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『子どもの虐待――その実態と援助』

津崎哲郎 199212 朱鷺書房,270頁,1,500円

http://www.kiwi-us.com/~skyearth/psy/torauma.html
http://www.ktv.co.jp/child/index.html
http://member.nifty.ne.jp/m-suga/childabuse.html

last update: 20170426

この文章の作成者:今村 洋平(立命館大学政策科学部)
掲載:20020716


 上記の参考文献・URLの中で主に内容をまとめるのは「子どもの虐待―その実態と援助―」津秋哲郎著であるが、参考にしたURLの内容を含め自分なりに内容をまとめていきたい。また内容をまとめた後で自分の意見を記すことにする。

【はじめに(テーマ設定の理由)】
 この最終レポートの課題が発表された時正直言って戸惑った。女性が絡んださまざまな社会問題は掘り下げるととても内容が深くなり、自分が混乱することがわかっていたからだ。TVや時々新聞で記事を読む程度の自分が専門の先生にどんな考えを述べればよいのかわからなかった。しかしずっと疑問に思っていたことがある。それはなぜ自分のかわいい子供に暴力をふるうのだろう?しかも死ぬまで・・・・いかに弱い子供とはいえ殺すまでにはいろいろな肉体的・精神的過程があるはずでそのようなブレーキはどのような状況でどんな風にはずされるのか興味があった。だからこの場を借りて興味のあるテーマに接してみようと思う。

【児童虐待とは】
 児童虐待。大人から子どもに対する暴力はその力の差から、多くは一方的に暴力を振るわれ何らかの損傷をもたらすものとして、虐待ということばが使われることが多くなりました。その内容には大人の言うことを聞かせるために子どもの身体に暴力を振るう等の身体的虐待、子どもの成育に必要な世話や愛情を与えない保護の怠慢・遺棄、子どもを大人の性的対象とする性的虐待、感情に任せて言葉で子どもの心を傷つけたり、大人の期待を勝手に子どもに押し付けたり無理強いする等の心理的虐待が含まれます。親の言った一言や、たった一度の親からの性的虐待でも子供のその後の人生に大きく影響を及ぼします、子どもが大人の保護下でなければ生活できない状況の中で、虐待は繰り返されることがほとんどであり、それが事態を深刻にもしています。また子供に虐待をすることがいけないことだということを前提におくとして、虐待を生んでしまう環境の問題はないのかを探っていきたい。
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【子供の虐待―その実態と援助】
第一部 虐待の種類
・ 身体的虐待(physical abuse)
・ 保護の怠慢、拒否(neglect)
・ 性的虐待(sexual abuse)
・ 心理的虐待(phychological abuse)
第二部 虐待の動機と誘引
第三部 虐待の実態
第四部 虐待の援助と制度

【虐待について考えること】
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◎ 第1部 虐待の種類

1.身体的虐待(physical abuse)
 子どもに苦痛を与えたり、外傷を与えたり、生命に危険を及ぼす暴力を加えることです。
例えば、殴る・蹴る・投げ落とす・首を絞める・溺れさせる・逆さづりにする・たばこの火を押し付ける・有害な薬物を飲ませる・冬に戸外に閉め出すなどの行為があげられます。ニュースを見ていると時々このような内容の虐待が報じられたりします。ここでは3つの事例を紹介している。すべてをまとめると例ばかりになってしまうので、そのうちの一つを詳しく取り上げ、残りは概要を記す。
 事例の一つとして若い父親の子供に対する虐待が掲載されている。A子(1歳の女児) B子(A子の双子の姉)24歳の父、21歳の母親の4人で暮らしている家族の中で起こった問題である。若い夫婦だけで子育てをしていくことは非常に難しく、また夫もリストラ後は定職につくことがなかなかできず、夫婦には生活上でのいらだちが絶えなかった。そんな中、父親の苛立ちはA子に向けられた。しかしここで注意したいのはB子はこの未熟な父親からそんなに被害を受けていないということである。つまりA子には父親の怒りを誘発する物があったのだ。A子の泣き声がそれだったのである。A子はかんしゃくもちで毎日のように激しく泣き、父親はA子を黙らせるためにたたいたり、布団をかぶせたりしていた。そのうちご飯を与えない日があったり、その内容はエスカレートしていった。母方の祖母の相談で児童相談所が解決に取り組んだが、相談が遅れたらと思うとぞっとする。
父親が語るには決して楽しんでいたわけではなく、なぜそのようなことをしていたのかわからないと語っている。
そのほかには養母の虐待と中年男性の再婚相手の子供に対する虐待が記してあります。
このような例を踏まえ、いろいろな虐待の主要因を記しています。親の未熟さ・意にそぐわない養育・子供への強い期待・夫婦の不和・生活の困窮・子の育てにくさや性格・・・・
 様々な原因が複雑に絡み合い最終的に弱者である子供に鬱憤が向けられている。原因は一つではなく複雑に絡み合っていること、加害者もけっしてやりたくて虐待をしているわけではないことに注目してもらいたい。

