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前掲 浦和市の推薦登録ヘルパーの現状について




前掲 浦和市の推薦登録ヘルパーの現状について
補足説明編  虹の会役員会

※1)推薦登録の内容/必要性については、以下、97年9月に市に出した要望書
から抜粋します。
 現在の浦和のヘルパー事業は、利用者にとって、本当に「一市民としての生活を
保障する制度」なのか、というと、そうはなっていません。
  現状の問題をa派遣時間、b介助内容、c介助の質、の3点から述べます。
 まずa派遣時間、について。現状の派遣時間は、利用者の要請に従って市が決め
るわけですが、利用者の要請する時間の派遣が実現していない例が多くあります。
 これも市としては「利用者と話し合って決めている」というかもしれませんが、
「その時間では委託先の会社で派遣できないと言われた。他の利用者との兼ね合い
もあるから30分遅らせてくれ」「30分削ってくれ」と言われれば、利用者は
「我慢」するしかありません。
 また、巡回や滞在の時間帯など、市の決めた線引によって、介助が分断されたり、
本来必要な介助時間が実現しない例もあります。
 つまり、この「派遣時間の決定」に際しては、「利用者の意向」は意向として第
一に考えられているとはいえ、決定については、結局「委託先や市の都合」によっ
て決められているといっても過言ではない状況なのです。
 とはいえ、確かに、市の窓口の柔軟な対応で、利用者の希望に近い形での派遣が
認められるケースも無くはないのですが、ほとんどは、利用者が「我慢する」こと
で解決されているのが現状です。

 それに、そもそも、派遣時間を一定に決めるという行為が、市民としての生活を
制限しています。
 毎日の生活は、天候や体の調子はもちろん、さまざまな社会生活上のつながりか
ら変化に富むものであります。言い方を変えれば、「お客様」としてでなく社会に
参加しながら市民生活をおくっている、ということは、毎日が変化に富んだ生活を
する、ということとつながっています。
 逆に毎日が、自ら望まないのに「変化に富まない一定の生活を強いられる」もの
であるとすれば、「社会生活・市民生活を制限されている」ということであります。
 そうした観点から、果たして、現状の浦和のヘルパー派遣は、「社会生活を制限
していない」と言えるでしょうか。
 「あしたはヘルパーが来るから外出できない」「あしたは風呂の日だから行けな
い」こんな声は、利用者の間でごく「普通に」交わされています。この状況は、あ
きらかに「一定の時間にしかヘルパーを派遣しない現在のヘルパー事業」が要介助
障害者の社会生活を「制限」しているといえます。
 「●曜日の●時から●時まで、食事の介助が必要」というような考え方での派遣
形態は、実は「障害者はおとなしく家にいて、世話をしてくれる人を待って生活す
る」というノーマライゼーションからは程遠い考え方に基づいた派遣でしかありま
せん。
 私たち利用者は「必要なときに必要な介助が受けられればいい」のです。「●曜
日の●時から●時まで」の介助が必要なのではないのです。 今後は、市としても、
派遣形態について、こうしたノーマライゼーションの考え方に照らして、発想を転
換すべき時に来ていると思います。このまま、障害者を家に縛りつけておくのは、
人権的観点からも許されるものではありません。
 また、しかしながら、こうした状況の中でも、 自ら介助者を捜し、社会参加を
できる限り実現しようと生きている要介助障害者は、浦和の中にもたくさんいます。
 例えば、ヘルパーの風呂の時間に外出が重なって、その時間に入れなかった風呂
を、自ら介助者を捜すことで実現している障害者が、御存じのとおりたくさんいる
のです。もちろん、風呂に入りたい時間にヘルパーが来てくれればいい(例えば
「今日は外出するから、帰宅次第 −いつもの3時間後−に来てくれ」というよう
なこと)のですが、そういう変更ができないために、一回断れば、風呂に入ること
はできません。
 しかし、だからといって風呂に入らなかったり食事をとらなかったりするわけに
はいかないので、現実には介助者を自ら捜す、ということになるわけです。
 逆にいえば、そういう介助者がいるのです。
 その多くはボランティアであったり、アルバイト(利用者が自腹を切る、とか、
ガイドヘルプを利用するなど)的な人であったりします。その財源は細く、不安定
で、十分な報酬が払えていません。
 こうした「ヘルパーが利用できないから、捜してお願いしている介助者」の存在
を市はどう考えるのでしょうか。こうした「制度が拾えない部分を支えている介助
者」−言ってみれば、 ヘルパー以上に献身的に、利用者の生活に合わせて介助を
行ってくれている介助者に対する処遇です。
 市が、「ヘルパーには金を出すが、同じことをしているこうした介助者に金を出
さない」ということは、「障害者は決められた生活をおくって、ヘルパーが来るの
を待っていろ」と言っているのと同じことです。それでは障害者の社会参加を進め
ようとしているとは言えません。(もちろん、現在の派遣上限がある状況では黙っ
て生活することすらできないわけですが。)
 次にb介助内容、についてです。
 先に述べたように、介助内容はあらかじめ決められており、変更はできません。
 例えば、「その時間内で外出したい」という場合など、変更はできないので、結
局ヘルパーを断って、ヘルパー外の介助者を依頼するという方法を取らざるを得な
いのが現状です。
 また、「手足を揉むのは医療行為だからできない」「風呂は危険だからできない」
「外出は危険だから、範囲(地理的な)を超えてはできない」などということが、
さも当たり前のようにヘルパー派遣の現場では言われています。

