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SPSNニュースレター・No.6

1997/5/3

last update: 20170427


Social Policy Studies Network
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◇ SPSNニュースレター・No.6 (1997/5/3) ◇
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発行:SPSN (Social Policy Studies Network) 事務局
〒113東京都文京区本郷7-3-1東京大学文学部社会学(武川)研究室気付
Fax: 03-3815-6672, Email: VZQ12171@スパム対策niftyserve.or.jp

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第5回研究会の報告
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◆1997年3月29日(土)午後,第五回研究会が東京大学にて開催されました.報
告の概要は以下の通りです.

(5-1) 福祉国家の将来−−成長問題とフレクシビリティ問題−−
     武川正吾(東京大学)

現在,福祉国家が変わりつつあるという共通の認識がある.しかし高齢化による
国民負担率の上昇にその原因を求める通説には疑問がある.福祉国家が現在直面
する問題は成長とフレクシビリティである.福祉国家はもともと古典的資本主義
の成長問題を解決するために生まれたが,現在では,(1)地球環境問題と成長と
の両立,(2)成長による雇用創出力の涸渇,といった新たな成長問題に直面して
いる.前者に関しては,知識社会と消費社会の成立によって,素材に依存しない
成長の可能性を追求することができる.後者は現在の福祉国家のアポリアであり,
各国でさまざまな試みがなされているが,必ずしも成功していない.他方,フレ
クシビリティ問題は,情報化と消費化によるフォード主義の終焉と,グローバル
化による大競争時代の出現に,その起源を求めることができる.福祉国家は,現
在,労働生活や消費生活におけるフレクシビリティ要求への対応に迫られている.
各国の福祉国家は資本制(商品化)と家父長制によって特徴づけることができる
が,福祉国家の成長問題とフレクシビリティ問題への対応は,これら二つの点か
ら見ると多様でありうる.現在,英米の再商品化モデルが優勢であるようにみえ
るが,そこにも内在的な難問がある.


(5-2) 転換期における社会的シティズンシップの再検討
−−システムとモラルの関係から−−
             遠藤かおり(東北大学)

シティズンシップの理念が曲がり角を向かえるなか,90年代に入り福祉の理念と
しての社会的シティズンシップ(社会権)に焦点をおいた議論が活発に展開され
るようになった.なかでも1992年に刊行されたロッシュの研究とカルピットの研
究は,社会的シティズンシップの限界がどこにあるのかに立ち戻り,新たな社会
的シティズンシップの可能性を模索する研究として注目を集めた.ロッシュが社
会権を歴史社会学的に考察するのに対し,カルピットは,それをモラルや倫理の
観点から把握しようとする点で,両者は異なる視点に立つ.しかし,社会的シティ
ズンシップの今後の方向が社会権に対する社会的義務の要請にあると強調する点
では,両者は一致している.ロッシュは,従来のシティズンシップの概念が《イ
デオロギー的変動》と《構造的変動》により再検討を迫られていると述べ,個人
的義務から世代間の義務へという《複合的》義務論の考え方を呈示する.他方,
カルピットは,従来の福祉国家の失敗の原因をモラルや倫理の強要に求め,ヴァ
ルネラビリティ(もろさ)への個人的対応が逆説的だが集団(国家)の義務の正
当化につながるという視点に立つ.両者の義務論に対しては,依然どのように義
務を実現するかが判然としないという批判がなされている.

◆参加者は以下の29名でした.
下平好博(明星大学),山田昌弘(東京学芸大学),藤沼敏子(東洋大学),村
越功司(明治学院大学),矢野泉(東海大学),箕浦光(神奈川県),上村泰裕
(東京大学),山森亮(京都大学),湯浅典人(文京女子大学),佐藤晴美(法
政大学),津富宏(法務省),武智秀之(東京都立大学),森川美絵(東京大学)
,武川正吾(東京大学),鍋山祥子(中央大学),富江直子(東京大学),藤村
正之(武蔵大学),田村誠(東京大学),大島厳(東京大学),三重野卓(山梨
大学),高木俊之(専修大学),神山英紀(東京大学),佐伯みか(東京大学),
磯網正子(人事院),山本武志(東京大学),平岡公一(明治学院大学),小出
昭太郎(東京大学),遠藤かおり(東北大学),川上礼子(日本女子大学).

