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ドメスティック・バイオレンス

「夫(恋人)からの暴力」調査研究会著
1998年3月30日 初版発行
1998年5月10日 新装版第1刷発行
2002年2月28日 新 版第1刷発行
有斐閣選書 定価(本体1,900円+税)
http://www.yuhikaku.co.jp/

last update: 20170426

この本の紹介の作成者:峠美千久(立命館大学政策科学部3回生)
掲載:20020716

はじめに――DVについて日本で始めての調査、取組みの経緯、DVをめぐる国際的な動き、DVをめぐる社会的動き、DV法の成立
第1章 ドメスティック・バイオレンスとは
第2章 日本におけるドメスティック・バイオレンスの実態
第3章 ドメスティック・バイオレンスを生み出し、支え、助長・強化する構造
第4章 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV法)とその問題点
第5章 暴力のない安全な生活へ
第6章 私たちの求める総合的ビジョン
参考文献・あとがき


本書の目的
 本書ではドメスティック・バイオレンスを単なる家庭内の暴力として捉えるのではなく、その根底に存在している女性を取り巻くさまざまな社会の構造を探り問題点を指摘した上で、それらの解決策を提案し実行していくことでドメスティック・バイオレンスの根絶を訴えていくことを目的としている。

*引用部分の頁は【頁】で表す。

はじめに

1. 日本で始めての調査
 1992年、日本で始めてのドメスティック・バイオレンスの調査が行われ、調査方法にはフェミニスト・リサーチが選択された。フェミニスト・リサーチとは女性固有の経験や事象を明らかにしその問題解決のために行い、調査を実施すること自体やその結果が、人々の意識を動かし、運動や研究を進展させ、社会制度を改善させ、それらの相乗効果によって社会変革を促していくような調査。
 この調査によって得られた女性達の語りを基にDVの本質を探る。【001−003】

2.取組みの経緯
 1970年代の女性解放運動、80年代の強姦救援センター発足、反ポルノ運動、反ミスコン等で現代の性暴力を容認する社会やマスメディアの報道のあり方を問題にし、その中でドメスティック・バイオレンスというものの本質を明らかにし、社会問題化できる可能性を感じられた。【004】

3.ドメスティック・バイオレンスをめぐる国際的な動き
 1993年のウィーン国連世界人権会議では、女性NGOは「女性の権利は人権である」をスローガンに、<女性に対する暴力>をテーマにしている。この人権会議で採択されたウィーン宣言及び行動計画で、始めて女性・少女の人権を明文化し、女性に対する公私の暴力撤廃をうたう。【004−005】

4.ドメスティック・バイオレンスをめぐる社会的動き
 これまで日本には「ドメスティック・バイオレンス」という言葉は存在していなかったといってよいが、今回の調査により社会的関心を高め、DVの電話相談が女性グループによって行われるように。また1995年7月には名古屋地方裁判所において、暴力夫を刺殺した妻に対し「刑免除」の判決。これは国際的な女性に対する暴力根絶活動の成果といえる。【006−008】

5.DV法の成立
 共生社会調査会は、2000年4月「女性に対する暴力に関するプロジェクトチーム」を設置。DV法立法作業を開始。2001年4月に国会へ上程。30回に及ぶ審議を行うが不十分な法案内容となる。【008】

第1章 ドメスティック・バイオレンスとは

1.「親密な」関係における男性から女性への暴力
 ドメスティック・バイオレンスは、直訳では「家庭内の暴力」だが、「親密な」関係における男性から女性への暴力をさす。「親密な」関係とは夫、内縁の夫、別居中の夫、前夫、婚約者、元婚約者、恋人、元恋人等をさす。教育レベルや収入の高低、人種、民族、文化、年齢、職業の有無や種類には関係なくあらゆる女性が被害にあう。【012−013】

2. ドメスティック・バイオレンスのサイクル
 米心理学者レノア・ウォーカー説…DVのサイクルは大きくわけて3つ。まず「緊張が蓄積する期間」2番目に「暴力の爆発期」、最後に「ハネムーン期」。「ハネムーン期」とは暴力を振るった夫が妻に許しを乞う行動をとったり、プレゼントを渡したりと、急に優しくなる期間。この3つのサイクルでめぐる。「ハネムーン期」がない場合もある。【013−014】