2.保護の怠慢、拒否(neglect)
 子どもの養育に関心を示さなかったり、子どもの養育をどのようにすればいいのか分からない・子どもの世話をする心理的・経済的余裕がないなどの理由から、健康状態を損なうほどの不適切な養育をしたり、子どもの危険について重大な不注意をおかすことをいいます。例えば適切な栄養を与えない(食事を与えない)・極端に不潔なままにする(入浴させない・身体が汚れていてもそのままにしておく・汚れた衣服を着続けさせるなど)・重大な病気になっても医者の診察を受けさせない・学校に登校させない・乳幼児を家や車の中に放置したまま外出する・捨て子などの行為があげられます。
 身体的虐待が児童に対して直接的に加えられる危害であるとすれば、保護の怠慢・拒否は、児童が大人の介護前提にして初めてその成長・発達が可能という児童固有依存的特性に根ざしている。ここでも3つの例があげられています。物資がすくなかった時代ならまだしも現在そのような理由で育児放棄されている子供は少なく。計画性もなく、場当たり的な生活を続ける中で出産し、結局は措置に困って育児を放棄したりする例が多いが、苛立ちを無視という形で子供に向けその怒りを発散しようとする例や(いじめの感覚に似ているのかもしれない)さまざまな例がある。しかしいずれにせよ出産と育児の共同責任者で男性が困難を女性一人に押し付けている例が多く、その意味で直接の加害者は母、間接的な加害者は父ということになるのかもしれない。

3.性的虐待(sexual abuse)
 子どもと性交したり性的行為を強要することをいいます。父親が娘を対象にする事例が多くみられますが兄が妹にというように兄弟の間でおこることもあり、男の子が被害者となる場合もあります。身体的外傷を残さないことが多く、虐待者だけではなく子ども自身もその虐待のことを秘密にしておこうとする傾向があり、もっとも発見が難しいタイプの虐待です。ここでは母のいない家庭の場合・両親がそろっている場合・母親しかいない家庭の場合の3つを紹介されています。性的な虐待に共通するのは普遍的なタブーの観念で加害者が近親であることからかほとんどの場合表に出ない、非常にわかりにくい虐待であるということです。一つ目の例として母親のいない家庭の例が提示してあります。これは父親が中学生の娘に性的な行為を迫り、娘が断ろうとすると暴力に訴えるという例です。父親は普段は気が小さく、おとなしいのですが酒が入ると性格が変わり、性的な成長を見せ始めた娘に対し2年間に渡り性的な関係を強いてきました。友達が異変に気付き少女は児童施設に入ることができたのですが2年間でこの少女が受けた傷は計り知れません。
 僕は4種の虐待のうち性的虐待はすこしほかの3つとは違う気がします。これは環境の原因より加害者の責任のほうが絶対的に大きいと思うからです。社会が複雑になり、ストレスが多く感じられる世の中では人々の欲求が歪曲しかねないと言われていますが、今も苦しんでいる人がいると思うと苦しいです。性的な虐待の例を見るとほとんどの原因が男性にあり、また家庭状況にどこかしら変化がおきたときが引き金になってしまう例が多いということがわかりました。

