介助保障制度の充実を求める要望書
工藤 伸一(虹の会 会長)
相川宗一市長殿
松本五郎福祉部長殿
介助保障制度の充実を求める要望書
虹の会
会長 工藤伸一
日ごろより障害者福祉の推進にご尽力頂きありがとうございます。
私たち虹の会は、この浦和で障害者の地域での自立生活を進めるための活動を始
めて15年目を迎えます。どんなに障害が重くても地域で暮らしたいという願いを
実現させるために、介助保障制度や街づくりの問題にとりくんできました。
この15年で状況は大きく変わってきています。確かに、以前に比べれば介助保
障制度の面も整備されてきているとは思います。
しかしながら、この浦和で、要介助の障害者が安心して暮らすには、よりいっそ
うの介助保障施策の充実が必要なのはいうまでもありません。
現状の障害者の生活実態を基に、以下の点を要望します。
1. ホームヘルプ事業について。推薦登録派遣を希望する障害者に対しては、推薦
登録派遣を実施すること。
現在の浦和のヘルパー事業は、利用者にとって、本当に「一市民としての生活を
保障する制度」なのか、というと、そうはなっていません。
現状の問題をa派遣時間、b介助内容、c介助の質、の3点から述べます。
まずa派遣時間、について。現状の派遣時間は、利用者の要請に従って市が決め
るわけですが、利用者の要請する時間の派遣が実現していない例が多くあります。
これも市としては「利用者と話し合って決めている」というかもしれませんが、
「その時間では委託先の会社で派遣できないと言われた。他の利用者との兼ね合い
もあるから30分遅らせてくれ」「30分削ってくれ」と言われれば、利用者は
「我慢」するしかありません。
また、巡回や滞在の時間帯など、市の決めた線引によって、介助が分断されたり、
本来必要な介助時間が実現しない例もあります。
つまり、この「派遣時間の決定」に際しては、「利用者の意向」は意向として第
一に考えられているとはいえ、決定については、結局「委託先や市の都合」によっ
て決められているといっても過言ではない状況なのです。
とはいえ、確かに、市の窓口の柔軟な対応で、利用者の希望に近い形での派遣が
認められるケースも無くはないのですが、ほとんどは、利用者が「我慢する」こと
で解決されているのが現状です。
それに、そもそも、派遣時間を一定に決めるという行為が、市民としての生活を
制限しています。
毎日の生活は、天候や体の調子はもちろん、さまざまな社会生活上のつながりか
ら変化に富むものであります。言い方を変えれば、「お客様」としてでなく社会に
参加しながら市民生活をおくっている、ということは、毎日が変化に富んだ生活を
する、ということとつながっています。
逆に毎日が、自ら望まないのに「変化に富まない一定の生活を強いられる」もの
であるとすれば、「社会生活・市民生活を制限されている」ということであります。
そうした観点から、果たして、現状の浦和のヘルパー派遣は、「社会生活を制限
していない」と言えるでしょうか。
「あしたはヘルパーが来るから外出できない」「あしたは風呂の日だから行けな
い」こんな声は、利用者の間でごく「普通に」交わされています。この状況は、あ
きらかに「一定の時間にしかヘルパーを派遣しない現在のヘルパー事業」が要介助
障害者の社会生活を「制限」しているといえます。
「●曜日の●時から●時まで、食事の介助が必要」というような考え方での派遣
形態は、実は「障害者はおとなしく家にいて、世話をしてくれる人を待って生活す
る」というノーマライゼーションからは程遠い考え方に基づいた派遣でしかありま
せん。
私たち利用者は「必要なときに必要な介助が受けられればいい」のです。
「●曜日の●時から●時まで」の介助が必要なのではないのです。
今後は、市としても、派遣形態について、こうしたノーマライゼーションの考え
方に照らして、発想を転換すべき時に来ていると思います。このまま、障害者を家
に縛りつけておくのは、人権的観点からも許されるものではありません。
また、しかしながら、こうした状況の中でも、自ら介助者を捜し、社会参加をで
きる限り実現しようと生きている要介助障害者は、浦和の中にもたくさんいます。
例えば、ヘルパーの風呂の時間に外出が重なって、その時間に入れなかった風呂
を、自ら介助者を捜すことで実現している障害者が、御存じのとおりたくさんいる
のです。もちろん、風呂に入りたい時間にヘルパーが来てくれればいい(例えば
「今日は外出するから、帰宅次第−いつもの3時間後−に来てくれ」というような
こと)のですが、そういう変更ができないために、一回断れば、風呂に入ることは
できません。
しかし、だからといって風呂に入らなかったり食事をとらなかったりするわけに
はいかないので、現実には介助者を自ら捜す、ということになるわけです。
