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在宅での看取り
介護の負担とはりあい

百瀬 由美子(成人看護学)



在宅での看取り
介護の負担とはりあい

                         百瀬 由美子(成人看護学)

  信州大学医療技術短期大学部平成8年度公開講座
  生と死の医療──教養としての医療part2

 在宅ケアの推進により、高齢者が何らかの障害を持ちながらも家庭で療養をする人
が増えてきていますが、家庭で最期まで看取るには介護者や家族にさまざまな影響を
及ぼすことになります。たとえば、慢性的な疲労による身体的健康障害や怒りっぽく
なったり気分が沈んだり、あるいは将来の不安などといった精神的負担、生活面での
不便さ、自由の束縛、介護者の生活様式および生活設計への影響、仕事への影響、家
族間の感情の行き違い、経済的圧迫などが考えられます。これらの負担を軽減するた
めに保健・福祉サービスが整備されつつありますが、サービスが多くの介護者に知ら
れていなかったり、他人が家の中に入り込むことに抵抗を感じたり、公的サービスを
受ける際に「お上の世話になる」といった負い目を感じたり、日本人に特有な規範意
識である世間体などにより、サービスが有効に活用されない場合がしばしばみられま
す。
 しかしながら、介護の負担が大きくても家庭での介護を続けている現状をみると、
介護に何らかのはりあいを感じているところもあるのではないでしょうか。日本の社
会に古くから定着している「家制度」を基盤とした長男の嫁が老親の世話をするとい
った規範や老親への愛着、世話をしているといった満足感などがはりあいにつながっ
ていることが考えられます。このような介護の負担およびサービス利用を阻害する要
因と介護のはりあいについて事例を紹介しながら検討したいと思います。介護の立場
から考えると、保健・福祉サービスを有効に活用し、介護の負担とはりあいのバラン
スを保ちながら介護することが長期に渡る介護と在宅での看取りを可能にする上で重
要なことではないかと考えます。


REV: 20170127
信州大学医療技術短期大学部
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