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少子高齢社会と子どもたち
―児童・生徒の高齢化問題に関する意識調査を中心に―

編者:嵯峨座晴男(第1・4・5・8・14章)
著者:瀬沼克彰(第2・9・10・12章)
堀 勝洋(第3・13章)
田中雅文(第6・7章)
山下敏夫(第11章)
2001年5月10日
中央法規出版,221p.,3000

last update: 20170426

この本の紹介の作成:内尾 実枝子
掲載:20020801

序章  「少子高齢化社会と子どもたち」の概要

第1部 21世紀の子どもたち
第1章 少子高齢化の人口動態
第2章 子どもたちを取りまく状況
第3章 世代間関係の変化
第4章 高等化教育の必要性

第2部 児童・生徒の意識の比較分析
第5章 調査の概要
第6章 高齢社会に対する認識
第7章 家族における世代間関係
第8章 若者と高齢者との交流
第9章 ボランティア活動
第10章 高齢化問題に関する意識

第3部 高齢化時代を生きる若者―将来展望―
第11章 学校における高齢化教育
第12章 生涯学習社会の課題
第13章 世代対立を超えて
第14章 21世紀の生き方―問われる若者の選択―
付録 「児童・生徒の高齢化問題に関する意識調査」調査票および単純集計結果


第1部 21世紀の子どもたち

第1章 少子高齢化の人口動態

第1節 21世紀の日本人口
 日本の人口は、1999年10月1日現在1億2669万人で、対前年増加率は0.16%と低い。2000年現在では、人口は1億2689万人と推測されており、年少人口の割合は14.7%、老年人口の割合は17.2%となっている。現在の日本人口では、老年人口のほうが年少人口よりも多くなっているのが特徴である。
 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によれば、出生率は徐々に低下を示し、死亡数は増加することになる。その結果、2007年を境に日本人口は減少に転じることになる。このことが21世紀の日本の社会に大きな影響を与えることは確実である。(p3,4)

第2節 少子高齢化と家族の変化
1 出生率と死亡率の低下
 少子高齢化という言葉自体はは、最近になって使われだしたものだが、少子化も高齢化も以前から進行してきた人口減少である。特に、少子化は戦後のベビーブームが終息してから一貫して持続してきた。少子化は、21世紀に入っても当分の間は続くことが間違いないといえる。
 一方、高齢化の一つの要因である死亡率は、その低下もさらに進み、平均寿命は上昇すると見込まれている。これらの平均寿命の伸びは、主に高年齢層における死亡率の低下によるものである。(p5)

2 人口高齢化の進展と高齢化問題
 21世紀に入っても少子高齢化が進むために、日本人口全体の高齢化がさらに進むことになる。高齢化問題は、大きく分けると次の四つの変化を通じて生じると考えることができる。@人口構造の変化、A地位・役割構造の変化、B経済構造の変化、C生活構造の変化である。(p7)

3 家族の変化
 家族の変化の第一は、家族規模の縮小である。第二は、家族構成の変化である。全体的にいえば、単独世帯と夫婦のみの世帯の割合が増加しているのが特徴である。第三は、移住形態の変化である。(p8)

第3節 自動・生徒のいる世帯の動向
 現在、日本では18歳未満の子供のいる世帯は3割であり、1世帯平均1.77人ということになる。児童のいない世帯を含めた全世帯の平均児童数は0.53人である(1998年)。児童数が多くなるほど生活を苦しく感じる割合は高くなり、子供の数が家計と密接に関連している。共働きや母のみの就業により母の就業はかなり一般化している。(p9−12)



第2章 子どもたちを取りまく状況
第1節 豊かな社会の申し子たち
 子供たちの取りまく状況の特徴は、経済的豊かさという点にある。
 親の世代は、自分達の豊かな生活を犠牲にしても、なぜここまで子供に高額な商品を買ってしまうのか、まことに不思議である。なぜ親は、子供に学校教育および学校外のことにまで過大な教育費をかけるのか、外国人には苦しむ点である。
 子供たちに学習塾、家庭教師、稽古塾と教育費をかけ、子どもたちをスポイルすることが、子どもを間違った方向に歩ませているのでは。(P14−17)

