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■レナード・デービス氏からの泉さんの死へのメッセージ

長瀬修訳 200009
泉宜秀君を支援する会
http://www.deaf.or.jp/izumi/
『交通事故で逝ったろうの若者 泉宜秀君が残してくれた夢』
2000年9月



泉宜秀さんが亡くなったことにお悔やみを申し上げます。

私の母はろう者ですが、同じような形で1973年に殺されました。
ニューヨークで道を渡っていた時でした。運転者は母が聞こえると
思ってクラクションを鳴らしたのですが、母には聞こえませんでした。
母の死は殺人行為の結果と見なされ、運転者は告訴されました。
母が聞こえなかったことは刑事事件では全く触れられなかった
と思います(運転者はスピード違反でした)。
しかし障害の問題はいずれにしても出てきました。
私たち家族は民事訴訟を起こし「勝訴」したのですが、
結局、雀の涙ほどの金額しか賠償が得られませんでした。
将来の稼得能力に基づいて金額が決められるからです。
62歳で耳が聞こえず、収入の少ないパートの仕事だったので
65歳の定年までの収入は4000ドル程度とされてしまいました。
裁判所に支払う費用、弁護士費用等が差し引かれた後で、私と
兄(もしくは弟)は500ドルの小切手をそれぞれもらいました。
もちろん、金額の問題ではありませんが、社会、経済的地位が
障害の問題に関係があるかを示しています。

運転教習、安全運転講座で歩行者は耳がよく聞こえないかも
しれないことが伝えられていないのには驚かされます。

レナード・デービス
ビンガントン大学
英語学科教授
ニューヨーク、米国

(長瀬訳)

*デービス氏はいわゆるCODAで両親はろう者です。
このメッセージは英語の障害学メーリングリスト、
disability-research に簡単に泉さんの事件に
関するメッセージを流したところ、寄せられたものです。
御本人の承諾を得て、ここにアップします。
 氏の「ろうと洞察」は『現代思想』96年4月臨時増刊
「ろう文化総特集」(2000年に現代思想編集部『ろう文化』
として再刊)に翻訳、掲載されています。



REV: 20161229
泉さん事件  ◇『現代思想』
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