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ジェンダー・マネジメント
――21世紀型男女共創企業に向けて――

佐野陽子・嶋根政充・志野澄人 編 2001/05/01 東洋経済新報社,358p.,3200円

last update: 20170426

この本の紹介の作成者:谷口可奈(立命館大学政策科学部3回生)
掲載:20020715

<構成>

はじめに
■ 第T部■ジェンダー企業の現在
第1章 日本のジェンダーレス企業〜リクルートではなぜ女性が輝いているのか〜
第2章 男女の就職と初期キャリアの形成
第3章 女性にとっての日本型経営〜経営システムの臣下と女性管理者登用
第4章 日本型雇用システムの変革を導き出す〜アファーマティブ・アクションとダイバーシティー・マネジメント
第5章 ファミリーフレンドリー企業と男女の雇用機会均等法
第6章 アメリカ企業のセクハラ対策

■ 第U部■現代経営と女性のキャリア形成
第7章 学生の就業意識にみるハイブリッド化するジェンダー〜ジェンダー意識のHybrid化と、人事労務管理制度への選考
第8章 女性企業家のマネジメント
第9章 コース別雇用管理とジェンダー〜多様性を生かす
第10章 人材の流動化と男女のキャリア
第11章 再雇用制度は使命を終えたのか?:その活性化のために
第12章 経営組織におけるジェンダー問題






第T部

■第1章 日本のジェンダーレス企業〜リクルート社ではなぜ女性が輝いているか
   佐野陽子(かえつ大学経営経済学部教授)

@マイクロソフト社・・・ビジネススクールのキャンパスのような会社。
 ビル・ゲイツの方針・・・会社を大学のキャンパスのようにしたい→自由闊達な
 雰囲気、フラットな組織で仕事にのめりこませる。
 日本で当てはまるのは?
 リクルート社・・・従業員を縛らないのに猛烈に働き、皆生き生きしている。
          女性従業員が多い。現在の社長も女性。
          1998年、「女性が働きやすい」賞を受賞。
A『差別の経済理論』・・・ギャリー・S・ベッカーが初めて差別を経済学の立場から解析したもの。これに当てはめて考えると、差別をする企業は損をするということが言える。(p7〜8)
B リクルート社の概観  1997年に河野栄子氏が社長となり、極めてまれな
            人事として話題を呼んだ。(p12)
C 人事組織・人事風土の改革 
・人事上の特徴・・・高給与、従業員が猛烈に働く、転職・独立が奨励されているなど。
 ここ最近、急速に実力主義・エンプロイアビリティ強化に舵取りを変えつつある。
「キャリア支援プログラム」としてアピール。1999年、実力主義に反するとして福利厚生制度を廃止した。エンプロイアビリティを高めるための制度を拡充している。
転職・独立を支援する形で、老若男女問わず転出歓迎、同時に出戻りも受け入れる。
☆「去るものは追わず」ではなく、「去るものの肩を押す」。(p12〜14)
D リクルート型採用・昇格戦略
・採用には力を入れ、全社を挙げて支援する体制である。近年、採用方針を変えたが、一貫して重視する能力は、賢さとコミュニケーション能力である。(←要求水準は相当高い)特定の職種以外は総合職一本なので身分差というものがない。採用に男女の区別は無い。新卒採用では「男女半々」という暗黙の了解がある。(←弾力的割り当て制)(p14〜15)
・昇格は、中間管理職レベルまでは昇進に男女差がないようだ。(p16)
E むすび  リクルートの女性はなぜ輝いているか、の答

男性も輝いている。
長い間に培ったリクルートの企業風土とその求心力に力があった。
(p21)

■第2章 男女の就職と初期キャリアの形成
     高橋弘司(南山大学経営学部助教授)