 結局これも、ヘルパーではお願いできないので、自ら介助者を捜すなどして風呂
に入いったり医療行為と言われることをお願いしているのです。そうした介助者に
は何の保障もせず、ヘルパーには保障するという市の姿勢は、まったく考え方が逆
転しています。利用者にとってどんな人が一番介助者足りうるのかという観点では
なく、利用者をヘルパーに合わせようとしているのですから。
 おかしな話としては、「医療行為だからできない」と言われたために、そのヘル
パーのいる時間内に、別の介助者を呼んで、その行為のみをその介助者にしてもら
ったという話もあります。その介助者はもちろん特別資格があるわけではありませ
んが、利用者との長年の付き合いで、利用者自身が信頼してお願いできる介助者で
す。
 ヘルパーの資格云々ではなく、「介助者・利用者の関係の中で、介助内容がその
利用者に対してきちんと遂行できるかどうか」が問題なのだということを教えてく
れる格好の事例だと思います。
 こういう意味からも、推薦登録は実施されるべきものであります。

 また、介助の内容はプライベートにかかわることが多いので、同性介助が基本で
す。今年夏から男性ヘルパーが採用されたようですが、こちらの希望通りに来てく
れるわけではなく、結局、毎月のヘルパーの予定表が届いた後に、ヘルパーが来な
い日の介助はヘルパー外の介助者に依頼しているというのが実情です。
 こうしたヘルパー外の人を認めること、これが推薦登録の一つの意味でもあるの
です。
 最後にcです。ヘルパーの質については、これまでも何度も話をしてきています。
 「教え諭そうとする」「生活の中身に口を出す」ひどいのになると「幼稚語を使
う」といったヘルパーもいるようで、障害者を「対象」としか見ていないヘルパー
はまだまだいるようです。
 利用者の中には「時間的にはヘルパーを増やしたいけれど、疲れるから増やさな
いことにした」といった人も多くいます。
 介助者とは、利用者がプライバシーをさらしてもいいと信頼できる相手でなくて
はなりません。そういう意味で、現在のヘルパーの利用者に対する対応は、利用者
の立場に立って行われているとは到底思えません。(これはヘルパー個人の問題と
いうよりは、研修の内容が問題だと私たちは思っています。)
 さて、繰り返しになりますが、こうしたさまざまな状況を解決する一つの派遣方
法が
「推薦登録」であると、私たちは考えています。

