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介護保険問題と障害者の介護施策

介護保障協議会



介護保険問題と障害者の介護施策
(文:介護保障協議会)

■@.介護保険について

 2000年(平成12年)4月から実施される介護保険では、65歳以上の障害者も対象者に含まれることが決まっています。64歳以下の障害者に関しては、2000年時点では対象には含まれず、5年後の2005年に向けた検討課題とされています。
 私たちとしては、当面2000年に介護保険の対象となる65歳以上の障害者の介護保障が削減されることのないよう、各団体が共闘しながら厚生省との交渉に全力を挙げる必要があります。現在、毎日24時間の介護制度を利用している人も、介護保険では最高で月に約30万、1日3〜4時間の介護しか受けられません。
 国会では、「障害者が65歳に達し、介護保険の給付対象になることがあっても、それ以前に受けていた福祉サービスの水準を維持することができるよう、必要な措置を講ずること」という介護保険法の付帯決議が行われていますが、厚生省がどのようにな具体案を出してくるかは、今の段階では全く明らかにされていません。

 もう一つの問題として、2000年に向けて検討が進んでいる、ケアマネジメントに関する動きがあります。
 介護保険の導入に伴い、必ず必要になってくる高齢者のケアマネジメントについては、一足早く、要介護認定からケアプラン作成までの一連の流れが既に形になりつつあります。
 障害者のケアマネジメントについては、厚生省の身体障害者介護等サービス体制整備(ケアガイドライン)検討会に、中西正司氏、三澤了氏の2名が入り、当事者サイドからの対案を出し、大幅な文章の修正が行われました。
 さらに2005年に向けては、全ての障害者が介護保険の対象とされることも視野に入れながら、介護保障制度やケアマネジメントについてのあるべき姿を当事者サイドから提案していく必要があります。
 (当会では、今年6月に厚生省交渉を行い、介護制度を毎日使っている障害者を厚生省の審議会に入れるように要請しました。結果、10年度の上部の部会である、精神、知的、身障の3審議会の合同部会には、当会から推薦する当事者を1人入れることができるということが決まりました。人選については調整中です。また、下部の身障の10年度部会には9年度からの中西正司氏に加え益留が入る事になりました。)

■A.障害者(身体・知的・精神障害)の介護保障の現状と地域格差
 一方、障害者の全国の介護制度の現状はどのようになっているのでしょうか?

◆全身性障害者等の使える介護制度
 いまだに、交渉の行われていない地域では、一人暮しの全身性障害でも、週2回(4時間)しかホームヘルプサービスを受けられない、というのが平均的な自治体の例です。当然、家族と暮らしているとこれ以下の水準になります。

 逆に、重度の全身性障害者が単身生活をしている地域で、交渉を行っている場合は、以下のように全国各地で制度が伸びています。いずれも、交渉を始めて2年程度で、毎日10〜24時間の介護制度が受けられるようになっています。これは介護保険の最高水準をはるかに上回る水準です。

各地の介護制度交渉が行われている地域

(自薦可能のヘルパー・ガイドヘルパー・全身性障害者介護人派遣事業・生活保護大臣承認介護料(毎日4h)の合計時間数)
(下表は一人暮らしの24時間要介護の障害者に対する時間数です)(1日9時間程度以上の市)

地域・市の名前   97年度     98年8月現在
          (週当たり)    (週当たり) (1日当たり)  備考
東京都内の15市区 週168時間 → 週168時間 24時間
九州 熊本市    週147時間 → 週147時間 21時間 金額面で24時間保障
四国 松山市    週112時間 → 週126時間 18時間
四国 T市     週 70時間 → 週109時間 15.5時間
九州 K市     週 56時間 → 週105時間 15時間
大阪府I市     週 96時間 → 週 96時間 14時間弱
静岡市       週 87時間 → 週 91時間 13時間
兵庫県宝塚市    週 87時間 → 週 91時間 13時間
札幌市       週 82時間 → 週 82時間 12時間弱
南関東のR市    週 80時間 → 週 82時間 11.6時間
兵庫県内の数市   週 70時間 → 週 70時間 10時間 13時間の市も
山陰のY市     週 70時間 → 週 70時間 10時間
神奈川県横須賀市  週 70時間 → 週 70時間 10時間
千葉県市川市    週 28時間 → 週 69時間 10時間弱
岡山市       週 68時間 → 週 68時間 9.7時間
北関東のU市    週 68時間 → 週 68時間 9.7時間
大阪市       週 63時間 → 週 63時間 9時間
川崎市       週 63時間 → 週 63時間 9時間