@ 低いレベルの有効求人倍率、高水準で推移する完全失業率、人員削減、リストラ、倒産件数の増大・・・。「就職は難しく、失業は簡単。」

新規求職者の就職率に男女間で格差が生じているのはなぜだろうか?(p25)
(1,999年度大学卒業予定者の内定状況〜男子83.8% 女子77.1%←7%の差)
A 就職活動初期におけるジェンダー問題
・一般的な就職活動のプロセスの紹介
◎準備段階のジェンダー化
・得られる資料が男性と比べて少ない→インターネットの普及によりこの問題は少なくなっていくであろう。
・企業セミナーへの参加予約が取りにくい
B「ジェンダー化」された就職プロセス:面接試験
◎ジェンダー化された質問
  「入社後は自宅から会社に通えるか」
  「入社後は男性社員の補助業務(お茶出し、コピー取り等)を頼むこともあるが、それでも良いか」
  「結婚・出産を機に会社を辞めるつもりがあるか」(p33)

伝統的な働く女性像〜企業に大きな収益をもたらすことを期待されず、職場においては男性社員を補助し、両親の元でおとなしく暮らし、結婚や出産を機に会社を去る〜を良しとする企業側の女性観が伝わってくる・・・。内定獲得のために自分の将来の展望を企業側に合わせて修正・変容しなければならない・・・。(p36〜37)

◎面接試験の問題点
・面接官に占める男性の割合が圧倒的に多い
・不適切な方法・内容による面接の実施(セクハラ面接、圧迫面接)
 時に、PTSDや深刻な抑うつ状態に陥る女性被面接者もいる。(p37〜42)
C マッチングと初期キャリアへの展開
最終的にキャリア展望と企業の志向性とのマッチングの結果獲得した内定であっても、果たして「実際に」継続就業が可能なのかについては、入社後、その場に臨んでみなければわからないことである。入社後にキャリア展望を変更しなければならないケースが多い。(p47)
D むすび〜企業への提言
女性社員を「消耗品」としか見ることができず、女性の長期的なキャリアと、女性が企業に将来もたらすかもしれない収益の得る道を、企業自らが閉ざすことのないように昔からの思い込みなどをも一度良く見直す必要がある。(p50)

■第3章 女性にとっての日本型経営〜経営システムの進化と女性管理者登用
     谷口真美(広島大学大学院 助教授)

@・女性管理者が増えていない→なぜそうなっていないのか、女性がどのようにして管理職に登用されていったのかをみていくことで、日本の企業組織およびその経営システムについて考えたい。(p55〜58)
A 日本企業における女性
 ◎日本企業の人事構成と女性の置かれてきた位置
  男女雇用機会均等法が施行される前は、入り口時点での男女による区分が存在した。
  →施行後、コース別人事制度が導入され、入り口時点での男女差は解消された。
(p58〜59)
 ◎日本型経営の原理:コミットとコアメンバーの概念
 「人本主義」の原理・・・「企業は働く人々のもの」という概念。
 「企業にコミットした人=最大の受益者・意思決定者」→意識して女性を差別しているわけではないが、女性が辞めてしまう、女性管理者が増えないという意図せざる結果、結果としての差別が生じることとなったのだ。(p62)
 ◎なぜ女性管理者を取り上げるとシステムの特徴が明らかになるのか
  これまでの日本型経営の研究は、主に男性正社員を対象として考えられてきた。
  これでは、「日本型経営のできること」という内側の議論となる。(p63)
  ↓
  女性を取り上げると、日本型経営の境界線をはさんだ両側の議論が可能となる。
  (なぜ女性が日本型経営の適用の外側から内側に入り、管理者に登用されたのかという内側の議論も可能になる。)(p63)
◎登用の現状と女性管理者の特徴
 ・現在女性管理者がいる企業の76.6%が、登用を増やしていきたいと考えていることが明らかになった。
 ・管理職に登用された女性の約7割が、未婚で子どもを持たず、平均して20年その企業に勤続してきている。
 ・男性ほど異動を経験せず、社内業務中心の部署に勤め上げたのち、管理職に登用されるキャリアをたどる女性管理者が多い。(p64〜66)
B 事例:ジャスコ株式会社〜具体的に何が起こっているのか
・従業員の4割誓うの女性社員が占め、毎年数100人規模の大卒女子を採用。
・明確な数値目標を設定する事で、女性管理者の登用も増やそうとしている。
                               (p66〜67)
◎同社の強みとコース別人事制度〜「大黒柱に車をつけよ」人材の再配置のスムーズさ
 1993年3月、特徴的な複線型人事管理制度を導入。
 →転勤可能範囲に従って昇格の天井を設けるという制度。
・女性管理者が増えない理由・・・同社が意識して女性を差別した結果ではない。制度上の平等だけでは、企業外部の環境要因に影響され、退職してしまうか、能力が身につかず、昇格試験に合格できないという状況につながっていた。
・企業に対して献身的な姿勢を示す潜在能力よりも、実績重視へと変わってきた。
・女性登用により、組織の中で循環が起こり始めている。(p68〜84)
C インプリケーション
・女性の管理者登用を進めていくには、組織の中に循環を起こすことが必要となる。
・循環をキーワードに人材の再配置を考えることが日本型経営の進化につながる。
・組織の環境適合、組織内部へのサイクルとの共進、環境の伝播には、迅速な運用を阻むことのない制度づくりが必要であろう。(p84〜90)
D むすび
女性管理者が少ないという現状から、簡単に結論付けてしまうのではなく、日本の大企業は、女性を管理職に登用し組織効率を高めている企業の経営スタイルに着目して欲しい。そこでは、日本の企業組織、日本型経営にとって、自らの強みを生かす進化した経営の実践と理論のブレイクスルーを垣間見ることができるはずである。
                                  (p90)

