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男と女の過去と未来

倉地克直・沢山美果子 編
200010
世界思想社,265p.,2500
http://www.sekaishisosha.co.jp
(本の注文ができます)

last update: 20170426


この本の紹介の作成者:林伸嘉(立命館大学政策科学部4回生)
掲載:200207


1「家族と社会」 ○第1章 日本国憲法から考える        中富公一
○第2章 フィールドワークから考える「結婚」 中谷文美
○第3章 高齢社会に生きる          奥田さち子
○第4章 変わる家族             沢山美果子
○第5章 教育家族の成立と展開        倉地克直
 働く女性からのメッセージ
2「社会と性」
○第6章 性情報の氾濫する中で        青木須賀子
○第7章 人類史の中の性           正保正恵
○第8章 売春婦を考える           新納泉
○第9章 近代のセクシュアリティ       沢山美果子


◆「はじめに」

(男と女の過去と未来)
生きる事は様々な様々な社会的な関係の中で生きるということであり例えば、親と子
の関係という関係や、友達という関係また政府と一市民という関係、生産者と消費者
という関係がある。男と女という関係も私達が生きていく上で必要な一つの社会的関
係になっている。
「ジェンダー」とは一般的には「自然」な生物的な性差である「セックス」に対し
て、社会的・文化的な性差を「ジェンダー」と言う。(p1〜3)


               ◆1 家族と社会◆

◆第1章 日本国憲法から考える

日本国憲法第十四条と二十四条において男女の人間的尊厳と平等とを保障している。

十四条一項「すべての国民は、法の下の平等であって、人種、信条、性別、社会的身
分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」

二十四条「法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければな
らない」
「個人の尊厳と両性の本質的平等」を憲法原理として扱う。


(1) 女性差別を支えてきた制度・道徳観
「戦前のイエ制度」
「戦前の道徳観―教育勅語」
戦前、女性の地位は低くこの女性差別を制度化したのが明治期に確立した
「イエ」という制度である。
この「イエ」という制度が教育勅語のいう「夫婦仲睦まじく」の意味するところであ
り「父母に孝行し」の意味する所であった。
このようなイデオロギーを提供したのが教育勅語であった。(p14〜16)

2、 日本国憲法の制定
(ベアテ草案)
戦前の「イエ制度」にも見られる男性優位の社会更には、人間すべてに順位をつけて
上の者には逆らわずという教えなど、強制した制度は日本国憲法の制定により大きく
変化した。
マッカーサー率いるGHQが日本国憲法の草案を考えその際に「女性の権利」について
担当していたのがベアテ・シロタ・ゴードンであり、女性である彼女は当時22歳
で、戦前日本人女性の置かれていた立場を見聞きしながら、草案を造りあげたのがベ
アテ草案である。(p20〜22)

3、 女性差別撤廃条約
憲法制定にともなう国内法の整備とその限界
憲法制定直後
女性参政権も認められ1946年の衆議院議員選挙で67%の女性が投票を行う。3
9名の女性議員が誕生する。又、教育においても男女同権が認められた。
(p24〜26)
「女性差別撤廃条約の採択」
国連は、性による差別を人種差別とともに、国際社会において克服しなければならな
い重要な差別問題として取り上げてきた。国際連合憲章はその前文で、人権の尊重、
男女の平等と平和な国際社会の建設が相互に関連すると位置付けている。その為、現
存の不充分の為国連が新たな包括的条約を採択する事が望ましいとの決議を行い賛成
130・反対0・棄権・10で採択され1981年
発効したのが女性差別撤廃条約である。
(p27〜37)


◆第2章「フィールドワークから考える」

1(文化人類学と「結婚」)

1、 異文化研究の意味
様々な社会・文化の間に横たわる違いを見据えながら、同時に「人間」としての共通
性を追い求め「人間とは何か」と言う問いに取り組む―異文化研究の意味であり、文
化人類学の目指しているところである。(p38〜40)
結婚とは?
多くの場合、その2人を取り巻く社会がその関係を正式に認め、生まれてくる子供を
社会の成員として正式に認知するという要件が整って初めて結婚となる。

2インドネシアの結婚と家族
(国家が理想とする家族像)
公的には世帯主=男性という規定があるため居候という形で役場で登録される場合も
ある。国家が直接介入してくる領域として人口抑制する為に家族計画運動というもの
がある。

・結婚したがらない娘達→インドネシア・バリ農村の場合
ほとんどの女性が「自分は結婚したくない」とはっきり口にしている。
その理由として結婚した女性にかかってくる荷の重さである。
儀式など男女共同で行う際などには圧倒的に女性に負担がかかってしまうのである。
(p42〜57)

