではないかと思う。しかし反省は残る。調査において当然の初歩的なことではあるが,どの部分,どの側面を聞くのかをはっきりさせた質問を設定すべきだった――ただそうすると,今回のような生活全般にわたる調査を行うのはより困難にはなるから,まずはこうした調査もあってよかったかもしれない。
 ただ,ここで述べたいのはそれとは少し異なったことである。異なった環境にいる人に尋ねて得た満足度,決定度の度合い,数値をそのまま使うことには大きな問題があることが,今回の調査結果を検討する中で改めて明らかになったと思う。普通に与えられる選択肢が現実には与えられない時,また実感をもって想定できない時,その満足度や決定度は現在の可能な選択肢の範囲内で回答されることが多いと考えられる。例えば30の可能性がある場合の20と,100の可能性がある場合の20とは異なる。前者の環境のもとにある人は「まあまあ満足」と答えるかもしれないし,後者の場合であれば「不満」と答えるかもしれない。では,前者の方がよりよい状態であると言えるだろうか。もちろん,言うことはできない。置かれている環境,状況自体が問題であるはずである。そして環境がよくなるほど,将来への可能性が現実性を帯びるほど,不満の度合いが高くなることも当然あるだろう。
 にもかかわらずこうしたことに関する配慮を欠いた調査が時に見受けられる。調査や調査の評価は,調査対象となる人にとって現実に可能な範囲はどれほどのものであるのか,そしてその範囲がどのような事情によって規定されているのかを考えながらなされなければならない。

■居住の場の今後

 ◆療護施設のあり方

 療護施設,グループホームの現状,入居者の生活,意識については各項目で述べてきた。問題点,改善すべき点もあげてきた。だから,ここでそれを一つ一つ繰り返して述べることはせず、第T部で見てきたことをまとめて言いうることを述べることにする。
 療護施設は障害者「専門」の施設であるから障害に合せて提供される内部の住環境は相対的に充実しているかのように考える人がいるかもしれないが,それは必ずしも当たらない。いくつもの基本的な領域において,グループホームや一人暮らしの生活の方が療護施設よりも条件がよいことが明らかになった。最初にことわったように,今回の調査は限定的な調査ではあるが,比較的生活の条件が充実した療護施設が調査対象の半数を占める以上,結論は変わらない,むしろ,療護施設全体の平均値をとったなら居住環境の差はより大きなものとして現われてくるだろう。
 機器の導入,部屋の改造等のハードウェアの整備状況について,療護施設が他の生活の場と比べ特に優越している点はない。むしろ下回る部分も多い。また,介助等,人によって提供されるサービスについても,いくつかの施設は,量的にもまた質的にも満足できる介助サービスを提供できていない。ただ,「在宅」の生活における,家族による介助の不足,これ以上負担をかけられないという気持ちから,また将来それが得られなくなるというリスクを考えて,療護施設での生活が「選ばれている」。
 このように,また詳しくはこれまで述べてきたように,特に療護施設には生活の場として多くの問題がある。それらはすぐにでも改善されるべきであり,また,実際に改善可能な点はいくらもある。その試みもいくつかの施設では,施設の方針として,また職員の努力によって,そしてそれをうながす居住者の継続的な要求活動があって,なされてきた。その結果,比較的高い水準のサービスを提供している施設がある。こうして実際に一定の改善がみられる施設もあるのだから――たしかに予算的な制約が問題解決を困難にしてはいるのではあるだが――内部の住環境の改善,またサービス内容の充実は可能である。
 ただ個々の改善案を検討する前に,また改善案を立てるためにも,考えるべきことがある。基本的にどのように対応すべきか。つまり,療護施設(の改善)によって問題に対応すべきなのかどうか。そもそもこのような場がいつまでも必要なのか,なぜ,どの程度,必要なのか。このことを考えるためには,必要とされるサービスが,施設でなければ提供できないものなのかを考えるべきである。すなわち,障害をもつ人の暮らしを支えるためにどのような支援策が必要なのか,そして可能なのかという基本的な問題を考える必要がある。
 同時に,「地域」の現在の状況下で施設が果たしている役割,現況下で果たせる役割は何かという問いがある。これに答えるためには,「地域」での生活が今現在どこまで可能になっているのかという問いと,コストの問題も含め,今後どこまで可能なのかという問いに答えなければならない。このことを考えた上で,また考えながら,施設に果たすべき役割があるとすればそれは何か,そしてそれを実現するために何が必要なのかを考える必要がある。
 サービスの量が不足しており,ゆえに量的に充実させればよいというにとどまらない問題があった。療護施設では(療護施設に限らないが),基本的に,諸サービスは,一括して,現物で提供される。このように一元的な供給がなされる場合には,供給サイドの方の力が強くなりがちである。また利用者の側が,自己決定に基づいて生活することができない。
 この点を改革していくことは,現在の施設運営の基本的な体制の否定を帰結する。つまり,もしこの方向での改革が実際に十分なだけ行われるなら,サービス自体は施設に付随せず,在宅福祉サービスと共通に供給されることになるのだから,施設は,居住する建物としてのみ存在することになるのであり,この建物が(他の居住の場と異なり)なお施設であると言えるのは,障害者が集まって住む場であるという点だけになる。
 しかしそのような集まって住む「箱」は果たして必要なものなのだろうか。
 第一に,集まって住むことが当事者に望まれているわけではない。グループホームについて見るように,望まれている場合もあるが,それは一時的なもの,あるいはより少ない人数が自発的に集まって住もうとする場合である。集まって住むことを特別に支持する理由はない。
 第二に,先に見たように,障害をもてばなおさら,街の中に住むことが必要なのだが,一定の居住者数,そしてそれに応じた敷地・建物の面積を確保しようとすれば,かなりの経費が必要になる。実際こうした事情で,近年の療護施設は市街から離れたところに作られることが多く,立地条件に関わる問題はむしろ深刻化している。費用さえ十分にかけるなら市街地に建設することも可能かもしれないが,実際には難しいだろうし,また,そもそも同じ費用をかけるなら,さらにより安く済むのであれば,他の人々と混在して住むかたちが望ましい。(施設の外部との交流を求めようとしている施設もある。しかし,やはりそれは生活を離れた「交流」「ふれあい」でしかなく,明らかな限界がある。)
 ただ,第三点を考えておく必要がある。すなわち,障害者を一箇所に集めることによって,人的なサービスの供給がより効率的に行えるのではないか,別言すれば,地域での分散した居住形態は,より高い費用がかかるのではないかという点である。結局,この点が最後に残るように思われる。
 だが,まず,費用が多少余計にかかったとしても,第一点,本人が望むのであればそれを実現するべきだとは言えるだろう。また第二点を兼ね合わせ,街中に特別の施設を作るために余計に要する費用と人的な費用との両方を考えた時には,施設に障害者を集めることによる費用の軽減効果はそれほどでもないということになるかもしれない。そして人的なサービスだけに限っても,一定の水準を維持しようとする場合,どれほど費用が軽減されるのか。この点について,今回の調査からはっきりとしたことが言えるわけではないが,少なくともそれほど大きな違いはないと言えそうである。N4〜6は,措置費だけでなく,相当額の自治体からの支出によって運営されている。計算の仕方によっても変わってくるが,土地・建物の部分を別にし(すなわち住居費に当たるものを除いて),単純に予算を入居者の人数で割れば,一人当り月百万円以上の経費がかけられているという計算にもなる(→注13)。これを住居費以外の支出にあてることができるなら,人的サービスの必要度がかなり高い人を含め,そ