■第4章 日本型雇用システムの変革を導き出す〜アファーマティブ・アクションと
     ダイバーシティー・マネジメント
     牛尾奈緒美(明治大学短期大学 専任講師)

@ これまでの日本企業の発展が、日本社会に存在するジェンダー意識を経営の中に取りこんだ結果であったことは確かといえる。しかし、ここにきてその状況は一変してきた。これからの日本の経営は、社会環境の変化に巧みに対応し、今日のジェンダーによって職場での自由や平等が拘束されてはならないという、ジェンダーに中立的な立場で改めて組織のあり方を見つめなおしていく必要がある。(p95)
・ アファーマティブアクション・・・積極的是正措置
・ ダイバーシティー・マネジメント・・・多様性管理
A 新たな女性活用を目指した組織改革の実現に向けて
・アファーマティブアクションの概念・・・人種・民族的マイノリティー、女性及びその他の歴史的に差別を受けてきた集団について、その機会を増進するために行うあらゆる積極的努力。
・日本では、1999年の改正均等法の施行を機にはじめてアファーマティブ・アクションが法制化され、アファーマティブ・アクションを行う企業に対して、国が相談、その他の援助を行うことが定められた。(p98〜102)
B 事例研究:日本IBMにおけるアファーマティブ・アクション
・機会均等の実現を目指す考え方は、IBMの経営理念の中核をなすものといえる。
・次なる組織統合のキーワード・・・「ダイバーシティー(多様性)」
 →人それぞれの持つ多様性を理解・尊重し、各人がもっとも働き甲斐を感じられるような魅力的な職場つくりを行っていくことに主眼が置かれている。
(p103)
C むすび
「日本企業における女性活用の現状を考えると、アファーマティブ・アクションが理解・推進されるまでには、様々な面での障害を乗り越えていかなければならない状況にある。国際的な競争力のある企業の間での女性の戦力化が重視されている事実は、女性活用問題がもはや単なる社会的責任問題ではなく、むしろ人材活用上の戦略的課題として受け止められるべき段階に入ったことを示唆している。これからの日本企業がジェンダー変化の波を的確につかみ、それに対応した新たな雇用システムの創出に着手していくことが切に望まれるところである。」
(p113〜114)

■第5章 ファミリーフレンドリー企業と男女雇用機会均等
     脇坂明 (学習院大学経済学部 教授)