4.心理的虐待(phychological abuse)
 身体的暴力を伴わなくてもひどい言葉で子どもを傷つけたり、極端に拒否的な態度をとることで子どもに心的外傷を負わせる行為のことをいいます。例えば、「おまえなんかどうして生きてきたのだろうね」とか「おまえなんか 死んでしまえ」と言うことや、兄弟の間で著しく差別的な扱いをしたりするなどの行為があげられます。
 心理的虐待は国際児童虐待委員会が児童の不当な扱いについてその型と程度を定義したもののうち「家族内における不当な扱い」に属した物である。これまでは身体的虐待・保護の怠慢ないし拒否・性的虐待とタイプの異なる児童虐待を見てきた。しかし心理的虐待についてはどちらかといえば身体的虐待や保護の怠慢ないし拒否などに先行して、あるいはそれらと併行しておこる心理的特性である場合がおおく、それ自体が独立で長期にわたって続くことは少ないことが最大の特徴であろう。言葉の暴力という意味が一番当てはまりそうである。ほんらいなら愛すべき言葉をかけてもらうはずの相手から「死ね」などという言葉を言われたときの気持は言われたものでしかわからないであろう。

◎ 虐待の動機と誘引
 児童相談所で受け付ける児童虐待の件数は年々増加している。この要因には、
@ 子育ての背景となる社会状況の変化(子どもの権利保障への意識の向上、社会が豊かになり即時欲求充足を求める傾向の増大など)
A 家庭の形や質の変化(核家族や離婚家庭の増加・少子化・家事の効率化により子どもと向き合う時間が長くなる・女性の社会進出・家庭の養育機能の低下など)、 
B 地域社会の変化(近隣とのつきあいの疎遠化・孤立化、子どもの遊び場の減少、自然の減少など)などがあります。
 社会全体の養育の水準が上がったために、これまで虐待とは考えなかった事例も虐待という視点から援助を行うようになったことや、養育を負担に感ずる家族が出てきたことなども考えられます。最近では上記に挙げた要因による現代的な子育てに対するプレッシャーに耐えられず起こってくる虐待が増加しているものと思われ、「いつでも」「どこでも」「どんな人でも」起こりうるという認識が必要なのです。「ひと」を育て上げるという作業(子育て)は大変な困難さを持っています。もたらされる喜びも大きい反面、苦しみ、苦労も絶えません。社会全体が少ない子どもを大切に育てるようになっている中で、普通に育てるのが当たり前という風潮になってくると、親の心理的負担が増加し、うまくいかない子育てが起こってくる可能性が高くなります。
 また大阪府が行った調査によると虐待の主な動機・原因は次の8種に分類される。
@ 養育拒否による虐待
A しつけの行き過ぎによる虐待
B 酒乱による虐待
C 優越性誇示による虐待
D やけ、うさばらし、とばっちりによる虐待
E 嫉妬、恨みによる虐待
F 人格障害による虐待
G その他
 また虐待をする親の共通点として児童虐待研究者である東洋大学の池田由子教授は以下の項目を挙げている。
@ 彼らは子供時代に親から優しく愛され、保護された経験がない。
A 彼らは我が子に対して不正確な認知の仕方をしている。
B 家庭内にストレスがある。
C 体罰が適切な躾の手段と誤解している。
また米国のスティ―ル(Steele)は虐待が起こる条件として以下の項目を挙げている。
@ 親が幼少期に拒否、虐待されていた。
A 生活上のストレスがある。
B 社会的孤立。
C 満足できない子供。
また上記の意見や筆者が実務経験をとうして集約をしなおすと虐待が起こる条件として以下の項目があげられる。
@ 親自身がふぐうな児童期を過し、被虐待体験を有したり充分なマザーリング体験をもたないことが多い。
A 親の人格特徴として未成熟・被害感・劣等感・攻撃性・自己中心等の要素をもっていることが多い。
B 児童についての理解が充分でなく、過剰な期待をかけたり・放置したり・自己本位に操作しようとする。
C 養育技術がつたなく、往々にして力の養育に頼り、柔軟性に乏しい。
D 乳幼児期に親子の分離体験があり、親子双方が情緒的に不安定である。
E 家庭の中に多様なストレストラブルが起こり、夫婦の相補性も低い。
F 児童自身の誘因としても、なつかない・ききわけがない・そだてにくい・発達の遅れ等があり虐待の悪循環を形成している。
G 親族や近隣との関係が険悪であったり、疎遠であったりで、社会的に孤立していることがおおい。
しかしこれまでも述べてきたように児童虐待は決して単一の要因で生じる物ではなく、複合的要因が力動的に作用して生じると理解すべきである。