第2節 子どもたちの日常生活
 小中学生の生活時間の特徴は第一に学業時間が長いということである。第二は、マスメディアの接触は、時間が厳しい割には長い。レジャー、休息は短い。第三は、家事、社会参加、会話・交際の行為者が低いということ。(p18)

第3節 意外に多い悩みや心配事
 物質的、経済的豊かさが保障されれば、精神的な豊かさに結びつくかといえば、そんなに単純に行かないのだが、事態は、青少年問題の多発という悪い方向に向かっている。現代に生きる児童・生徒は、悩みや心配事をたくさん持っている。かつての時代には親や教師、年長の仲間、友達が指導してくれたり、相談相手になってくれて解決することができた。しかし、現代においては、親や教師の信頼不足やコミュニケーションがうまくいかずに、年長との付き合いも弱まっている。(p19−23)
 

第3章 世代間関係の変化
第1節 子どもと高齢者の関係
1 しきたり等の伝承
 産業化・都市化・雇用化労働者するに連れて、核家族世帯が増加し、三世代世帯が減少してきたため、礼儀作法、習慣、しきたり、規則等社会人として守るべき社会規範を教えるような祖父母の役割も縮小していった。(p24)

2 祖父母との接触
 祖父母との接触の機会が減ることは、過去からわが国において引き継がれてきた多くのものが子どもの世代に受け継がれにくくなり、また高齢世代との交流が薄くなることを意味している。(p26)

第2節 子どもによる高齢者の扶養・介護
1 高齢者の扶養 
 三世代同居世帯では高齢者は子守りなどの役割も会ったが、同居率が減り、また保育所が整備されるにつれて、それらの役割をも喪失し、老後に新たな生きがいを見出さなければならなくなった。
 かつては高齢者の多くは成人した子どもにより家庭内で扶養されていた。
しかし、現在では公的年金制度の充実によって、生活費を自ら賄うことができるようになっただけでなく、孫への小遣いにも不自由しなくなった。(p26−27)

2 高齢者の介護
介護保険は、供給者本意から利用者本意へ、介護面での福祉と医療の統合、民間事業者の参入等さまざまなねらいを持つとともに、従来の家族介護に偏重した仕組みから社会的介護の充実を目指すものである。従来家族だけに課されてきた重い介護責任を介護保険が引き受けることにより、家族による介護放棄などの高齢者虐待をなくし、施設介護偏重から在宅介護に誘導することによって、高齢者が住み慣れた家で家族とともに老後を過ごせるようにすることもねらいとしている。(p30)


第4章 高等化教育の必要性
第1節 高齢化教育とは
 高齢化について将来を担う若い世代に理解してもらうことが大切である。ここに高齢化教育の必要性があるのであり、高齢化教育はいわば時代の要請などである。高齢化教育における教育内容は、単に老人福祉といった狭い範囲の問題だけでなく、高齢者の生活全体、そして高齢社会をもたらした原因とその帰結、高齢化(者)対策の現状と課題など、いわゆる高齢化問題をすべてカバーするものでなければならない。(p32−33)

第2節 生涯学習社会の高齢化教育
 人生は高齢期にいたる連続した発達プロセスであるとする生涯発達の考え方が中心になる。このように考えるなら、児童生徒を対象とした学校教育における高齢化教育の意義もおのずとあきらかになるであろう。(p35)

第3節 学校における高齢化教育
 交流の中で高齢者は若者に感謝し、若者は高齢者を理解するようになることを示している。そこでは高齢者は他者とのかかわりによって生きる喜びを実感でき、一方、若者は高齢者とのかかわりによって自分の将来の活き方について学習することになる。


第2部 児童・生徒の意識の比較分析

第5章 調査の概要
第1節 調査の目的と方法
1 調査目的
今日の若者、特に小・中・高校生は、生活の中で高齢者とどの程度のかかわりがあるのだろうか。また、若者は高齢者や高齢化問題のことをどう考えているのだろうか。この調査では、これらの点を明らかにすることを目的としている。(p41)

2 調査対象者および回収率
調査の対象者は、小学校5年生97人、中学校2年生963人、高等学校2年生1045人、合計2984人である。(p41)