@ 「高い潜在能力を持ちながら、職業能力として花開いていない女性が男性より多い        ことは、職場における女性の数々の指標、例えば労働率や女性管理職比率から考えてみても明らかである。ゆえに、女性の活躍する場を増やすことにより、社会全体に良い財・サービスが提供される可能性が大きいし、また、女性本人がもっと人生の中で充実できる可能性も大きい。女性の職業能力の発揮により、社会全体の皆がハッピーになる可能性があるということである。」(p117)
A 女性は「辞めるかもしれない」という不安を持つ企業
◎2つの差別理論
 ・「偏見説」ex)女性は仕事を腰掛と考えているといった思い込みから女性の能力を低く評価するため、採用しなかったり昇進させないという議論。
 ・「統計的差別説」ex)平均的に辞めることの少ない男性を優先する結果、能力が高く辞めるつもりのない女性が、個人的に「差別」を受ける。(p118〜120)
◎差別をなくすには?
 ・偏見説の立場であれば、差別をなくすには偏見を改める教育をすればよい。
・コース別人事制度も、ある部分は企業による統計的差別を打ち破る試みと言ってよい。採用時点においてかなりのミスマッチがあり、何よりも途中で考えを変える女性も多い。このような点に対応できないという欠点も抱えている。
 ・女性の定着度を男性と同じにするために、女性の就業継続支援策を政府が行う施策を施す事も必要である。
 ・もし、2つのグループに能力や定着度のばらつきの違いがあれば、その違いを無くすように対策を施す事も必要。(p120〜121)
B 男女雇用機会均等法の意義
1994年4月施行の改正均等法・・・全ての教育において男女の差をつけてはならないことになった。この中には、いわゆるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が含まれている。OJTでの男女差がなくなれば、配置の男女差もなくなっていくことが予想される。(p122)
C「ファミリーフレンドリー」企業へ
 ◎ファミリーフレンドリー企業とは・・・従業員の家族的責任に配慮した施策を行うことによって、従業員の能力発揮ひいては生産性の向上を目指す企業である。
(p123)

「従業員の家族的責任に配慮した」「仕事を常に優先させるのではなく、仕事と家庭との事情との折り合いをつけた」という意味。(p123)
◎ ファミリーフレンドリーの概念が登場した背景
・子どもを持つ母親で雇用労働者として働くものの増加
・家族形態の変化(核家族化に伴い、共働き世帯の増加)
   ・人口の少子・高齢化(p124)
◎ ファミフレはワークシェアリングにもつながる
・ワークシェアリング・・・労働者一人あたりの労働時間を減らすことによって雇用を維持する方策。
* 非常に困難な2つの前提・・・今まで働いていた人が給与の減少を受け入れるという前提と、短い労働時間になっても、生産性が落ちないことである。(p129〜131)
D育児休業制度の重要性
 ・1992年育児休業制度の施行
 ・育児休業制度は、もともとほとんどが規定によるもので慣行は少なかったと思われる。 (p131)
◎代替要員の問題
  規模が大きい事業所ほど、代替要員の採用はしていない。(p135)
◎ 代替要員をどうしているのか
・分担方式 ・順送り方式 (p136)
Eむすび
 「男女雇用機会均等法もファミリーフレンドリーも有能な男女を活用することにより、長期的に企業の生産性を高めようという経営戦略である。これを法律などにより政府が支援する。ファミフレは従業員の甘えに媚びたりするような家族主義的な政策ではなく、長期の女性(男性)のキャリア形成に必須な政策である。」(p139)

■第6章 アメリカ企業のセクハラ対策
     森島基博(一橋大学大学院商学研究科 教授)

@ イントロダクション
・米国企業において、セクハラ対策は、雇用機会均等のための人事施策である。
・セクハラは、性や人種などによる雇用機会の損失と同じレベルで雇用機会の均等を個人から剥奪する。
・現在、米国企業にとって重要なのは、対策を取るかどうかではなくて、どこまで対策を講じるか(講じればよいか)ということになる。
・1991年の市民権法の改正により、企業は自分の知らないセクハラ行為について、無限定の責任を問われることになった。(p143〜144)