3. ドメスティック・バイオレンスの歴史
 DVは決して新しい社会現象ではなく、古代社会から存在する。ローマ法は、夫の妻に対する身体的暴力行使はもとより、殺害も正当化していた。妻に対する暴力への処罰を規定した法律や、暴力を離婚理由と認める法律の制定など、本格的な対応は1970年代半ば以降のこと。【014−016】

4. 身体的暴力と非身体的暴力
 「親密な」関係において夫や恋人が女性にふるう暴力のうち、だれの目にも一番見えやすいのが身体的暴力である。殴る、蹴る、首をしめるなどが該当。この裏に心理的暴力、経済的な暴力、性的暴力、子供を手段とした暴力、脅し、男性の特権をふりかざす行為、社会的隔離などの非身体的暴力が潜んでいる。身体的暴力を行使されなくても、非身体的暴力の行使は、過去に身体的暴力をふるわれた経験や将来身体的暴力をふるわれる可能性を背景に、女性に大きな威圧感、恐怖感を与える。身体的暴力の有無に関わらず、女性は男性による支配の構造に取りこまれる。【016−020】

5.「親密」な関係における暴力は構造的暴力
 男女の「親密な」関係は、外界から遮断されたカプセルではない。1組の男女の間にも、「男性の優位と女性の従属」という社会の構造的力関係がはたらいている。男性は、無意識にしろ意識的にしろ、女性の弱い立場につけこんで暴力をふるう。【020―021】

6.「親密さ」の落とし穴
 男性が「親密さ」を隠れ蓑にして、暴力、暴言の限りをつくしても、“プライベートなこと”とみなされ、警察が介入しないことがほとんど。【022−023】

第2章 日本におけるドメスティック・バイオレンスの実態

1. 身体的暴力
 DVに関するアンケートに対し解答をよせた796人のうち467人が、夫や恋人から何らかの暴力を受けていた。また、身体的暴力を受けたことのある女性の13%が刃物を突きつけられていたり、切りつけられたりしていた。また男性の暴力はドア、家具等の物にも向けられる。【030−031】

2. 暴力のすさまじさ、繰り返される暴力
 木刀で頭を殴られ、頭に10cm位の傷を負わされる、骨折させられこれまでに4回救急車で運ばれる、寝ている時に殴りつづけ左顎骨折、背中の軟骨損傷、肋骨3本骨折、尾てい骨骨折、全身打撲で、手に負えないと大学病院を紹介されるなど、夫(恋人)の暴力はすさまじい。また、そのような暴力は繰り返され、中には20年以上も夫の暴力に耐える主婦も存在する。また暴力を振るう際にはいつも飲酒しているという報告もあり、飲酒をすることで感情がコントロールできなくなる男性もいる。【031−038】

3. 性的・経済的及び言葉の暴力
 約800名のうち473名が性に関する自己決定権を侵害されたり脅かされたりする性的暴力を受けている。具体的には「他の家族がいるのにセックスを強要される」、「セックスや性器について非難される」、「暴力的にセックスされる」等。経済的虐待としては「生活費を1円も入れない」、「遊ぶ金をパート収入から奪う」、「夫がつくった借金を肩代わりさせられる」等。経済的に扶養されることがさまざまな強制力の温床となっている。言葉の暴力に関しては、「口答えをするな」、「女は低俗、頭の中が男とは違う」、「言うことを聞け、俺の言うことだけ聞いていればいい」等。言葉の暴力も身体的暴力に負けずとひどいもので、中には半日以上言葉の暴力を浴びせられた女性もいる。
【038−047】

4. 社会的隔離
 夫や恋人は、さまざまなやりかたで、女性の自由な行動を禁止したり制限したりして社会的に隔離する。就労やその他の社会的活動を阻み、文字どおり社会から隔離して家庭内に囲い込んで、自分への依存を強いて支配している夫・恋人がそこには存在する。【047−049】

5. 子供を利用したDV
 「最も深刻な身体的暴力を受けた」という回答者のうち、子供のいる女性の3分の2が、子供にも暴力が及んだ。妊娠中のおなかを殴ったり、生後まもない娘を浴槽に沈めるなど、女性にとって子供に暴力をふるわれるのは一種の心理的暴力になっている。また、子供に直接手を上げなくても、子供の存在を利用して女性の言動をコントロールしている。【049−051】

