HOME >

2000年障害者介護保障確立全国行動委員会厚生省交渉報告




2000年障害者介護保障確立全国行動委員会 3回目の厚生省交渉(98年10月13日)の報告

 2000年障害者介護保障確立全国行動委員会(呼びかけ団体=DPI・JIL・
介護保障協議会)として、8月、9月に続き3回目の厚生省交渉を10月13日に行
いました。

参加者
当事者側=DPI・JIL・介護保障協議会・ピープルファースト話合おう会
     ・わっぱの会(名古屋)の担当役員
厚生省側 老人保健福祉局 介護保険制度施行準備室 竹林企画法令係長
     障害保健福祉部 障害福祉課 菊地身体障害者福祉係長 他1名
        同    企画課 橋本企画法令係長
     社会・援護局  保護課 里村保護係長

 今回は、主に介護保険制度施行準備室と「65歳引き下がり問題」を話し合いを行
う予定で交渉を設定しました。

■背景解説
 介護保険が始まると、65歳以上の全障害者や40歳以上のリウマチ・パーキンソ
ン等の加齢に伴う疾病障害は介護保険対象になります。対象になると、介護保険から
ホームヘルプなどを受けることになり、現状の税金によるヘルパー制度は受けられな
くなります(介護保険が優先することが介護保険法で決まっている)。ところが介護
保険のホームヘルプは上限が決まっており、金額にして月24万円〜18万円程度が
予定されています。(介護保険準備室によると、介護保険給付全体の3分の2から2
分の1程度がヘルパーの訪問・通所系になる予定。残りの3分の1〜2分の1は月1
週間のショートステイや福祉機器レンタル等になる)。
 24万円の介護保険給付額からヘルパー利用可能時間を計算してみます。ヘルパー
を99年度の介護単価3730円/時で換算すると、1日あたり、2.1時間となり
ます。つまり今まで、毎日3時間以上のヘルパーや全身性障害者介護人派遣事業の利
用者は、介護保険の対象になると受けられる介護時間数が引き下がることになりま
す。
 家族と同居している障害者の多くは介護保険で水準が上がりますが、全国の単身生
活している全身性障害者の多くは介護制度の利用時間が引き下がってしまいます。
 この問題について、介護保険法の国会付帯決議で「今までのヘルパー等利用水準が
引き下がらないようにする」という内容が議決され、その後の大臣の国会答弁でも、
「水準は下げない」という答弁がされています。(参考資料を後のページに掲載)

■交渉内容

 今回は、具体的に、以下の8点について、現状の検討がどこまで進んでいるか、大
まかな方針は決まったか、を聞いていき、それについて交渉を行いました。

■(10月13日の要望書)

厚生大臣殿
                2000年障害者介護保障確立全国行動委員会
   呼びかけ団体    
DPI日本会議
全国自立生活センター協議会
全国障害者介護保障協議会
                連絡先 田無市本町5-6-20第二和光ビル2F
                全国障害者介護保障協議会  益留俊樹
                    TEL0424−68−3891
要望・質問書

1 介護保険の対象となった障害者に対して、現行のサービス水準を下げないためにホームヘルプサービス事業の一部を障害特有のニーズに基づくサービスという位置付けで、介護保険と併用して活用し続けること(併用方式)は可能か?

2 介護保険の対象となることによってサービスの水準が下がる障害者に関して、介護保険を利用せず現行の障害施策を継続して利用していくこと(選択方式)は介護保険制度上考えられるか?

3 上記の「併用方式」を認めた場合、介護保険によるアセスメント結果と実際のサービス利用が大きく異なることになるが、その矛盾についてはどう考えるか?

4 介護保険の利用者に対するアセスメント(調査から要介護認定)は障害者の「社会参加的」ニーズは含まれていないと考えてよいか?

5 介護保険内のアセスメントで「障害者」について、社会参加的ニーズを含めた別のアセスメント基準(別の調 査票、別の要介護認定基準)を作る方法は考えられるか?

