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介護という仕事と介護者の位置に関して




介護という仕事と介護者の位置に関して
  介護関係のトラブルについて (介護者の悩みから)

自立生活センターの資料(施設や親元から自立したばかりの障害者へ介護派遣する
場合等について書いた文書)

 介護コーディネーターの仕事の中で、比較的大きな比重を占めているのが障害者
と介護者のトラブルの間に入ることです。
 障害者か介護者のどちらかから相談を受ける、まずはそこから始まります。具体
的に何かの話がこじれてけんかになったなど、それが一回限りのことであればそれ
こそコーディネーターが間に入って2人から事情を聞いて問題を整理すれば解決と
いうこともあります。 しかしトラブルや事件というのは、ほとんどの場合もとも
とあまり関係が良くない2人の間で起きます。そしてさらに難しいのは、事件とい
うほどの大きなトラブルは起きないけれども、とにかく関係がうまくつくれないと
いう場合です。
 例えば、障害者の立場から、Aさんを介護者として使っていると非常に疲れる、
うまく指示通りに動いてくれない、自分のすることにいちいち口出しされる……な
ど。 逆に介護者の立場からは、Bさんの指示通りにやっていると体がきつい、指
示に疑問を感じてしまうことが多い、指示がはっきりしなくてなんとなく判断を任
されてしまう……など。
 こういう関係が毎週繰り返されて、だんだんつらくなってくるというパターンが
非常に多い。相手に対して何か言ってしまうとその後、関係がギクシャクするので
言わずにがまんする、それは誰でもそう思うわけですが、そのがまんが少しづつ積
もるとどんどんつらくなっていきます。
 だから、基本的には関係のきつさは相手に言うことでお互いに話し合って解決す
るしかない、まあそういうことなんですが、それを言っては身も蓋もない、コーデ
ィネーターなんて必要ないという話になってしまうので、今回は最近一番多くて困
っている1つのパターンについて書いてみます。
 介護者が障害者の問題点を直そうとしてしまう、障害者はそれに反発してますま
す問題を大きくしてしまう、このパターンです。
 (以下の事例は悩める介護者の視点から書きますのでそのつもりで読んでくださ
い。)

1. 例えば、障害者が3時に所沢で誰かと待ち合わせをした、しかしその後指示通
りに動いているとそれに間に合わせる気は無いらしい、それで「さっき3時に約束
してたよね、行かないの?」と少し責めるような口調で介護者が言う、それに反発
して障害者は「○○に買物に行く」と指示を出す、介護者は困ってぶつぶつ言いな
がら車イスを押していく。介護者はこういう場合でもただ指示に従わなくてはいけ
ないのかな?と思う。次には「やっぱり約束は守ったほうがいいんじゃない」など
と言ってしまう。こういうことが何度かあると障害者はコーディネーターなどに
「Aさんは私が○○に行きたいと言っても連れていってくれない」というふうに相
談してくる。

2. 障害者が「Aさん(介護者)はご飯作ってって頼んでもめんどくさがってちっ
とも作ってくれない」というように他の介護者の悪口をかなり大げさに言う。聞い
ている介護者はその話をあんまり聞きたくないので「そうやって介護者の悪口を言
うのはあんまり良くないから、もしほんとうにそうならコーディネーターにでも相
談してみれば」などと話を切り上げる。自分のことも他の人に悪く言われてたらい
やだなあと後で思う。障害者はこのように愚痴を聞いてくれない介護者の悪口をま
た他の介護者に言う。

 確かにどちらの場合も障害者に問題はある。しかしその問題を介護者が直そうと
してしまうことにさらに問題があります。
 介護者は雇われている身なので黙って指示に従っていればいいというのではあり
ません。社会的な常識を身につけたほうがいいという介護者の一方的な思いやりと、
思い込みはほとんどの場合障害者の反発をかって逆効果になるだけだということで
す。
 介護者も人間ですからどうしてもいやなことをがまんしてやる必要はない。いや
なことはいやと言って別にけんかになってもいい。ただその場合、自分を守るとい
う姿勢を基本に持っている必要があります。相手を良くしようという一方的な思い
やりは非常に良くありません。

 とにかく障害者と介護者のトラブルの場合には、両者ともが相手に問題があって
自分は悪くないと思っていることが多い。その視点をやめて相手が自分のどこを問
題だと思っているか?と考えるようにして、まず自分の問題を先に直すようにする。
相手の問題に対しては、まず自分を守る方法を考えてその上で相手の問題は時間を
かけて共有していく。
 難しいことですが、介護関係で悩んでいる方は、いったん踏みとどまって視点を
変えてみてください。

 それでは、さっそく例題を1つ。
 車イスの障害者と介護者、外を歩いていて雨が強く降ってきた。カッパは持って
いない、たまたま近くに傘が売られていた。障害者から、「傘を買って私にさして
ください」という指示がありました。車イスを押しながらでは傘は1本しかさせな
い。さて介護者の立場だったらどうするか?

 正解1
 それだと私が濡れちゃうので、カッパを買わせてもらうか、少し小降りになるま
で待つとかしませんか?と何らかの提案をする。

 正解2
 自分は雨に濡れても別にどうということはないので指示どおりに障害者が濡れな
いようにして家に戻ってから体をふく。

 正解3
 私だけ濡れるのはいやなのでどうせならこのまま一緒に濡れて行きましょうとい
って、けんかを始める。

 正解4
 それだと私は濡れちゃうけどどうしたらいいかな?と聞き返す。

 正解は他にもいくつもあります。

 不正解
 いやいやながら指示どおりに障害者に傘をさして自分は濡れながら帰る。帰りな
がらだんだん相手のことが嫌いになっていく。
(おわり)


REV: 20170129
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