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『日本型企業社会と女性』

基礎経済科学研究所 編 1995年9月30日 青木書店
執筆者:中川スミ(序章執筆)、熊沢誠(第1章執筆)、久米弘子(第2章執筆)、
下山房雄(第3章執筆)、黒田兼一(第4章執筆)、大沢真理(第5章執筆)
木下武男(第6章執筆)、北川清子(第7章執筆)、越堂静子(第8章執筆)


この本の紹介の作成:MM(立命館大学政策科学部3回生)
掲載:20020724


序章 日本型企業社会における女性の労働と家族
 はじめに 
 1 日本型企業社会における女性労働と家族をめぐる研究状況
 2 女性労働と家族をめぐるいくつかの論点
 おわりに
第1章 日本的経営と女性労働
 1 日本的経営の能力主義
 2 女性労働者に期待される役割
 3 女たちの選択
第2章 均等法後の女性雇用の現状
 はじめに
 1 男女平等待遇は実現されているか
 2 コース別人事(雇用)制度の導入
 3 不安定労働者の増加と雇用形態の多様性
 4 労働条件のどう考えるのか
 おわりに
第3章 女性労働と賃金体系・価値理論
 はじめに
 1 賃金体系と女性賃金
 2 論争―女性労働の価値・女性労働力の価値
第4章 男女賃金格差と人事考課―「コンパラブル・ワース」論争に寄せて
 1 何が論争されているのか
 2 コンパラブル・ワースの推奨
 3 コンパラブル・ワースへの批判
 4 賃金格差と人事考課
 5 人事考課に対する規制と介入
第5章 企業中心社会を超える
 はじめに
 1 企業中心社会の基軸としてのジェンダー
 2 社会政策のジェンダー・バイアス
 3 変容する(?)企業中心社会
 4 変容から変革へ
第6章 企業社会を超克する戦略と女性の位置
 はじめに
 1 企業社会の構造
 2 企業社会と女性
 3 企業社会の超克をめざす変革戦略
第7章 男女雇用機会均等法の限界 
           −期待した初の調停と調停案への失望
 1 差別的な賃金制度
 2 既婚女性に対する差別
 3 均等法施行後初の調停委員会の調停
第8章 職場における男女平等をめざすネットワーク
 1 「商社に働く女性の会」の結成
 2 パンフレットPARTUを国連へ
 3 男女賃金格差の克服のために
 4 厳しい不況の影響
 5 社会的反響の広がり
 6 今後の運動の展望
 付記 ペイ・エクィティ・リサーチへの旅


<要約>

序章 日本型企業社会における女性の労働と家族

 日本型企業社会における女性の労働と家族の在り方を語る上でキーワードとなるものは「家族賃金」イデオロギーである。成人男性の賃金が妻子を養うに足るものでなければならないという考えが、わが国では国家の社会政策、企業の労務管理、労働組合の運動、家族構成員の行動の中に根強く作用しており、これが強固な性別役割分担を支え、かくて職場においても男女平等を妨げる障害となっているからである。また、現代日本社会を特徴づけるとき、ただ単に企業中心社会であるだけではなく、「家父長制」を基礎とする企業中心社会であることも強調される。この「家父長制」とは女が「内助・補助・底辺」であり、男が「主人・基幹・トップ」であるというようにジェンダー関係を示している。(P13〜40)

第1章 日本的経営と女性労働

  1 日本的経営の能力主義
  日本では企業で働くことを「就職」というより「就社」というべき。男性たちがキャリア展開を企業で目指すには時間的にも仕事の内容に関しても柔軟性が求められる。機能的にフレキシビリティを発揮させることで効率よく回転する日本の企業社会は、広範な単純労働、会社人間にはできない家庭や地域での営みの担い手として女性を動員することによって支えられている。(P46〜56)
 2 女性労働者に期待される役割
  女性たちは雇用機会均等法施行以前、単純労働、短勤続、低賃金という「三位一体」構造の中に置かれていた。均等法施行後の職場は、生産点の性分業、職業的な性別分離については大きな変化はなく現在に至っている。また非常に広範に雇用形態の多様化が進んでおり、会社や大組織の労働力の構成は、一定の正社員が、横からは下請・関連企業の労働者や派遣労働者、下からはパートタイマー、アルバイトといった非正社員に取り囲まれる形になった。女性労働者は経過的に単純労働を担い、終身雇用の外にあり、家事もまた全面的に担っているのである。(P56〜69) 
 3 女たちの選択
  日本的能力主義とは全般的に会社向きの生活態度を重視するものである。女性は男性と以上に、家庭や地域などさまざまなsocietyに属している。一方男性は会社だけである。日本の能力主義からいうと女性は男性に劣るということになる。(P78~82)

