土佐市で全身性障害者介護人派遣事業をつくるまでの経過
土佐市で全身性障害者介護人派遣事業をつくるまでの経過
土佐市在宅重度障害者の介護保障を考える会
藤田恵功
Shigenori.Fujita@スパム対策ma5.seikyou.ne.jp
高知県土佐市で切望の全身性障害者介護人派遣事業が98年10月1日から始まっ
た。その経過を報告する。
まずはガイドヘルパーを交渉
私はC−3、4、5の頸髄損傷者で6年前から地域で一人暮らしをしている。
5年前からガイドヘルプ事業を実施するようひとりで交渉していたが、市から「土
佐市では実施をしない」「厚生省が何を言おうが土佐市には土佐市の考えがある」と
までいわれる始末だった。
土佐市は市職員組合が非常に強く、県下でも有名な地域である。市では鉛筆一本買
うにも組合の許可がいるとまでいわれるようなところである。市の本庁と同じ扱いを
受ける社会福祉協議会に依託されているホームヘルプサービス事業は、ほとんどが正
職ヘルパーでしめられており、ヘルパー1人当たりの実働時間は、年間800時間と
県下で最短である。
最近までは、正職常勤ヘルパーに国家公務員の上級職並みといわれる給与が支給さ
れており、自分たちの労働条件を崩す物は一切取り入れようとしない。登録ヘルパー
制度をとりいれるなどは、正職の労働条件を脅かす恐れがあるという理由から組合の
許可が得られようはずがない。
94年前後〜97年
知り合いの議員にたのみ込む等、奮闘した結果、「94年度からガイドヘルパーを
実施するように検討をしたい」という言葉を市長からひきだすのに成功した。
しかし、担当者はまじめに取り組まず、何回も喧嘩腰で電話をしてやっと予算請求
をする様なことであった。
96年度になってやっと市の予算もついたが、市は、「県がガイドヘルパーの研修
をしない」ことを理由にあげ、実施しなかった。
さらに97年度になっても実施せず、97年12月8日、議員立ち会いのもとで、
市の福祉事務所長、障害者班長、土佐市身体障害者連絡協議会前事務局長があつま
り、私の家で話し合いをした。
「予算も付いているのに何故、実施が出来ないのか?」という私の質問に、組合が
反対をしているとも言えず、無言の時間が5分ほど続いたあと「藤田さんが考えてい
るとおりである。(班長)」
話し合いが終わり「実施が遅れて申し訳ない。これからは誠意を持って取り組むの
で許してくれ。(所長)」「東京の方など、良い制度があれば(自薦登録ヘルパー方
式も)取り入れても良い(班長)。」
97年度も終わろうとする98年の3月になってやっとやっとガイドヘルプが実施
されるような有様である。
登録ヘルパー制度の交渉
市民の最高決定機関である議会でガイドヘルプ事業の実施が決まり、なおかつ、予
算までついているのに2年近くも実施されないような最悪の過疎の町であるが、96
年には介護制度の全国団体の会員にして頂き、アドバイスにより「土佐市在宅重度障
害者の介護保障を考える会(会員一人:今は3人)」をつくった。
登録ヘルパーとガイドヘルパーの要望書を市の担当課と議会の両方に出し、96年
3月議会で取り上げられた。
ホームヘルパーの派遣時間を増やしてくれ、登録ヘルパー制度を取り入れてくれと
要望をし続けたが、ガイドヘルプ事業と同じで担当に全く誠意はなく、話し合いにも
応じない。電話をしていても勝手に切ってしまうような状態だった。
今度は、福祉事務所長に談判をしたが所長も同じで「土佐市ホームヘルプ事業は、
総合保健福祉センターが担当しているのでそちらと話をしてください」
福祉センターに話し合いを申し込むと「そんなことを言いましたか、私の所は介護
保険に向けた取り組みで精一杯だ。又、障害者のことは障害者班にやってもらわなく
ては、老人とは仕組みが違うので、ようしません(手におえません)」
福祉事務所長に話をすると「土佐市は現在のホームヘルプ事業以外に一切するつも
りはない」。以前に「誠意を持って努力する」なんて言っていた言葉は何処へ行った
のやら。
98年度
98年度から、福祉事務所所長が交替した。同時に障害者担当班長にも、元財政担
当のエリート職員が替わってきた。
早速、(5月初旬)所長と班長に自宅に来てもらい、
・要望書(登録ヘルパーとガイドヘルパーの要望)が96年3月議会で取りげられた
こと。そこで「近い将来、登録ヘルパー制度を取り入れたい」と云う民生部長の回答
があったこと。
・何度もヘルパー派遣変更願を出しているが福祉センター、福祉事務所を回されて返