第6章 高齢社会に対する認識

第1節 高齢者って何歳から?
1 肯定的な高齢者イメージ
平均寿命の伸びともない、心身ともに元気な高齢者が増えている。高齢者自身が、自分を高齢者とは考えない傾向すらある。特に前期高齢期といわれる75歳未満の高齢者の場合、就業活動、ボランティア活動、趣味・スポーツ・学習活動など、さまざまな分野で活躍する姿が目立つ。こうした高齢者の実態を、子どもたちは肯定的にとらえているようである。現代の子どもの多くは、高齢者をただ保護・介護の対象と見ているのではなく、ひとりの
人間―人生の大先輩―として、一種の尊敬の念をも抱いていると見てよいだろう。

2 約半数の子が「3 高齢者は60歳くらいから」4 
 
5 祖父母との同6 居・別居による違い
 第一に、年齢から見た高齢者のイメージは、祖父母と同居しているか別居しているか、ということによって異なる。別居している子に比べて同居している子のほうが、高齢者に仲間入りする年齢を低く考える傾向が強いのである。第二に、そのような傾向は子どもの成長段階によって若干ながら違いが見られる。つまり、何歳から高齢者と見るかという認識は、集中学生では歩いて15分以内での別居であれば同居している場合とほぼ同様であるのに対して、高校生では15分以内の別居であっても遠くで別居している場合とほぼ同様なのである。       (p52)

第2節 高齢者のイメージ
1 経済的な発展は難しい?
中学・高校生の意識を一言で表現すれば、健康を維持するための社会的なサービスが整備される一方で、社会全体の経済的な発展については難しい、と認識しているといえるだろう。雇用・就労の場の確保に対して肯定的な回答が少ないことを合わせて考えると、高齢者の増加が、彼、彼女らの健康維持や生活に対する支援サービスの必要性を増大させる一方で、経済的な発展に対しては寄与しない、というとらえ方が主流であるとみてよい。(p54)

2 求められる明るいイメージ
祖父母と死別した中学・高校生の場合、高齢社会に対するイメージが幾分か悪くなっているように感じられる。祖父母が死亡していうる場合には高齢社会に対して具体的なイメージが持ちにくいために、このような結果になるのだろうか。あるいは、祖父母が健在である場合には、明るい将来を求めるがゆえに希望的な観測をもちやすいのだろうか。いずれにしても、祖父母がいない子どもたちにも、いずれは祖父母や自分自身の高齢期がやってくる。祖父母の有無に関わらず、すべての子ども達にとって明るい高齢社会がイメージできるような働きかけが重要と思われる。(p55−56)

3 地域の影響
 町村や小都市に比べて規模の大きい都市では、明るい高齢社会のイメージを抱きにくくなっていうるようである。来るべき高齢社会の困難に関する情報が、大都市ほど流通しているということなのだろうか。それとも、実際に大都市の暮らしにくい生活環境の中にあっては、中学・高校生といえども将来の社会に明るさを見い出せないのだろうか。(p57)


第3節高齢社会についての情報源

1 テレビ・ラジオが中心の情報入手
学校教育はもとより、マスメディアが若者の意識に与える影響力の大きさを改めに感じざるを得ない。社会の将来を担う若者が高齢社会に対して明るく前向きなイメージを抱けるよう、われわれ国民全体でマスメディアを上手に活用していく必要があるのだろう。(p60)

2 性別と地域の影響
高齢謝意に関する知識は、男子に比べて女子の方が積極的に入手しているようである。
市町村の規模が大きくなるほど利用する情報源が多様になる。(p60−61)


第7章 家族における世代間関係
第1節 祖父母との接触頻度
1 3人にひとりが「毎日会う」
 子どもの年齢が高くなるとともに、祖父母との接触頻度は低下するとみてよい。(p63)

1 祖父母との接触内容
子供たちは祖父母と会うときは、何をして過ごすのだろうか。家での夕食、テレビ、挨拶、学校等の話(対話)の実施率が高くなっている。ただし、この調査結果は同居する祖父母との交流を尋ねたものである。(p63)