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第6回研究会のご案内
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日時: 1997年5月31日(土) 13:00〜17:00
場所: 東京大学(本郷キャンパス)法文一号館216番教室
(最寄駅:地下鉄丸の内線本郷三丁目または地下鉄南北線東大前,
正門から安田講堂の方へ向かって左側二つ目の建物)
参加費: 300円

1 都市家族の変化と地域政策の転換
−−再生産とアイデンティティーをめぐって−−
報告者:山田昌弘(東京学芸大学)
討論者:上村泰裕

2 日本型福祉社会から参加型福祉へ
−−-ジェンダー,二重労働市場,専門化の観点から−−
報告者:森川美絵(東京大学)
討論者:三井さよ

※教室利用可能時間の関係から,今回は13:00に開始しますのでご注意下さい.
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次回以降の研究会開催予定

 第7回研究会 1997年7月18日(金),武蔵大学にて開催予定.発足一周年のた
め,懇親会を予定しています.
 第8回研究会 1997年9月下旬開催予定
 第9回研究会 1997年11月下旬開催予定

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情報交換・networking
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◆アニメ映画『どんぐりの家』 学校上映・協力のお願いについて

 障害者の共同作業所を描いた,山本おさむさんのマンガ『どんぐりの家』(『
ビッグコミック』連載/単行本3巻まで・小学館)がこの夏アニメ化されます.9
月から全国各地で自主上映されますが,やはり回数が少ないため,それとは別に
小学校から大学まで上映協力をしてくれる学校を探しています.学校上映の場合,
かつしか障害者共同作業所の協力により,フィルムの貸出し基準は,映写技師・
持込み器材もいれて合計約20万円でして,一般の地域上映より10数万円ほど値引
きされます(参加者から代金を取るか,団体が買上げる形をとり,参加者は無料
にするかなどは自由です.ただし,他の地域上映でのチケット代金との兼合いで,
外部一般向けの販売はできません).
 学校やPTAとして上映する可能性がある場合,あるいは関心のある学生団体
などをご紹介いただけそうな場合などございましたならば,武蔵大学・藤村正之
(自宅TEL044-877-3732)まで,ご連絡ください.かつしか障害者共同作業所の
方へ仲介させていただきます.なお,上映は97年9月以降となります.
 また,8月3日(日)・4日(月),全国に先駆けて,「かめありリリオホール」
(JR亀有駅・南口,イトーヨーカドー9F)で,葛飾「どんぐりの家」上映委員会
による上映会が開催されますので,ご関心おありの方はご参集ください(制作協
力券1000円).【文責:藤村】

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SPSN関係者の新刊書
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◇山田昌弘ほか『感情の社会学』世界思想社,1997年
◇バーバラ・メレディス『コミュニティケアハンドブック』平岡公一ほか訳,ミ
ネルヴァ書房,1997年
◇蓮見音彦ほか編『現代都市と地域形成』東京大学出版会,1997年
◇社会保障研究所編『社会福祉における市民参加』東京大学出版会,1997年
◇岡沢憲芙ほか編『比較福祉国家論』法律文化社,1997年
◇庄司洋子・藤村正之ほか編『貧困・不平等と社会福祉』有斐閣,1997年

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事務局からのお知らせ
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◆ニュースレター送付方法の変更
電子メイル・アドレスおよび/またはファックス番号を登録いただいている方に
は,第七号から電子メイルおよび/またはファックスにて送付いたします.引き
続き,郵送も必要な方は事務局までご連絡ください.なお,電子メイル・アドレ
ス,ファックス番号のいずれも登録いただいていない方には,引き続き郵送いた
します.

◆ホームページ作成のボランティア募集
SPSNのホームページ開設を計画しています.やってもいいと思われる方は事務局
までご連絡下さい.

◆第6回研究会の山田昌弘氏報告の関連論文を収録した,蓮見音彦ほか編『現代
都市と地域形成』東京大学出版会,1997年,定価5562円を,当日,会場で約2割
引きにて頒布いたしたます.購入予定の方はご利用下さい.

◆李明鉉氏の転居先をご存じの方は事務局までご連絡ください.

◆以下の方宛のメイルがUser Unknownで戻ってきています.お心当たりの方は事
務局までお知らせ下さい.
(略)

◆ニュースレターの送付を新たに希望する方は事務局までご連絡下さい.また,
不要な方も同様に願います.

◆研究会の運営について意見がありましたら,事務局までお知らせ下さい(報告
者については自薦他薦いずれも可)

◆ニュースレターで流したい情報(例えば,共同研究者の募集,自著の紹介,研
究会の案内,等々,その他,社会政策研究に関することなら何でも)がありまし
たら,事務局までEmail(バイナリー形式ではなくテキスト形式)でお知らせ下
さい.


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