◎ 虐待の実態
 児童虐待がどの程度の頻度でおきているのか、その実態は必ずしも明確でない。だが過去に何度か児童虐待に関する調査が全国規模あるいは地方規模で実施されている。ここではその調査について述べられている。
@厚生省児童家庭局の調査例
A全社協養護施設協議会の調査例
B日本児童問題調査会の調査例
C全社協養護施設協議会の調査例二回目
D 全国の主要病院小児科を対象とした調査例
E 大阪児童虐待調査研究会の調査例
F 全国児童相談所長会の調査例
しかしこのような調査では虐待が表に出てこないことがほとんどで、全国には少なくとも万単位で児童虐待が生じていると考えたほうがよいだろうと記してある。

◎虐待の援助と制度
 児童虐待は医療機関、保健所、家庭児童相談室、児童相談所等々で個別的に援助されることが多いが、その援助方法も機関や関与する個々人によって千差万別の感じを受ける。ただ個別的援助、継続的フォロー、緊急一時保護、施設入所、親権の制限等の総合的対応が可能であるのは児童相談所のみであり、その意味で虐待の中心的援助機関は児童相談所として位置づけることが順当であろう。児童相談所は、ケースワーク機能・判定機能・一時保護機能を併せ持ち、異種専門職種相互の有機的連携が可能であること、加えて施設への入所措置権限、あるいは親権の制限に関する家庭裁判所への提訴資格を有しているので、児童虐待にかんする対応の要の機関ともいえるがそれでもなお現行の援助の実際に当たっては、体制の不備やさまざまな対応上の困難を伴い、被虐待児の援助にあたって必ずしも完全とはいえないのが実情である。


        図 児童相談所のケース援助のプロセス(略)

 実際の援助のプロセスは大まかに言うと上記の図のようになっている。また一般的な援助の方法は大別すると
@ 在宅指導
A 緊急一時保護
B 保護者の同意を得た施設入所
C 児童福祉法第28条申し立て(保護者の同意のない)による施設入所
D 親権喪失の申し立て
の5つがあげられる。

【虐待について考えること】
今回自分の興味 があった児童虐待というテーマを取り上げ、本やHPなどでいろいろしらべてみたわけだが、本当に難しい問題なのだということを実感した。目指す物は「虐待のない家庭や社会」という単純明快なものなのだが、そこに絡んでくる問題が一つではなく児童相談所の人たちを筆頭にこの問題に取り組む人たちが丁寧に問題を解きほぐそうとしている。僕自身が感じたことは児童虐待は加害者自身の問題と環境要因の二つが絡んだ時におきてしまう物なのではないかということだ。残念ながら児童虐待を0にするというのは実質無理であろう(けっして0を目指すことが無駄であるといっているのではない)。月並みであるかもしれないがやはり虐待が起こってしまった時早めに発見できる社会、援助できる社会システムをつくっていくことしかないと思う。日本は良くも悪くも閉鎖的な社会である側面がある。だから欧米の虐待とはまた虐待が起こった後での問題が少し違うと思う。日本の社会的気質を考えたうえで適合した援助システムが必要であると思う。
 話は少し変わるが親戚に2歳の子供を持つ人がいるので虐待について少し意見を聞いてみたところ、自分の息子をそこまで痛めつけるまではいかないが、やはり「はっ」としたことやものすごくいらいらしたことはあったという。自分に関係がない話ではなく自分の身近な問題として児童虐待についてもう一度考える必要があると深く思った。


……以上……


REV: 20170426
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