胎児条項 Q & A

以下は、まだ加筆修正が必要な段階です。順次改訂しますので、こまめにチェックしていただければ幸いです。

(1999年4月21日現在 作成:玉井真理子

Q1.胎児条項ってなに?

胎児に“病気”や“障害”がある場合に人工妊娠中絶をしてもよいということを、法律(母体保護法、旧:優生保護法)のなかに明記することです。現在はこのような条項はありません。胎児条項の導入とは、人工妊娠中絶が出来る条件として、「胎児にその時代の医療水準で不治又は致死的と認められる著しい疾患にかかっている可能性が高いもの」というような条項を加えることを意味します。

Q2.母体保護法ってなに?

人工妊娠中絶を規定している日本の法律が、「母体保護法」です。1996年に「優生保護法」から改正されました。刑法に堕胎罪があるため、母体保護法で規定されている理由がなければ中絶はできないことになっています。

★関連法令

 母体保護法:http://list.room.ne.jp/~lawtext/1948L156.html
 優生保護法:http://list.room.ne.jp/~lawtext/1948L156-old.html
   優生保護法施行令
 刑法・堕胎罪:http://www.ky.xaxon.ne.jp/~naoto/password/lawkeihoutumi29.htm

■母体保護法の中の関連した条項は以下の通りです。

第二条(定義)
 (2)この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保持することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。

第十四条(医師の認定による人工妊娠中絶)
 (1)都道府県の区域を単位として設立された社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
 一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
 二 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
★関連のページ:優生保護法から母体保護法への改正の経緯

Q3.胎児に重い“病気”や“障害”があっても絶対に中絶は出来ないの?

胎児の“病気”や“障害”を心配して羊水検査などの出生前診断を受ける人が増えてきましたので、ことのよしあしは別として、実際には胎児の“病気”や“障害”を理由にした中絶は行われています。こうした中絶は、「身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれ」という母体保護法の条文(第十四条(1)の一)を該当させて、実施されています。ただし、通常の中絶と同様に、妊娠の継続が母体の生命を明らかに脅かすような例外的な場合を除き、22週未満にかぎられます。
★関連のページ:産婦人科医から見た胎児条項問題

Q4.現実に行われているなら同じではないの?

ひとりひとりが考え抜いて胎児の“病気”や“障害”を理由に中絶を選ぶことは、いちがいに非難されるべきものではないかもしれません。しかし、そのことと、法律に「胎児に“病気”や“障害”があったら中絶してもいいですよ」と書いてしまうこととは、まったく別のことです。“病気”や“障害”をもった人たちから見れば、中絶されても仕方ない存在として法律に規定されることは、耐え難いことなのです。
★関連のページ:出生前診断と優生学

Q5.外国には胎児条項があるの?

フランスやイギリスはあります。ドイツは障害者差別に配慮するという理由から1994年に胎児条項を廃止しました。先進諸国の法律にはみんな胎児条項があるというのは間違いです。欧米諸国は中絶そのものが合法化されたのが非常に遅く、また一般に中絶可能な期間も日本に比べるとずっと短いために、その期間を過ぎてからの中絶には特別な理由が必要であるという背景があるのです。
★関連のページ:胎児条項を廃止したドイツ

Q6.最近どんな動きがあるの?

産婦人科医でつくる日本母性保護産婦人科医会(略称・日母=にちぼ)の法制検討委員会が1999年2月27日、母体保護法の改正問題に関する見解を盛り込んだ報告をまとめました。改正点として、妊娠12週未満については女性本人の同意のみでの中絶を認めるほか、「不治または致死的な疾患のある胎児」の中絶を認める、いわゆる胎児条項を設けるものとされています。
★関連のページ:1999年2月の新聞報道

Q7.女性や障害者のグループはどう思っているの?

「産む産まないは女(わたし)が決める」というスローガンを掲げている女性団体と、胎児の“病気”や“障害”を理由にした中絶は障害者の存在を否定し人権を脅かすものだと主張する障害者団体は、一見相容れないように見えます。しかし、障害者団体はもちろん、女性団体も胎児条項の導入には反対の立場をとっています。
★関連のページ:女性団体からの胎児条項反対声明など(1999年)
◆19990324 SOSHIREN 女(わたし)のからだから→日本母性保護産婦人科医会
 「胎児条項」導入を求める見解への抗議文
◆19990323 からだと性の法律をつくる女の会→日本母性保護産婦人科医会
 「「胎児条項」導入を求める見解に反対する意見書」


Q8.参考になる本や資料はあるの?

以下のようなものがあります。参考にして下さい。

その他いろいろ




  ▲このHP<生命・人間・社会>の最初の頁*
  *http://itass01.shinshu-u.ac.jp/tateiwa/1.htm