6. 後遺症
 夫・恋人に暴力をふるわれた人で、何らかのけがを負った人が約3分の2であり、そのうち約6割が医者の治療を受けている。身体に後遺症を残す人も多く、働きたくても働けない体になってしまったという事例もある。また、後遺症は身体的なものだけでなく、精神的なものにまで達する。男性に対する恐怖心や男性不信である。さらに暴力を受けるのは自分の責任と思い込んでしまい、自分を見失ってしまうケースも報告されている。【052−060】

7. 離婚・別居・家庭内離婚
 暴力を受けた女性で離婚や別居を考える人は多く、その決断を行うに際し、子供の成長が大きな要因となる。したがって、子供が成長するまでは暴力を受けていても我慢している女性も多い。暴力を受けた女性のうちその後夫(あるいは恋人)と離婚や別れた人は半数近くにのぼる。【060−062】

8.相談相手
 身体的暴力を受けたことがあると回答した女性の約4分の3は誰かに相談するが、相談しない女性も25.1%存在する。相談した女性の相談先は親戚、友人、知人が最も多いが、相談を持ちかけても自分に原因があると言われたり、理解のない対応をとられる場合もある。また、外部の相談機関では警察が最も多いが、警察の対応の悪さに愕然とする女性も多いのも事実。このよう事実が相談しても無駄であるという考えを持つ原因となる。【063−070】

8. ドメスティック・バイオレンスの本質
 男性は自分が不利な状況になった場合、例えば嘘がばれそうになった時や自分の意見が通らなくなった時、自分の過失を責められた時などに自分の権威を誇示するために暴力を振るう。このことは男性が妻や恋人(女性)を自分の所有物としてとらえ、収入のない妻は自分とは対等であるはずがないという認識が根底にあることを意味する。その認識は性においてもまた顕著に表れ、妻や恋人の意思に反する場合でもSEXを強要することが多々発生する。ドメスティック・バイオレンスは始めと終わりがあって、回数を数えられるような個々の暴力行為ではなく、非対等な関係において男性が女性に従属、服従を強いる終わりなき行為であり、これが本質である。【071−095】

第3章 ドメスティック・バイオレンスを生み出し、支え、助長・強化する構造

1.女性の選択肢のなさ
 男女がカップルをつくるとき、そのありさまは百人百様であるが、日本の男女がつくるカップルは一般に、「女はこう、男はこう」と、男女に異なる。しかも不平等に異なる行動様式や態度を求める社会的な規範に強く影響される。男性には、公の場で、政治や、賃金を支払われる労働の担い手になることが期待される。一方女性は家庭など私的な生活の場で賃金を支払われない労働(無償労働)を担うことと、公の場では、支払われる労働のうち補助的な部分の担い手になることが期待されてきた。また女性は一般に「母性本能」があると考えられていて、子供を産み、育てることは、すべて女の責任・領域であると考えられがちである。世間では「女は母親になって一人前」、「母親でなければ女ではない」というようなこともいわれる。このような、性別による役割を決めてしまう規範がドメスティック・バイオレンスを生み出し、支え、助長・強化している構造の一つと考えられる。【098−104】

2.経済的自立の困難
 女性が職を求めようとする際、性差別だけでなく年齢差別の壁も厚い。また男女の賃金格差も大きく、パートタイマーを含めた女性の平均賃金は男性のおよそ半分であり、パートタイマーの平均賃金は女性正社員の7割に満たない。
 税金の面でも事実上、税制は世帯単位主義であり、いわゆる「103万円の壁」により妻が積極的に労働に出ることを妨げる。また離婚後母子家庭となる場合でも、夫から養育費をもらえない場合も多々あるし、児童扶養手当も厳格な受給要件がつけられ、受けられない場合もある。【104−112】

3.「結婚」制度はドメスティック・バイオレンスの土壌
 結婚することにより女性の生活保障の主体は社会になく、女性がたまたま結婚した1人の男性にある。結婚することにより女性は家事・育児・介護を押し付けられ、夫から養ってもらっているという意識を植え付けられ、性の関係においても夫主体の性生活が事実上容認されることとなる。また、暴力を受けることとなっても離婚するためには様様な障害があり、我慢をせざるを得ない状況が多々ある。結婚制度は女性が暴力を受けることと引換えに「世間の荒波」から女性が守られる不思議なしくみである。【113−138】

