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女性の労働・雇用政策

〜これからの女性の雇用形態〜



Y(立命館大学政策科学部3回生)
掲載:20020721

目次
 はじめに
第1章 女性の労働の現状
 1−1 雇用の変化
 1−2 女性の労働と育児
 1−3 個別のケース
第2章 女性の今後の就業形態と見通し
 2−1 5つの就業形態
  最後に

 はじめに

 関西ではまだ少ないと思われるが、京都へ通うようになってから京都バスの運転手にも女性がしばしば見受けられるようになった。私は大阪に住んでいるが、大阪市バスや近鉄バスでは女性の運転手に遭遇したことがない。実際、男女雇用機会均等法や、女子深夜労働規制撤廃などにより、女性の労働機会は大幅に広がってきていることが言えよう。しかし、仕事と家庭の両立を目指す女性に対しては、就労条件は悪くなり、少子化を加速するおそれもある。
 今日、働く女性が増えているというが実際はどうなのだろうか。三回生になって、就職活動を意識するようになってから、これから自分自身はどのような道を歩んでいくのかということについて考えるようになった。育児との両立、又家事の両立はどのように行っているのだろうか。しかし、現時点では、私は母が専業主婦という環境で育ってきたので、家庭を持ってもばりばりと働く自分がなかなか想像できないでいる。しかしその一方では、専業主婦は何かおもしろみのないもののようにも感じる。多くの女性は、結婚し出産してからは育児などで仕事を退職している、。しかし、ある程度育児も落ち着いてきたら、自分の能力を活かせる職業でパート・タイムとして働くことを希望している。私の父の場合は、女性の仕事は子供の世話、家事だと考えている典型的な日本人男性である。しかし、このような固定観念を持っている日本人男性は少なくないだろうと思われる。
 本レポートを通して、女性の労働、特に出産を終えた女性の労働ついて考察していきたいと思う。本レポートは二章構成であり、第一章では女性の労働の現状を、最近の雇用の変化や、労働と育児、成功している女性の個別のケースを基に考察していこうと思う。そして、第二章では、これからの女性の働き方として注目されている5つの雇用形態を紹介したいと思う。また、女性として自分の意見を交えながら考察していくものとする。

第1章 働く女性の現状

1 平成2年 12年の変化
 では、女性の雇用がどのような業種で増え女性比率はどのような業種で多いのか、図表1でみていこう。
 図表
 図表1 平成2年から12年までの業種別、女性比率、雇用者数の比較 (略)
 [図表1の考察]
 平成2年から平成12年までの10年間調査した総務省統計局の「労働調査」を資料として用いた。第一に、サービス業は雇用者数、女性比率共に高い伸び率である。雇用者数では約200万人女性の雇用が増えている。女性比率は約48%から約54%と約6%上昇している。それと同じく卸売・小売り・飲食業も順調に伸びている。しかし、製造業、金融・保険・不動産業に関しては、女性比率と雇用者数共に平成2年と比べて若干減少している。この図表からは、サービス業、卸売・小売り・飲食店製造業で大半の女性が働いていることが読み取れる。そしてサービス業に関しては、これからも積極的に女性の雇用を増やしていくことが見込まれる。

2 女性の労働と育児
 労働白書によると、特に30歳代の女性は就業意欲を強く持っている。この年代の後半から、これからの女性達は、再び社会の中で働くことを目指す者が多くなってくると見込まれている。出産後も仕事を辞めずに仕事と子育てを両立するライフコースを目指している女性が増えている。しかし、実際には難しく出産後に子供がある程度大きくなってから再就職する女性が多い。
女性の育児に対する考え方についての調査
 *「女性は結婚したら、自分自身のことより夫や子供など家族中心にして考えた方が良い」
 →「賛成」又は「どちらかといえば賛成」とした女性の割合は58.1%であった。
 *そして、「女性は仕事を持つのはよいが。家事、育児はきちんとすべきである」
 →「賛成」又は「どちらかといえば賛成」とした女性の割合は84.6%で、平成4年とほぼ同割合な結果であった。

 すなわち、女性の就業意欲は高まっている一方で、育児や家事を優先する考え方はほとんど変わっていないのである。女性は結婚し出産を終え育児に専念し、育児が一段落終えてきたらもうもう一度働きたいと考えている者が多いのではないだろうか。以下では個別のケースをみていきたい。