3 祖父母との同居・別居による違い
 祖父母との接触頻度は、当然のことながら同居しているかどうかによって影響を受けるはずである。(p63)

4 接触が少ない大都市の子どもたち
 「ほとんど毎日」、祖父母と会うという割合を見ると、町村、小都市、中都市、大都市と市町村規模の小さい順にきれいに並んでいる。逆に「年に数回」と「ほとんど会わない」の合計では、大都市が過半数に迫るのに対し、町村では23.7%にとどまる。やはり、大都市では核家族の影響が大きいと見てよいだろう。(p66)

第2節 祖父母との同居意向
1 決して弱くない同居意向
 子供たちは自分の祖父母と一緒に暮らしたいと考えているのだろうか。「どちらでもよい」という回答が最も多く45.9%を占める。しかし、「暮らしたい」という回答も32.5%あり、「暮らしたくない」(5.9%)と「あまり暮らしたくない」(11.2%)の合計を上回る。祖父母との同居意向は、決して弱くない。(p67)

2 祖父母との接触機会による違い
 同居意向は、実際に今も同居しているかどうかによって差が出る。祖父母と頻繁に出会う子は同居に前向きの姿勢をもつようになり、逆にあまり会わない子はますます祖父母との心のつながりが薄れていく子供たちの意識の中に、このような傾向が認められるのである。子供たちが祖父母と接触する機会を、意識的に設けていくことが重要なようである。
(p68)



第3節 祖父母に対する介護の方法
1 在宅介護を理想とする子供たち 
 現実には家族の(特に大人の)就業や健康の状態によって外部の手を借りざるを得ないことが十分に考えられるとはいえ、少なくとも理想としては家族が世話することが基本であると、子供たちは認識しているようである。(p70)

2 高齢者自身も家族中心の介護を希望
 
3 祖父母との同居・別居によらず在宅看護を支持
 祖父母との関係から見た現在の住居形態によらず、多くの子供たちは在宅介護を好ましいと考えていることが分かる。しかも、福祉サービスを積極的に利用するよりは、家族が中心となって介護すべきだと考える子どもの割合が高くなっている。(p72)

4 祖父母と同居したい子は「家族が世話」を望む
 祖父母との強い同居意向をもっていることが、家族中心の在宅介護に対する前向きの態度を形成すると考えてよい。(p74)


第8章 若者と高齢者との交流
第1節 高齢者との交流経験と意識の変化
1 交流経験
 小・中・高校生ともに交流経験のないものの割合は20%以下と少なく、80%以上のものが何らかの経験がある。経験したことのある項目のうち、最も高いのは「電車やバスで、お年寄りに席を譲ったり、街でお年よりの手を引いたり、荷物を持ってあげたことである」
(p77)

2 意識の変化
 児童、生徒にあっては、高齢者との交流経験はどちらかといえば高齢者を肯定的に受けとめる意識を強める方向に作用することを意味しているといえよう。(p79)

第2節 交流への参加意識と交流の内容
1 交流への参加意識
 祖父母との同居意向と交流参加は密接に関連しているのである。
 年齢別にみると参加意向は年齢の上昇につれて低下していて、その部分で女性が多いために、全体として女性の参加意向が男性のそれよりも低くなっているのである。(p81−82)

2 交流の内容
 高齢者との交流に参加したいと答えた中学生、高校生が参加したい交流内容は、一番多い回答は「お年寄りと一緒に楽しめる活動をする」、ついで「地域の伝統・文化をお年寄りに教えてもらう」、「お年よりの特技を習う」、「自分のできることをお年寄りに教える」の順になっている。(p82−83) 

3 交流の阻害要因
 高齢者との交流について参加したくない理由は、中学生の場合は世代の開きに基づく情緒的理由が中心であるのに対し、高校生の場合には「忙しく、暇がない」とか「気を使うのはわずらわしい」といった、自分の生活上の都合や主体的判断による理由が強調されるように思われる。
 高齢者が若い世代との交流に、参加したくない理由は、「若い世代とは話が合わない」と答えた人が最も多かった。この両者の数字上の不思議な一致は、若い世代と高齢者の世代とはどうしようもないほどに「話が合わない」、「ペースが合わない」現実があることを物語るものなのだろうか。それとも、それは両者の思い込みや誤解にもとづくものなのだろうか。世代間交流を図るにあたって解決すべき課題がここにあるように思う。(p87−89)