予防的な対策を講じることは、米国企業にとって死活問題となりえる。
A 米国におけるセクシュアル・ハラスメント
◎ 米国における企業内セクハラの定義
・「対価型セクハラ」・・・従業員が他の従業員などに、採用・昇進・昇給などと引き換えに性的な関係を強要する場合。
* 米国では、対価型のセクハラは問答無用に、企業の責任が問われる。
・「環境型セクハラ」・・・被害者が何らかの原因で、職場において性的に不快と認識する刺激を受け、そのせいで通常の仕事ができなくなるときに成立する。
* セクハラであるという基準は、対価型セクハラに比べて必ずしも加害者の意図がなくても成立するという意味で、防ぐことが難しい。このような状況が成立していることを企業が知らない場合、その責任は軽減される。
(p145〜148)
B 米国のセクハラ対策の内容
・個々の会社ごとに効果的なシステムを作らざるをえない。
・米国では、雇用機会均等委員会の判断や、これまでの裁判所の判例からおおまかなガイドラインが提出されている。(p149)
Cむすび〜我が国企業にとって
 ・「我が国は、雇用機会均等を人権の問題だと考えることの少ないことが最も重要なポイントであろう。一般的に雇用機会均等は、社会的に維持され、促進されるべき人権だという認識が育つとき、はじめて我が国のセクハラ対策は、本当の意味での基礎を得ることになろう。その意味で、セクハラ対策は、より大きな雇用機会均等施策のなかに位置付けられるべきであろう。米国のような訴訟や法的義務付けなどの外圧なしに、そうした大きな枠組の中に、我が国企業がセクハラを位置付けるようになることが望まれる。」(p151)

第U部

■第7章 学生の就業意識に見るハイブリッド化するジェンダー
     〜ジェンダー意識のHybrid化と、人事労務管理制度への選考
     志野澄人(愛知学院大学商学部 専任講師)

@ イントロダクション〜ジェンダー意識が薄まりつつある人々の出現
・今の若い人材(20代前半)の特徴は、性別役割分担と、ジェンダー意識との薄まりとをバランスよく両立しているところにある。男性は男らしく、女性は女らしくという考え方をあまり持っていない。「人それぞれ」という考え方である。どんなときでも「自分らしく」である。(p187)
A フレームワークと仮説
・現在は、男女のジェンダー意識が実際にハイブリッドしているのだ。その結果、ジェンダー意識がニュートラルな時代になりつつある。
・性別やジェンダー意識を区別することにあくまでもこだわり続けるような保守的な発想は捨て、ハイブリッド化していくジェンダー意識の視点から、これからの日本的人事労務管理制度の変化の胎動を探っていく必要性が出てきているのではないか。(p190〜194)
B ジェンダー意識のハイブリッド化と人事労務管理制度に関する分析
・名古屋のA私立大学の商学部、学生220名を対象にして実施したアンケートによる分析
C むすび〜結論と考察
・分析結果より・・・ジェンダー意識は、分析の対象となった220名に関する限り、もはや性別だけを基準にして、簡単に区別することはできないということである。
・一人ひとりの価値観や、考え方、働き方やライフスタイルに応じた人事労務管理制度をいかに組み立てられるかが、今後の日本における企業経営の復活と繁栄を約束する、一つの試金石となるのではないか。(p212〜214)

■第8章 女性企業家のマネジメント
     嶋根政充(産能大学 講師)

