自選登録ヘルパー方式を認めさせるために研修を受けることも1つの方法
全国各地で自選登録ヘルパー方式が徐々に広がってきていますが、なかなか突破
できない壁として、「研修」の問題があります。
県庁所在地など比較的大きな市や、最近福祉公社への委託など新たな形でヘルパ
ー派遣のシステム化をした市などでは、「登録ヘルパー」について多くの場合「3
級研修修了者」という要件を設けています。
障害者にとっても介護者にとってもこの問題は非常に腹立たしい。何しろ研修を
受けて派遣されてくる女性のヘルパーはほとんど介護にならない、逆に毎日介護を
している自分の介護者は研修を受けていないという理由だけでヘルパーとして登録
できない、そういう全くひどい話なわけです。
要求者組合でも厚生省との交渉の中で、ヘルパーとして登録し介護をしながら後
で研修を受ければいい、という厚生省の見解を何度も確認をしています。
各地で運動をしている人たちも障害者本人が、十分に介護できる介護者を推薦し
ているのに、何でほとんど高齢者を前提として作られている研修を受けなければな
らないのかと交渉している。しかしそれでもなかなか研修という登録要件をはずさ
ない市が多いのが現状です。
それにはそれなりの理由があります。
1)厚生省のヘルパー要綱で研修が義務付けられていること。(ただしこの文章は
7のホームヘルパーの選考3という前提があって、しかもどういった研修を受け
なければならないかは書かれていないので、十分クリアする余地はあります。)
○身体障害者ホームヘルプサービス事業運営要綱
7 ホームヘルパーの選考
ホームヘルパーは次の要件を備えている者のうちから選考するものとする。
1 心身ともに健全であること。
2 身体障害者福祉に理解と熱意を有すること。
3 身体障害者の介護、家事及び相談助言を適切に実施する能力を有すること。
8 ホームヘルパーの研修
1 採用時研修
ホームヘルパーの採用等に当たっては、採用時研修を実施するものとする。
2 定期研修
ホームヘルパーに対しては、年一回以上研修を実施するものとする。
2)社協や福祉公社などでは、障害者、高齢者で窓口が別れているわけではなく、
同じ窓口でヘルパー登録が行なわれるため、障害者に対する派遣のみ研修という
要件をはずすのは難しい。
3)財務や市議会に対してヘルパー予算の説明をする際、事故などに対する責任問
題ということで、福祉部として研修を義務付けることで事故を防止したいという
見解が示される場合が多いこと。これは同時に、事故が起きた場合の行政として
の責任回避という側面を強く持っているためかなりやっかいな問題です。
実際東京の小平市でも去年、研修を受けていない(ヘルパー事業委託先である家
政婦協会の)ヘルパーの介護中に事故が起き、その高齢者の家族は研修を受けてい
ない無資格ヘルパーを派遣した市の責任だということで裁判を起こしています。
周辺市ではその問題が起きてから、やはり研修を義務付けるべきではないかとい
う議論がかなり強く出されたと聞いています。(自立生活センターが各周辺市との
話し合いで研修は義務付けないという合意を作っているので今のところ問題はない)
こういった市や委託先の事情を理解した上で、例えば「自選の登録ヘルパーの場
合、その障害者の介護経験があり、しかも何か事故があった場合にも本人が責任を
取ることになる。」というように、「自選で、その障害者のヘルパーとして行く場
合に限って」例外的に研修は要件としないという交渉を行なっていくのがまず1つ
の方法だと思います。
それでもなかなか市側の姿勢が固い場合には、介護者のうち1人でも2人でも研
修を受けてしまうのも1つの方法です。交渉を続けていくよりその方が自選登録ヘ
ルパー方式が早く実現するということもあります。
市や社協、福祉公社などの窓口に行けば、たいてい研修受講案内のパンフレット
が置いてあります。無ければ、窓口で研修実施機関の連絡先を聞いて連絡すればす
ぐにパンフレットが手に入ります。
現在登録の要件とされているのはほとんど2級ではなく3級ですので、その場合
50時間(7時間が7回分)、約1ヵ月の研修で済みます。
市の内定をもらってから研修に行けば1時間当たり昼間970円、夜間1200
円の研修手当てをもらうこともできます。
○ホームヘルパー養成研修事業の円滑な運営について
3 受講時手当等の取扱い
ホームヘルパーとして採用された者又は内定しているものに対する研修受講
期間中の手当て等については、在宅福祉事業費補助金交付要綱による一般基準
の家事援助中心業務の手当て及び活動費の国庫補助対象経費とする。
4 研修会参加費用の取扱い
ホームヘルパーとして採用された者又は内定している者にかかる研修会参加
費用(教材費等の実費相当部分)については、在宅福祉事業費補助金交付要綱
による市町村運営事務費の国庫補助対象経費として差し支えない。
研修というのは障害者にとっても介護者にとっても、非常に譲りたくない腹立た
しい問題ですが、まあ研修を受けることぐらいで障害者の介護保障が前進するなら
それも1つの方法と言えると思います。
(厚生省のホームヘルプ事業の要綱全文は、「交渉のやり方ガイドブック2」の巻
末に、ヘルパーの研修の要綱全文は、「交渉のやり方ガイドブック2」の「付属資
料集」の巻末に、掲載しています。)
SSKS 公的介護保障情報 4月号別冊 道府県版
REV: 20170129