6 現行のサービス水準を下げないために、生活保護受給者が介護扶助による介護サービスと、生活保護の障害者加算他人介護料(大臣承認の場合1日4〜6時間程度に相当)を併用して活用することは可能か?

7 障害特有のヘルパー制度として介護保険に組み入れられないものを例示せよ(ガイドヘルパーのほか、推薦ヘルパーは?)

8 単身障害者や障害者のみ世帯など、今まで障害施策で毎日4時間以上のヘルパーを受けていた場合(ショートステイの利用なしの場合)、介護保険対象になっても介護保険の限度額(36万円程度?)いっぱいまでヘルパーを利用する特例は考えられるか

介護保険制度施行準備室(企画法令係長が出席)の回答は、
1番2番については 「介護保険法では保険は身障法より優先するとなっている。
(基本的に)。しかし引き下がらない方策を障害保健福祉部で検討中。まだ決まって
いない」
(編注:多分、全く取りかかっていないようす)
3番 「まだ詰まっていないので、今後の検討課題」
4番 「アセスメントに社会参加(と、ここでいう部分)は含まれていない。介護保

は日常生活上の動作(要介護度)で全国一律に決まる。」
5番 「別の基準は困難です。」
6番は保護課から、社会・援護局長の国会答弁(後のページ)と同じ回答。
(以前より、少し後退しているもよう。)
7番は障害福祉課から、「ガイドヘルパーや手話は入らないが、そのほかは検討
中。」
「介護人派遣事業は現段階ではヘルパー制度補助金の制度なので、介護保険に入ると
受けられなくなる。(現段階ではね。これから検討。)」
8番 「現在のところ、区分することになっている。法律上難しい」

 ・・・・・ということで、全く検討に入っていないことがわかりました。また、国
会の付帯決議の「いままでの水準が引き下がらないようにする」に対する検討は、
「障害施策のほうで対応ということで、障害保健福祉部にお願いしている。(高齢と
障害は)情報交換をしながら進めて行く」ということで、介護保険制度施行準備室の
方では、特に起案をするわけでなく、障害の部から案が出てくれば、それについて介
護保険の方と障害で調整があり、制度の整合性を確保できるか等が検討されるという
ことがわかりました。(たしかに、介護保険準備室では、山のように予定されている
スケジュールでさえ消化するのに精一杯で、付帯決議の処理にまでまわせる余剰人員
はないでしょう。)
 一方で、障害は9月まで予算等で忙しく、全く検討していないようです。交渉の場
では「今年度中の方針発表は難しい」と言い、「2000年4月には必ず間に合わせ
ます」とは繰り返し言っているため、99年9月の予算ぎりぎり(又は99年度末)
の方針発表でもいいと考えているようです。つまり、現状の自薦登録ヘルパーや介護
人派遣事業を2000年4月以降そのまま受ける(介護保険で受けられる時間数は差
し引いて)ということならば、方針発表は「99年度末でも間に合う」ということを
考えていると推測されます。

全国で月36万円の新制度の可能性はどうなるか
 しかし、このままでは、2000年〜委員会の基本原則の「障害の側には介護保険
基準額を下回らない介護制度を全国に作る」という、もうひとつの柱が実現不可能に
なります。(国会付帯決議でも「障害にも介護保険に遜色のない介護サービスを」と
の内容で議決したものがある)
 わたしたちの1つの案としては、【介護保険に入らない「障害特有のサービス」と
して、新しい自薦の制度を全国に作り、全国最低水準を介護保険水準と同じ36万円
に(最高は24時間に)するとともに、介護保険の対象になり引き下がり問題が起こ
る障害者にはこの制度で、今まで受けていた介護制度の時間数を保障する】という仕
組みがあります。
(当然、基本原則通り、精神・知的・身体障害など、全部を対象に)
 このような大きな制度改革のチャンスは、国会付帯決議や介護保険の対応策が検討
される今の時期を逃すとしばらくないと言えます。ここが踏ん張り所です。