4、 日本との共通点・相違点
共通点・日本のトレンディーアニメやドラマがほぼリアルタイムで輸入され、大きな
人気を得ている事からも分かるように私達は文化や社会の壁を超えてまさに同時代を
生きている。
日本人女性がバリ島での観光旅行で出会ったバリ人男性と結婚するケースがここ10
数年のうちにかなり増えてきている。どこか似た共通点があると考えられる。
相違点・日本は政府・財界をはじめとする少子高齢化への危機感が強く女性の結婚・
出産を奨励する為の政策が様々に練られている。しかしバリでは人口抑制の観点から
むしろ晩婚化が歓迎されている。
(p58〜61)


◆第三章「高齢社会に生きる」

1、老いるということ
大学生は高齢者を調査した結果「地味・汚い・弱い・非生産的」と考えている。
(東京都老人総合研究所)
しかし、実際は高齢者の8割は元気であり、高齢者の働く割合は世界でトップとも言
われている。
老年期が60歳以上である為、65歳以上からが「老人」と呼ばれている。
(老人保険福祉法では65歳以上を老人としている)

2、高齢者の現状
高齢者人口の現状と将来
日本の高齢者問題が大きな国民的課題となっている要因の一つに、猛スピードでやっ
てきた、高齢化が挙げられる。

3高齢者の暮らし振り
日本人高齢者の労働人口は475万人で欧米諸国よりも高い水準であり特に男性は
36.7%女性では15.4%となっている。
高齢者の労働力率が高いのは1、「経済的理由」2、「健康に良いから」
3、「社会参加」を目的としている事が挙げられる。
(p62〜70)

4、福祉先進国北欧と日本の違い
デンマーク、スゥエーデンは「寝たきり老人のいない国」ではなく
「寝かせきり老人がいない国」である。

ノーマライゼーションの理念
デンマーク
高齢者福祉の基本として「自己決定の尊重」「生活の継続性」「自己資源の開発」
の3つがある。
又、ホームヘルパーの身分も公務員として保証されている。

5、 成熟した民主主義社会の成立の理由
農業共同組合という相互秩序の歴史があるということも要因ではあるが、最も影響し
ているのは「教育」である。
その理由として成熟した民主主義社会の背景に個人を尊重する国民学校の教育があ
る。(p70〜77)


◆第四章「変わる家族」

1、家族形態の変化

家族を形成しない男女
核家族→いわゆるひと組みの夫婦とその子供からなる小家族のこと。
歴史の流れの中で時代が進むに従い複合的な大きな家族から、小さな家族へと移り変
わってきていると考えられてきているが、実態はそれほど単純ではなく核家族の増加
はそれほど顕著ではなく最近ではむしろ減少傾向にある。

・ これに対して、戦後の一貫した特徴として指摘できるのは、単身家族の増加である。

単身家族→未婚者や非婚者又、配偶者と離婚したり死別したりしたケースの事である。
単身家族も生活の単位という意味では家族の一形態ではあるが普通イメージされる家
族とは対極にある。
核家族が人類にとって普遍的な家族形態といわれることがあるがそれもそれほど自明
的なことではない。
(p80〜87)

2、 婚姻と労働
(現代家族と女性労働)
欧米などいわゆる先進諸国
    ↓
結婚後もほとんどの女性が働き続ける
    対して
    ↓
日本では結婚・出産を期に職を離れる場合が多い
30歳前半で女性の就労率が50%にまで落ち込む。
結婚年齢の平均は戦後直後で男26歳女23歳であったのが、1993年には男28.4歳女
26.1歳に上昇している。
一人の女性が子供を産む数が第1次ベビーブームで4.32人であったのが、
1993年には1.46人になっている。この原因は結婚年齢の上昇つまり、晩婚化にあ
るといわれている。
(p90〜95)
3、 身売り的な奉公
昔の奉公労働においては、地域や階級による大きな違いがあり同時に男女による性差
というものも大きい事が分かる。

「身売り的な奉公とは」
借金のカタに奉公に出る場合である。
娘を一定期間に限り奉公に出す約束をし、給金を前払いしてもらい年貢を払うという
場合の事をいう。

「奉公における賃金格差」
地域差はあるが女性の賃金は男性の大体60〜80%平均的には75%である。
(p97〜99)
3「民衆にとっての家」
「家」の両義的な性格
家族とは(定義)「夫婦・子供などからなり、生計をともにする単位」
家とは(定義)「家名・家業・家産などの単位」であると言われている。

家族が実際の生活に即した言い方であるのに対して「家」というものは社会的なもの
である。
(101〜103)