 障害者自らが推薦したヘルパーを派遣するということは、ヘルパーを増やそうと
する市としても十分に検討に値する内容のもののはずです。
 この「障害者自身が自分の抱えている介助者を登録ヘルパーとして推薦し自分用
に派遣させる」方法は、東京、大阪、北陸、中国、九州などの全国で行われていま
す。
 そして、この方式について、厚生省更生課(現障害福祉課)は、重度障害者への
現状のヘルパー派遣の実施では以下のような問題があると6年度の主管課長会議資
料で言っています。
 1重度の全身性障害者には、障害者一人一人介護の方法が違い、一律の研修で養
成された、1〜3級のヘルパーでは対応できない。
 2言語障害など「長期間介護をしている専任の介護人でないと、話が聞き取れな
い」などのコミュニケーション技術の問題を現ヘルパーでは解決できない。
 3重度障害者の介護には、裸を見せ、入浴、排泄、抱えるなどの重労働介護があ
るため、男性障害者には男性ヘルパーが必要であるが、現状では、行政が男性ヘル
パーを確保することができていない。また、同様に、重労働介護ができるような体
力と能力を持ったヘルパーを確保することができない。
 以上のようなホームヘルプ事業の問題を解決するために、厚生省更生課は平成6
年3月の主管課長会議資料の指示事項(14ページ〜16ページ)で、上記1〜3
のような問題に対処するために、という文の後に、以下のように書いて、いわゆる
推薦登録方式のヘルパー制度を公式に「課として」認める形を取っています。
 『こうした者への派遣決定に当たっては、利用者の個別の事情を十分考慮し適任
者の派遣をおこなうように努めること(中略)この際、身体障害者の身体介護やコ
ミュニケーションの手段について経験や能力を既に有しているものをヘルパーとし
て確保するような方策も検討に値する』(この「検討に値する」という文は平成7
年度の全国係長会議・平成8年の課長会議の指示事項では「積極的に図ること」に
強化されています。)
 加えて、今年7月28日には、埼玉県福祉部長から各市町村長(障害福祉主管課)
あてに「障害者ホームヘルプサービス事業の実施等について」という通知が出され
ました。
 ここでは上限の撤廃などとあわせ、「ホームヘルパーの確保に当たっては、介護
福祉士等の有資格者の確保に努めるとともに、障害の特性に対する理解や利用者と
の間におけるコミュニケーションを必要とすることから、過去において障害者の介
護経験を有するものの活用を積極的に図ること。」と通知が出されています。
 これは厚生省の動きに連動して、県が推薦登録派遣を積極的に図るよう市に働き
かけているものです。
※2)今年3月、厚生省で障害保険福祉主管課長会議(全国の都道府県・政令指定
都市・中核市の障害福祉担当課長が集まり、厚生省の十年度の施策の方針が説明さ
れた)が開かれた際にも、いわゆるこの推薦登録についての指示として、(毎年出
されているが、今年も)以下のような文書が出されている。

 「訪問介護員(ヘルパーのこと*編注)の確保に当たっては、介護福祉士等の有
資格者の確保に努めるとともに、障害の特性に対する理解や利用者との間における
コミュニケーションを必要とすること、同性の介護員の確保等の観点から、在宅の
障害者等の介護経験を有する者の活用を積極的に計るなど、障害選任の訪問介護員
の確保に努めること」

※3)推薦登録派遣とは、派遣方法の問題であって、制度ではない。
 介助を保障する施策としては、大きく「ホームヘルプ事業/ガイドヘルプ事業/
介護人派遣事業」の3つがあるが、つまりは、それぞれに「推薦登録方式」を取り
入れることが可能、という考え方になる。
※4)98年現在、県の全身性障害者介護人派遣事業を、浦和市はガイドヘルプ事
業として視覚障害者も含めた制度として運用している。

※5)埼玉県の単独事業であった「全身性障害者介護人派遣事業」は、もともと要
件が外出に限られていた。
 96年度からは、国庫対象事業となり、県単事業ではなくなった。(同時に浦和
市は視覚障害者も含めた「ガイドヘルプ事業」へ移行させた。)
 が、県の制度の内容は変わっておらず、外出に対する介助が対象になっている。

※6)日中は2時間までを単位に、また夜間モデル事業(夜7時から11時)は1
時間を単位として一日4時間程度の派遣が行われるようになった。

※7)これまで、市/会社/利用者といった三者会議も行った経過もあるが、問題
解決に進展が見られなかった。(いわゆる「犯人捜し」的対応になってしまい、根
本的な解決に向かわない傾向があるため。)
 それ以降、虹の会としては、どんなに具体的なことであっても会社に対して動く
ことをやめた。
 あくまで介助保障の責任は、行政にあるというあたりまえは通しておきたいと考
えている。
 これら問題については、虹の会としてもヘルパー研修の内容を調べたり、その具
体的な問題をオープンにするなどの活動をしてきた。(具体的には95〜96年の
機関紙のバックナンバー中の連載企画・「介助とは何か」「ヘルパー養成研修の中
身」を参照されたい)

