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フィンランドの介護制度資料




フィンランドの介護制度資料

 筋ジストロフィーで呼吸装置も使うヘルシンキ市議、キョンキョラ氏の96年6
月の来日公演の際にまとめられた資料集から転載させていただきました。
 (DPI日本会議(03-5256-5365)編「フィンランドの緑の風 カッレ・キョン
キョラと障害や仲間の運動」より)

 国際的には、パーソナルアシスタント制度(障害者が介護者を自分で雇用し、そ
の費用は国や自治体から支払われる方式)が近年採用されてきています。デンマー
ク、スウェーデン、フィンランド、と、オランダ、イギリス、米国東部、カナダ、
オーストラリアの一部で採用されています。


フィンランドにおける自立生活と介助サービスについて

カッレ・キョンキョラ,グニラ・シオバル 編
訳  宮本 泰輔
監修 中西 由起子
(中略)
フィンランドの自立生活運動と介助サービスへの影響
 フィンランドの自立生活運動の中で、私たちは独自の目的と手段を作り出してき
た。私たちは可能な限り政治的な動きをしている。つまり、あらゆるレベルの意志
決定に影響力を持とうとしているのである。政治的に動いた副産物として、私たち
の仲間も数多く政治の世界に入っていった。私自身も、83年から87年にかけて国会
議員を務めたことがある。
 私たちは、政治家と公務員に対して、異なる話の進め方を考え出した。基本的な
違いは政治家は平等とか公平とかいった問いかけに、そして公務員は合理的な推論
に理解を示すことである。
 フィンランドの自立生活運動の目的をまとめると、「自分たちの基本的なニード
に基づく、自分たちの条件にあった、障害者のためのサービスを提供すること!」
と言えよう。基本的なニードには、日常的な活動・障壁のない生活環境・アクセス
のよい乗り物・移送サービス・収入・仕事・介助者といったものによって生活をう
まくやっていくことが含まれる。皆、こういったサービスを自分でコントロールす
るようになるべきである。つまり完全な自立生活が目標である。自立や自由には責
任が常につきまとうということを強調して、サービスを自力でコントロールする自
立を非現実的だと考えている人たちを、私は元気づけてあげたい。
 責任を負うことは簡単ではない。責任を負う能力は生まれつき身についていない
からである。学習によって身につくものなのである。しかし、それは理論によって
ではなく、経験によってしか学習されないものだ。自分自身の生活に責任を負うと
いうことは、自立生活運動の中で展開されている色々なコースの課題として取り上
げられている。コースの中では、参加者同士が自分たちの経験を比べ合い、現状に
よりうまく立ち向かえるようにしていく。「人生を練習することはできない。練習
ができるように生きるべきである」
 自立生活という言葉には、施設に入る必要なしに日常生活の問題を解決する、と
いう意味もある。この意味においては、目的と手段が一致している。基本的な理念
とは、サービスを受ける当事者自身がサービスを管理することで、自分の家で自立
した生活を送るチャンスを保障するようなサービスシステムを作り出していくこと
である。
 介助システムはこの上記の理念をとてもよく具現化している。フィンランドでは、
介助システムを以下のように定義している。

 介助者とは、100%公的資金によって、別の人間に雇われ、その雇い主の日常の活
動を助けることで、雇い主が親戚や友人に極端な負担をかけずに施設の外で生活し
ていくことができるように雇われる者のことを言う。

 ということは、障害者は上司、つまり、介助者の雇用者ということになる。介助
者は、相手がふつうの生活を送るのを手助けするのである。介助者は、障害者の代
弁者でもないし、人生を決定する役割も持っていない。介助者は単に障害者がその
障害のためにできないことをすればよいのである。
 雇用者の役割を持つと、障害者にもある種の責任が生じてくる。つまり、ある程
度の量の書類と向かい合い、計算をする技能が必要となってくる。上司になるとい
うことには、心理的に見ると、もっと難しいものがある。介助者に自分の仕事を指
導し、同時に被雇用者である介助者の面倒も見なくてはならない。介助者をうまく
扱えなかった障害者は、何の援助も得られないだろう。逆に、両者の関係が良好で
あると、障害者にとってはこれまでとは違った新しい方法での社会参加が可能にな
ってくるだろう。