@イントロダクション〜女性企業化を取り巻く環境
 ・女性がオーナーである企業の増加←ニュービジネスで起業する女性の増加
 ・SOHOで事業を営む。(p217)
A女性企業家を捉える視点
 ・女性企業家として成功するには、資金の問題(資本金とカネの運用)、能力開発の問題(職業上必要となる意思決定、従業員への仕事の与え方や育て方など管理能力全般)
 ・現代の女性企業家たちは、経営をスリム化し、小回りの利くものに、また人材の選択は慎重にしているという報告がある。
 ・上下関係よりもフラットな人間関係を軸にした人事管理を行っている一方で、人材育成に対してはかなりシビアな側面を持っている。(p220〜223)
◎ 女性企業家は、従業員の人材活用条件に対して何を重視する傾向にあるか?
◎ 女性企業家は、マネジメントスタイルに対して何を重視する傾向にあるか?
B分析
C結果
・「もっとも重視されているのは、断然「責任ある仕事への達成感」であり、続いて「職場における協調関係の維持」、「能力開発・啓発活動の機会への要求」「成果に  見合った評価の納得性」がほぼ同じで続いている。→他人との協調を図りながら新しいことを前向きに挑戦させ、成果中心の処遇とその結果から得られる達成感で動 機付けようとしていることがうかがえる。」(p226〜228)
D むすび
・女性企業家の人材に対するマネジメントは、個人の役割を明確にし個人の成果を評価し動機付ける「課題達成型」となっている。
→企業目的を達成するためには、女性企業家の人材育成は責任ある仕事を与えることにより達成感を充実させるということであり、意欲や情熱・努力を基準とした評価体制を準備することにある。(p231)

■第9章 コース別雇用管理とジェンダー〜多様性を生かす
     仙田幸子(獨協大学経済学部 専任講師)

@ イントロダクション
・コース別雇用管理制度・・・1986年の均等法改正を契機として導入されることとなった複線型雇用管理制度のこと。(p237)
              総合職と、一般職とに分けられる。
・コース別にするとコスト削減の効果もある。
A 均等法とコース別雇用管理制度
・高度経済成長期に女性事務職が増加した。
 ・性別職務分離・・・男性事務職と女性事務職とでは仕事が分かれていた。
 ・改正均等法のもとでは、コース区分の見直しと各コースにおける男女比率のアンバランスの是正が求められている。(p238〜253)
B コース別雇用管理下での女性従業員のキャリア形成と雇用管理
・キャリア形成の鍵・・・仕事の幅を徐々に広げていく機会を与えること。(p254)
C むすび
・企業のニーズに対応しつつ、改正均等法の趣旨を反映するように、コース別雇用管理制度を改善することが求められている。
→「女性の総合職及び専門職への進出と男性の一般職への進出の両方が起きるように、コース区分を見直す。具体的には、雇用の保証と賃金という2つの報酬について、異なる度合いを持つように各コースを設定しなおす。より見えやすい報酬の違いによってコースを定義し、その違いが納得できるように、仕事の割り振りを決めるのである。」(p259〜261)

■第10章 人材の流動化と男女のキャリア
     二神枝保(横浜国立大学経営学部 助教授)

@イントロダクション
 「最近、日本では、人材の流動化が急速に進展している。2000年2月の総務庁の「労働力特別調査」によれば、役員を除く雇用者数4903万人のうち、非正社員は1273万人であり、全体の26%を占めている。企業がリストラの一環として正社員を削減する一方で、パート・派遣などの非正社員を積極的に活用しているためである。」
(p269)
Aパートタイム労働と男女のキャリア
 ・パートタイム労働者・・・正規従業員より1日の所定労働時間が短いか、1週間の所定労働日数が少ない者を指しており、雇用期間の定めの有無は問わないものをさしている。
 ・年々、パートタイム労働者は増加しており、特に女性の方が、自らの意思によってパートタイムを選択している人が多いと言える。
 ・日本におけるパートタイム労働者の職務満足
  →パートタイム労働者のうち、全体の41%が今の会社や仕事に対する不満や不安を抱えている。(賃金が安い、雇用が不安定など)
 ・企業側がパートタイム労働者の能力を十分活用していない。
・「オランダ・モデル」「1.5人の仕事モデル」(p270〜279)
B派遣労働と男女のキャリア
 ・派遣労働者・・・自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し、当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。
 ・仕事への考え方を規定する要因には、様々なものが考えられるが、自分の専門性があること、今後のキャリア・ビジョンが明確であること、そして、派遣労働を自発的な理由で選択したか否かが特に重要となっているようである。(p280)
Cむすび〜人材の流動化と男女のキャリア
  「日本においても、人材の流動化が進展する中で、専門技術・知識を磨きながら度の会社にも自分を縛り付けることなく、プロフェッショナルの男女がバウンダレス・キャリアを形成する動きが広まっていくであろう。今後、人材の流動化の中で、男女が多様なキャリアを形成していくうえで、賃金や雇用保障などの面で正規従業員との格差を是正していくことも重要な課題である。」(p287)