生活保護介護料は
*生活保護介護も、局長が国会答弁したため、担当係も同じ内容しか言えなくなって
しまっています。局長答弁は「保険のほうが上回るので、上回ったら出しません」の
ニュアンスになり、従来より後退したイメージです。この内容については、11か1
2月に介護保障協議会の単独交渉を予定していますので、そこで詰めていきたいと思
います。

そのほか
 その他、交渉の場では、以下のような会話がありました。
2000年委員会「4番の回答の「日常生活動作」とはどこまでをさすか?」
介護保険準備室 「日常生活介護は入浴・排泄・食事等と法律で規定。」
        (解説:つまり、これ以外は、障害特有のサービス・社会参加のた

のサービスと考えて、介護保険に吸収されない制度の範囲になりうる)
2000年委員会「推薦ヘルパーは、ガイドヘルパーと同様に介護保険に入らない
サービ
スに位置付けていくとは可能か?」
障害福祉課   「明らかに違う位置付けができればいいが・・・いくつか考えて、
ボー
ルを投げて、(相手があることだから)」
2000年委員会「事業費補助方式になって、各委託先が委託契約を高額の国の補助
基準
額にそろえる傾向があるが」
障害福祉課   「事業費補助方式になって市町村はヘルパーを委託に出さなくては
いけ
ないと勘違いしている所が多いが、当然、市が直接登録ヘルパーなどをやってもい
い。障害者の場合は登録ヘルパーでやれば、市登録でほとんど事務処理コストがかか
らない。委託に出すと、コストがどうしてもかかるということに自治体も気がつきは
じめているようだ。」「各委託先への委託単価も当然ばらばらでいい。」「委託先の
Aが4000円、Bが2000円で例えば同じ時間ずつの委託なら、市の補助金申請
単価は全体の平均の3000円/時になる。」

(参考資料 堀議員の国会での質問 *関連部分の抜粋です)
堀 利和 第143回国会 参議院予算委員会総括質疑速報 平成10年8月24日(月曜
日)
 
○堀利和君 
 (中略)
 この2000年、平成12年から介護保険制度がスタートするわけですけれども、現在、
地方自治体が単独で行っている重度の障害者のために全身性障害者介護人派遣事業と
いうのがございます。これは国のホームヘルプ制度に上乗せした形で単独事業として
市町村なり都道府県がやっているわけですけれども、この全身性障害者介護人派遣事
業は介護保険制度の法制上の仕組みとどううまく整合性が保てるのか、不都合はない
のか、この制度の上から少し心配がございますので、その点についてまずお聞きした
いと思います。

○政府委員(真野章君)(編注:厚生省大臣官房総務審議官) お答えいたします。
 現在、先生御指摘のとおり、幾つかの自治体におきまして全身性障害者介護人派遣
事業等の事業が行われておりまして、身体障害者施策として主としてひとり暮らしの
重度障害者の方々に対して比較的長時間の訪問介護員の派遣が行われております。
 介護保険制度の創設によりましてそれらのサービスとの関係がどうなるかという心
配があることは私どもも承知をいたしております。基本的には、介護保険制度が施行
されました以後は、障害者が65歳に達しました以降介護保険制度のサービスが給付さ
れることになりますが、介護保険の導入に当たりましては、障害者施策による介護
サービスから介護保険によるサービスに円滑に移行をする。それから、障害者の方々
にとりましてその置かれている状況に応じて必要なサービスが低下することなく適切
に提供されるよう配慮する必要があるというふうに考えておりまして、このような観
点から障害者施策としての対応について検討してまいりたいというふうに考えており
ます。

○堀利和君 同様に、この介護保険制度と現在生活保護における他人介護料という介
護に関しての制度がありますけれども、これがまたどうなるかというのがよくわから
ないので、そこら辺もちょっと御説明願いたいと思っています。