フィンランドの介助システム

 ヨーロッパにおいては、デンマークのオーフス市が、先端を行っていると言える。
フィンランドのシステムもまた、大部分をオーフス方式に倣っている。オーフス方
式では、障害者に充分な援助を受ける権利があり、自治体の費用で必要な準備を行
うことができる。この計画は成功しており、そのためデンマークの他の地域の障害
者がオーフスに移り住んだほどである。オーフス市にとっても、この計画は雇用情
勢に好影響を与えた。70年代に、人々の暮らしぶりをもっと知ろうと、オーフスを
訪れた人の中には、そこに住んでいる人もいる。
 フィンランドの介助システムは、10年ほどの試行段階を経てきた。1988年に新た
に障害者のためのサービス及び援助法(SAD法)が制定されたことにより、この
システムが一般化された。ある意味では、この新しい法律は画期的である。という
のも、障害者が一定の基本的なサービスを受ける権利があると述べているからであ
る。基本的なサービスの中には、住宅供給・交通機関・通訳・住居改造が含まれて
いる。1992年の完全実施(通訳を除く)までの間に、障害者が家で生活できるよう
に、フィンランドの地方自治体は充分な在宅サービスを提供するよう求められてい
る。介助システムは、この在宅サービスを構成する一つなのである。
 この法律は重度障害者の生活をかなり大きく変えることになるだろう。同時に、
社会全体もすべての人たちにとってよりよいものとなっていくであろう。
 フィンランドの自立生活運動は、自らこの変化に向けた準備に取り組んできた。
私たちは、さまざまな支援システムや訓練を作ってきた。ボスコースと呼ばれる一
週間の訓練コースを成功させたこともあった。また、大都市向けに、夜間コースを
別途設けたりもした。このような訓練コースに関連させて、「介助者マニュアル」
を作成している。マニュアルは現在、最初の2部目まで印刷されている。第1部に
は、介助システムの中心となる原理と、よい介助者の見つけ方や問題解決法などの
実践的なアドバイスが盛り込まれている。第2部では、フィンランドの雇用法規や
税金について解説している。
 経験を分かち合い、自尊心を高めていくことが、私たちの教育活動で最も重要な
目的となっている。
 充分な人数の介助者を雇用するのに必要な財政援助を受けられるかどうかはきわ
めて重要な問題の一つである。介助システムを原則的に取り込んだ計画づくりを行
っていても、経費節約のために支出を押さえ込んだ結果、充分な援助を提供できな
くなってしまったところもある。この経費削減の考え方は、特に新保守主義の人た
ちに受けがよい。

 障害者のためのサービス及び援助法
第1条 法の目的
 本法の目的は、障害者が他の人々と平等に社会の一員として生活し、活動する能
力を向上させ、障害を原因とする不利や障壁の発生を防ぎ、無くすことである。

第8条 障害者のためのサービス
2 自治体は、重度障害者がその障害または病気のために日常生活を営む上で是非
とも援助を必要とする場合、妥当な範囲での移送サービスや付き添いサービス、通
訳、サービス付き住宅などを提供するものとする。同障害者が施設での持続的ケア
を要する場合には、自治体が特にサービス付き住宅を提供する義務は無いものとす
る。

第9条 金銭的援助
2 自治体は、重度障害者がその障害または病気ゆえに日常生活を営むために是非
とも必要であり、また同人が施設での持続的ケアの必要な状態にはない場合、住居
の改修並びに設備の購入に必要な費用を、妥当な範囲内で支給するものとする。

障害者支援・介助政令
第16条 私的介助者
 重度障害者は、屋内生活に関することで、または学習や余暇活動、仕事、社会参
加など屋外活動において、一定程度、他人の介助を必要とする場合、私的介助者を
雇う費用の補償を受けることができる。
 雇用者として支払う法定費用及び保険料、その他介助者を持つことで生じる正当
な支出も、費用とみなすものとする。
 障害者は、必要があれば、介助者雇用に関して指導や援助を受けることができる。

責任のあり方について
 諸外国で自立生活に関するプログラムを実施する際、社会のどの部分が財政の責
任を持つのか、という点が大きな違いとして挙げられる。フィンランド方式では、
国の支援を受けながら、地方自治体が全面的に財政を支出することになっている。
ほとんどすべての国で、こういったプログラムはいまだ試行段階にある。
(中略)
 キュンヌスにおける介助者雇用者コースは、新しい適応訓練の形をとっている。
このコースは自立生活の精神に満ちあふれているのだ。
 フィンランドの介助システムを進めていく中で、介助者に対して教育をする必要
性についての論議がなされてきた。一つの理由として、当然のことだが、教育とい
うものが重要視されていることが挙げられる。特に労働市場においては、人間の価
値が職業教育の程度によって判断される。しかし、キュンヌスでは、障害者自身に
教育が必要なのであると気づいた。そこには、2つの大きな理由がある。
 介助者を雇う側に立つことで、往々にして、自分の生活や自分自身に対して全く
新しい心構えを持つ必要が出てくる。