(問い合わせは全国障害者介護保障協議会・制度係(0424−68−3891)へ。くわしい説明ができます。各市への直接問い合わせはさけて下さい。 行政交渉でこれらの市に問い合わせを自分の市の職員からしてもらう必要のある場合は、事前に根回ししますので、必ず介護制度相談センター・制度係まで連絡ください。地元の団体の要望で、問い合わせをしてはいけない市もあります。) ★各自治体の3つの制度の詳しい資料は、介護制度相談センターの販売資料集1〜3巻に掲載しています。


◆ホームヘルプサービス事業(身体障害全般・知的障害の重度)
 この制度は、利用者の必要な時間だけ派遣するという大前提がある制度です。厚生省は派遣時間数の上限撤廃を撤廃するように毎年、都道府県に指示を出しています。このため、この事業の実施主体の市町村が上限を撤廃しようとれば、いつでも必要なだけの時間数を派遣決定できるようになります。当然、毎日1時間でいい障害者には、毎日1時間の派遣を行い、毎日14時間の派遣が必要な障害者には、14時間の派遣を行えます。事実、九州や東京で毎日14〜16時間の滞在型の派遣が行われています。
 又、市のヘルパー人材のうち、最適の人材を派遣するのがこの制度の本旨(国の要綱にそう書かれていると厚生省担当者が解説している)で、そのヘルパーにも、男性ヘルパー等の必要性から、在宅障害者の介護をしている者を積極的に確保するよう、厚生省は全国主管課長会議の指示文書で書いています。これを利用して(前ページの表の市など)自分で確保した介護者を自分専用の登録ヘルパーに利用している地域が増えてきました。
 
◆全身性障害者介護人派遣事業(全身性障害)
 98年度、全国95以上の市町村区で実施され、7都県に要綱等が整備されています。(例)東京都の基準では月240時間×1420円の制度を使い、介護者に給与(市から介護者に銀行振込)を支払えます。静岡市では242時間の制度、大阪市で153時間、千葉県市川市で150時間などとなっています。要介護時間の大きい自立障害者用の制度で、自治体ではホームヘルプ予算とは別の予算で事業化されますが、国のホームヘルプ事業補助金を受けることができます。市町村は25%の負担で実施できるため、近年、交渉が行われたほとんどの自治体で事業が開始されています。

◆ガイドヘルパー制度(重度視覚障害・全身性障害)
 3300市町村の約1割で実施されています。実績数値の多くの部分は視覚障害者の制度部分です。
 四国、近畿、北関東などでは、単身者で介護ニーズの高い人は、自立生活センターへの通いや買い物等に、自分専用の介護者で8〜10時間×毎日の利用ができる自治体もあります。逆に交渉を行っていない市では、市役所と病院のみの利用しかできないという市もあります。国の基準では通勤通学以外OK。

◆生活保護の他人介護料
 全身性障害者など、毎日4時間以上の介護不足(他制度を使った上での不足)があれば、厚生省基準の介護料特別基準を申請できます。月13〜18万円台の介護料が受けられます。
 7万円台の一般基準介護料なら、知的障害者なども利用実績があります。厚生省の保護課保護係長は、知的障害でも大臣承認を申請できるといっています。


◆知的障害者の使える介護制度

◆ホームヘルプサービス事業
 自分で確保した介護者を自分専用の登録ヘルパーに利用している知的障害者も少しずつ出てきました。例えば、東京都の東久留米市では、自立生活センターの支援を受けて、一人暮しの重度知的障害者が毎日9時間(月270時間)の自薦登録ヘルパーを利用しています。(一時的になら毎日10時間の例もあります)。
 国のヘルパー補助金は知的障害では重度(A)のみに対象になっています。軽度は補助金がつきません。しかし、大阪のいくつかの市や東京都の保谷市・東久留米市などでは軽度の知的障害者にもヘルパーを派遣しています(主に自薦登録のヘルパー)。
 身障は手帳1〜6級ににかかわらず介護ニーズに応じてヘルパー派遣を行うよう指示が厚生省から出ています。今後、知的障害でも、軽度もヘルパー制度の補助対象にしなくてはなりません。

◆ガイドヘルパー制度 
 上記の自薦登録ヘルパーでも外出はできますが(厚生省はホームヘルパー制度で外出介護に対応させたため)、自治体独自でガイドヘルパー制度を作って、それに対して、国のホームヘルプ事業補助金を利用することは可能です。大阪府では知的障害者ガイドヘルパーの要綱を作り、全市町村に実施を指導しています。他に大阪府、名古屋市などで知的障害者ガイドヘルパー制度ができています。ただし、この場合、費用負担が生計中心者の所得で算定されるため、身障のガイドヘルプとは違い、親の所得が多いと費用負担がかかります。


◆精神障害者の介護制度

 精神障害者の介護制度は現在、自治体レベルでは自選登録ヘルパー派遣を行っている地域もありますが、国レベルではまだ開始されていません。国の審議会でも精神障害者へのヘルパー派遣を答申する予定なので、2年後にはヘルパーの国庫補助対象になると思われます。
 自治体がヘルパー派遣を精神障害者に対して行っている数は全自治体の3割にのぼるという報告もあります。自薦登録ヘルパーの派遣で実績があるのは、東京都世田谷区などです。

