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「本人重視」国際育成会連盟世界会議
――「世界から」第十一回――

長瀬 修
『福祉労働』81号
98年12月25日



 オランダにいた縁(本誌「オランダ便り」六五号ー七〇号参照)もあって、ハーグで本年八月に開かれた知的障害者の家族と知的障害者本人の国際組織である国際育成会連盟(インクルージョンインターナショナル)の第十二回世界会議への日本からの参加に関して、全日本手をつなぐ育成会の事務局員としてお手伝いをする事になった。
 世界会議は四年に一度開催されている。知的障害者本人の活動には八十二年のナイロビ大会以来積極的に取り組み、日本からも前々回の九十年パリ大会には初めて五人の本人が参加し、日本国内での本人活動の発展に大きな影響を与えてきた。今回は日本から二九人の本人が参加した。
 本人の参加を積極的に進めるために、八月二四日から二八日までの世界会議本会議の前に、二一日と二二日に「準備会議」という形で、本人だけの会議がノールドヴァイクというハーグ北方の小さな町で開催された。三十九カ国から約二五〇人が参加し、本会議で取り上げられる予定のテーマに関して、事前に知的障害者だけで話し合い、理解と考えを深めた。特に本人活動委員会委員長のニュージーランドのロバート・マーチン氏や同じく委員で、『さようなら施設』(ぶどう社)の著書があるスウェーデンのオーケ・ヨハンソン氏などが精力的にリーダーシップを発揮していた。二日目には各国の国別の報告もあり、日本の参加者も報告をまとめ発表した。
 特に盛り上がったのは、遺伝に関する議論だった。その結果、本人会議として「遺伝研究、遺伝試験は遺伝的ラベルを貼りつけることで、人から人間としての尊厳を奪うために使われている。インクルージョンインターナショナル世界会議が、私たちを人類から消し去る研究、行動を非難するよう勧告する」という決議を採択した。これは、ユネスコの九七年の「ヒトゲノムと人権に関する宣言」とも関連している。
 この世界会議の準備会議を受けて、九月二七日に全日本育成会全国大会の第一分科会(本人部会)は、出生前診断について、「おなかの赤ちゃんの障害がわかると生まないようにする出生前診断をやめてほしい」という決議を行っている。
 本人の参加というテーマは本会議でも強く意識されていた。本人の参加者はこれまでで最高の二五パーセントとなった。
 しかし、本会議に入って、「会議がむずかしすぎる」という声が知的障害の参加者の一部から上がり、支援者・通訳者が話を分かりやすく伝えるための時間として、全体会の講演等の後では三分間の間を取るという措置が取られた。しかし、どこまで効果があったかは疑問である。
 なお、興味深かったのは、世界ろう連盟を代表したフィンランドのリサ・カウピネン氏が、本人だけの組織であるピープルファーストについて触れて、知的障害者本人の組織のほうに一層の共感を覚える、それは自分たちろう者も聴者である親との関係で苦労してきたからであるという趣旨の発言を分科会でしたことである。
 親の会として発足し、発展してきた国際育成会連盟だが、近年、本人活動を強調し、「家族と本人の会」に変わろうとしている。自己決定で、本人が自分で決めていくのが望ましいが、自分の利益を守ることができにくい人の場合にはやはり、ある時期、家族がその立場を代弁するしかない。これは望ましい、望ましくないの問題ではない。単に他に選択肢がないのである。
 ちなみに代表的な障害者の国際的組織である障害者インターナショナル(DPI)、世界盲人連合、世界ろう連盟は国際育成会連盟を障害者自身の組織として見なしている。
 さて、会議の技術的な面として興味深かったのは、毎朝開会時に、ビデオジャーナルといって前日の会議の模様をビデオ日報として流した事である。編集作業は大変だったと思うが、このビデオの力で朝からの会議の出席率は確実に上がっていた。札幌での二〇〇二年DPI(障害者インターナショナル)世界会議誘致運動が成功した場合には、こういったアイディアも是非検討してほしい。このビデオは会議時に予約を受け付け、十一月上旬に購入者に送られてきた。
 私は初めての国際育成会連盟の世界会議だったが、(一)本人活動の国際的な盛り上がり、(二)「親」という立場での活動の広がりと強さ、(三)英語圏、欧米圏中心主義から脱却しようという一定の努力、の三点に感銘を受けた。
 次の世界会議はオーストラリアでの四年後の開催が決定された。次回こそは日本からの発表が多く行われることを望みたい。


REV: 20161229
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