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NPOの理事



※島田誠 19960229 「人を用いる──アメリカのNPOはどうしているか」
 (千葉大学文学部社会学研究室『NPOが変える!?』,第3章)より

 米国の,特に比較的規模の大きいNPOでは,運営と活動面が分離しているのが
一般的である。NPOの最終的決定権は理事会にある。例えばカリフォルニア州法
では,非営利団体は,理事(directors)の過半数が「経営と利害関係を持たない
人」で構成されることが規定されている。これは過半数が無給の理事であることを
意味する。有給職員と血縁関係や婚姻関係にある人は「利害関係を持つ」とみなさ
れる(柏木[1993d:4])★01
 「合同ミーティングっていうのは多くて月に1回,2か月に1回とか3か月に1
回というパターンもありますけど,そこでいろんな案件を処理してNPO内部での
意志決定をする。そこでいろんな案件を提出する責任者がエグゼクティブ・ディレ
クター(後出)です。それ以外に,その理事のレベルでいろんなコミッティ(委員
会)を作る場合があります。例えば,もっと会員を集めるコミッティとか,もっと
資金を集めるコミッティとか。そこでもうちょっと2週間に1回くらいミーティン
グに出て。それから,いろんな知っている人に声をかけてもらうとか,そういった
仕事をしてもらうこともあります。」(今田氏)
 NPOでは,大学の教員や弁護士,NPOの経験者や企業の実務経験者など,必
要に応じて多様な社会経験や技能を持つ理事が参加している。NPOにとっては,
多様な領域,特に多様な人脈を持つ人々の参加をえられることによって活動の幅が
広がる。またその活動が社会から認知されることにつながる。「その分野で,ある
程度の蓄積があって,人とのつながりがあって,その団体に貢献できる人を引っ張
ってこようというんですね。その人に直接働いてもらう必要はない。弁護士は1人
ほしい,それで弁護士,それからそういう分野で活躍している大学の先生とか,あ
るいはNPOで活躍しているスタッフだとか。やはり,人づくりにつながる,人と
のつながりをもっていることによるサポートが,NPOとしては一番使いいいんで
す。… コネのある人がほしい。」(今田氏)
 理事として活動する人は,自分の仕事に関わりのある部分で地域社会に貢献でき
ることにやりがいを見出すことができる。ただ,そうした個人的な動機によるだけ
でなく,米国には,NPOの理事になることに対する社会的評価がある。「私は何
々という団体の理事ですっていうのはけっこう社会的に意味のあることなんです。」
(今田氏)
 そして無給の理事の参加を促進するシステムがある。
 第一に企業において。米国企業のボランティア支援活動の一つに,日本でいうボ
ランティア休暇に類似するもので重役貸出制度(ローンド・エクゼクィブ)がある
(実際には,重役だけでなく一般の従業員も貸し出しの対象になる)。1993年に発
表された企業ボランティアに関する調査結果によれば,ローンド・エグゼクティブ
の実施率は68%,また企業の役員や管理職をNPOの理事に就任するよう奨励して
いる企業が86%ある。(柏木[1994b:14-16])。
 第二に大学において。いったん雇用された大学の教員が終身雇用か退職か大学側
から審査される制度として,「テニア・システム」と呼ばれる制度が米国にはある。
そこで大学への貢献として評価されるのは,学術研究や研究論文の本数といった学
内外での研究上の功績はもちろんだが,どのくらいコミュニティに対して貢献して
いるかというのが一つの審査の基準になる場合が多い。(今田氏)
 ただ,理事になってほしい人が理事としての職務を予め知ってない場合もある。
その場合には「NPOのマネジメントのサポートをするNPOもあるんです。例え
ば我々のような団体で,我々の理事になってほしい人がいたとしますね。そうする
と,その人に頼むと同時に,その人が,「私,経験もないし,理事会のメンバーに
なることがどういうことかわからない」ってなことを言われたら,そのマネジメン
ト・センターの,夜間の2週間くらいのコース,もっと短いのもあるんですけど,
に行ってもらって,理事になるというのはどういうことか,どれだけの責任で何が
要求されるのか,知ってもらう。」(今田氏)
 このように,米国のNPOは,経済的利害関係を持たない多様な層からの理事を
登用しており,それを支える企業や大学のシステム,また理事のための研修システ
ム(研修コースを提供するNPO)がある。



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