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市場の失敗
market failure


 ◆外部効果
 ◆外部不経済

◆伊東 光晴 1971

「社会的アンバランスを生む原因……のうちもっとも重要なものがマーケット・フェイリュア(market-fairure=市場の欠落)である。
 マーケット・フェイリュア――おそらく大学で経済学を学んだ人も,こういう言葉を聞いたことがないだろう。事実,内外の代表的な経済学の本をしらべてみたが,こうした言葉はない。だがこの問題は現代経済の核心であり,今新しく登場しようとしている経済学は,この理論をもとに,新しい政策をうちたてようとしているのである。」
(伊藤 *p.287)

*伊東 光晴 19710320 『現代の資本主義――やさしい経済セミナー』
 筑摩書房,304p. 750円
「この本は『週刊朝日』に1970年の1月から12月まで前後50回にわたって連載されたものを加筆訂正したものである。」(p.303)

◆Stokey, Edith ; Zechhauser, Richard 1978 A Primer for Policy Analysis, W.W.Norton & Company
 =19980615 佐藤隆三・加藤寛訳,『政策分析入門』,勁草書房,352p. 5200

 第14章 望ましい結果の達成(pp.286-322)
 …
 市場はいかにして失敗するか
  情報の不完全な流れ
  取引費用
  若干の財に対する市場の欠如
  市場支配力
  外部性
  公共財
 市場の失敗の対処策
  市場の失敗の対処のための私的メカニズム
 市場の失敗に対処する政府の役割
  何もしないこと
  「不幸にも,無知,偏向,そして政治的圧力は,常に政策の定式化の過程を再編成するだろう.意図された目的を達成する政府の計画を創り出し機能させるわれわれの能力は,あまり大きくないことを学ぶべきであろう.さらに,市場の失敗が政府の介入を必須とはしないということを承認せねばならない;それは単に,そういう介入が便益をもたらしうるという可能性を示唆するにすぎない.」(p.310)
 政府が肯定的となる諸形態
  市場の機能の改善を試みる政府の諸手段
  個人や企業に特定の行動様式を要求する政府の諸手段
  私的な個人や企業の決定に影響を与える政府の誘因
  財とサービスの政府供給
 望ましい結果の達成における政府の役割に関する展望

◆野口悠紀雄(pp.140-141)

「政府の果たすべき資源配分機能……は,……私的財の供給に関する「市場の失敗」への対処と,公共財の供給とに分けることができる。
 ……(p.140)
 ……課税や価格統制のない自由な市場において,望ましい資源配分が達成される……。その理由は,……市場価格を介して,財やサービスを生産するための限界費用と消費者の限界効用とが等しくなるからである。
 しかし,この命題が成立するためには,いくつかの前提条件が満たされなければならない。そして,現実にはこれらの条件は必ずしも満たされないので,資源の最適配分が実現されないことがある。こうした場合,資源配分に関して「市場の失敗が生ずる」といわれる。政府に課される重要な役割の1つは,市場の失敗が生じている場合に,経済活動に介入し,資源配分のゆがみを矯正することである。
 市場の失敗が生ずる原因としては,次のようにつくつかのものが考えられる。
  (1) 独占や寡占
  (2) 費用逓減
  (3) 外部経済・不経済効果
  (4) 多時点にわたる資源配分
  (5) 不確実性
 上記のうち,(1)の場合には,市場均衡は存在するが,そこでの資源配分は最適ではない。(2)の場合,私企業による生産は行なわれないか,あるいは(1)の問題が発生する。(3),(4),(5)の場合においても,市場均衡は存在するが,最適資源分配が実現しない」

◆植草 益 19910215 『公的規制の経済学』
 筑摩書房,332p.

市場の失敗(pp.8-17)

 分配の公正
 経済の安定性
 非価値財*
  *「道徳的・倫理的規範に照して一定程度ないし全面的に生産・販売が制限・禁止されるべき財」
 公共財
 外部経済
 自然独占
 不完全競争
 情報遍在
 リスク

◆牛嶋 正・辻 正次 編 19910510 『公共政策論』
 有斐閣,276p. 3000

第I部 資源配分と公共政策
 第1章 市場機構の機能と市場の失敗*
 第2章 多数決制民主政治と政府の失敗
 第3章 資源配分の効率性と公平性

 *
 3 市場の失敗と公共政策I――収穫逓増
  1.収穫逓増減少
  2.限界原理・平均原理
  3.独占の規制
 4 市場の失敗と公共政策II――外部経済
  1.外部経済・外部不経済
  2.市場の失敗
  3.外部経済の矯正策

◆宮本 憲一 19980615 『公共政策のすすめ――現代的公共性とは何か』
 有斐閣,315p. 2200
 第1部 公共政策の政治経済学――理論と歴史
 第1章 資本主義と「市場の欠陥」