◆第五章「教育家族の成立と展開」

1、 高学歴化社会の圧力
学校病理の深刻化

1980年には「対教師暴力」や「イジメ」「学校の仲での反乱」が問題になる。

1980年半ば以降は「登校拒否」「高校中退」など「学校教育の拒否」
              ↓
ほとんどの中学生が好き嫌い関わらず入試競争への参加を強いられる
「教育家族」の誕生
(p106〜110)

2、「人並み」から「人並み以上」に
近世農民家族の少子化
戦前「子供の育て方」という本が発売された。
それにより、近世の子育ての目標が「人並み」であったのに対し近代の子育ての目標
が「人並み以上」という所におかれている。
ここで問題とされているのが、「人並み以上」という言葉の意味である。
「人並み」というのであればある程度基準が明確である。
近世の社会では、「人並み」つまり一人前の基準がそれぞれの村で具体的な仕事の量
で決定していた。
しかし「人並み以上」となると、どこまでいけば人並み以上になるかという具体的な
目標がなくなってしまっているのである。
(p112〜119)
「教育家族」の成立・「母性愛」の登場
新中間層家族の特徴は性別役割分担家族である点に求められる事が出来る。
夫にとっては妻を働かせる事は甲斐性のない事であり、妻にとっては「奥様」
としての家事、育児に専念する事が一つのステイタスシンボルとなった。
(p120)

生産活動から切り離された母と子は必然的に子育てにおける母役割を増大させること
となった。
そうした現実の中で新中間層の人々は「母の手一つで」、子供を育てる事に価値を見
出していったのである。
その為、この時代の子育てのキーワードは「母性」や「母性愛」という言葉なのであ
る。(p123〜125)


●働く女性からのメッセージ

1、 自立を阻むもの

最初の壁は就職
就職戦線全般が厳しい状況にある現在、その厳しさはより強くのしかかっている。男
女雇用均等法はあるので女子学生にも一応門戸は開かれてはいるものの、実際は男女
の採用状況に差があることはマスコミからも報道されている。

男子学生にはしないが女子学生にはする質問
「結婚したらどうしますか?」「子供が出来たらどうしますか?」などが挙げられ
る。(p130〜134)

2、セクハラの何が問題か

セクシャルハラスメント
1999年男女雇用均等法が施行され男女差別をしないことが事業主の努力義務から
禁止規定になった。セクシャルハラスメントはどこにでも存在していて
「いつになったら結婚するの?」「子供は作らないのか?作り方教えてやろうか?」
「やっぱり女は顔だ」などのことである。(p138〜140)

3昇任・対等な仕事・4すべての人が安心して働き続けられるように

家庭も仕事も自分も大切に

介護休業も法律で認められようになり労働法制の改悪と同時進行という問題はあるが
このような仕事と家族を支える法律・制度の改善は働く人が人間らしく働きたいとい
う要求を長らく掲げ続けてきたからこそ実現したものなのである。
(p145〜148)


               ◆2 「社会と性」◆

◆第六章「性情報の氾濫する中で」

全体的なアウトライン
@70年代〜80年代に広がったフェミニズム論の文脈で「性情報の氾濫する中で」
を語れば一般的には進む「性の商品化」とそれに対する異議申し立てという文脈で語
ることができる。

Aしかし90年代になるとマイノリティーである「女性」からの異議申し立てのパ
ワーが低減してきている。それに伴い、「男性」の生き方が難しくなってきたことに
より「性」についての考え方に変化が生じている。

Bこれらの考え方の変化はメディアにおける言説の変化と考えている。

C具体的には女性誌・男性誌に見る性の変化を概観し最後にDメディアという文化装
置からの脱コード化の方法を探ってみようというものである。
(p152〜153)

1、性情報をめぐる問題の枠組みとその変動

日本語で「性」と表している内容を英語ではセックス・ジェンダー・セクシュアリ
ティーと3つに区別している。

@セックスは生物学的な性差という意味で使う。
Aジェンダーは生育する中で社会的文化的にインプリンティングされた「男性」らし
さ「女性」らしさといわれるような性差。

Bそしてセクシュアリティーは性的志向とか性的欲望に関わるものと捉えられる。
(p155〜157)

2、女性誌・男性誌から読み解く生き方情報

「女性」規範の変動

若い女性のバイブル的存在である、出版部数がもっとも多い雑誌である「non-no」
(ファッション誌)と生き方情報誌というジャンルに分類される
「say」の2誌について、創刊号から仕事、結婚、自己認識、性に関わるおもしろい
ことが見えてくる。

→具体的には、性情報のモード化とセグメント化の2点で説明できるような変動を読
み取ることができる。
(p158〜160)