第3節 交流を促進するための条件
 児童・生徒と高齢者との交流について、できる限り両者の側からその実態と意識についてみてきた。その結果、若い世代では交流経験も多く、交流に関する認識や意識が一般化してきているし、高齢者の側の経験や意識が意外に若者と一致する面のあることがわかった。とはいえ、両者にはそれぞれの生活上の異なった条件もあり、意識面でのギャップが存在することも事実である。それらについて、どの面で意識の歩みよりがはかれるのか、そしてどの世にして両者の独自の事情について相互理解をはかっていくのかが、世代間交流についての今後の大きな課題であるといえそうである。(p92−93)


第9章 ボランティア活動
第1節 ボランティア活動に対する関心
 ボランティア活動に関する関心は、近年、あらゆる世代を通じて高まってきている。
(p92)

第2節 ボランティア活動の内容
 「生涯学習とボランティアに関する世論調査」をみると、「自然・環境保護」(35.6%)、「募金活動・福祉」(27.7%)、「青少年健全育成」、(27.6%)、「交通安全」(20.4%)の6分野が20%以上となっている。15〜19歳では20%以上のものは、上位4分野までであるが、60歳以上では、上位5分野である。(p93)

第3節 ボランティア活動の阻害要因
 ボランティア活動の阻害要因は「学校や仕事の時間」と「情報不足」。「技術や知識を持っていない」については、高校生が問題点として強く感じている。(p103)

第4節 今後の参加意向
 中学・高校生のボランティア活動の意向は、全体としてかなり高くなってきていることがわかる。(p110)

第5節 社会的評価
 放火について、海外の青少年はどう考えているのか興味があった「ボランティア活動の報酬を受ける」ことについて、日本だけが50%台ときわめて高く、ほかの国々はすべて10%台と低い。それは、日本人は無償の行為が好きではないからだと考える。「国や自治体の表彰」は、日本とフランスが60%前後で、アメリカと台湾が80%台と高くなっている。「入学や就職の際の評価」は、フランスだけが11.5%と極端に低く、日本と台湾は50%前後で、アメリカだけが68.2%と大変高くなっている。(p114)


第10章 高齢化問題に関する意識
第1節 高齢期への準備
 高齢期の心がまえという質問で、回答結果としては、「若い時の気持ちを忘れないで暮らす」が最も多く、「出切れだけ自分の考えどおりに暮らす」と続いている。「お年寄りらしくおとなしく暮らす」、「家族など周りの人に合わせて暮らす」はかなり少なくなっている。
 高齢期への具体的準備について、当然といえば当然だが、10台の準備率は39.0%と全世代の中で最も低くなっている。準備状況は年齢が上がっていくにしたがって高くなっていうる。(p115−117)

第2節 生活満足度
 高齢化問題というと、とかく暗く、寂しい、貧しいなどマイナスイメージでとらえられることが多い。しかし、実際はそういうことではなく、現時は逆に高齢期ほど生活の満足度が高く、生活は明るく、はりあいがあり、いきがいもそなわっている。
 生活全般の満足度については、1996年、1999年とも若い人に比べて60代以上の高齢者の満足度が高くなっている。
 生きがい観については、高齢者を含む全世代は「家族の健康と平和」を過半数以上支持している。しかし、10代はそうした考えをあまり持っていない。(p120−124)
第3節 扶養と介護の問題
 10代の場合貯蓄や財産をたくさん作っておこうという気持ちが強い。しかし、60代になると、貯蓄や財産は作るように努力してみたが、作れなかったという結果がでている。
 親の介護については、全体の平均は「夫婦、家族」が29.0%、「自分が介護」が15.9%でやや多く、「自分の兄弟」が9.1%、「公的施設や行政サービス」が9.1%と次いで多くなっている。(p127―130)