第2章 均等法後の女性雇用の現状

 はじめに
  均等法は日本政府が国連婦人の10年の最終年世界会議(1985年)までに国連の女性差別撤廃条約を批准するためには、まず均等法を成立させなければならないとして反対運動を押し切って制定されたものである。「建前としての男女平等」についてはそれなりに定着したが、バブル経済崩壊後の長引く不況は当初心配された均等法を深刻な事態をもって証明する結果となった。一日も早い改正が必要である。(P85〜87)
 1 男女平等待遇は実施されているか
  均等法施行後の数年間は好景気と人手不足の影響もあり、女性に対する門戸は幾分開かれた。しかしバブル経済崩壊後、長引く不況下で男女差別は是正されるどころか拡大の傾向すらみられる。(P87~96)
 2 コース別人事(雇用)制度の導入
  転勤覚悟の管理職コース「総合職」と転勤の少ない「一般職」とに分け、賃金体系や昇給、昇進に差をつけるという新しい人事制度を導入した企業がある。このコース別人事制度の最大の問題点は、転勤の可否とその範囲を待遇の決定基準に使用とする点にある。転勤可の総合職と不可の一般職では賃金・昇格・昇給などの待遇が根本から異なる。家庭責任を負う多くの女性が結局一般職を選び、少数の女性が総合職に任じられて話題を呼ぶ結果となる。(P96〜97)
 3 不安定労働者の増加と雇用形態の多様化
  均等法施行後、女性が正社員として働きつづけることはかえって困難となり、パートタイマー、アルバイト、派遣労働者などの不安定労働者が増加している。また、賃金や年次有給休暇、保険など劣悪な労働条件も問題である。(P100〜106)
 4 労働条件をどう考えるのか
  女性の就労や労働条件の変化は、男性のそれらにも大きな影響を与える。労働時間の短縮が掛け声だけに終わっている今日、男性の労働強化も著しく高度経済成長を支えてきた昭和一ケタ世代を中心に在職中死亡や疾病が増えている。女性が男性並に働く労働条件とは、母性保護上の問題があるだけではなく、男性をさらに過重労働に追い立て、男女労働者双方にとって「職業生活と家庭生活の調和」を危うくすることは間違いない。(P107〜108)
 おわりに 
  均等法の改正要点としては、@「男女差別の禁止」と「男女平等取扱及び待遇」を明記する(「女性パートタイマーのみ」は認めない)。A現行では努力義務規定となっている「募集・採用・昇進・配置」を含めて全ステージで差別禁止規定にすること。B差別した使用者に対する罰則の規程Cコース別人事制度などに対応するための間接差別(表面上差別ではないが結果において差別となる)も禁止する規定を置くことD暫定的差別禁止の措置―実質的男女平等を実現するために、女性の少ない職種等について一定期間、女性を多く採用・配置する。E救済措置の実効性確保等、である。(P108〜109)

第3章 女性労働と賃金体系・価値理論

 はじめに
 1 賃金体系と女性賃金
  日本の官公・民間大企業の本雇いの賃金は、いわゆる内部市場的な賃金決定をされている。不安定労働者の賃金の大部分が、仕事別の明示的市場賃金率になっているのに比べて、勤続・経験・年齢との相関が強い。(P113~118)
 2 論争−女性労働の価値・女性労働力の価値
  現在の日本で、「同一価値労働同一賃金」原則を、労働運動あるいは女権運動の基軸におくことに激しい賛否の論争がある。同一労働ということは、男女労働力の使用価値、あるいはその機能たる有能性が同一であるということである。つまり、同じ量の価値を創造する力を持っているということである。その価値に差別があるということは、女性がより強く搾取されているということであり、同一賃金要求は、つまりには搾取の平等を、間接にはそれを通じて労働者階級全体の搾取の軽減を要求する資本主義で実現可能な要求なのである。(P118~123)