逆にいえば、そういう介助者がいるのです。
その多くはボランティアであったり、アルバイト(利用者が自腹を切る、とか、
ガイドヘルプを利用するなど)的な人であったりします。その財源は細く、不安定
で、十分な報酬が払えていません。
こうした「ヘルパーが利用できないから、捜してお願いしている介助者」の存在
を市はどう考えるのでしょうか。こうした「制度が拾えない部分を支えている介助
者」−言ってみれば、ヘルパー以上に献身的に、利用者の生活に合わせて介助を行
ってくれている介助者に対する処遇です。
市が、「ヘルパーには金を出すが、同じことをしているこうした介助者に金を出
さない」ということは、「障害者は決められた生活をおくって、ヘルパーが来るの
を待っていろ」と言っているのと同じことです。それでは障害者の社会参加を進め
ようとしているとは言えません。(もちろん、現在の派遣上限がある状況では黙っ
て生活することすらできないわけですが。)
次にb介助内容、についてです。
先に述べたように、介助内容はあらかじめ決められており、変更はできません。
例えば、「その時間内で外出したい」という場合など、変更はできないので、結
局ヘルパーを断って、ヘルパー外の介助者を依頼するという方法を取らざるを得な
いのが現状です。
また、「手足を揉むのは医療行為だからできない」「風呂は危険だからできない」
「外出は危険だから、範囲(地理的な)を超えてはできない」などということが、
さも当たり前のようにヘルパー派遣の現場では言われています。
結局これも、ヘルパーではお願いできないので、自ら介助者を捜すなどして風呂
に入いったり医療行為と言われることをお願いしているのです。そうした介助者に
は何の保障もせず、ヘルパーには保障するという市の姿勢は、まったく考え方が逆
転しています。利用者にとってどんな人が一番介助者足りうるのかという観点では
なく、利用者をヘルパーに合わせようとしているのですから。
おかしな話としては、「医療行為だからできない」と言われたために、そのヘル
パーのいる時間内に、別の介助者を呼んで、その行為のみをその介助者にしてもら
ったという話もあります。その介助者はもちろん特別資格があるわけではありませ
んが、利用者との長年の付き合いで、利用者自身が信頼してお願いできる介助者で
す。
ヘルパーの資格云々ではなく、「介助者・利用者の関係の中で、介助内容がその
利用者に対してきちんと遂行できるかどうか」が問題なのだということを教えてく
れる格好の事例だと思います。
こういう意味からも、推薦登録は実施されるべきものであります。
また、介助の内容はプライベートにかかわることが多いので、同性介助が基本で
す。今年夏から男性ヘルパーが採用されたようですが、こちらの希望通りに来てく
れるわけではなく、結局、毎月のヘルパーの予定表が届いた後に、ヘルパーが来な
い日の介助はヘルパー外の介助者に依頼しているというのが実情です。
こうしたヘルパー外の人を認めること、これが推薦登録の一つの意味でもあるの
です。
最後にcです。ヘルパーの質については、これまでも何度も話をしてきています。
「教え諭そうとする」「生活の中身に口を出す」ひどいのになると「幼稚語を使
う」といったヘルパーもいるようで、障害者を「対象」としか見ていないヘルパー
はまだまだいるようです。
利用者の中には「時間的にはヘルパーを増やしたいけれど、疲れるから増やさな
いことにした」といった人も多くいます。
介助者とは、利用者がプライバシーをさらしてもいいと信頼できる相手でなくて
はなりません。そういう意味で、現在のヘルパーの利用者に対する対応は、利用者
の立場に立って行われているとは到底思えません。(これはヘルパー個人の問題と
いうよりは、研修の内容が問題だと私たちは思っています。)
加えて、推薦登録派遣は、知的障害者にとっても大変有用な制度であります。
現状のヘルパーは、質的に、身体障害者の介助すら信頼できる状況ではない
ことは、先に書きました(もちろんいいヘルパーはいるけれども、全体として)。
こうした状況の中で、知的障害者自身が安心して介助・援助を受けられるヘルパ
ーを確保するには、推薦登録派遣は必要です。
さて、繰り返しになりますが、こうしたさまざまな状況を解決する一つの派遣方
法が「推薦登録」であると、私たちは考えています。
8月から、ヘルシーライフと松沢さんの間で話合いが成立し、ヘルシーライフを
通しての推薦登録が実現しています。
この導入で、ヘルパーとの人間関係で(なにしろ一週間に何人ものヘルパーが入
れ替わりたち代わり入っており、また、本人の望まない交代が何度も行われてい
た。)悩むこともなくなり、また、時間的にも自分のスケジュールに合わせた介助
を依頼することができるようになり、介助的には安定したということです。(もち
