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1995




■1995.11.12 「いのちの価植に〇×つけないでやめろ!受精卵の遺伝子診断!」集会決議

<1995.11.12 集会決議>
『いのちの価植に〇×つけないでやめろ!受精卵の遺伝子診断!』集会決議

 私たちは、本日、以下に述べる理由によって、受精卵の遺伝子診断を決して容認できないことを集会参加者一同で確認し、日本本産科婦人科学会はじめ関連講学会、各大学、研究・医療機関および国に対して、その臨床実施を認めることのないように、要望してゆくことを決議いたしました.

 ◆受精卵の遺伝了診断は、遺伝子レベルで生きるに値する命と「廃棄」すべき命の選別を意味し、まさに、優生学的選別操作であり、絶対に認めることはできません。
 ◆遺伝子診断を受け入れることは、「障害」をもって生きる人間の存在を否定することに他なりません。私達は、人が疾患や障害のあることによって、その存在が否定されることを容認できません。
 ◆いったん着床前診断の臨床応用が始まれば、すべての病因遺伝了のチェックヘとその適用は拡大されるにちがいありません.さらには、受精卵の遺伝丁治頼につながっていくでしょう。このことは、一つの「完璧な」遺伝子群を保有する人間が存在するかのような幻想を人々にうえつけ、そういう遺伝約に「完璧な」人間を指向する風潮を生み、助長することになります。
 私達は、このような恐ろしい優生思想の蔓延の危険性を、見過ごすことはできません. ◆また、この技術は、これまで不妊治標としてのみ用いられてきた体外受精技術を、不妊でない女性にまで拡大適用して、適伝的に「正常な」子どもを産ませようとするもので、女性の心身に過重な負担を強いるものです。この者床前診断は、体外受精を前提としているため、成熟卵子の採取のための種々のホルモン剤の投与や卵巣穿刺などの女性の体への徹底的な人工的干渉を伴っており、女性の体にかなりの悪影響を及ぼすおそれが十分にあります。女性からみれば、この技術は、女性の体を、遺伝的に「正常な」赤ちゃんを産むための道具として利用しているとしか思えません。
 それゆえ、この技術は、女性にとって、抑圧からの解放をもたらすものではなく、反対に、さらなる差別・抑圧を加えるものに他なりません。

 体外受精と遺伝子診断を組み込んだ、受精卵遺伝子操作につながる着床前診断は、以上のように多くの問題をかかえたものです。これらの、社会的に非常に大きな問題を生じるおそれのある医療技術の実施にあたっては、疾患や障害を持つ人や女性や市民の意見がまず、第一に、尊重されるべきであり、研究上の関心や研究者の野心は制約を受けざるを得ません。各学会、大学、研究・医療機関は研究至上主義を捨て、この問題について、いま、広く市民と議論を交わすべきときです。
 この集会決議および意見書を日本産科婦人科学会はじめ関連諸学会、大学、研究・医療機関、国に送り、私達の意見が理解されることを祈念いたします.

 1995年11月12日
 『いのちの価値に○×つけないで やめろ!受精卵の遺伝了診断!』集会参加者一同


採録:利光恵子(立命館大学大学院先端総合学術研究科
UP: 20070322 REV:
出産・出生とその前後  ◇生存学創成拠点
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