 法律に基づく雇用者としての責任が障害者に生じるため、雇用者の法規上の義務
について詳しくなる必要がある。

 前者の理由は、いわゆる普通の社会への障害者のインテグレーションが、フィン
ランドでは比較的新しい動きであることに、大きく由来している。私たち、1973年
にキュンヌスを設立したメンバーは、実は「社会」の中で育った重度障害者として
は第1世代にあたる。私たちより前の世代では、障害者の一生とは、特別の学校−
特別の職業学校−様々な施設(含老人ホーム・精神病院)に住む−授産施設で働く、
という流れになっていた。精神遅滞者向けの古い施設では、特別の墓場さえ設置さ
れていた。
 この一生の送り方は、私たちと同年代の仲間だけではなく、より若い世代にとっ
ても当たり前のものである。しかし、そういう仲間たちも、潜在的には介助者を雇
用する側に立てるのである。保護の下にある人を、責任を持った自立障害者へと変
えることが簡単でないことは、容易に理解できることだろう。
 キュンヌスで介助者訓練を企画・実行しはじめたのが出発点であった。キュンヌ
スは、1987年9月に第1回雇用者コースを開いた。それ以来、定期的に開催されて
いる。コースの資金は、主に、適応訓練のための財源によって賄われている。
 このコースを計画するにあたって、自分たちの経験から出発した。そして、コー
スで取り上げるべき最も重要なテーマは、先程説明したように、障害者の心理的な
側面と法的な知識を強化することである、という結論に達した。第1回コースを始
める前の春、グニラ・シオバルがストックホルムにあるSTIL(ストックホルム自立
生活共同組合)を訪問した。STILは、ピアカウンセラーやWID(世界障害研究所、
米カリフォルニア・バークレー)から来た講師によって、介助者ユーザーのための
第1回コースを行った。
 私たちの行っている基礎コースは、4日間のコースで、何年にもわたってほとん
ど同じ内容で行われている。基本的なテーマは以下のようなものである。

 1.被雇用者の生活の現状の記録
 2.介助システムの思想
 3.雇用者の自立生活と障害者としての自我の強化のための支援
 4.雇用者となること・被雇用者を探すこと・新しい介助者を指導すること・雇
   用に関する問題・役所との関係
 5.雇用者としての法的権利と義務

 短期の入門型の夜間コースも始め、同様の問題をもっと表面的に取り上げた。そ
の他に3日間の上級コースを始め、出席者が事前に提出した問題要請に基づいたプ
ログラムを行った。これらのコースは現実的な理由から泊まり込みで行われたので、
空き時間も学習に使われた。将来は介助サービス分野での特別な問題のいくつかに
絞った短期コースの数を増やして行くつもりである。
 1993年には、ヘルシンキの中心部に私たち自身の訓練センターが建つ。より多く
のコースを開催することになり、コースの中で、安い宿泊費用で自立生活を練習す
ることにもなる。そうすれば、人々のニードに対して、私たちはあらゆる援助がで
きるようになる。
 訓練コースを通じて、私たちはどんな経験を得たのだろうか。まず、障害者が介
助者を雇用するようになると、私たちの雇用者コースのような訓練が必要になる。
自治体の社会事務所には、SAD法が課している状況改善の義務を達成するための
手段もなければ、能力もない(多分やる気もないだろう)。最高のアドバイスを得
ようと思ったら、介助者を雇用している人に聞くしかないのだ。
 2番目に、訓練は定期的に行わなくてはならない。例えば、雇用者としての法的
義務は多く、かつ複雑になっているので、初心者が一度にすべてを学ぶことは不可
能である。であるから、基礎コースでの法律のクラスでの目標は、参加者にどのよ
うな義務があるのかを概観してもらうことに留めている。同時に、どこへ行けばよ
り多くの情報が得られるかも学んでいる。
 3番目に、いつのコースでも参加者ほとんど全員に共通する難問がある。コース
の最初のうちは、参加者たちは、弁護士や経理担当者の時間を心待ちにしている。
しかし、少しずつではあるが、実は一番難しいのは正しい雇用者の役割を身につけ
ることだと分かってくる。言い換えると、自分が自分の人生に責任を持っていると
いう事実や、介助者にすることを伝えるのは雇用者である自分自身であり逆ではな
いのだという事実がはっきりと分かる。
(後略)

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