第4章

1. DV法成立の意義
 2001年4月6日、DV法が国会で成立。正式名称は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」。遅ればせながら日本でもドメスティック・バイオレンス防止とその被害者保護を目的とした法律がようやく制定された。DV法成立の意義は以下の5点
@ 今まで「夫婦げんか」や「男女間のもつれ」から生じる暴力は夫婦や恋人という私的関係に付随する「自然」な行為とされてきたが、DV法では「暴力」として扱われる点。
A DVは「暴力」として扱われ「犯罪となる行為」であると明記された。しかし明確に「犯罪行為」とはされていない。「犯罪」とまではいかないという考えがある。
B DV法の制定を「女性に対する暴力」撤廃を目指す国際社会の取組みに沿うものと位置付けた。
C DV対応のための法的しくみが整備された。これによりDVの対応を売春防止法の拡大解釈で行ってきた婦人相談所や婦人相談員に法的根拠が与えられる。
D 被害者の安全確保のために保護命令精度が導入された。命令違反には刑事罰を科す。
しかし、この法律は、ドメスティック・バイオレンスをなくし、被害を受けた女性の安全を守り、援助するという観点からは、欠陥が多い。【140−147】

2.対象となる暴力
 DV法が適用される対象となる暴力は、暴行、生涯など、刑法上の犯罪に当たる行為。刑事法違反の「違法」な身体への攻撃であって、生命・身体に危害が生じたことを必要とする。【147−150】

3.予想される問題
@ 配偶者暴力相談センター(既存各種施設のついで事業の懸念、専門化の有無)
A 一時保護(DV法には一時保護とはなにかを規定していないため売春防止法の一時保護が踏襲されるおそれあり)
B 通報制度(医師をはじめとする医療期間関係者の不充分なDV知識のために起こる機械的な対応
が懸念される)
C 情報提供(中身のともなった情報提供が出来るか)
D 警察官による被害の防止(DV被害を見定める目が警官にあるか、また警官の教育)
E 保護命令の申立手続き(緊急を要する場合、被害を受けた女性をどこまで信用するか)
F 退去命令(1回しか申し立てることができない点、被害にあった女性が逃げるべきという視点)
G 保護命令の取り消し(相手方の脅迫による取り消しの可能性が起きてしまう)
H 職務関係者の教育・研修など(研修の計画などに国、地方公共団体のどの部門も責任を持ってい
ない)
I 財政にかかわる問題(常に財政の危機にありながらの運営)
【151−180】

第5章 暴力のない安全な生活へ

1. 安全に暮らす権利
 自分の生命や身体を誰からも侵害されることなく生活する権利――安全に暮らす権利は、基本的な人権である。女性が暴力の被害を受けたとき、夫や恋人と別れることや「家を出る」ことを決めかねる場合は少なくない。しかし、女性が「家を出る」ことだけが、暴力をやめさせる唯一の方法ではないし、暴力をやめるべきなのは、夫・恋人自身であり、夫や恋人の暴力をやめさせ女性と子供の安全を守るのは、法や、警察・行政の責任である。暴力を受けている女性には「そこにいる権利」があるはず。【188−189】

2. 暴力被害を避けるためのさまざまな制度
 暴力被害を避けるために用意されている制度を活用することが被害を最小に食止める。
相談所としては、配偶者暴力相談支援センター、婦人相談員、婦人相談所、婦人保護施設、公立の女性センターがある。法的には保護命令を活用、暴力がエスカレートした場合は警察に相談する(DV法によって積極的取組みを行う)あるいは公的シェルターや民間シェルターを一時的に利用するなどの対応をとるのが望ましい。【189−257】

3. 活用可能性大の保護命令とは?しかし問題点あり
 接近禁止命令と退去命令の2種類。接近禁止命令は被害者の住居その他の場所で、被害者の身辺につきまとうこと及びはいかいすることを禁止する。退去命令は一回のみの申立可能で、2週間の間だけ加害者を家から退去させることが出来る。しかし保護命令には問題点もあり、それは子供の安全が守れない点や、対象となる暴力が身体的暴力のみである点。【193−194】