第4章 男女賃金格差と人事考課−「コンパラブル・ワース」論争に寄せて

 1 何が論争されているのか
 2 コンパラブル・ワースの推奨
  コンパラブル・ワースとは、「同一価値労働同一賃金」と日本語訳がつけられているアメリカでの呼称である。世界のフェミニズム運動はたんなる「機会の平等」から「結果の平等」へ力点を移行させている。コンパブル・ワースの原則思想は「結果の平等」を以下にして実現するかという運動から生まれた。(P136〜141)
 3 コンパラブル・ワースへの批判
 4 賃金体系と人事考課
 5 人事考課に対する規制と介入
  人事考課への規制・介入の第一は考課項目への規制である。第二は考課の客観性、公平性を高めるための規制であり、第三は救済機関の設置である。(P153~155)

第5章 企業中心社会を考える

 はじめに
 1 企業中心社会の基軸としてのジェンダー
  会社主義としての日本の現代社会科学的分析は、女性労働者の存在を無視し、そのことによって、企業内の分業のみならず、産業別、職業別、下請け・系列などの社会的分業が、すぐれて性別分業でもあること−ジェンダーを視野からはずしている。(P159~163)
 2 社会政策のジェンダー・バイアス
  戦後日本の社会保障・福祉システムには、「家族だのみ」、「大企業本位」、「男性本位」というバイアスがある。そのような社会政策システムが、戦後20年ほどの間に構築されたことは、ジェンダーを基軸とする企業中心社会形成の一環だった。また、1980年代に社会政策の全分野に渡って行われた「改革」は「家族だのみ」、「大企業本位」、「男性本位」を維持・強化することによって、企業中心社会の形成を確立した。(P166〜167)
 3 変容する(?)企業中心社会
  21世紀福祉ビジョンの路線でいく限り、男性中心の世帯単位や「大企業本位」の仕組みはそのままとなる。(P169〜177)
 4 変容から改革へ
  理想的な新・社会政策が導入されても、働く人々自身が受身のままでは守られるわけがない。企業中心社会を超えて21世紀を切り開く主人公は、ジェンダーを問いなおし、住民として職業人として、連帯しつつ自己主張する個人個人に他ならない。(P178~185)

第6章 企業社会を超克する戦略と女性の位置

 はじめに
 1 企業社会の構造
  民間大企業における企業社会は三つの柱からとらえることができる。一つは「企業依存の生活構造」と「競争構造」である。年功序列と終身雇用制度、企業福祉などがその要素であるが、大企業になればなるほど生活の前面にわたって企業に依存できる構造になっている。第二の柱としては日本的な生産システムがある。民間大企業の労働者は自分の生活のためだけではなく、労働のあり方、つまり仕事に自己を投入する仕組みによって企業に統合されている。第三の柱として抑圧の装置がある。生産性と高い品質を確保しうる日本の職場は、集団主義的で均質な集団によって編成されている。インフォーマルな組織、すなわち企業忠誠心の濃厚な会社側の活動家集団をつくり、それと労働組合組織を一体のものとし、その結果労働組合を抑圧の装置に転化させた。(P189~196)
 2 企業社会と女性
  「企業依存の生活構造」は企業が男子世帯主を通じて妻子をも扶養している構造になっている。だから男子は妻子を養っているという過度の「男らしさ」を身に付ける。日本では生活向上のチャンネルを通じて、家族そろっての「幸せの階段」を上ることができるのである。企業と家族とは「企業依存の生活構造」によって強く結ばれ、その結合は女性をいつまでも被扶養の位置におとしめることを意味する。(P198~199)
 3 企業社会の超克をめざす変革戦略
   従来型の福祉国家モデルを見直す必要がある。国家による所得再配分政策や社会政策によってフラットな状態の賃金カーブを補完しており、これらは年齢・勤続・企業規模にかかわらず平等に行き渡っている。家族福祉は「見えざる福祉国家」と呼ばれているが、日本の場合は年功賃金と企業福祉も「見えざる福祉国家」と呼ぶのにふさわしい。この「見えざる福祉国家」を廃棄して福祉国家を実現するとともに、その福祉国家をジェンダー視点で再編成する新しい福祉国家を目指す流れの中に、日本の女性の未来があるように思われる。(P206〜217)

