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97年の国連での障害分野の動き(1)

障害・コミュニケーション研究所
長瀬修
『JDジャーナル』(日本障害者協議会)1998年6月号



 昨年の国連経済社会理事会での障害者、障害児に関する決議を報告する。
 経済社会理事会は97年7月21日に「1997/19 障害者の機会均等化」、「1997/20 障害児」の両決議を採択した。以下に見るように、両決議ともに障害児に強い関心を示している。*障害者の機会均等化
 「1997/20」決議では、「障害者の機会均等化に関する基準規則」に関する特別報告者の実績を評価し、同報告者の報告(本誌97年6月号ー10月号で、一部を翻訳、掲載)を歓迎した(第1段落)。また、第18段落で特別報告者の任期を3年間延長することを決定し、特別報告者が第38会期の社会開発委員会において新たな報告をすることを要請した。これにより、94年に任命されたスウェーデンのベンクト・リンクビスト氏は2000年まで特別報告者を務めることとなった。
 他に言及されている事項としては以下がある。完全参加と平等の推進(以下、段落を示す:2)、焦点としての国連事務局の役割(3)、機会均等基準の効果的実施(4)、ジェンダーの視点(5)、障害児の権利(6)、障害者組織の政策形成過程への参画(7)、障害者組織の機会均等基準実施への協力(8)、障害者への性的虐待防止(9)、国連機関による各国政府への助言提供(10)、国連開発計画(UNDP)など国連機関による障害問題への取り組み(11)、ユニセフ等の国連機関による障害児の権利、ニーズへの取り組み(12)、特別報告者と「子どもの権利委員会」による障害児の権利に関する協力(13)、「貧困撲滅の10年」での障害問題(14)、「サラマンカ声明」に基づく、障害児・成人の教育促進(15)、ILO159号条約の批准促進(16)、途上国、経済的に移行期にある国への支援(17)、機会均等基準の報告で障害児への特別の注意をするよう特別報告者に要請(19)、国連障害任意拠出基金への拠出要請(20)、事務総長に対して36、37会期で障害者の社会統合に関して報告するよう要請(21)。
 なお、前文に「現在の国連の予算的制約が国連の障害分野の活動にもたらす影響に憂慮する」とある。機会均等基準の特別報告者の予算は特別拠出によるものであり、特に米国政府の多額の分担金滞納による国連全体の財政危機の直接の影響は受けていない。しかし機会均等基準実施予算も厳しい状況にあり、当初は本年6月にニューヨークで予定されていた障害NGOによる専門家会議(パネル)が資金不足により延期され、開催のめどは立っていない。
 日本政府からは「国連障害者の10年」後半から毎年、現「国連障害任意拠出基金」への10万ドル(約1300万円)の拠出が続いてきた。しかし、行財政改革の一環としての政府開発援助(ODA)削減政策により、今年度は9万ドルの拠出となった。来年度はさらに1割削減が予定されている。特別報告者へは95年度から、10万ドルの拠出の1割(約130万円)だけが指定されてきたが、それも削減に伴って今年度から減額されている。全体の予算額の減少に歯止めをかけると共に、特別報告者向けに指定する金額の増額が是非、必要である。*障害児
 次に障害児に関する「1997/20」決議の骨子を紹介する。(1)障害児、家族、援助者への特別の注意の必要性、(2)貧困、疾病、災害、地雷等の結果として障害を持った子どもが多い事を憂慮、(3)障害児の権利、特別のニーズ、福祉へ各国政府、事務総長からの万全な配慮を要請、(4)障害児への差別に関する国際社会の取り組みを要請、(5)適切な技術とノウハウの利用による障害児の才能と可能性の促進、(6)機会均等基準の「規則13 情報と研究」実施に際して、子どもに関するデータを含むこと、(7)機会均等基準の「規則6 教育」に従って、障害児が教育に平等なアクセスを持つこと、(8)ユネスコが障害児の統合に向けたプログラムの活動を継続すること、(9)障害児のレクリエーションへの参加、(10)障害児が心身の最高レベルの健康を享受する権利、(11)国連障害任意拠出基金への協力、(12)特別報告者が機会均等基準のモニタリング活動で、障害児に特別の関心を寄せるよう要請。

REV: 20161229
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