「男性」規範の変動

男性誌は「POPYE」と「MEN`Snon-no」を概観していることがわかる。
この2誌のコンセプトはPOPYEの方は創刊当時アメリカ西海岸のライフスタイルを目
指すというものであり、「かっこいい」ライフスタイルをファッションやライフスタ
イルを通して提案している。
「Men`snon-no」の方は、「non-no」の影響もあると考えられるが、ファッション中
心で、ライフスタイルについてはさまざまな提案の中から選択するというメッセージ
が込められている。
(p162〜166)


◆第七章「人類の中の性」

私たちが大学に入学するまでに身につけた性に関する情報は、大きく分けると3つある。

@生物学的な知識
A道徳・倫理的な意識
B現実・本・雑誌・コミックなどを通した、体験系の知識

(例)大学入試の小論文
「性の乱れ」が論じられる
(p167〜172)

〇家族
性をコントロールする上で大きな役割を果たしているのが家族である。
家族のあり方に核家族のような固定的なものを考えたり、乱婚から、一夫一妻制へと
いうような単純な法則性を想定するのには無理がある。
→多様であるからこそ柔軟で強靭な力を持っていると考えるべきである。
(p179〜184)


◆第八章「売春婦を考える」

1、売買春と「聖なる性」


(売買春の発生)
最近では売春という言葉を使わず売買春という言い方を使用している。
売春のイメージは「よくないこと」=悪であるという価値観が纏わりついている。
「必要悪」といっても、「悪」ということに変わりはなく、この売春を「悪」
とする感覚は、まさに近代のものであり、その始まりは近代にある。
性のあり方、性についての考え方の違いにより売春というものの捉え方が変わってく
るのである。
(p188〜192)

2、中世の遊女
近世の売春を専業とする女たちを遊女と呼ぶ。
私たちが現在イメージしている、娼婦とはかなり違っており遊女というのはそもそも
中世平安末や鎌倉時代から存在したものである。
中世の当時からしてみると「あそびめ」と呼んだ方がよい。
詳しくは西鶴の「好色一代男」で各地の有名な遊女との交友が描かれている。
近世の性の世界は重層的であり上層社会の性の世界は「家」と「遊所」とに二次元化
されていたのに対し下層の民衆社会は「自由な社会」が広がっていた。
(p198〜206)

3、近代の<フィクション>
性の商品化と身体
1958年「売春防止法」が制定され、公娼制度は廃止された。その為、営業も禁止
されている事から、「自由意思」による性の「提供」ととらざる得ないのが現在の状
況である。金品の授受は売春ではなく「援助」であり、性行為は「交際」の一部であ
ると考えられている。
自由で自然な、しかも成熟した性のスタイルとはどのようなものか考えなおしてみる
必要がある。
(p208〜210)


◆第九章「近代のセクシュアリティ」

1、セクシュアリティへの着目
現在、女性をめぐる問題の中で性や生殖といったセクシュアリティに関わる問題に集
中している。日本でこの問題を考え出したのはつい最近の話である。


2、近代国家体制の確立とセクシュアリティ
近代のセクシュアリティについて2つに分けて考えるとすると
@男と女の関係を考える上で重要な核として捉え、Aセクシュアリティに関わる態度
は男性と女性の関係性についての観念として大きく関わりながらきわめて個人的なも
のである。
(p215〜220)


3、近代家族とセクシュアリティ
「正しいセクシュアリティ」
「家族」の担い手である新中間層が層として成立してくる1920年代には
「正しいセクシュアリティ」を内面化するための性教育のあり方が議論される。
婦人雑誌では母親たちの「我が子」への性教育の体験談も掲載されるようになってき
ている。(p224〜228)

4、現代のセクシュアリティ
「近代のセクシュアリティ」がいかにジェンダーによって意味づけられて男女のセク
シュアリティがジェンダーによって差異化されていったのかを明らかにするために
は、現代社会の中で男女の性関係が男性中心に考えられていることから見直していか
なければいけないと思われる。
(p230〜233)

■終わりに

・現状を見つめる
現代社会の中で家族や夫婦のあり方といったものがひとつの焦点になっており、
そうした中で私たちはどのような男と女のパートナーシップを築いていくいのか、も
ちろんシングルやシングルマザーといった選択肢も可能であり、多様な選択肢の中か
ら自分らしいパートナーシップのあり方を考えるために、現実の状況をしっかりと見
つめることが求められてくるのではないだろうか。


……以上……


REV: 20170426
フェミニズム (feminism)/家族/性…  ◇性(gender/sex)  ◇女性の労働・家事労働・性別分業  ◇BOOK  ◇2002年度講義関連
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