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■米国のNPO
※石塚美由紀 19960229 「アメリカのNPO活動と日本の市民活動」
(千葉大学文学部社会学研究室『NPOが変える!?』,第1章)より
ここ数年で関連文献が増えているが,意外と具体的なところがわからないことが
多い。そして,広義のNPO,狭義の,あるいは通常想定される場合のNPOとあ
って,少々ややこしい。いくつかの文献に書かれていることを総合し,広義の方か
ら徐々に絞っていくと以下の1.〜4.のようになるようだ。
まず,州に法人登記申請をする。この手続きは簡単で手数料数百ドルを支払い
(税免除団体の資格を得れば返却される),定款(だいたい書式が決まっている)
を提出する。直接州の事務所に行けば即座に,郵送で手続きすれば2週間くらいで
法人化される。これでNPOになる。このようにNPOは州法で定められたものだ
から,その種類,分け方も州によって異なる。(岡部[1993])…1.
しかしこれは法人格を得ただけで,税制上等の優遇が受けられるわけではない。
この手手続きと同時,あるいはその後,州の租税控除の申請をする。次に,この後,
日本の国税法にあたる内国歳入法(the Internal Revenue Code)第501条(c)(3)項
〜第501条(c)(21)項(その一覧はSalamon[1992=1994:17],出口[1993c:190])
の条件を満たすと,連邦の法人所得税が免税になる(岡部[1992:50])。1.の手
続きの後,それとは別に,内国歳入局に申請する。内国歳入局では平均的な人がこ
の申請書を理解するのに4時間41分,作成して送付するのに9時間22分かかるとし
ている。ただ,多くの場合,NPOは申請を弁護士に依頼するという。(柏木[19
93:22,28],柏木[1993:69]に申請用紙のサンプルがある。)…2.
このうち,501(c)(4)〜(21)の団体は「共益団体型」のNPOで,寄付の税控除
は認められない。「501(c)(3)と(c)(4),特に(c)(3)に規定された団体が典型的な
NPO」(岡部[1993:16])である。(c)(3)と(c)(4)というくくり方もあるとい
うことである。…3.
通常NPOといわれる時には,(ファイブ・オー・ワン・)シー・スリー(c3)
団体と呼ばれるこの団体が想定されている。「アメリカでNPOというと,「あぁ,
501(c)(3)のことですか」といわれることがよくある」「NPOの代表格である501
(c)(3)」(柏木[1992:7,26])…4.
501(c)(3)団体は次のように定義される。
「法人,共同募金,基金,財団のうち,おもに次の目的において設立され運営さ
れているもの。宗教的(religional),慈善的(charitable),科学的な目的,公
共安全のための試験の目的,文学的な目的,あるいは教育的な目的,または全米あ
るいは国際的なアマチュアスポーツ競技を育成する(ただしその活動が運動設備や
器具の提供を含まない場合に限られる)目的,あるいは,児童や動物の虐待を防止
するために組織運営されているものであって,その純利益が一部たりとも民間の株
主や個人の利益に帰属することなく,その活動が立法に影響を与えるようなプロパ
ガンダにつながることなく,あるいは公職を目指す候補者のために政治的なキャン
ペーンに参加したり干渉(声明の発行や,配布を含む)することのないもの」(出
口[1993c:191-192])
この「定義」ではわかりにくいが,c3団体には慈善,芸術,文化,人文科学,
教育,宗教だけでなく,人間環境保全,公民権運動,性差別救済,ホームレス保護,
地球環境保全,難民救済,核兵器廃絶など,アドボカシー団体と呼ばれるものも含
まれる。上の法律上では,一種の社会教育団体として位置づけられるようだ。アド
ボカシー団体とは,権利擁護や政策提言をしているような団体をいうが,このよう
な団体が政府の政策とは異なる活動をしている場合でもc3のNPOとして法人化
が認められる。このようにアメリカの(c3の)NPOには,非常に広範囲にわた
る活動の団体が含まれている。
この団体に対する寄付については,税控除が認められる。このc3団体にもさら
にいくかの類型があり,それに応じて控除される限度が違うが,寄付について,個
人なら,調整後所得額の30%あるいは50%まで,企業なら10%まで課税対象から控
除できる(岡部[1992:50-51])。これらには5年間の繰り越しも認められている。