3 個別のケース
 女性労働白書の「能力を活かす多様な生き方の例」を参考にし考察していきたい。以下は女性労働白書から引用した。EさんBさんを例にあげる。

 Eさん
[パソコンソフト会社経営 家族…夫、子供2人(25歳、24歳)]
 Eさんは、某大学電子工学科卒。卒業後、国立大学工学部に技官として就職したが、23歳で結婚退職した。その後、12年間、専業主婦であったが、自己実現できる場を模索、何かライフワークを持ちたいと思っていた。30歳から35歳まで、自分に合った仕事は何かを発見するため、試行錯誤で様々なことを試してみた。再就職をするなら、あまり時間が無いと思っていたので、いったん手がけて自分には合わないと思うと、すぐに中止して次の事に挑むというやり方だった。
 再就職の際には、当面の収入は少なくても、仕事の経験が蓄積され、能力向上を図れる仕事であることを重視し、35歳のとき、プログラマーとしてパソコンソフト会社に就職した。勤務は週3日のパートタイム労働であったが、次男がまだ幼稚園児で夏休み等は出勤し難く、会社の上司に在宅勤務を願い出たが却下された。
 そこで、36歳のとき、仕方なくその会社を退職し、自分でパソコンを手配して、自分で受注物件を探して独立して、自宅でソフトの受注開発を始めた。時代の波に乗って、どんどん注文が増え、一人ではこなしきれずに、パートタイムのプログラマーを一人雇い、また、自宅も手狭になったために、貸事務所に移り、3年後に現在のソフト会社(株式会社)を設立した。結果的に、仕事と育児の両立という当時の自分のライフスタイルに合い、且つやり甲斐のある仕事ができる就労方法として起業を選んでいた。
 事業内容は、主として栄養・献立管理のコンピュータ・パッケージソフトの開発・販売で、年間売上高は、5,000万?1億円に上る。自らは、代表取締役として、新商品企画、営業企画、人事管理等を行っている。

Bさん
 [会計事務所社員 52歳 家族・・・夫、子供2人(27歳、23歳)]
 Bさんは、結婚1年後、定期預金担当として働いていた信用金庫を退職し、24歳で専業主婦となった。
 専業主婦時代、子育てをとても楽しく思っていたが、漠然と仕事をすることへのあこがれがあり、子育ての手が離れてくると、何か働きたいと強く思うようになった。そして、35歳の時、新聞の求人欄で募集していた会計事務所のパートタイムに応募した。応募には、簿記の資格が必要であったが、自分は応募資格に当てはまらなかったものの、信用金庫で働いていた頃から簿記を勉強したいと思っていたので、勉強して資格をとるので、資格をとったあと採用してほしいと応募してみると、経営者が柔軟な態度で「資格がないのなら、指導します。」と言って採用してくれた。
 採用してもらえることになったものの、下の子供がまだ小学校入学前だったので「午前中しか働けないし、子供に何かあってすぐに帰らなくてはならないこともあるかもしれない」ことを相談すると、経営者が、繁忙期だけ、元帳や試算表を家で作成するという在宅勤務を提案してくれた。当時、伝票1枚20円で、再就職後初めてもらった給料は月4万円だった。
 その後5年間は、在宅勤務者として、確定申告時1ヶ月間だけパートタイム労働者(午前中勤務)として働いていた。
 39歳の時、所長から正社員にならないかとの誘いがあり、自信はなかったが、やってみようと思い正社員になった。正社員はパートタイムと違い仕事に責任を持たなくてはならないので大変だったが、家族に励まされがんばった。
 現在の主な仕事は、事務所にいる7人の税理士が顧問先からもってくる伝票、領収書等の資料を整理、パソコンへの入力、試算表や経営分析等のデータの作成、決算書の作成、税務署への提出等会計業務のほか、会社の経理、パートタイム労働者の雇用管理等である。正社員になってから、東京都の職業訓練所の簿記、工業簿記の講座や市役所主催のワープロ講座を受講し、自己の能力開発に努め、簿記検定にも挑戦している。
 再就職して、自分で給料を取れること、様々な人に会えることが楽しい。在宅勤務から始めてここまで続いたのは、始めて会計の仕事をしたとき、数字をぴたりと合わせることに面白さを感じたこと、小さい会社であったためか、経営者が、子育て中の自分に柔軟に対応してくれたことが理由であると思う。