「3.「市場の欠陥」
 現代の新古典経済学では,公共政策(公共的介入)の原因を「市場の失敗」に求めています。スティグリッツやサミュエルソンなどの教科書によれば,それは次のように言われます。
 「市場の失敗」という場合,市場の欠如と市場の不完全性の双方をふくんでいます。まず市場の欠如というのは非排除性,非競合性や共同性をもった財やサービスが市場では供給できないか,供給困難であることをさしています。国防,警察や消防のような「公共財」が典型的です。
 市場の不完全性とは,ある財やサービスの生産・流通・消費には「外部性」(あるいは「外部効果」)があって,そのため,市場経済では最適供給ができないことをいっています。この場合,その財やサービスがプラスの外部効果をもつ場合には不十分な供給しかおこなわれません。たとえば専門教育は教育費を支払った学生(p.33)にその効果が帰属するだけでなく,学生を雇用する企業,ひいては一般社会にその効果が取得されます。しかし,企業はフリーライダー(ただ乗り)としてその費用を負担しません。このため,どうしても市場制度の下では教育費は過少にしか支出されないことになります。
 他方,マイナスの外部効果は,公害や自然破壊が典型です。企業の生産活動は公害のような損失をひきおこしますが,企業はこれを社会的費用として第三者や社会に負担させ,自らのコストとしません。このため過剰な生産と社会的費用の累増がおこるのです。
 市場の弊害は,完全競争による完全均衡という条件が適合しない産業についておこります。それは規模の収益で収穫逓増がおきる電気,水道,ガスのような産業です。これを「自然独占」とよびます。
 「公共財」「外部性」「自然独占」を,新古典派経済学では「市場の失敗」といっています。この章のテーマを「市場の欠陥」としたのは,たとえば「外部性」の中の環境破壊は,都留重人教授の指摘のように,一時的な「市場の失敗」ではなく,市場制度そのものの発展に求められるので,市場の本質的な欠陥としたのです。以後は「市場の欠陥」と延べておきます。資本主義は市場=商品経済の最高度の発展なので独自の多様な「市場の欠陥」をしめします。それは資本主義の矛盾とよべます。ここに述べた3つの欠陥は静態的な問題ですが,資本主義の矛盾はもっと動態的なものをふくみます。資本主義の矛盾については,新古典派よりもマルクス主義経済学や制度学派が的確な理論を構成しています。」
(pp.33-34)
 4.自由資本主義の矛盾
 第1の矛盾――労働者の貧困と所得不平等
 第2の矛盾――景気循環,産業構造の変化と失業
 第3の矛盾――独占
 第4の矛盾――共同社会的条件の貧困
 第5の矛盾――地域的不均衡発展と都市・農村問題
 第6の矛盾――植民地問題
 第7の矛盾――環境破壊と公害(pp.34-40)

◆立岩真也『私的所有論』第2章注17(pp.62-63)より

「経済学で「市場の失敗」が生ずる場合がいくつかあげられる。「公共財」の供給の場面、(負の)「外部効果」が生ずる場合、「完全情報」の仮定が成立しない場合等である。他に景気変動への対応力の問題もあげられる。知識のある人には不必要だが、教科書から簡略な説明を引いておく。「公共財とは…国防、司法、警察などのサービス、あるいは道路、橋、港湾、灯台、公園、下水道などの施設が例示するような公共的な財貨・サービスの総称であり、それらはつぎの二つの特性をもつ…第一に、公共財は非排除性(non-exclusiveness)を具えており、このことはそれらの財が誰彼の区別なしに供給される財であることを意味している。…第二に、公共財は非競合性(non-rivalness)をも具えている。これはある成員がいくら公共財を消費しても、それによって他の成員の消費できる量が減ることはないという意味である。」(福岡正夫[1986:229]、cf.長谷川計三[1991c])「外部効果とは、ある経済主体の活動が他の経済主体の選好や生産関数に、市場を経由しない形で影響を及ぼすことをいい、その場合当該の影響が…好ましくない方向に作用する場合にそれを外部不経済(external diseconomies)という。」(福岡[1986:40])騒音や大気汚染などの公害現象がよくあげられる。また、(売り手に比べ)買い手の側が商品についての情報をもっていないという「情報の非対称性」が存在する場合、パレート最適のための条件である「完全情報の仮定」が現実には妥当しない場合があり、この場合にも交換は必ずしも消費者にとって良い結果をもたらさない。
 これらは新古典派の経済学に常套的に投げかけられる(そして自らも認める)批判である。本書ではこれらについて本格的に検討することはない――本書後の課題である――が、第3章に見る生殖技術の批判、第4章に見る自己決定の困難の一部は、「外部効果」や「情報の非対称性」の問題として捉えることができる。例えば当事者に当該の行為がもたらす帰結についての十分な情報が得られていない場合が数多くあるだろう。だが、これは情報が十分に与えられている場合には当てはまらず、情報の提供が十分に行われれば問題はないことになることも意味する(第3章1節)。」



経済(学) economics  ◇Core Ethics ?? / Core Sociolgy ?? 

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