■第11章 再雇用制度は使命を終えたのか?:その活性化のために
     佐藤博樹(東京大学社会科学研究所 教授)

@ イントロダクション
・再雇用制度・・・一般的に、妊娠、出産、育児、介護などの理由から退職した従業員、主として正規従業員を一定期間後に再び自社あるいは自社の関連会社で雇い受け入れる仕組み。1960年代から導入されてきた。
・背景 ・・・・ 育児など家庭責任を果たすために就業中断を余儀なくされる、あるいは選択する女性が相当数あり、さらに、後に再就業しようとする際に正社員としての就業機会が少なく、女性のキャリア形成において就業中断が不利益となる状況にあった。
(p291)
A 再雇用制度の現状と課題
・1980年代後半における再雇用制殿導入率の急増は、1986年の均等法試行に伴う再雇用制度の普及促進の働きかけによる部分が大きいと思われる。
・再雇用制度の機能に関する企業の評価は、総じて良好である。離職期間中の職業能力低下や再雇用後の人事管理の難しさを指摘する企業は少なく、制度の利用率や復帰率が高くなれば、導入されている制度の効果がさらに高まると思われる。                (p292〜294)
B再雇用制度の存立条件
 ・「再雇用制度の導入率は20%程度にとどまり、また導入事業所における利用率も10%程度と低くかつ利用者も少なくない。制度の普及率が低いだけではなく、利用率も低いといえる。再雇用制度を導入することにメリットがあると考えている企業では、制度が導入され、そうした企業では、一定の成果をあげているとみることができよう。」
  ◎条件 ・企業が提供する継続就業支援策ではカバーできない要因から就業継続を希望しながらも、就業を中断せざるを得ない従業員、あるいは、将来における職業生活への復帰を念頭に置きながら就業を中断し、積極的に再就業型のキャリアを選択する従業員が存在すること。
  ・就業を中断した自社の従業員を再び主として自社等に雇用することが、当該企業にとってメリットがあるだけでなく、同時に退職した従業員自身にとってもメリットがあること(p295〜299)
Cむすび〜差雇用制度の設計上の留意点
 ◎制度設計上の主要な留意点
  ・制度適用者の範囲の設定・・・制度の対象を女性のみに限定するのではなく、男性も対象に含めることが求められる。
  ・再雇用制度の適用対象となる退職理由では、結婚、出産、育児に限定している企業が多いが、今後は、これまで制度の適用対象となる退職理由に含まれることが少なかった、介護や配偶者の転勤など家庭責任に起因する退職理由、さらには、ボランティア活動従事や留学等の教育訓練受講などの自己充実による退職理由を退職理由に含めることが考慮されて良いと考える。
  ・再雇用制度は、退職者が再雇用を希望した時点における職業能力や就業ニーズの多様性に対応可能な制度とすることが必要となる。
  ・再雇用制度の適用条件であるが、これは、再雇用時の雇用形態に規定されよう。
・再雇用先の企業の選択であるが、関連企業が存在する場合は、退職した従業員を雇用していた企業ではなく、その関連企業にも再雇用先を広げることが求められる。
・復帰率を高めるには、再雇用制度の登録者とのコンタクトが欠かせない。
                               (p300〜303)
■第12章 経営組織におけるジェンダー問題〜機会の均等と結果の均等の視点から
     嶋根政充(産能大学 講師)