事がこないことなど、
今までの経緯を説明したり、今まで提出した要望書のコピー、厚生省が出した身体障
害者ホームヘルプ事業に関わる資料(94年〜今まで)を構えておいて、それを見なが
ら話し合いをした。
「全部要望に応じられるかどうか分からないが、出来るだけ応じるよう努力をする
(所長)」といって帰って行った。
いままでとは違った対応だった。
全身性障害者介護人派遣事業の要望書
7月に介護保障協議会の担当者から送ってもらった介護人派遣事業の要望書セット
(これは良く出来ていた)を市に出したときも、班長から「藤田さん良い資料をあり
がとう」と、電話があった。
一週間後、班長と話し合いをした。そこで最低毎日16時間の介護が必要不可欠で
あることを説明し「最初から一気に16時間は無理だろうが、少なくても6時間の介
護をつけて欲しい。」という話をする。
彼は「実は、私は既に実施するつもりでいる。所長も私も同じ考え」とのこと。
「あなたの状態をみて6時間は気の毒だ。8時間にしよう。高知県の他の地域に長時
間派遣しているところがないから一気に長時間は無理。又、賃金についても安い地域
であるから東京並みは無理だと思う。」
ひと通りの話がすんだ後、「国際障害者年もあったのに障害者がこのような状態に
おかれていることが不思議だと前から、思っていた。多分、国が何もせずにいるから
だろう。はじめて福祉を担当して、国がこれだけの文章を出していることを知った、
なのに変わらないのは何故だろうか?」などの雑談をした。
ホームヘルプの補正予算で10月開始
7月に「介護人派遣事業実施をしたい」という意向を聞いてからは担当者の動きは
早かった。毎日8時間の東京都と全く同じ介護人派遣事業を行うことになった。
ホームヘルプ事業の予算の内部で補正を組んで介護人派遣事業を実施する、という
方針を課内でまとめ、市の財務を納得させた。
すぐさま、9月議会でホームヘルプの補正予算を通し、予算は解決した。
10月1日から制度はスタートした。
11月初め、介護者への市からの振込業務(10月分)の前の段階で、県が市に文
句をつけているという話を聞いた。県の高齢福祉課(ヘルパーの補助金担当)は、
「派遣時間が毎日8時間というのはおかしい」「どうやってもそんな長時間になるは
ずはない」と市に言っているらしい。この影響で介護者の10月分勤務報告書提出や
振込が遅れることになった。
市の担当者は「事前に何度も県には話をして(国の文書や東京の制度などを)勉強
するように言って置いたのに」とぼやいていた。
県との交渉を準備したが、その前に、県は東京都などに何度か電話したそうで、こ
の件は解決した。(県から市に「誤解であった」との連絡があった)。
終わりに
このような成果を生み出すことが出来たのも何といっても96年の夏、高知県の
「工石山青少年センター」で開かれた学習会に参加したとき、高知市の田中さんに介
護保障協議会の機関誌を3冊頂き、介護保障協議会の会員にしてもらって沢山の情報
を得たこと。さきに書いたとおり、知り得た情報を元に書いた要望書(96/2/15提
出)が3月議会に取り上げられ、「登録ヘルパー制度を取り入れたい(民生部長)」
を得たこと。
将来は、土佐市役所を背負って立つだろうと噂される所長と班長に誠意があったこ
と。
要望をし続けたことが大きい素因だと思う。
評論家の樋口恵子さんとJILの樋口恵子さんを間違えて学習会に参加したが、良
かった良かった。
◆障害者自立生活・介護情報相談センター制度係より
全国の小規模/財政難自治体に朗報
高知県は県民所得や自治体の財政指標で常に全国最下位かその1つ上を行ったり来
たりしており、高齢化・過疎化が全県で進んでいます。ほぼすべての市町村で人口が
減り、県庁所在地の高知市だけがわずかに人口が増えています。土佐市は高知市から
車で半時間ほどの農業地域にあり、市の中心部は農地の中にぽつんと大き目の集落が
あるといったところです。市内に単身の全身性障害者は1人だけです。
このような小規模の自体体で月240時間もの介護制度が県の指導なしにできたの
は全国で初めてであり、今後、同じような小規模な自治体でも、同じ方法で話し合い
を行えば、同じような制度ができる可能性が見えてきました。
交渉を自分の市町村ではじめたいという方には、今すぐ情報提供しますので、当会
制度係 フリーダイヤル 0077−2329−8610 までお電話ください。
REV: 20170131