他に得られる優遇措置としては,別途申請が必要だが,郵便料金の割引がある。
多くの場合10円以下で,ニュースレター等を送ることができる(岡部[1993:4]岡
部[1994d])
以上より,501(c)(3)団体は次の5つの特徴を備えることになる。★03
@公共サービス提供の目的を持っていること
A非営利または慈善の団体として法人化されていること
B組織管理の構造が自己利益や私的な財産的利益を不可能にしていること
C連邦税の支払いを免除される資格を得ていること
Dその団体に寄付を行った場合,税控除の対象になるように規定された,特別な
法的地位をもっていること(ハウジングアンドコミュニティー財団[1994:10])
もう2つ,c3団体についてつけ加えると
E政府の助成金や企業や個人からの寄付が収入の一定以上をしめていること
F政治活動が制限されること
つまり,@公共的なサービスを行い,E事業収入だけで運営されているのでない
組織が,
B利益の非分配という制限と,F政治活動の制限を受け入れ,A法人化されると,
A免税と,Bその団体への寄付が税控除の対象となるという特典を受けることがで
きる。そうした組織がc3のNPOだということである。
@について。「提供するサービスが特定の個人だけに対するものであってはなら
ない。…公益団体のサービスは,あるクラスの人々に向けて提供するというのでな
くてはならない。」クラスとは「一定の条件にある人々」である(柏木[1993:20])。
次でも見るが,有料のサービスを提供することは可能である。ただ「通常の市場
価格と同じでは公共性が問われる…。… サービス受給者の支払い能力に応じて料
金を課すようなこともしばしば行われている。こうしたスライディング・スケール
であれば,より公共性にそったものということができるからだ」(柏木[1993:24])
Bについて。NPOは,日本語で非営利団体と訳される。このようにいうとNP
Oは収益的な活動は全くできないように思われるが,そうではない。NPOは営利
企業と同様に有料のサービス提供,また目的と無関係な収益事業を行うことが認め
られている。ただし,そこで得られた収入はNPOが行う公益活動に使われなけれ
ばならず,利益を分配することは禁じられている。NPOの特徴は,この「非分配
条件」が自発的,公的に表明された制約として受けいられていることである。この
ことと関係する組織の特徴(理事の過半は経営と利害関係をもってはならない「「
カリフォルニア州法の場合)については第3章でみる。
Cについて。この制度によってどんな小さな団体でも,社会的に認めてくれる人
がいれば寄付を受けるのが容易になる。…(中略)…
Eについて。これはBのところで述べた,事業がどの程度認められるかというこ
ととも関係する。学校,宗教団体,病院は自動的にc3団体の特典が与えられるが,
それ以外の団体が租税控除の特典を維持しようとする場合は,通常,収入の3分の
1以上が政府の助成金や企業や個人からの寄付がまかなわれているのでなければな
らない。ただし,政府や財団からの新規の助成金が加わっていることや,会員や特
定の個人以外の一般の人々にもサービスを継続しているといった条件を満たせば,
上記の収入が1割以上であれば特典は剥奪されない。(柏木[1993:25])
Fについて。「アメリカで「政治活動」といえば選挙運動やロビー活動など主に
議会向けの活動に狭く解釈される。地域社会でNPOが様々に展開する「市民運動」
は,体制批判的なものでもここにいう政治活動とは異なり,実際上,さほどの制限
は受けない」(岡部[1992:51]) c3団体の中にも,選挙運動,ロビー活動とも
に完全に禁止される団体(数は少ない)と選挙活動は禁じられるが,ロビーイング
は 100万ドルまで(小さいNPOの場合は活動支出の5分の1以下)なら認められ
る団体とがある。他方,501(c)(4) 〜(21)の団体は選挙運動・ロビーイングともに
行える。NPOの中には,政治活動の制限をきらい,c3でなく 501(c)(4)=c4
団体としてNPO登録するところもある。また1つの団体を法律上2つに分け,片
方が税控除の寄付を受け,片方が政治活動をする「c3/c4分割」という戦術も
あり,「シエラ・クラブ」(環境保護団体,c3団体の資格を剥奪されたことがあ
る),「グリーンピース」,「全米女性機構(NOW)」などがこの方法を使って
いる(岡部[1992:51],柏木[1993:26])。
◆NPO・ボランティア
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