以上の各介護制度の詳細資料・制度の交渉の方法等、は全国障害者介護保障協議会 TEL 0424−68−3890 まで問い合わせください。
 各自治体に直接問合せしないようにお願いします。地元の交渉団体に迷惑がかかる場合があります。


B.ケアガイドライン

 前述の介護保険を実施するにあたって、2〜3年程前から高齢者の総合的な福祉計画が立てられ、その計画をもとに様々な在宅福祉サービスが整備されてきました。しかし、介護制度を充実するためには、高齢者の生活実態(家族状況や要介護度等)や、福祉に対するニーズを調査しなければなりません。その上で、高齢当事者やその家族への福祉サービスが提供されます。しかし、あくまでも家族と同居する高齢者が対象であり、24時間介護の必要な高齢者、いわゆる寝たきり老人は、養護老人ホーム等への入居を勧められます。また提供される際、必ずケアマネジメントを受けなければなりません。
 サービスと言っても、社会参加(活動)を前提とする、24時間の介護派遣を念頭に置いたものではなく、あらかじめサービスの提供量は決められています。例えば、「1日4時間、ヘルパーを派遣しますが、いつ派遣して欲しいですか」という具合で、これでは高齢当事者は「朝・昼・夕方、合わせて3時間と巡回で夜2〜3回来て欲しい」という要望にやむなくなってしまいます。これがニーズ調査に基づくサービス提供と言えるでしょうか。
 ケアマネジメントとは、医師や看護婦、OT、PT、社会福祉士、ケースワーカー等のいわゆる専門家と呼ばれる人々で構成されています。ここでは、要介護度や生活状況に基づいてサービスが決められます。一応、当事者を交えてマネジメントすることにはなっていますが、ここで自分のニーズについてはっきりと主張できる高齢当事者がどれくらいいるでしょうか。専門家主導でサービスが決められていくのは、火を見るより明らかです。

◆障害者のケアガイドライン

 2000年に介護保険が実施されて5年後には見直しをすることになっていますが、その際、「我々障害者も対象になるのでは?」と言われています。高齢者のケアガイドラインは、先程述べたように、専門家主導によるケアマネジメントを位置づけていますが、障害者のケアガイドラインについて述べて見たいと思います。
 平成8年度に「身体障害者ケアガイドライン試行事業」が全国5つの自治体で実施されました。そのひとつに東京都立川市の当事者団体「自立生活センター・立川(以下CIL立川)」が厚生省から委託を受けて実施しました(詳しくは「当事者主体のケアマネジメント 立川市における身体障害者ケアガイドライン試行事業を実施して」をお求め下さい。)。立川市では、重度の障害があり24時間の介護を必要とする人に対して、介護人(ヘルパー等)を派遣する制度(東京都の重度脳性マヒ者等派遣事業、ホームヘルプ事業、生活保護の他人介護料)があります。CIL立川は24時間の介護を必要としている人への介護人の派遣を行っている当事者が主体となって運営している団体です。
 CIL立川が出した報告では、専門家主導のケアマネジメント「チームアプローチ方式」ではなく、当事者の主体性の確保という面から「セルフマネジメント方式」(注釈1)もしくはケアコンサルタントによる「ケアコンサルタント方式」(注釈2)を提案しています。しかし、厚生省はCIL立川の報告を無視し、全国平均のサービスしか提供していない自治体をモデルにして報告書を出そうとしましたが、97年4月の障害者団体との交渉によって報告書は出さないことになりました。
 「障害者保健福祉推進本部の中間報告(95年7月)(後の障害者プラン)」によると、障害者自身の社会参加を援助することが、ケアマネジメントの主要な目的になっています。しかし、障害当事者が要求する介護サービスを保証する制度と介護者を派遣するシステムが整備されない限り、中間報告に書かれているケアマネジメントは不可能なのです。
 誤解のない様にあえて言いますが、私はケアマネジメント自体を否定しているのではなく、あくまでも障害者の自主性を確保するためには、CIL立川の報告にあるように、ケアマネジメントを専門家主導ではなく、当事者主導による「セルフマネジメント方式」またはコンサルタントによる「コンサルタント方式」を我々当事者は望みます。もちろんそれは、介護のサービス量を限定されたものでないことは言うまでもありません。


注釈1:利用者本人がすべての分野にわたって自分でマネジメントすること。
注釈2:利用者の指示に従って、ケアコンサルタントが専門職種や必要な情報を集めケア計画を提案したり、ケアコンサルタントの紹介や情報に基づいて、利用者本人がケアをマネジメントすること。


REV: 20170131
『全国公的介護制度情報』 
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