4.保護命令の対象とならない場合
 前夫や恋人など。このような相手からの嫌がらせにはストーカー規正法を検討。【197】
5.シェルター等の保護施設から出た場合暴力がエスカレートし、シェルター生活を送り、その後職を見つける必要性が生じた場合は、ハローワーク(公共職業安定所)などでさがすことができる。また生活保護をうけることも考える。離婚が成立していなくても、夫と生計が別であれば、母子だけで生活保護を受けることは可能。【209−214】

第6章 私たちの求める総合的ビジョン

1. ドメスティック・バイオレンスの基礎にある構造を崩す
 女性が経済的に自立することを支える社会が確立されれば、不本意に暴力に耐えることと引き替えに男性の扶養に依存する必要がなくなる。男性も「養っている」ということをふりかざして女性を支配できなくなる。なによりも、彼等が女性を所有し、支配していると考える基礎が失われる。女性支配が不可能になることで、男女の力関係を平等なものに組み替えることができる。そのような社会にするために必要なことは、
@ 労働権の確立
A 性別役割強制の解体
B 結婚万能思想と結婚依拠した諸制度との決別 の3つ
これらを実行するためには暴力を生み出す根源にある社会の構造を変革する具体的な方法を示した法律(例:性差別根絶法)が必要。

参考文献・あとがき
参考文献として
* 女性に対する暴力の徹底に関する宣言
* 総理府「男女間における暴力に関する調査」
* 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律
* 配偶者暴力に関する保護命令手続き鉄則
* 保護命令決定例
* ストーカー行為等の規則等に関する法律
* 犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律
* 各種相談機関

〇コメント

 私はこの文献を読むまではドメスティック・バイオレンスというものは家庭内で夫が妻に対して行う暴力行為を指すという認識しか持っておらず、しかもそのようなDVを行う人間というのは学歴も低く、職業的にも社会的地位の低い職業に従事している人間が多いのではないかというある種偏見とも受取れる考えを持っていた。しかし本書に出てくる数々の女性達の体験談を見てみると、DVは決してある特定の共通した境遇にある人間が行うのではなく、だれもがその行為を行う可能性を秘め、また誰もがその被害に遭う危険があるということを知り、暴力以外にも経済的、精神的などの暴力もDVに含まれることを考えると、このDVは非常に大きな社会問題であるという認識に至った。
 本書の中でも述べられているが、DVの根絶を考えた場合、現在の女性を取り巻く社会の構造を変えなければ何も変わらないであろう。DV法の成立によって暴力を受けている女性の救済に目が向けられるようになったが、この法律ではDVの表面的に現れる夫(恋人)からの暴力を一時凌ぎで回避することしかできない。いやそれすら可能か疑問である。
 長い間女性は男性に支配される形で生活を送ってきた。性差別の根絶が難しいのは、それが巧妙に一見それとはわからないやり方で、社会の隅々に浸透しているからである。結婚が幸せを運ぶものであるという社会の考えや、女性には母性本能があるという考え、結婚後夫の姓を名乗ることで国家が国民の管理を容易にしている点などは、一見わかりにくいが女性を夫に扶養されるべき存在であり、女性が一人前の労働者として生きていくことを容認しないということと同じである。
 本書の編集者達は皆女性であり、女性であるがゆえにわかる社会の不条理さを的確に指摘している。とくに数多くの女性へのアンケートによる実態調査は調査員が同じ女性であり、DV根絶のための熱意をもった方達であるので、今までDVの被害を受けていても相談することをしなっかた人も事実を伝えたであろう。従ってDV被害の報告データも精度は高いにちがいない。


〇関連ホームページ紹介

http://www.tfnetjapan.org/
 DVに関する総合情報を提供。相談機関、カウンセリング、公的機関、サポート団体、ワークショップ情報、DV加害者のためのページなどにここからリンク可能。


……以上……


REV: 20170426
性暴力/DV:ドメスティック・バイオレンス(domestic violence)  ◇フェミニズム (feminism)/家族/性…  ◇BOOK  ◇2002年度講義関連 
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