 Eさんは再就職に当たっては、目的(どんな仕事をしたいのか)がはっきりしたら、それに向けて集中的に勉強することが重要であると思っている。成果を得るためには、時間、努力、労力の投資が必要であり、また、選ぶ仕事は、自分の適性とともに、世の中の動き、ニーズに合致したものであることがポイントであると思う。そうでないと、折角の努力と労力が時代に合わず無駄になってしまうからである。自分の場合は、コンピュータのソフト関係の技術者を目指したことが、時流に乗り幸いした。
 Bさんは35歳で再就職して、「家事よりも、断然仕事の方が楽しい」と感じている。35歳から再就職することについて大変だったとは思っていない。現在、納税の仕事に少しでも携わり国のためにも働いていると思うと世の中に少しでも役立っているようで、1年でも長く働いていたいと思っている。たと思っている。
 Eさんのように育児の休みをとり難い企業も現実には沢山あると思われる。しかし、これからは女性の活躍が大いに期待されると思う。Eさん、Bさんのように再就職をして成功だった人は多々いるえあろう。正社員以外で自分の能力を発揮できる雇用形態としてこれから注目されるべき5つの雇用形態を次章で紹介したい。

第3章 女性の就業形態と今後の見通し

 1 これから女性に期待される雇用形態
   ではサービスの経済化、業務のOA化を背景に多様な就業形態が生まれてきている。その主なものとして5つの就業形態を紹介されている。
(1)専門職パート
(2)在宅就業
(3)女性企業家
(4)ワーカーズ・コレクティブ
(5)NPO、ボランティアワーク
 一つ目に専門職パートである。今後は、パートタイム労働者を補助的・臨時的労働者として捉えるのではなく、パートタイム労働という働きのなかで専門的な能力や資格を活かしていこうというものである。
 二つ目に在宅就業である。情報通信技術の発展により、現在ではパソコンなどを使って自宅でできる仕事が増えてきた。在宅就業者は様々な問題を抱えているが、育児や家事を両立しやすいので女性にむいているので早急に在宅就業者の保護や支援を進めるべきである。
 三つ目に女性企業化である。自ら事業を起こした女性企業家数は正確には把握できないが、帝国データ−バンクによると、平成9年の女性社長者数は58,634人で前年の57,356より2.2%増えている。資金調達面の困難さや社会的信用力の不足などの問題点も多々あるが、自分の能力を発揮したい人には最適であろう。またきめ細かな企業家支援事業の展開が必要である。
 四つ目にワーカーズ・コレクティブである。ワーカーズ・コレクティブとは専業主婦などを中心に数名が集まって資金を出し合い、そこで働く労働者自身が管理、経営、運営を行いながら事業を行う事業形態である。日本では昭和50年代後半頃から生まれてきたもので、食品販売・弁当・惣菜製造販売などやリサイクル・医療・託児サービス・介護サービス・清掃など地域に結びついた事業である。最後に、NPOなどのボランティア的就業である。最近ではボランティア活動に従事する人も増えてきた。保育や老人介護などの分野が多い。

2 最後に

 この女性の労働に関するレポートの資料のデーターを集め考察していくうちに、これからは女性も活躍のできる時代であるということが認識できた。しかし、実際は企業においても難しい状態に置かれている。我が国では、これから少子高齢化時代を迎える。これに伴って、労働力として女性の役割が大きくなってきているように思われる。私も就職する際には「女性にやさしい企業」、育児休暇が十分にとれる企業に就職したいと考えている。私たちの世代は、結婚して家庭を持っても働きたいと思っている女性は多いはずである。従って、第一に必要なことは、男性の意識改革であると思われる。男性も、家事、育児を共にすることが、女性が働く上で重要なことであると思われる。我が国の女性も、自分の子供のために専業主婦になるのではなく、自分の生活を充実させようと思っている女性が増えてきている。従って、男性も女性のこのような変化を正しく認識し、家事や育児を女性に頼りすぎるのもいけないと思う。男性が家事などを協力することによって、女性も働きやすくなると思われる。この意識改革というのは難しい問題であると思うが、これからの最も重要な事の一つでもありうるだろう。

引用URL目録

「キャリアと家庭」両立をめざす会, http://www.carifami.com/(7月2日アクセス)
財団法人 女性労働協会, http://www.miraikan.go.jp/ (7月2日アクセス)
女性労働白書, http://www2.mhlw.go.jp/info/hakusyo/josei/990126/ (7月4日アクセス)


REV: 20170127
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