第4節 社会福祉などの対応
 「社会保障に要する費用負担について」も聞いている。高校生では「自己負担は現状程度で、支給内容などの見直し」を求める割合が最も多くなっている。「自己負担は増えても止むを得ない」、「税金や保険料は増えても仕方がないが、自己負担は現状程度とする」、「自己負担は増えてもいい」と続いている。男女別の違いは小さいといえる。(p131)


第3部 高齢化時代を生きる若者―将来展望―
第11章 学校における高齢化教育

第1節 子どもと高齢者とのかかわり
 わが国の社会は急激な勢いで変化している。かつてわが国が経験したことがない高齢社会と小しか時代を同時に迎えている。そのため、学校教育においても高齢者とともに豊かに生きる人間の育成が、今問われている課題である。
 また、核家族とも少子化減少の中で、子どもを物資的には豊かに育てているが、精神的な弱さが原因に思える青少年の問題行動が多く見られている。これらの原因の一つは乳児期から、家族や地域社会の中で人とのかかわりを通して子どもを育てていないことが考えられる。特に、今日、核家族のなかでも高齢者とのかかわりは加速や地域のなかでも弱くなってきている現状がある。
 高齢者と暮らしたくないという層は高齢者との交流をしたことがないという割合が高いことがわかった。当然のこととして、暮らしたいと答えた層は「老人ホームに行ったり」、「体の不自由な祖父母の世話をしたことがある」という割合が高くなっている。
 このことから、高齢者とのふれあいを深めることが、高齢者とともに行きたいという意識を育てることがわかる。そのために、学校教育において積極的に子どもと高齢者が関わる場面を作ることが必要である。(p136−137)

第2節 教育実践内容
1 ふれあい給食
2 地域のお年寄りと仲良くしたい
3 特別養護老人ホームまりも園との交流(p139−4 161)

第3節 高齢者と関わる授業の工夫と展望
1 昔遊びやふれあい給食などの授業の工夫
2 総合的な学習の時間での授業の工夫
3 高齢者施設との交流での工夫
4 21世紀における高齢者と子どものかかわり

第12章 生涯学習社会の課題
第1節 青少年と生涯学習との関連
 高齢社会を見通して、青少年は生涯学習をどのように受けとめていくことが望まれるかを考えてみたいと思う。一つ目は、小・中・高校時代を勉強の重圧に負けないで、好きな活動を一生懸命することが大切である。二つ目は、生涯学習社会で生きていくには、基礎学力を身につけておくことである。三つ目は学び方を学ぶということである。学歴社会においては、将来必要になることを予測して、事前にあれもこれもと学習を課せられる。しかし、生涯学習社会では、学習が必要になったときに、学ぶということが重視される。
 知能指数(IQ)に対して、理論指数(EQ)ということが、近年重視されてきている。日本の児童・生徒のEQは、この数字を見ると低いということになる。このことは、家庭の仕組みの弱いことと関係していると考えられる。韓国、米国の両親に比べて、日本の両親はしつけを行っていない。特に父親の低い数字に注目される。(p166−169)

第2節 「生きる力」がキーワード
 
第3節 「生きる力」の取得のために
 「青少年の生きる力をはぐくむ地域社会の環境の充実方策」について、具体的な方策は、大別して6項目が提案された。一つ目は、体験機会を広げることであり、二つ目は、地域の子供たちの遊び場を増やす、三つ目は、地域社会における子供たちの体験活動などを支援する体制を作る、四つ目は、子供たちの活動を支援するリーダーを育てる、五つ目は、子供たちを取りまく、有害環境の浄化、六つ目は、家庭教育の支援、子育てに悩む親の相談体制である。(p173)



第13章 世代対立を超えて

第1節 社会保障費用についての世代間の格差と世代間の公平

1 高齢者の生活費
 高齢者の生活も、かつては成人した子供によって家庭内で支えられてきた場合は子供またはその配偶者(嫁)によって世話されてきた。しかし、いまや高齢者の生活の大部分は公的年金によって賄われ、医療は老人医療制度が、介護は介護保険制度が、多くのサービスを提供している。(p177)

2 公的年金制度における世代間格差
 現在の公的年金制度には世代間で大きな不公平が生じているとし、それを是正するための公的年金制度の財政方式を現行の賦課方式から積立方式に変えるべきだとする主張がなされている。(p182)