第7章 男女雇用機会均等法の限界―期待した初の調停案への失望

 1 差別的な賃金制度
 2 既婚女性に対する差別
 3 均等法施行後初の調停委員会の調停

第8章 職場における男女平等をめざすネットワーク

 1 「商社に働く女性の会」の結成
 2 パンフレットPARTUを国連へ
 3 男女賃金格差の克服のために 
  今つきあたっている問題は、均等法をこのまま放っておいたら、男女格差はどんどん広がる。コンパラブル・ワース(同一価値労働同一賃金)だが、日本で取り入れるためには均等法が募集採用のときから罰則つきで、きちんと整備されることが必要。(P252~254)
 4 厳しい不況の影響
  最近は不況の影響で、中間管理職の人が最も影響を受けている。商社マンは一般的にプライドが高く、閑職に追いやられるとプライドが許さないという人がほとんどである。女性たちは嫌がらせなどで挫折を経験しているが、男性は40代で方をたたかれるのがはじめての挫折といってもよい。その「挫折」のところで女性と手を組み、行動につなげていきたいがぽっきりやめてしまうのでそれも無理。(P255)
 5 社会的反響の広がり
  今後女性の会の運動としては、@婦人少年室に訴えることA労働組合に訴えることB裁判を起こすこと、ある。@Aはすでに行っているが相手にされず、Bもかなり難しい。(P256〜257)
 6 今後の運動の展望
  均等法には「みなおし規定」があるにもかかわらず、この10年間何の改正も行われず女性たちの苦しみの根源となってきた。女性グループや、労働組合が手をつなぎ、ネットワークを広げて世界に恥ずかしくない新の男女雇用機会均等が法を作ることが求められている。(P258〜260)


BUT,均等法はその後改正され平成11年4月1から改正された均等法が施行されている。
改正内容の一例
(目的)
第1条 この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。
基本的理念)
第2条 この法律においては、女性労働者が性別により差別されることなく、かつ、母性を尊重されつつ充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とする。
2 事業主並びに国及び地方公共団体は、前項に規定する基本的理念に従って、女性労働
者の職業生活の充実が図られるように努めなければならない。

・ 募集・採用、配置・昇・ 進について女性に対する差別を禁止すること
・ 紛争当事者の一方からの申請により調停が出来るようにすること
・ 勧告に従わない法違反企業に対する企業名・ 公表制度の創設
などの改正を行うことにより、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を確固たるものにすることをめざすとともに、女性労働者に対する特別就業援助等の規定を削除することとしている。
(募集及び採用)
第5条 事業主は、労働者の募集及び採用について、女性に対して男性と均等な機会を与えなければならない。

 これにより、大卒技術系において男子のみ募集することは平成11年4月の改正案施行後は、改正案第5条に違反することになり、形式上男女募集し、採用時に「女性は採用しない」と断ることも均等法に違反する。
 また男女ともに募集・採用するが、男性100名、女性50名といったふうに男女別々の採用枠を設けることも均等法に違反する。

http://www.campus.ne.jp/~labor/houki/h11-4intouhou.htmlより

また、タイムリーな例として2002年7月19日(金)、日本経済新聞夕刊に
「正社員と同労働条件ならパートも同じ賃金体系」という記事を発見。
 
<要約>
パート労働のあり方を検討する厚生労働省の「パートタイム労働研究会」(座長・佐藤博樹東大教授)は19日、正社員との格差是正に向けたガイドライン案の報告書をまとめた。仕事の内容や責任などの労働条件が同じであれば、処遇に格差をつける合理的な理由がないため、正社員と同じ賃金体系にすることを提示。
指針案が示した6つのルール
・ パート社員の処遇で、正社員との違いや理由について十分な説明を行う
・ 処遇決定には、パートの意思が反映されるよう工夫
・ 仕事内容や役割、能力の変化に応じた処遇向上の仕組み作り
・ 能力や意欲に応じ、正社員への転換を制度化
・ 仕事、責任が同・ じで異動や配転といったキャリア管理面でも違いが明らかでない場合は.処遇決定方式を社員と同・ 一に
・ キャリア管理面で社員との間に差があるなど、合理的理由があれば処遇に差を認めるが、その際も水準の均衡に配慮

      以上日本経済新聞2002年7月19日(金)夕刊より



……以上。コメントは作成者の希望により略、以下はHP制作者による……

REV: 20170426
女性の労働・家事労働・性別分業  ◇フェミニズム (feminism)/家族/性…  ◇BOOK  ◇2002年度講義関連
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