ろん、時間数的には足らず、松沢さんが使う全体の介助料は、赤字状態である。こ
れは、昨年までの「ヘルパー派遣」を念頭において市に申請した時間数であり、
「ヘルパーじゃなくて自分の推薦する介助者の派遣だったら、もっと時間数は多く
申請したはず。」ということ。結局「ヘルパー」では疲れるから現状の時間数で申
請していたということである。とはいえ、浦和には派遣上限はあるので、限界はあ
るが。)
こうした推薦登録派遣を、希望する場合には松沢さん以外にも実現するようにす
ることが必要です。
そのためには、ヘルシー(委託業者)と利用者に任せるのではなく、市がもっと
この推薦登録に関わって、形を整えるなどのことが必要です。
少なくとも業者を通しての推薦登録は、業者に意味がないばかりか(金は流れる
が)利用者にとっても意味がありません。市が直接運営するなり、また他の方法で
整備することが必要であります。
障害者自らが推薦したヘルパーを派遣するということは、ヘルパーを増やそうと
する市としても十分に検討に値する内容のもののはずです。
この「障害者自身が自分の抱えている介助者を登録ヘルパーとして推薦し自分用
に派遣させる」方法は、東京、大阪、北陸、中国、九州などの全国で行われていま
す。
そして、この方式について、厚生省更生課(現障害福祉課)は、重度障害者への
現状のヘルパー派遣の実施では以下のような問題があると、6年度の主管課長会議
資料で言っています。
1重度の全身性障害者には、障害者一人一人介護の方法が違い、一律の研修で養
成された、1〜3級のヘルパーでは対応できない。
2言語障害など「長期間介護をしている専任の介護人でないと、話が聞き取れな
い」などのコミュニケーション技術の問題を現ヘルパーでは解決できない。
3重度障害者の介護には、裸を見せ、入浴、排泄、抱えるなどの重労働介護があ
るため、男性障害者には男性ヘルパーが必要であるが、現状では、行政が男性ヘル
パーを確保することができていない。また、同様に、重労働介護ができるような体
力と能力を持ったヘルパーを確保することができない。
以上のようなホームヘルプ事業の問題を解決するために、厚生省更生課は平成6
年3月の主管課長会議資料の指示事項(14ページ〜16ページ)で、上記1〜3
のような問題に対処するために、という文の後に、以下のように書いて、いわゆる
推薦登録方式のヘルパー制度を公式に「課として」認める形を取っています。
『こうした者への派遣決定に当たっては、利用者の個別の事情を十分考慮し適任
者の派遣をおこなうように努めること(中略)この際、身体障害者の身体介護やコ
ミュニケーションの手段について経験や能力を既に有しているものをヘルパーとし
て確保するような方策も検討に値する』(この「検討に値する」という文は平成7
年度の全国係長会議・平成8年の課長会議の指示事項では「積極的に図ること」に
強化されています。)
加えて、今年7月28日には、埼玉県福祉部長から各市町村長(障害福祉主管課)
あてに「障害者ホームヘルプサービス事業の実施等について」という通知が出され
ました。 ここでは、上限の撤廃などとあわせ、「ホームヘルパーの確保に当たっ
ては、介護福祉士等の有資格者の確保に努めるとともに、障害の特性に対する理解
や利用者との間におけるコミュニケーションを必要とすることから、過去において
障害者の介護経験を有するものの活用を積極的に図ること。」と通知が出されてい
ます。
これは厚生省の動きに連動して、県が推薦登録派遣を積極的に図るよう市に働き
かけているものです。
こうした状況の中で、一刻も早く推薦登録派遣を、希望する人に開けたものにす
ることを私たちは求めます。
2. ガイドヘルプ事業の時間数・単価アップを行うこと。
ガイドヘルプ事業は、県単の介護人派遣事業から移行したものですが、他の市の
介護人派遣事業と比べて、時間数がかなり少ない状況です。
現在、県の介護人派遣事業の要綱からは上限項目は削除されており、128時間
というのも、もう昔の話になっています。
今年度、鴻巣・川越・所沢・狭山・入間・朝霞・草加・蓮田など、少なくとも
11の市町村では上限が128時間。各市町村の上限の平均をとると100時間は
越えるようです。にもかかわらず、浦和は72時間と、県内では、かなり低レベル
ということになっています。
一度病院などに外出すれば、大きな病院だと一日仕事になってしまいます。(大
きな病院でないと障害者ということで敬遠されてしまいがちであるということもあ
ります)そうした介助を必要とする場合、月72時間というのは少ないことは明ら
かです。
一刻も早く、県内トップレベルまで戻してもらいたいと思います。
単価については、1280円ということですが、厚生省の示すヘルパーの手当基
準までは最低引き上げることを求めます。
REV: 20170129