※8)現状の介助派遣システムは、障害者9名が介助料を出しあって運営をしてい
るが、実際に必要な介助に比べ、介助料が少ないために赤字運営となっている。
 それが積もり積もって、今年当初の「虹の会ピンチ」の記事となってしまった。
 98年4月現在、虹の会のシステム利用者では、ガイドヘルプのみの人から、ガ
イド+ホームヘルプ推薦+生保の他人介護料までをうけている人がいる。最高に組
み合わせている人で月340時間程度になるようだ。
※9)今年度から、ヘルパーの補助金がこれまでの「人件費補助方式」から「事業
費補助方式」となる(浦和市も)とのことで、滞在型で1単位(1時間)2890
円(昼間)が補助金の単価となる。(巡回は、昼間・一回(30分程度)1450
円)
 委託契約の問題もあり細かくはわからないが、さる情報によれば、浦和市はこの
補助額をそのまま委託の単価にするだろう、ということで、会社にはこの額がいく
ことになるのでは、と推測される。
 となると、(あくまで「推測である」ことを断った上で、だが)現状の推薦の方
式の場合、会社にとって推薦は、増えれば増えるほど「おいしい」ものなのではな
いか、と思われる。(まあ、会社はそうは言わないだろうが。もちろん、だからと
いって会社を責めるとかいうことではなく、今の時点では「今後、推薦の時間数拡
大・人の拡大」が進みやすい、と考えたい)
※10)現在、浦和市はヘルパーに関して、「24時間巡回型派遣を行っている」
などと言っているが、これは正しくは、「1日1回30分程度を5回、決められた
時間に伺います」というべきである。
 これは、浦和市内においては高齢者福祉課主導で進められたもののようで、一般
に言う「巡回型」である。
 これは大きくは問題点が2点ある。
 一つ目は、障害者にとって巡回型の介助は、「あまり役に立たない」ということ
であ
る。
 巡回型はあくまで「安否確認」的な要素を多分に含んでおり、具体的にその時間
内に風呂や食事、ましてや外出などは不可能である。
 はっきりいえば、一回30分程度の巡回型派遣というのは、時間的にやれる内容
からいってオムツ交換などを想定しているのであって、実際に私たちが必要な介助
ではない。 他市の自立運動団体の中には、巡回導入を懸念して、「障害者の介助
については滞在型が望ましい」といった文書をしに出させているところもある。
 二つ目は、介助とは、必要なときに必要なものが得られなければならない、とい
うことだ。決まった時間に決まった内容の介助が行われても意味がない。それでは
地域が「施設化」しているに過ぎない。
 地域で生きるということは、とりもなおさず、必要なとき(思い立ったときに)
に、必要な介助が得られることが「最低」条件であることは確認せねばならない。
 この巡回型派遣は、まさに「地域の施設化」の権化のようなもので、介助をする
側から見た合理化であって、「必要な介助を必要なときに保障する」などといった
発想からは程遠い。

 私たち虹の会役員会は、96年12月号でも書いたように「介助に定時の介助な
どはない」と考えている。
 定時の介助とは、いわゆる「食事の介助を●時から◆時まで」といったものであ
るが、これはあくまで譲歩策である。
 本来はその日の「気分」で「ちょっと介助が必要だから来てくれ」という形で行
われることが必要なのである。
 もちろん、決まった時間時間のスケジュールを作って生活している人もいるだろ
うが、だからといって、こうした「介助に定時はない」という考え方を否定するべ
きではない。
 そうした意味で、24時間、必要な時に介助者を使える「制度」をつくることは
絶対に必要なのである。
 こうした意味においては、「私には24時間の介助は必要ない」といった「結果」
は意味を持たない。

 どちらにせよ、必要なときに介助者を使うということは、その介助者を確保して
おくことが必要であるということである。
 つきつめれば、使おうが使うまいが、緊急で必要となる可能性がある限り、介助
者は確保しておかねばならない。いや、最低それを認める「制度」は必要なのだ。
 逆を言えば、その制度がないということは、「障害者は「気分」で生活などせず、
決まった時間に生活すべきだ」と行政が言っているのと同じことであり、それは人
権的見地から許してはならないのである。

 他府県では、既に、さまざまな制度を組み合わせて(推薦方式で)24時間の介
助が保障されているところもあるという。(逆に推薦登録派遣以外で24時間の保
障がされているところはない。)
 推薦が始まった今、もうそうした派遣体制は夢ではない。
 利用者サイドも、これまでの「派遣していただく」といった感覚から抜け出して、
当たり前の市民として生きるための介助保障施策・介助派遣方法を求めて、運動を
進める時期に、この浦和も来ている。



 繰り返しになりますが、推薦登録派遣についての問い合わせは、まず虹の会にし
て下さい。
 市に直接問い合わせはしないで下さい。
 したとしても「そんな制度はありません」と言われるだけです。この「推薦登録
派遣」とは制度ではなく、派遣の運用方法です。委託企業/利用者/ヘルパー(介
助者)の三者の合意に基づく派遣形態(形の上では市は関係ない)であり、市に頼
んだからといって実現するものではありません。
 以上、今後の浦和の介助施策を進めるためにも必ず守って下さい。


虹の会通信よりの転載は以上
虹の会tel・fax:048−855−8438


REV: 20170131
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