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遺伝性疾患胎児の中絶、法規定求める


last update: 20170427


遺伝性疾患胎児の中絶、法規定求める

03/30 06:48 読売新聞ニュース速報

 遺伝相談に携わる医師、研究者で組織する日本人類遺伝学会(中込弥男理事長)は
二十九日までに、タブーとされてきた重い遺伝性疾患の胎児を中絶できる条項(胎児
条項)の導入を核とする母体保護法の見直しを国に求める方針を固めた。早ければ来
月十日の理事会で具体的な見解をまとめ、要望していく。
 昨年六月に優生保護法を改正した同法では、中絶は母体の安全を損なうケースや、
経済的理由、暴行などによる妊娠にしか認められておらず、遺伝性疾患については規
定していない。だが実際には、出生前の早期診断で胎児に異常が認められた場合に中
絶が行われていることが多い。
 このような現状に対し人類遺伝学会は、法的な枠組みがない状態で中絶されるのは
問題があるとして、昨年十月以降、見直しの動きが活発化。同学会理事会は今後、条
項に盛り込む表現など細部を詰め、国に要望する運びだ。しかし、必ずしも会員全員
に趣旨が周知徹底されているとはいえず、様々な意見が出て、時間がかかることも予
想される。
 今年に入り、中絶や不妊手術を手がける産婦人科医らによる日本母性保護産婦人科
医会(坂元正一会長)が、胎児条項の導入要望について検討したが、一部の障害者団
体の反発などで結論が棚上げされたままとなっている。旧優生保護法時代の一九七〇
年代にも日本医師会、国が胎児条項を検討したが、法改正に至らなかった経緯がある

 中込理事長は「法的な枠組みがないままでは、異常や障害を理由に中絶が行われて
も、専門家は医学的に妥当かチェックできない。今のままでいることが、必ずしも障
害者の人権を尊重することにはならない。反発は予想されるが、障害のある胎児が安
易に中絶されることを避けるためにも、こうした条項の導入は意味がある」と話して
いる。
 対象となる疾患について、人類遺伝学会では特に病名を挙げず、関連学会や医療機
関の倫理委員会にゆだねたい考えだが、鹿児島大産婦人科が学内倫理委員会に申請中
の受精卵診断や、同医会が導入を検討していた段階では、不治で致死的な遺伝性の病
気として、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどが挙げられている。
[1997-03-30-06:48]


REV: 20170427
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