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家で迎える平安な死

小松万喜子(成人看護学)



家で迎える平安な死

  信州大学医療技術短期大学部平成8年度公開講座
  生と死の医療──教養としての医療part2

   小松万喜子(成人看護学)

 人は生まれると同時に死に向かって生きはじめます。新芽が育ち、青々とした葉
をしげらせ美しい花を咲かせ、実をつけやがて枯れていくように、生きるものにと
って死は必ず訪れるものです。そんな誰にでも訪れる死をあなたはどのように迎え
たいですか?
 自分の死に方を選択できるのだろうかと考える方もおられるかもしれません。人
間が「死ぬ」ということは原始時代も現代も全く変わりません。しかし、死のあり
よう、つまり、「死ぬ瞬間までをどう生きるか」という点では大きく変化してきて
います。
 その人の死のありようには、死因、死亡場所、死亡までのケアが影響するといわ
れます。日本人の死因の第一位は悪性新生物(癌など)です。いまや亡くなる方の
4人に1人が癌で亡くなっています。残念ながら、癌や成人病の予防・早期発見が
すすんできたとはいえ、自分の死因を自分で選択するのは不可能といってよいでし
ょう。では、死亡場所はどうでしょうか。昭和20年代は殆どの方が自宅で亡くなっ
ていましたが、年々病院で亡くなる方が増え続け、現在は約8割の方が病院で亡く
なっています。これは自らの意志による結果なのでしょうか。昨年の海上らの全国
調査(「ターミナルケアに関する認識の実態」第2回日本看護福祉学会,1996)に
よると、「死を迎える場所は我が家がよい」と回答された方が8割を占めていまし
た。つまり、多くの人が自宅での死を希望しながら、実際には病院で亡くなってい
るわけです。死因や死亡場所が変化すれば、死ぬまでに受けるケアが異なることは
言うまでもありません。
 さて、最初の質問を少し変えましょう。あなたはどこで、どのようなケアをうけ
ながら死にたいですか? 「どうせ死ぬなら私は癌で死にたい」とおっしゃる方が
います。心筋梗塞などで急逝するのに比べれば、癌はある程度予後がわかっていて
、その期間にいろいろな準備をして選択しながら生きられるから、というのがその
理由です。こうした場合の選択の中には死亡場所も入るでしょうか。今回の講座で
は、癌死に焦点をあて、日本で在宅死は可能なのか、家で死ぬために必要なことは
何かなどを考えていきます。転移した癌をもつある女性は「今一番不安に思ってい
るのは痛みに対してです。」と話しておられました。ここでは、住み慣れた思い出
の多い家で、親しい家族とともに最後の時を過ごすという精神面の平安のみでなく
、身体面の平安についてもあわせて考えていきたいと思います。


REV: 20170127
信州大学医療技術短期大学部
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