○政府委員(炭谷茂君)(編注:厚生省社会・援護局長) 生活保護をうけていら
しゃっても、65歳以上の人などに対しましては介護保険の給付が受けられることにな
ります。介護保険の保険料については、生活扶助、保険給付を受ける際の利用者負担
については新たに創設いたします介護扶助に応じそれぞれ対応することとしておりま
す。
 また、介護扶助と先生がただいま御指摘されました現行の他人介護料との関係につ
きましては、法制度上の仕組みといたしましては、介護保険の保険給付が受けられる
場合は生活保護の原則でございます補足性の原理によりまして、まず介護保険給付を
受けていただくことになります。介護保険による給付は基本的には現行の他人介護料
と同等以上の水準になると考えております。

○堀利和君 いずれにしても、地方自治体が単独で行っている介護事業にしろ生活保
護における他人介護料にしても、介護保険制度導入によって障害者が現在受けている
介護サービスの水準が下がらないように、これ大変心配ですので、大臣、ここについ
て全国の障害者が安心できるような明確な御見解を示していただきたいと思います。

○国務大臣(宮下創平君)(編注:厚生大臣)ただいま総務審議官と局長の方から、
障害者の介護人の派遣事業の問題とそれから生活保護と他人介護との問題、これにつ
いて御質問がございまして制度の仕組みは御説明がございました。
 委員の大変御心配なさっている点は、従来そうしたサービスが受けられるにもかか
わらず、介護保険が創設された場合にそれが一部取り上げられない、あるいは低下す
るのではないかという御疑問でございますが、私どもとしては、障害者の方々につき
ましてはこの保険制度が施行された場合におきましては十分に介護保険の方でも手当
てをすることを考えておりますが、しかし保険制度でございますから、それからある
いは漏れるというような可能性のあるサービスも予想されないではございません。
 私どもとしては、今考えられるのは、例えばガイドヘルパーでありますとか手話通
訳の問題とかいろいろございますが、そうした障害者固有のサービス事業等は従来と
同様にこれは保持してまいるつもりございますから、介護保険によってそのサービス
が受けられないからといって従来のサービスが中止になるとか、あるいは低くなると
いうようなおそれはいささかもございませんから、その点ははっきり申し上げさせて
いただきます。

 なお、今後の交渉の方針ですが、65歳引き下がり問題に関しては、全体交渉でな
く制度の細かな話し合いが必要な状況なので、引き続き役員交渉で行いたいと思いま
す。
 「全国に36万円の新制度を」の項目など、そのほかの項目については、今後の方
針は決まっていません。

 全国の地域団体にも参加を呼びかけています。参加分担金5000円。(個人は3
000円)8月号11Pに掲載の「共同行動の基本原則」に賛同していただける方・
団体ならば、「2000年障害者介護保障確立全国行動委員会」に加盟できます。
(個人の場合、介護制度利用者以外はご相談ください)
なお、「2000年〜委員会」事務局は介護制度相談センター内に設置いたしまし
た。ご連絡は、以下までお願いします。相談センターFAXと共用のため、FAXに
は「2000年〜委員会」あてと明記してください。

 今後の活動の財源として、参加団体・個人の分担費として最低(団体)1口500
0円、(個人)1口3000円の分担を銀行振込みでお願いします。(口座番号は以
下にあります)。振り込み後、FAXにも住所・TELをご連絡ください。
郵便振込口座
口座番号 00110−0−76309
口座名  二千年障害者介護保障確立全国行動委員会
「2000年障害者介護保障確立全国行動委員会」事務局
〒188−0011 東京都田無市本町5−6−20−2F 介護制度相談センター気付
 tel・fax0424−68−3890(月〜金 11時〜17時)
 参加団体の話し合いで、2005年を見越して今後、行動を続けていく予定です。
 11月の会議日程は事務局にお問い合わせ下さい。


REV: 20170131
月刊全国障害者介護制度情報の最初の頁へ 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)