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遺伝子診断に触れぬ母体保護法に疑問


last update: 20170427


遺伝子診断に触れぬ母体保護法に疑問

 妊娠中絶を規定した母体保護法(旧優生保護法)が、出生前診断や遺伝子診断な
ど先端的な生殖医療技術について触れないまま改正されたとして、遺伝相談に関わ
る医師・研究者らで組織する日本人類遺伝学会(中込弥男理事長)は十日、国レベ
ルでの論議再開を求める「優生保護法改正に関する理事会声明」を発表した。一両
日中に厚生省に提出する。
 母体保護法は昨年六月、「不良な子孫の出生防止」の字句など差別的な内容を削
除して、旧優生保護法から改正された。出生前診断などの普及で、現実的には異常
を持った胎児が非公式に中絶されたり、「代理母」が何の規制もないまま有償で行
われているが、これらの行為についての規定はなく、論議もされなかった。
 声明は「医療の場で普及しつつある出生前診断、遺伝子診断への配慮や、国会の
十分な審議なしに法改正したことは大きな疑問が残る」と指摘。「先端医療技術を
包括的に規制する法律をすでに制定している国もあり、わが国は立ち遅れが指摘さ
れている」とし、これらの診断の適用基準の設定と、法的な対応を求めた。同学会
では、フランスなどの生命倫理立法を念頭に、対象となる人の自己決定権を尊重し
た強制的でない基準が理想としている。
 同学会では、昨年十月に旧優生保護法の改正に対する基本方針を確認、国への要
望を模索してきた。過去には、重い遺伝性疾患の胎児の中絶(胎児条項)など具体
的な内容に突っ込んだ議論もなされたが、理事からの反論や患者団体の批判などを
受け、最終的には生殖医療について、公的な場での論議を求める形にとどまった。
この日の理事会でも声明文案の一部を削除するなど最後まで調整が行われた。
 中込理事長の話「出生前診断で異常がわかった胎児が、経済的な理由によって、
毎年たくさん中絶されている。この現状をあいまいにしておいてはいけない」。
[1997-04-10-20:28] 読売新聞

 cf.
 日本人類遺伝学会


REV: 20170427
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