@ イントロダクション〜経営組織における"ジェンダー"問題の意味
・ジェンダー(社会・文化的性差):経営組織で働くうえでの男女の役割、働き方、キャリアの展望に違いや格差があること。
・男性と比べると、女性の職務や職域が限定されていたり、出産や育児で辞めざるを得ないために長期の中核的な労働に従事する女性が少ない。それゆえに、雇用者数は多くても、定着率も悪いために勤続年数が男性よりも短く、全体の管理職層以上の総数や登用率が少ないといったことがその意味となる。
・経営組織におけるジェンダー問題・・・男女間の格差を示している。(p307〜308)
A経営組織におけるジェンダー問題を捉える概念的枠組み〜"機会の均等と結果の均等をめぐって"
・ジェンダーの均等の定義:性別によって仕事をし、働くうえでの基準や
指導方法に違いがないこと。
 ・いかに生産性や創造性を高めていくか、そして有能な人材の離職をいかに食い止めるかについて検証していくことが必要である。(p308〜310)
B経営組織における男女間格差がもたらされる規定因をめぐる議論〜カンターモデル
 ・カンターモデル:性差のみならず少数者がなぜ排除されるかを説明するための、差別を考えるに当たってしばしば用いられる考え方のモデル。
 ・カンターは、機会が女性の数を増やし、権力(地位や役職、報酬もその要因)を強くしていくと企業をコンサルタントした経験から提起し、組織における女性の数と権力、及び機会が有力なジェンダーを規定する要因であると主張した。
 ・女性管理者がまだまだ少ない日本
  →機会の均等→結果の不均等→機会の不均等の循環が断ち切られるかどうか・・・がこの問題解決のキーとなる。そのための変革への循環を促進させる手段が次に示すアファーマティブ・アクション・プログラムである。(p314〜316)
B アファーマティブ・アクション・プログラム
・日本IBM、ベネッセ、マツダ、オリックス、リクルート・・・ジェンダーレスである女性活用の優等生的な企業としてしばしば取り上げられる。多くは、女性比率の均等の目標値を設定し、それに基づいて、全社的な女性活用の取り組みを行っている。女性を起爆剤としながら、組織変革を行っている。(p316)
C ・男女別管理のない組織価値の変革を押しすすめるために、個別の企業状況に合わ                      せて、全社的に強制力を持って推進していく、結果の均等から出発した男女均等の ためのプログラム(アファーマティブ・アクション・プログラム)の導入が求められている。(p317)
・アファーマティブ・アクションは、当該企業の業績やそれぞれの企業の置かれた環境・ポジションを分析し、個々の企業ことの個別の戦略に沿ってスタートすべきであり、各企業によって具体的な取り組みの方法・プログラムの質の程度が異なるのは自然な事である。(p320)
Dむすび〜是正に向けた方策と課題
◎ アファーマティブ・アクションの前提、組織内で基盤となる整備すべき条件
・「属性ではなく、機会の均等に属する知識や技能・能力、経験、適性や専門性に基づく評価システムと、それらに基づいた施策や仕組みを植え付けていかなければならない。コース別人事管理にしても、コースによって仕事の内容に大きな違いがなく、それが単なるコスト管理のために制度が運用されていては意味がない。」(p320)
 ◎「現状から判断すると、多くの企業が志向している成果主義の導入などによる機会の均等だけでは不十分だということであり、いきおいこうしたジェンダー問題には組織内の仕組みの変革に加え、環境問題と同様にそれを組織外の様々な利害集団を巻き込んだ社会戦略の視点を組み込んでマネジメントに当たることが企業経営にとっても必要不可欠で効果的となろう。」(p325)


……以上……


REV: 20170426
女性の労働・家事労働・性別分業  ◇2002年度講義関連 
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