3 世代間の公平の意義
 医療保険・老人医療や介護保険は、積立方式ではなく賦課方式で運営され、したがって高齢化が進めばその費用負担はあとの世代ほど高くなる。ところが、年金保険と異なって、医療保険や介護保険に関しては世代間の格差や不公平の問題はほとんど論じられていない。
(p183)

第2節 世代間格差の縮小と高齢・若年両世代の共存

1 公的年金制度における世代間格差の縮小
 現在でも高すぎる公的年金の給付水準を引き下げ、世代間扶養である賦課方式の年金部分を縮小して、若い世代の負担を軽くする。さらには、高齢化の最大の原因となっている少子化の要因を究明し、少子化に歯止めをかけることができれば、若い世代の負担の増大も避けることができる。少子化の大きな要因の一つとして晩婚化・晩産化があげられているが、晩婚化・晩産化の背景には出産・子育てにより女性が家得収入を失うことにある。
(p185)

2 医療・介護保険制度における世代間格差の縮小
 健康居幾を充実して、わが国で最も多い疾病である脳血管疾患、心疾患などの生活習慣病を予防すれば、要介護状態になることも避けることもできる。また、健康診断により疾病を早期発見して早期に治療することも、費用の増大を防ぐうえで効果がある。このようにして高齢者をより健康にすれば、若い世代が負担をする医療や介護の費用を少なくすることができる。もう一つの方法は、高齢者自身に、保険料や租税のみならず、自分がうけた医療や介護に要した費用の一部を負担してもらうことである。(p186)

3 高齢世代と若年世代の共存
 従来は若年世代が高齢世代を支えるという考えが強かったが、これからは高齢世代もともに社会を支えるという考えに立つことが重要になってくる。これからの高齢者は、世代、せい、職業等のいかんを問わず、お互いに協働して困難に立ち向かい、望ましい福祉社会を築いていくことが重要である。(p186−187)


第14章 21世紀の生き方―問われる若者の選択―

第2節 少子高齢社会への対応
 世代間の対立をいかにして回避し、世代間公正を確保するかということである。
 高齢社会への対応のためには教育、とりわけ高齢化教育が重要である。
 少子化への対応である。
経済的活動の維持についてである。
ボランティア活動をいかにして推進するかという問題をあげる。(p193−195)

第3節 新しい生き方を求めて
 20世紀における教育の最大の反省点は、教育が社会のあらゆる面で画一化を促進する機能をもったことである。
 今、若い世代に21世紀の生き方が問われているのである。21世紀の新しい生き方の第一条件は、多様な生き方が許容されることである。第二条件は、人々が自立を果たすことである。第三の生き方の条件は、支えあい、あるいは奉仕の精神である。
 21世紀は、「交流」関係的価値が重視されるように違いない。そこでは、物と物、物と人との関係よりも人と人とも関係が中心となった新しい生き方が求められることになる。この関係的価値を成り立たせる最も根本の土台は利他主義の哲学である。利他主義は、思いやりの心と言い換えてもよい。(p195−197)


コメント
 現代では、核家族化が進み高齢者と子どもの関わりは少なくなっている。本を通じて、子どもと高齢者の実態が分かったと思う。高齢者と関わりを持っている子供たちの方が高齢者を良いイメージに考え、高齢者について考えていることが分かった。このことは高齢者社会、超高齢者社会になる日本では、高齢者と子供たちの関わりが必要とされなければならないことだ。そして、生涯学習の中で高齢者教育は意義のあるものになるし、重要に感じた。高齢者と子どもが関わりのない社会だと、今後、子供たちが老後を迎えることに対して想像がつかなくなってしまう。少子高齢社会では、子どもたちも高齢者を支えていかなければならないことを、より深く理解していかなければならないと思う。日本では、ボランティア精神が海外と比べると低いように感じた。しかし、高齢社会ではボランティアという概念がより必要になってくると思う。高齢世代と若い世代が共存できる社会となる必要を強く感じた。本書から分かるように、21世紀は「交流」が大切にされる、人が重要視される時代になると思いました。




……以上。以下はHP制作者による……


REV: 20170426
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